三つ巴の争奪戦 ♯.27『雨と沼』
お待たせしました。今週分の更新です。
毒の吸血候を貫いた一筋の光は瞬く間に消えた。
アラドとムラマサはガン・ブレイズから放たれたアーツが毒の吸血候に命中する刹那に飛び退き、攻撃の余波を受けないように安全な距離を取っている。
それでもかなりギリギリまで粘ってくれていたようで銃撃によって巻き起こる風の影響を受け微かに体勢を崩してしまっていた。
「大丈夫か?」
片膝を付き風を受け流している二人に声を掛ける。
するとこれが返事の代わりだと言うように二人は各々の武器を構え立ち上がり、未だ腹に拳大の穴を空けたままの毒の吸血候へと視線を送った。
「おや、これは驚かされる」
感心したように毒の吸血候は穴が空いた腹部を触りながら呟く。
痛みどころか僅かな痒みも感じていないような毒の吸血候の様子に俺は急ぎその頭上に浮かぶHPバーを見た。
「そんな……あの傷でダメージが無いのか!?」
愕然と呟くムラマサに比べアラドは割と平然としている。そんな彼の様子に疑問を感じた俺は少しだけ声を張り問いかけた。
「…アラドは驚いてないみたいだな」
「ハッ、あの程度でダメージを与えレンなら俺らがあンなに手古摺るわけがねェだろうが」
「そう言われればそう、なの…か?」
それならば、とまた別の疑問が脳裏に過る。何故自分たちよりも先に戦っていたアラドがムラマサと協力をしてまで俺に銃撃アーツを使わせたのだろう。
「自分で経験した方が早ェだろ」
「そう、みたいだね」
平然と言い放つアラドに俺とムラマサは頷くことしかできない。
などと俺たちが話している間ずっと毒の吸血候はニヤニヤとした薄ら笑いを浮かべながら呆然と立ち尽くしている。
リンドウたちは手の中から消えたスクロールに微塵も興味を示さずにシシガミとの合流を果たしていた。
「さて、もういいかね」
シュウゥゥという音と共に微量の紫色の煙が立ったその瞬間、毒の吸血候の腹にあった穴は瞬く間に塞がり服すらも綺麗に元通りになってしまった。
「ダメージが無いのは疑いようがないみたいだな」
「無論。この通り」
ニヤニヤとした微笑は崩さず、芝居がかった動きで俺の独り言に答えた毒の吸血候はまたしても仰々しく羽織ったマントを広げて見せた。
「初撃は譲った。では、次は我輩の番だな。<ヴェノム・レイド・バット>」
毒の吸血候を中心に色濃くなった黒が次の瞬間には小さな蝙蝠の形を取り俺たち全員に豪雨の如く降り注いだ。
「――チッ!」
「避けられないっ」
アラドとムラマサが同時に空を見上げる。
「間に合え! <ラージ・シールド>!」
アラドとムラマサが効果範囲に入るよう走りながら使用した盾のアーツは発生させた半透明の盾が俺の身に蝙蝠が襲い掛かり牙を突き立てようとする寸前で発動し、降り注ぐ無数の蝙蝠を弾いていった。
「――ぐっ、思ったよりも威力が高い!? これじゃ――保たない」
俺が使う盾のアーツは一定のダメージまで物理、魔法どちらの攻撃でも耐え得る性能を持つ。
中々にして性能の高いアーツだと自負しているが、もちろんデメリットはそれなりにある。
一つはリキャストタイムが他のアーツに比べて長いことだろうか。それも発動が早い<ショート・シールド>防御範囲の広い<ラージ・シールド>防御能力の高い<タワー・シールド>の内のどれか一つでも使用すれば他の二種も同様にリキャストタイムに突入してしまう仕様だ。
もう一つは発動中は動けなくなってしまうことだろう。そのため自分以外を守ろうとするなら予め発動させたい場所にいる必要がある。
何より俺が一番のデメリットだと感じていたのが一定以上のダメージを与える攻撃を防ぎきれないということ。
それが今、自分が対面している現実だった。
「――くっ、アイツの攻撃はまだ終わらないのかっ」
盾のアーツの効果が切れるか、毒の吸血候の攻撃が終わるのが先か。嫌なチキンレースがあったものだと思うのと同時に、俺がこの盾のアーツを使う時の大半が今と似たような状況になっていることに苦笑を漏らした。
「ユウ、耐えてくれッ」
「頑張るさ。けど、何時でも逃げ出せるようにしておいてくれよ」
「ハッ。随分弱気なンだな」
「正直自信はないぞ……現に今だって…」
盾のアーツを維持するために左手を掲げている先で盾の紋章の形をした半透明の盾からピキっという音がする。
少しばかり判りづらいが盾の紋章に極小さな亀裂が入ったのが見えた。
「これで分かっただろ。二人も自分でどうにかしてくれよ」
徐々に襲い掛かる負荷に押し潰されそうになりながら告げると、アラドとムラマサは真剣な面持ちで頷いていた。
そんな二人の向こう側。
俺は自分たちと同様に蝙蝠の雨の真っ只中にいるシシガミたちの様子が気になり目を凝らす。
シシガミたちのパーティにも俺と同じように防御に特化したアーツを使用できるプレイヤーがいるかどうかは解らない。だが、居ないのならばどのようにしてこの攻撃を防いでいるのだろうという疑問と興味が出てきたからだ。
俺が抱いた疑問に対する答えは直ぐ近くにあった。
シシガミたちのパーティで防御用のアーツを使っているのは餡子であり、その彼女が獣人族ながらも熟練した魔法を使っているのにも驚かされたが、なによりも驚いたのは防御している魔法が自身を中心にドーム状の障壁を出現させるもので、そのドームが蝙蝠の攻撃を悉く弾き返していることだ。
(違う。ただ弾き返しているだけじゃない。あれは電撃も併発させているんだ)
属性で言えば雷。
攻防一体の魔法アーツなのだろう。
かなり強力なものに思わせるそれを維持するのはそれなりに大変なようで餡子の額には汗が滲んでいる。
「しかし、何時まで続くんだ?」
盾の紋章に入った亀裂が徐々に広がっていく。
それと同時に餡子が発動させている雷のドームも蝙蝠に返す電撃の回数が減りただ弾くだけの回数が増え始めていた。
「――っ! ダメだ、二人とも回避しろ」
遂に盾の紋章が砕け散った。
降り注ぐ蝙蝠から逃れるべく走り出したアラドとムラマサだったが、その攻撃範囲は広く、完全に逃れることは不可能。
盾のアーツが消失したことで動けるようになったと言っても、攻撃の中心部に近かい場所に立つ俺は当然のように蝙蝠の雨に晒される。
「ぐっ、うぅぅうぅ……」
無数の蝙蝠の羽や牙が体に当たり消える。
それは攻撃のためだけの存在であり、毒の吸血候が魔法で生み出した存在であることは疑いようもなかった。
「耐えるためにも……<ブースト・フォートレス>!」
浮かび上がった要塞の紋章が俺の体を透過し消えていく。
例え蝙蝠一体一体が小さくとも、雨粒のように無数に降り注げばかなりの脅威であり強力な攻撃と成り得る。
盾のアーツで防御できていた頃ならまだしも無防備になってしまった今、俺のHPはみるみる内に減らされていく。だが、それに抗うように微量ではあるが俺のHPとMPが回復し始めた。
防御に特化した≪マルチ・スタイル≫の一つ。<ブースト・フォートレス>は物理、魔法両面に対する防御力の上昇に加え、HPとMPの自動回復の量と速度の上昇。加えて言うなら状態異常に対する耐性もそれなりに上昇する。
毒の吸血候の名の通り、そして先程放った技名の通り、あの蝙蝠の牙には毒があるのだろう。
俺が使った強化はそれを防ぐためであり、この減り続けるHPを少しでも残すための足掻きだ。そのお陰もあって俺は自分に蝙蝠の牙が命中しても毒の状態異常に陥らずにいられた。
襲い来る衝撃と痛みに耐えながら俺は盾のアーツがあった場所から離れた場所で体勢を整えていたアラドとムラマサを見る。
アラドは両手の手甲と大剣を振るい、蝙蝠を打ち落としているその様を例えるならば修羅だろうか。
そしてムラマサは、
「鬼化術・風鬼」
先程のスワンプ・ゴーゴンとの戦闘で見せたのとは違う変化が彼女の身に起こる。
額に生じた刀のような角は一本で、色は緑。
「風よ、オレを守れ」
左手の刀、そして額の角を起点に竜巻が起こる。
この風がムラマサの体を包み込み、降り注ぐ蝙蝠を切り飛ばしていく。
どうやら俺の仲間は一人でも自分の身を万全に且つ完全に守れる頼もしい人たちらしい。
そうなると気になってくるのは共に戦っているもう一つのパーティ。
俺の盾のアーツが砕けるのと時をほぼ同じくして餡子が使っていた雷のドームが掻き消えていた。そうなれば俺たちと同じように無防備を晒してしまうことになる。
言うまでもなく自分の仲間のようにシシガミたちも自分の身を守れるくらいの技量は持っている。
そして、シシガミという男はギルドマスターであるが故に仲間を守れる度量を持っているようだ。
シシガミが発動させたアーツの名は<猛化>。俺が使う≪マルチ・スタイル≫やムラマサが使った<鬼化術>のように、自身を強化する類のものだ。
シシガミの身に起きた変化は存外分かりやすくその身を二回り近く肥大させていた。同時にまた別の変化がその身に起こった。
猪頭にある獣の毛が逆立ち、牙が隆々とうねる。さらに全身の筋肉が隆起し、驚いたことに両手の手甲と爪が真紅に染まったのだ。
目に見える程の変化を引き起こしたアーツを使用したシシガミはリンドウたちを守るようにその身を盾にし降り注ぐ蝙蝠を受けていた。
「ふぅむ。新顔までもがこれを耐えるか。中々にして愉快なことだ」
回復と減少を繰り返した俺のHPが五割を切ったその瞬間、徐に毒の吸血候が呟いた。
指揮者が振るうタクトのように優雅に右手を振り上げると降り注いでいた無数の蝙蝠たちが霧散し、紫色の霧の残滓だけがその場に漂った。
「ならば、これも試してやろう。<ヴェノム・レイド・スネーク>」
毒の吸血候が指をパチンと鳴らすと漂っていた紫色の霧が再び集結し、今度は地面に無数の水溜まりを生み出した。
突発的に出来た水玉模様からぬるっと顔を覗かせた蛇が感情の無い目を俺たちに向けてきた。
「どうせこいつらも毒を持っているんだよな」
じりじりと後ずさりながらガン・ブレイズを剣形態へと変える。
強化は変えずに回復と防御力重視のまま。
「それにこれもただの水溜まりだとは思えないんだけど」
それまでの戦闘の余波を受けて砕け転がっている石を掴み水溜まりへと投げ込む。
浅い水溜まりならば水面に波紋を立たせて石は半分以上露出したままになる。だが、毒の吸血候が作り出したそれは石が投げ込まれた途端とぷんっと粘着質のある音を立たせてその全てを飲み込んでいった。
その様子はまさに、
「……沼かよ」
それも底なし沼。
例に漏れずそこに溜まっている粘着質の水は毒水なのだろう。
呆れるように溜め息を吐き出すと、俺は蛇を無視して小さな沼の合間を縫って駆け出した。
「だったら、本体を叩く!」
攻撃力の上昇はなくとも受けの姿勢のままでは戦闘は好転しない。
風を纏うムラマサは身軽に壁を蹴り跳躍し、アラドは大剣を壁に突き立てて足場にしながら毒の吸血候へと襲い掛かっていった。
お揃いのデザインをした武器へと強化の際に変えたのか、あるいはランクを上げて第二の専用武器を敢えて同じ武器種を選んだのか、リンドウとボールスと餡子が持っているのは穂先が鋭い槍だった。
槍の棒の部分を器用に操り棒高跳びの要領でぴょんぴょんと跳ねて動く三人に比べ、シシガミは神妙な面持ちでその場に留まったまま。
何故なのだろうかと一瞬考えたが割と簡単に理解した。
<猛化>によって肥大した体では器用に沼の合間を縫って走ったり、リンドウたちのように跳躍して移動することが難しいのだろう。
(シシガミも俺みたいに防御重視だったってわけ、か?)
胸の中で呟き一人納得していると、不意な熱気がシシガミの立つ方から漂ってきた。
拳を握り腰を落とし、狙いを定めるその動きはさながら狙撃手の如く。
(いや、あれは攻撃と防御の同時強化みたいだな。移動力の低下は…まあ、今回は相手との相性が悪かったって感じか)
どちらかといえば体の肥大化による弊害とでも言うべきだろう。
「っと、考え事は後だ。蛇も増えてきたし、毒の吸血候も戦闘態勢になったみたいだしな。それに、皆も近付くことが出来たみたいだ」
鋭く伸びた毒の吸血候の爪を一瞥し、気を引き締める。
そして、タイミングを絶妙にずらしながら繰り出される俺たちの攻撃が毒の吸血候を捉えた。
刀による斬り下ろし、槍による刺突、大剣による薙ぎ払い。そして俺の持つガン・ブレイズによる斬撃。
「蛇は無視するか。ならば、<ヴェノム・レイド・ラット>」
沼はそのままに、そこから出現する存在が変化した。
毒の吸血候が言い放つ技名の通り、蛇から鼠へと。
鼠は自身の体を弾丸のようにして俺たちへと突進してくる。
「攻撃が変わった!? けど、蛇よりは遅い!」
前から来るそれをガン・ブレイズで斬り払うと思いもよらない爆発が起きた。
「――ッ、これは爆弾!?」
「違うな。我輩の術だ」
「――何っ!?」
思わぬ衝撃によろめく俺に毒の吸血候が急接近してきた。
「やあ、新顔君」
両手を合わせ油断が笑みを向けてくる毒の吸血候の顔が俺の目の前にある。
「あの者達は耐えてみせたぞ。君はどうかな?」
音もなく振り抜かれた拳が俺の腹を打つ。
爪を立てないのは毒の吸血候ならではの慈悲か。
「ほうら。もう一発だ」
続け様に振り抜かれる拳が再び俺の腹を打つ。
意味が解らないことに毒の吸血候の攻撃はHPへのダメージが少ない割に感じる衝撃が強い。
「オレの仲間を離して貰おうか」
上空から降りてきたムラマサが風を纏う刀を使い、俺を掴んでいた毒の吸血候の右腕を切り飛ばした。
「ほう。貴様か」
「ユウ!」
「ああ、助かった」
毒の吸血候の手から解放された俺は咄嗟に距離を取った。
くるくると宙を舞う右腕が霧のように消滅すると、次の瞬間には毒の吸血候の元に戻っていた。
そして残念なことに右腕を斬り飛ばしたというのに毒の吸血候が受けたダメージは僅か。
「撃ち抜け。<拳打・大花火>」
その場を動かなかったシシガミが拳大の炎を撃ち出す攻撃アーツを発動させる。
礫のように飛来する炎は毒の吸血候に命中したその場で激しく燃え上がった。
「ふぅん、良き炎だ。だが、温い」
毒の吸血候は感心したように言うと炎を切り裂く爪撃を放った。
舞い散る火の粉の中から現れたのは無傷な状態ままの毒の吸血候。
一進一退どころか進展も後退もしない戦闘は、無為に時間だけが流れてしまっているかのよう。
俺たち全員の能力値が毒の吸血候の能力値と拮抗しているとは到底思えずに、俺たちは毒の吸血候に弄ばれていると言っても過言ではない気がする。
そんなことを考えていた俺が悪いのか。
突然、リンドウたちの方から激しい爆発音が轟いた。
「何が――」
起こったのだろう。
この場にある爆発物は毒の吸血候が放った鼠だけだが、それだけであれだけの爆発が起こるとは思えない。それに、俺とムラマサよりも先に戦っていたリンドウたちが下手を打ったとも思えなかった。
そう考え何気なく視線を下に向けるとびっくりすることに小さな水溜まりのような沼が独りでに蠢き集合して一つの大沼が出来上がっていた。
大沼となった水溜まりから出現した鼠は姿こそ変わらないが、その数が異常だった。
一度に数十体現れる光景にも背筋が凍るが、それら一体一体が爆弾のようだとなれば、より一層の警戒心が増す。
あの大きな爆発は数十体もの鼠が引き起こした爆発ということのようだ。
「あれは…拙いっ」
思い出せばシシガミたちは回復薬を枯渇させていたはず。
一体が引き起こす爆発のダメージが少ないのだとしてもあれだけの数となれば甚大な被害になっていてもおかしくはない。
立ち上がらない彼女たちは気絶の状態異常を引き起こしているようで、きっかけはあの爆発によってHPを大きく削られてしまった事だと推測できる。
「ふぅむ。鼠はあやつらを狙うか。ならば我輩も――」
「させねェよ」
「…ほう」
突如現れたアラドが毒の吸血候の前に立ち塞がる。
「ぬおおおおおおおおおおおおおっ」
睨み合うアラドと毒の吸血候の向こうでシシガミが咆哮すると小さな爆発をモノともせずに前進していた。
鬼気迫る様相のシシガミはなおも襲い来る鼠からリンドウたちを守るべく、前に出たのだ。
「ユウ! シシガミたちを!」
「分かってる。ったく、あんな戦い方じゃ保つわけが無いだろうに」
ぼやきながら俺はリンドウたちを助ける方法を模索する。
鼠や大きくなった沼を避けて行くには時間が掛かり過ぎる。その間にシシガミを抜けて鼠が襲い掛からないとも限らない。ならば必要なのはそれらに阻害されることなく近付ける方法。
「――そうか。来いっ、リリィ、フラッフ」
装備しているアクセサリ『精霊の指輪』とスキル≪魔物使い(モンスターテイマー)≫を使い呼び出したのは透明な水色の翅を持つ妖精と、綿毛のような体毛を持つ小型のドラゴン。
回転する魔方陣から出現した妖精はゆっくりと瞳を開くと辺りを見渡し、
「ちょっとっ! 何がどうなってるのよこれ!」
と俺に掴みかかってきた。
「説明は後だ。リリィ、フラッフ。二人に頼みたいことがある」
真剣に話す俺の様子に、それに辺りの様子から何となく状況を察したのだろう。リリィはいつものおどけたような笑みから真剣な表情に変わり、フラッフは訳知り顔で言った。
「私は状況を理解しています。ご用は何ですか、マスター」
「リンドウたちにポーションを運んでくれ。地面にいる鼠触れると爆発するから近づくなよ」
「へ? 爆発?」
キョトンとした表情を浮かべるリリィの視線の先でシシガミがまたもその身で鼠を受け止め、同時に巻き起こる爆発にも耐えていた。
「見ての通りだ。リンドウたちを回復させないと拙いんだ。頼めるか?」
ストレージから取り出したなけなしのポーションをフラッフとリリィの前に差し出す。
「任せてください。マスターの頼みなら何でもしますよ」
「う、うぅ。わかったわよ。その代り後でお菓子をいっぱい頂戴よね」
「任せろ。好きなものを作ってやるさ。勿論フラッフの分もな」
送り出したフラッフとリリィを見届け、俺はガン・ブレイズのグリップを握り直す。
<ブースト・フォートレス>による自然回復の速度上昇を継続させたまま再び攻撃に参加することにした。
「今度こそテメェを倒してやンぜ」
「ふぅむ。君に出来るかな?」
毒の吸血候の爪とアラドの大剣、そして手甲がぶつかり合う。
「ぬおおおおおおおおおおおおおっ」
そんな二人に迫るシシガミは幾重のも爆発を受け赤く燃え上がっているかのように見える。
「<猛進>!!」
炎を纏いながらアーツのライトエフェクトまでもその身に宿すシシガミの突進が毒の吸血候とアラドを同時に吹き飛ばした。
とりあえず今回はここまで。
文量はいつもより多くなってしまいましたが、いかがだったでしょうか。
では次回の更新も金曜日になります。
それではまた。