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R:ep.09『剣士、森を歩く』


 微妙に張りつめた空気が漂うなかをユート達は歩いている。



「歩きながらですがこの保護区のルールをお話ししますね」



 そう口火を切った城石は軽く振り返り無言を貫くユート達の顔を見渡した。全員が頷いてみせているものの今一つ重苦しい空気を変えることは出来ずに城石は人知れず小さな溜め息をついている。



「この保護区は我々、正式名称モンスター調査飼育研究所が運営から認可を貰い共同で管理しているエリアです。我々の目的はここに出現する新種、あるいは希少種のモンスターの調査と管理。動物園のようにして一定の施設を解放しているのはその一環ですね。我々はそこでモンスターを飼育しているのです。そこで必要となってくるのが≪テイム≫のスキルなんです。まあ、普通の≪テイム≫とはちょっと違うんですが」

「何が違うんですか?」



 誤魔化すように小声でそう最後に付け足した城石にユートは問い掛けていた。

 城石はちらりとフォラスの方を見て何かの確認を取るような素振りを見せると、一拍の間を置いてフォラスが首肯を返していた。



「我々が使っている≪テイム≫はね、モンスターを捕獲することができても戦闘に参加させることはできないんです。それに加えてこの保護区以外にモンスターを連れ出すこともできない、つまりこの保護区の使用と飼育に特化した特別製のスキルというわけです」

「それだとデメリットが大きすぎませんか? 何かメリットがあるのでは?」

「鋭いですね。実は我々の≪テイム≫スキルでは捕獲可能なモンスターの数の制限が取り払われているんです。勿論飼育できるだけの環境と資金が必要になりますが」

「それはこの施設があれば問題ないというわけですか」

「はい」



 ユートと城石の会話を聞いて、おそるおそるというようにセイグウが手を上げた。



「あの、それって普通の≪テイム≫とは別のスキルで使用できるようにはならなかったんですか?」



 金髪を逆立てた風貌のセイグウに視線が集まる。ただ、その後ろを歩くマキトは尚も険しい表情を向けているが。



「えっと、その辺はどうなんでしょう、フォラスさん?」

「城石さん達が使用している≪テイム≫の効果に近しいモンスターの飼育に特化したスキルは既に実装済みです。名称は≪ブリード≫。但しモンスターをペットのように飼うことができるのは同じですが、捕獲することのできる上限は一般の≪テイム≫と同じです。あくまでも上限が取り払われているのは城石さん達が使っているスキルだけですね」

「特権みたいなもの…ですか?」



 訝しむようにセイグウが問い掛けると城石は苦笑を浮かべながら、



「確かにそう言われればそうなのですが、我々は皆さんのように普通にゲームをプレイしているわけではないですから。そういう意味ではフォラスさんと似たような立場になるのでしょうか?」

「あら? 私はそんな特別製のスキルは持っていませんよ。まあ、仕事としてプレイしているのは同じですけどね」



 暗に一般のプレイヤーとは違うと言ってのける二人に対してセイグウだけが納得していないような表情を浮かべている。無言を貫くパロックや警戒を解かないマキトは平然としたまま、ユートはというと別のことに意識を取られていた。



「どうかしましたか?」



 森の奥へと注意を向けているユートにフォラスが声を掛ける。するとユートは立ち止まり、森の奥を指差した。



「何かがいる……気がします」

「何か、とは何です?」

「モンスターだとは思うんですけど、その正体までは分かりません。それに、ここまで他のモンスターに出会わなかったのも不自然で……」

「大丈夫です」



 そっと背中の直刀に手を伸ばしたユートを城石が制止する。



「モンスターに出会わなかったのはそういうルートを選んで進んで来たからで、森の奥から此方を窺っているのはおそらく『ホーン・ドラゴン』というモンスターです。ホーン・ドラゴンはこの森の主のようなモンスターで弱い他のモンスターを守護しているんです」

「えっと、それは設定か何かですか?」

「いいえ。純然たる事実ですよ」

「どういうことですか?」



 直刀の柄を掴んだまま動かないユートが聞き返す。



「このゲームではそれぞれの場所に独自の設定があるのはご存知ですか?」

「それは始めたばかりの頃に訪れる町の傍では弱いモンスターが多く出る、みたいな」

「だいたい正解ですけど、ちょっと違います。例えるなら逸話みたいなものでしょうか。あの場所にはあれがいる、とか、あそこには隠された何かがあるといった謂われが全ての場所にあるんですよ」



 さも当然だというように城石が告げる。



「この保護区にある逸話は『一角竜に護られた森がある。そこには多くの生物が命を育んでいる』というものですね。一角竜は先程言ったホーン・ドラゴンのことで、この場所には多くのモンスターが生息しているのは確かですから。我々はそのモンスターの中から極少数、あるいは傷つき治療が必要な個体を保護という名目でテイムしているのですよ」

「あの竜は倒さなくてもいいんですか?」



 ギュッと拳を握ったセイグウが戦意を高めながら訊ねる。



「ええ。逸話を信じるのなら、一角竜を倒すわけにはいきませんから」



 きっぱりと言い切る城石にセイグウは首を傾げてみせる。



「この保護区の生態系の頂点は間違い無くホーン・ドラゴンです。それ以外のモンスターは全てその庇護下にあると言ってもいい。ならばその頂点が失われた場合、保護区の秩序が崩壊しかねないのは理解できますね?」

「あ、ああ」

「それにこの保護区でどんなに強力なモンスターを倒したとしてもゲームという観点から見れば全く意味のないことなんですよ」



 声を潜めること無く会話をしながら進んでいると森の奥からこちらを窺っているような視線は消えていた。

 常に足を踏み入れているであろう城石の存在に気付いたからなのか、それともこれまでユート達が戦闘する素振りを見せなかったのが功を奏したのか。どちらにしてもこの保護区に本格的に足を踏み入れる許可が下りたと思えば幾分か警戒心が解けるというものだ。

 直刀から手を放したユートはほっと胸を撫で下ろしている。



「事前にお知らせしてあるとは思いますが改めて伝えておきましょう。この保護区の中にいる間、我々のHPは全損することはありません。また同時にモンスターを討伐したとしてもドロップアイテムはおろか経験値すら入ることはありません。実際に得られるものあるとすれば、我々の≪テイム≫スキルでモンスターを捕獲することだけなのです」



 最後に「戦闘に不得手な自分達に対するサポートみたいなものですよ」と付け加えて城石は歩いていたある程度舗装された道を外れより深い森の中へと足を踏み入れた。

 後を追うようにセイグウが続き、その後にユートとフォラス。さらにその後ろをパロックとマキトが歩いている。



「これも改めて説明させてもらいますが、今回の私の目的はこの保護区に出現したモンスターの捕獲です。捕獲対象は『エレメンタル・キャットの(つがい)』」

「どこにいるのか解っているんですか?」

「ある程度は、ということでしょうか。ただエレメンタル・キャットは新種に該当するモンスターですのでその行動の全てを把握しているとは言い難いのですが」



 そうは良いながらも迷う素振りも無く進む城石の後を追いかける。

 徐々に深くなっていく森の中。これまでに至るまで不気味なほどの静けさが包み込んでいた。モンスターの気配はおろか、普通の生物の息づかいすら聞こえてこない。そのことに対して声には出していないものの人一倍警戒心を高めていたのは城石で、他の五人はというと少し変だなと思うに留まっていた。



「ここって普段からこうなんですか?」



 真っ先に口火を切ったのはフォラスだった。視察に来たというだけあって普段の保護区の様子を知っていたのだろう。声を潜めなかったのはこの状況を他の人達にも伝える必要があると判断したようだ。

 否定の意を込めて首を横に振った城石が言葉を続ける。



「いつもとは違う感じがしますけど、正直私にはどこがどう違うか明確な言葉にすることが出来ないんです」

「普段からこの保護区に来ているんじゃないんですか?」

「確かに我々はこの保護区である程度自由にする権限を与えられていますが、皆さんが思っているほど自由にここを行き来することは無いんです。精々今回のようにモンスターの捕獲に向かう時か、傷ついて保護したモンスターが回復した後、保護区に帰す時に付いて行くくらいですので」

「それに、捕獲に向かう時は私のような視察官が同行しますから」

「まあ、経験値も何も入手できない場所に好き好んで向かう人は普通のプレイヤーはおろか我々のようなプレイヤーにもいないということですね」



 ならば今見ている地図は誰が作ったのだろうかと疑問を抱いたユートはそれを訊ねようとして口を開いただけで声を出すことを止めた。

 吸い込んだ空気から何とも言えない違和感を感じ取ったからだ。

 咄嗟に手で口を覆い周囲を見渡す。その様子を見た他の人達がユートに疑問の視線を向けていた。



「どうしたんです?」



 突然のユートの奇行に城石が若干引きながら問い掛けた。



「あ、いや、何か嫌な感じがしまして――」



 曖昧な返事をしながらもユートは周囲を見回すことを止めない。目を凝らし集中するユートの真剣な様子に自ずと他の人達の警戒心が高まっていく。



「これは――毒、いや、麻痺か!」



 一瞬自身のHPゲージの下に現われたアイコンを見逃さなかったユートが声を荒らげる。



「麻痺だって? そんなの何時……っ!?」



 ユートの言葉を疑ったように呟いたセイグウと彼に向けていた視線をより険しくするマキト。



「な、なんだよっ!」



 マキトがセイグウに詰め寄るのは一瞬だった。

 胸ぐらを掴み体を持ち上げるマキトの手を掴み反抗するセイグウ。

 キャラクターとしての能力はランク一つ分差が付いているはずなのに、どういうわけかこの場では拮抗しているかのようにセイグウがマキトの手を掴み自らから剥がしてみせた。



「お前の仕業か?」

「何のことだよ」

「グランズダインサポーターに確認を取った。セイグウという名のプレイヤーはメンバーにはいない!」



 この一言で全員がセイグウと距離を取った。

 そして素早くそれぞれの得物に手を伸ばし、



「ちょっと待ってくれ。だったら『あおみや』で確認をとってくれ。ひらがなで『あおみや』だ!」



 セイグウは武器に手を伸ばさず慌てたように告げた。

 僅かに躊躇う素振りを見せたマキトだったが城石の「お願いします」の一言で渋々といった様子で連絡を入れたのだった。



「――はい、はい。……え? 本当ですか? そうですか。――わかりました」



 独り言のように呟いたマキトはこれまた渋々自分の武器から手を放す。

 城石達に視線だけで問い掛けられたマキトは、厳しめな口調を変えずに、



「確かに。『あおみや』という人物はいるらしい。だが、その外見はお前とは似ても似つかない素朴な男だったらしいぞ」

「ここだと見た目はいくらでも変えられるだろ。それに名前だって変更出来ないわけじゃないはずだ。報告が遅れたのは自分のせいだけど、それだってこの仕事が終わればすぐに――」



 必死に言い訳をするセイグウだったが、周囲から向けられる視線に変化はない。すると業を煮やしたように頭を掻き毟って、



「あー、もう。わかった。わかりましたよ。説明します。マキトさんも聞いてくれますよね」



 無言のままマキトが頷く。



「まず、名前の件ですが、あおみやは自分の兄です」

「兄?」

「自分達は兄弟で同じレヴシステムを交互に使っているんです。そしてアカウントも同じものを使っているんです」



 レヴシステムには未成年の使用範囲を制限することを目的として数人までは初期化することなく同じ機器を操作することができるようになっている。無論それで無用な諍いが起らないためにも普通はそれぞれのアカウントは別で管理されているのだが、こと親、兄弟のような近しい関係ではあるアカウント情報も共有することができるのだ。

 今回の話ではあおみやという名の兄とセイグウでは十歳年が離れているらしい。仕事で忙しい両親に代わり兄が育ててくれたのだとも言っていた。

 このゲームでは一つのアカウントを複数人で使用することは推奨されていない。だが推奨されていないだけで出来ないわけではない。以前はあった制限も状況と世相の変化によって取り払われることもあるのだ。兄弟で一つのアカウントを使用している人は稀ではあるが存在しているのもまた事実だった。



「ただ、同じアカウントだとしても自分は兄とは違いますし、兄も自分とは違います。だから互いにそれぞれがプレイする時には名前と外見を変えることにしているんです」

「つまりグランズダインサポーターのメンバーになったのは兄のあおみやの方だと言いたい訳か。では何故セイグウである君がここにいるんだ?」

「兄は今日急な呼び出しを受けて仕事に行きました。それで空いたレヴシステムを自分が使ってログインしてきたんです。その時はあおみやで――」

「成る程ね。あおみやという人物が受けた連絡をセイグウさんが見たというわけですか。ご兄弟の間の問題ですから口を挟むのは憚れますが、兄になりすますのはあまり良い趣味とは思えませんね」

「…ごめんなさい」



 説き伏すようなフォラスにセイグウは素直に頭を下げた。



「あら? この場合より迷惑を被ったのは私ではなく――彼の方ではないですか?」



 フォラスが向けた視線の先にいるのはマキト。

 これまでの話に嘘はないと判断したのか先程まであった警戒心のようなものが薄れているようだった。



「あ、あの。ごめんなさい」

「まったく。あおみやという人物には後に言っておくことにするが、これから先はセイグウも下手な真似はしないことだな」

「はい。わかりました」



 意気消沈したセイグウを見て城石はマキトに向かって訊ねる。



「彼はどうするんですか?」

「そうですね。ここまで付いてきてしまっていますし、今更帰らせるわけにもいかないでしょう。この場でログアウトしたとしても再ログインしたとしても」

「確かに。先程の事務所に戻るだけで強引に付いて来ようとすれば出来てしまう」

「ええ。ですので彼も曲がりなりにはグランズダインサポーターのメンバーとして考えて同行させることにします。宜しいですか?」

「此方には問題はないですが、マキトさんは良いのですか?」

「仕方ないでしょう」



 マキトの言葉を受けてセイグウが表情を輝かせた。



「但し私の指示には従ってもらいます。良いですね?」

「はいっ」



 元気よく返事をしたセイグウは振り返りユートやパロックに向かってもう一度頭を下げる。それでこの話は終わった。誰もがそう思った矢先、忘れそうになっていたユートが口にした言葉を思い出した者がいた。

 一度緩みかけた空気は彼女の緊張を含んだ表情によって再び引き締められたのだ。



「ちょっと待って。だったら先程ユートさんに現われたっていう麻痺のアイコンは何だったんですか?」



 誰かがハッとして息を呑んだ。

 ここにいる大半が答えに悩み口を噤むなか、意外な人物が口を開いた。



「ユートのランクやレベルが低いのが原因だろうな。見た限りここにいる中で最も低いのはユートなのだろう」

「間違い無く」



 保護区に入る以前に聞いていた数字に嘘がないならば確実に一番レベルが低いのはユートだ。ユート本人もそのことを理解していて偽ることをするつもりもなかった。



「聞いてもいいか?」

「ランクは0。レベルは12です」



 短くはっきりと告げたその数値にユート以外の誰もが驚いていた。それもそうだろう。ランクはともかくレベルが12というのはあくまでも初心者に毛が生えた程度であることは疑いようもないのだから。



「そ、それは本当ですか?」



 絶句していたなか、いち早く問い掛けたのは城石。ユートはその問いに頷くことで答えてみせる。



「それは戦力として換算することは?」

「今回の状況にもよりますが、私達よりも低いことは確かです。仮にこと戦闘になったとしたら――」

「俺が皆さんに比べて力不足なのは承知しています。ですが、今回の依頼は必ず戦闘を要するわけではないはずです。実際に此方に来ていた依頼は現実でいう動物園に類似する施設の手伝い、となっていたはずです。飼育するモンスターの捕獲もその中に含まれていると考えたとしても問題があるようには思えないのですが」

「そうですね。私も戦闘という意味ではあまり戦力にはなれそうにもないですし」

「守って貰おうとかは考えていません。それに邪魔をするつもりもないですが、どうしても足手まといだと思うのなら戻ることも視野にいれますが」



 淡々と告げるユートにパロックやマキトは虚を突かれたようになり黙ってしまう。そんなマキトをみてセイグウはどう会話に入ればいいか決め倦ねているようだった。

 そんな人達を見かねてフォラスが提案する。



「ではこうしましょう。ユートさんは後方で城石さんの護衛をお願いします。HPが全損することは無いといってもテイムするときには接近する必要があります。その際、常に城石さんが狙われ続けるのでは効率が悪いのは言うまでも無いでしょう。ですのでユートさんには最悪の場合自分の体を使って盾となって貰います。いいですか?」

「ああ。わかった」



 意外なほど抵抗なく受け入れたユートにフォラスも戸惑ってしまうが、これ以上話し込んでも意味は無いと言うように城石に先に進むことを促したのだ。

 麻痺をもたらした存在も不明のまま保護区の中を進んでいく。相も変わらずモンスターの襲撃はなく道程は平穏そのものだったのだが、どうしてだろうか。奥に進むに連れて言葉にならない不安が募り始めていた。



「エレメンタル・キャットの番はこの先にいるはずです」



 程なくして城石が言った。

 今よりもさらに奥。生い茂る木々によって遮られて日の光が届かない闇の中を指差した瞬間、その肩を後方を警戒するように歩いていたパロックが掴んだ。

 力一杯城石を引き寄せると、不意に空から何かが降り注いだ。



「え?」



 戸惑う城石がそれまで立っていた場所には不格好な木製の矢がいくつも地面に突き刺さっている。



「何かが隠れているぞ!」



 これまでの無言の印象とは一転して緊張感のあるパロックの声が轟いた。

 前に出たマキトとセイグウ。だが弓を放ってきた相手を見つけられていないようだ。



「城石さん。それにフォラスさん。俺の近くに。パロックさん――」



 非戦闘員を自分の傍に呼び寄せながらユートはパロックとアイコンタクトを行った。

 すかさず前にいる二人に並ぶパロック。

 それから暫くして、何かが駆ける足音が聞こえてきた。



「来る、それも一体じゃない、複数体だ。城石さん。この保護区にいるモンスターで群れを作るのはいますか?」

「え、ああ。動物型のモンスターならありえなくはないが、待ってくれ、この保護区のモンスターは比較的大人しいやつばかりなんだ。それに矢を放ってくるようなモンスターは確認されていない!」

「私のほうでも確認されていないわ。それに今回の新型はエレメンタル・キャットだけのはず。テイムしようとしている番はその中で彼らに与えても問題無い個体と判断されたものだけのはず」



 二人の言葉を前にいる三人も聞いている。

 つまり襲ってきた相手の正体は不明。

 それどころか視察に来たというフォラスや、保護区のことに詳しい城石すら把握していないモンスターがいるかもしれないのだ。



「だったらここに他の場所からモンスターが移住してくる可能性は?」

「ない! ここはある意味封鎖されたエリアだ。余所からモンスターが入り込むことはあり得ない」



 等と言っている間にそれは姿を現わした。

 一般的なプレイヤーの体格の腰辺りまでしかない身長。痩せ細っているようで不気味に膨らんだ腹。額に生えているのは短く小さい角。大きく開かれた口からは鋭い牙が覗き、目は見開かれ血走っている。手にはこれまた不格好な木製の槍。その穂先には鋭く尖らされた石が木の蔦か何かで取り付けられている。

 似たような武器を持った個体が見えるだけでも七体。未だ見通せない奥の方にはまだまだ別の個体がいるはずだ。



「ゴブリン!?」

「馬鹿な。この保護区にゴブリンはいないはずだ」

「でも現実こうして目の前にいます」



 必死に否定する城石にユートは短く言い切った。



「討伐します。いいですね?」



 前方からマキトが聞いてきた。

 城石は戸惑いながらも「あ、ああ」と肯定する。

 そうしてユート達とゴブリンとの戦闘が始まった。




ユート、レベル【12】・ランク【0】

所持スキル

≪直刀・Ⅹ≫

≪錬成≫

≪始原の紋章≫

≪自動回復・HP≫

≪自動回復・MP≫

≪HP上昇≫

≪MP上昇≫

≪ATK上昇≫

≪DEF上昇≫

≪INT上昇≫

≪MIND上昇≫

≪DEX上昇≫

≪AGI上昇≫

≪SPEED上昇≫

≪LUCK上昇≫

残スキルポイント【0】




――――――――――




【作者からのお願い】

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