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R:ep.14『剣士、目標地点の入り口に立つ』



 どうにかゴブリンの襲撃を凌いだユート達は戦場となった地点から離れ保護区のなかにある洞窟のような場所へと来ていた。

 剥き出しの土の地面に並べられ横たわっているユート達。

 その横で息を切らして座り込んでいる城石。それでもどことなく城石の表情には安堵が浮かんでいる。



「あ、ありがとうございます。城石さん」



 横になったまま首だけを動かしてマキトがいった。



「いえ。皆さんが無事でなによりです」



 愛想笑いを浮かべたまま顔に疲労の色が滲む城石が答える。

 ゴブリン達との戦闘によってHPを大きく減らしていた彼らをこの洞窟まで運んできたのは城石だった。

 ゲームである以上HPが1残されている状態というのはまれに起こり得ることだった。その時点で何らかの状態異常を与えられでもしない限りユート達のようにずっと倒れたままなどということはあり得ないことだと知っているからこそ城石は足の震えを膝を掴むことで強引に止めて立ち上がったのだ。

 非力な自分を知るからこそ必死に彼らの腕や体を抱えてこの洞窟まで引き摺っていった。

 洞窟があることを城石は知っていた。当然だろう。この保護区は城石達が管理を任されている半ばオフィシャルなエリアなのだ。突然の、それでいて広大な地殻変動でも起らない限り記憶の中にある地図と大きく場所が食い違うなんてことにはならない。

 目論見通り洞窟に辿り着きユート達を運び終えた城石は自分のストレージから回復薬を取り出して順番に与えていった。

 例え全快しなくともHP1の状態さえ脱することができれば各々動けるようになるはず。実際、回復薬を与えられてすぐにマキトは先程の礼を述べたのだった。



「それで、ゴブリンはどうなったんです?」



 マキトが首だけでなく体も起こして洞窟の壁に寄りかかる。程なくして次々と起き上がってくる面々の顔が見えた。



「ゴブリンキングはユートさんが倒してくれました。皆さんが倒れたまま動けなかったのはおそらくその断末魔を聞いてしまったからだと思います」

「だったらどうして城石さんは無事なんです?」

「私は、その、皆さんに比べてダメージが少なかったために影響も少なかったんだと――」



 城石から渡された回復薬だけでは全快するまでには至らず自身のストレージに入っている回復薬も使いフォラスは己のHPを回復させながらの問いに城石は申し訳なさそうな顔をして答えた。いくら戦力外だと自他共に認知されているとはいえ、苛烈な戦闘において一人何もしないままでいたことに多少の負い目に感じていたらしい。

 目線をフォラスから逸らしながら答えた城石は一人だけ残る五人から離れて洞窟にある椅子の代わりになりそうな石に腰掛けたのだった。



「それに攻撃にも加わっていませんから、元々断末魔の効果範囲に含まれていなかったのかもしれません」

「何を言っているんですか?」

「え?」

「城石さんが残っていたからこうして自分達は安全な場所にいられるんです。ここの地理を一番知っているのも城石さん。今のように何かあったときのことを考えれば城石さんが無事なのは最善の選択なんです」



 俯きながら付け足した城石にあっけらかんとした声でセイグウがいった。



「だからそんなに気にしなくても大丈夫ですよ」



 はっきりと言い切るフォラスに城石は感無量といった顔になり、



「ありがとうございますっ」



 何度も何度もお礼をいっていたのだ。

 それから暫くして全員の体力が回復したころを見計らいマキトが立ち上がる。



「さて、ゴブリンとの戦闘は何とか切り抜けられました。それは間違い無いですよね」



 全員が頷き、全員の注目を浴びる中、マキトは状況確認を始めた。



「目標としているモンスターの生息域はここから遠いんですか?」

「いや、ここからはそんなに遠くなかったはず……ああ、そうだ。もう少し進んだ先となってます」

「だったらすぐにそこに向かいましょう。先程のゴブリンのようなモンスターの乱入が繰り返されることはできるだけ避けたいのですが」



 誰に相談することもなく方針を決めたような形になったが、このマキトの提案を断ることはしなかった。

 モンスターを倒したとしても経験値やドロップアイテムが一切得られない戦闘はするだけ無駄だと思う人も少なからずいるらしい。



「では、俺が偵察してきます」



 そう言って立ち上がったユートをパロックは遮り、



「パロックさんが行くんですか?」



 ユートにそう問われると一切の迷い無く頷いてみせた。



「わかりました。お願いします」



 またしても頷き洞窟から出ていったパロックはそのまま洞窟の前を中心に周囲の安全を確認する。慎重かつ迅速に確認を終えたパロックは洞窟の入り口付近に戻り手振りだけで他の人達を呼び寄せた。



「では、城石さん。目標の場所まで案内をお願いします」



 ぞろぞろと歩く途中、マキトが城石にいった。

 一瞬ビクッと体を震わせたがすぐに身を引き締めるように自身の頬を叩き気合いを入れた城石は、



「こっちです」



 と木々の生い茂る先、灰色の岩肌が剥き出しとなっている保護区の中にある小さな山のようになっている場所を指差した。



「事前の情報通りならばあの区画に『シアンドッグ』が生息しているはずです」



 まるであつらえたように見えてきた緑生い茂る道にできた土色の一本道。それが城石が指差した岩山へと続いている。

 ユート達は周囲を警戒しながらその道を進む。

 一層の警戒が功を奏したのか。あるいはこれが本来のエンカウント率なのか、岩山の麓に辿り着くまでに遭遇したモンスターは小型の兎型モンスターの小さな群れ一つだけ。それも此方から手を出さなければ戦闘にはなり得ないノンアクティブモンスターだった。


 比較的安全な道だというのにユートは一人、違和感を拭えなかった。

 それほどまでにゴブリンの襲撃はインパクトが大きかったのだ。

 自然と武器に手が伸びる。

 風に揺れる木々のざわめき一つが警戒心を掻き立てた。



「洞窟からここまで遠く感じなかったけれど、随分距離があった気がしますね」



 セイグウがユートに話しかけてきた。



「それに、あの岩山も思っていたよりも大きいと思いません?」

「ええ。そうですね」



 セイグウがいうように岩山はちょっとした小山という域を出ている。

 ここまで移動してきた距離と遠近感が比例していないように感じられて何とも気味の悪さを覚えたものである。



「我々が入り口としてるのはこっちです」



 そう言って臆することなく歩き出した城石の後を追いかける。

 すると程なくして人の手によって整備された登山道のようなものが姿を現わしたのだった。




ユート

レベル【12】ランク【0】

所持スキル

≪直刀・Ⅹ≫

≪錬成≫

≪始原の紋章≫

≪自動回復・HP≫

≪自動回復・MP≫

≪HP上昇≫

≪MP上昇≫

≪ATK上昇≫

≪DEF上昇≫

≪INT上昇≫

≪MIND上昇≫

≪DEX上昇≫

≪AGI上昇≫

≪SPEED上昇≫

≪LUCK上昇≫


残スキルポイント【0】



――――――――――



【作者からのお願い】

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