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三つ巴の争奪戦 ♯.15

お待たせしました。今週の更新です

「できたぞ。確認してくれ」


 アラドが使う手甲と大剣。ムラマサが使う二振りの刀の修復を終えた時には何とも言い難い疲労が溜まっていた。

 いくら手順が簡略化されているといってもこの短時間で二人分、計四つの専用武器の修復をするのは精神的、体力的にも消耗がある。HPが減っていないのだから体力的というのは違うかもしれないが。

 やはりこんなことを日常的に、それも大量に熟している店を持つ生産職のプレイヤーは凄いと思う。俺には無理だ。


「先に言っておくけど、今回は強化しないで修復だけだからな」

「そうなのかい? オレは別に構わないけど、時間が無かったからなのかい?」

「いや、素材の問題だ。手持ちの素材じゃ強化した際の上昇値が想定より少なかったんだ。だから新しい素材か代替案が見つかるまでは強化はしないつもりなんだ」

「ふうん。でも、ま、相変わらずいい腕だね」

「アラドはどうだ? 気になることがあれば手直しするから言ってくれ」

「問題ねェな」


 耐久度の回復を終えたそれぞれの専用武器をまじまじと見つめながらムラマサとアラドが感嘆の声を上げていた。


「ああ、それと、防具の修理は出来ないぞ。とはいっても耐久度がヤバい感じなら応急処置程度なら出来ると思うが」

「ん、問題無いよ」


 あっさりと答えたムラマサの近くでアラドが微かに頷いていた。


「で、だ。これからどうする? 俺がしたかったことは二人が来る前に終わらせておいたけど」


 ちらりとテーブルの上に置かれてる料理の数々に視線を送って告げる。

 イベント二日目に俺がしたかったことはスキルポイントの消費と武器の修復だ。もっと長い時間を掛ける必要があると思っていたそれも殊の外早く終わり、余らせた時間で使ってもいいと言われていた食材を使い軽食を作っていたのだ。メニューは自分が持っていたパンを使ってのサンドイッチ。この家の食材を腐らせないようにと考えた時、先に使うべきは野菜だろうと――というか野菜しか備蓄されていなかったのだが――思い作ったというわけだ。

 出来た軽食を摘みながらの相談はムラマサが手を挙げたその瞬間に終わりを迎えた。


「コレの納品だったな」


 おもむろにアラドがストレージから取り出した秘鍵を手の中で転がしながら呟く。

 昨日、ムラマサがしたいと言っていたのはログアウトするまでに手に入れた秘鍵の納品。月の里で戦った二種のモンスターから得た数が自分たちの想定以上になっていたのだ。

 ストレージに入れておけば重さを感じることなく邪魔になることも無いとはいえ、何時までも所持したままでは気持ちが悪いというのがムラマサの意見だった。

 ちなみにこの日もまだ戦い足りないとぼそっと呟いたアラドの一言は華麗にスルーされた。


 サンドイッチを粗方食べ尽し、俺たちは月の里の里長の家を出ることにした。


 がらっと音を立てて戸を横にスライドさせて外に出ると、そこには大勢の堕翼種の人たちが瓦礫や廃材の撤去に勤しんでいる姿があった。

 おそらく日の里の人たちも協力して行っているのだろう。この様子だと月の里もそれ程遠くない日に元の姿に戻ることができるのかもしれない。


「おはようございます。皆さん昨日はよく眠れましたか?」


 声を掛けてきたのはジルバリオでもユサミネでもない別の堕翼種の女性。

 年齢は二十代前半くらいだろうか。

 これまでに接してきた堕翼種に比べると醸し出している雰囲気が何倍も柔らかいように感じられた。


「はい、おかげさまで。えっと…その……」

「私の名前かしら? 私はリーリヤよ」

「オレは――」

「大丈夫。里長様から聞いているわ。貴女がムラマサさんでその隣の貴方がユウさん。後ろに居るのがアラドさんよね?」


 リーリヤが柔和そうな笑みを浮かべて俺たちの名前を確認していく。

 俺たちはそれぞれが名前を呼ばれたのにタイミングを合わせて頷き、合っているとみせた。


「皆さんは月の里の改修ですか?」

「ええ。いつまでもこのまま放っておくことは出来ないもの」


 そう言って額に浮かぶ汗を拭うリーリヤを前に俺は何とも言えない気持ちになってしまう。

 今更何を言ってもどうしようもないし、そうなってしまっても仕方ない状況であったと理解しているのだとしても、この里を破壊した一因は俺たちにある。だからこそ思わず微妙な表情になってしまうのだ。

 せめて作業に手を貸せばと思わなくもないが、多分しないと思う。イベントの途中でもあるし、この光景がゲームだという現実が脳裏に過るその度に、自分を優先させるべきだと考えてしまうからだ。


「貴方がそんな顔をしなくてもいいのよ?」

「え!?」

「建物なんてまた建てればいいのよ。それよりもここに現れた偽神を放っておいたら私たちが全滅していたかもしれないもの。それよ防いでくれた貴方たちに文句を言うような人はこの里にいないわ」


 まるで俺の心情をくみ取ったような台詞を発するリーリヤに驚く俺に、リーリヤは苦笑交じりで、


「それに、貴方たちはまだやることがあるのでしょう?」


 リーリヤが言う俺たちのやることが何を指しているのかは不明だが、その一言で俺の背中が一押しされたのも事実。

 随分と簡単だというやつがいるかもしれないが、その簡単な一言が大きかったのもまた事実なのだ。


「すまない。ありがとう」


 誰にも聞こえないように呟いたつもりが隣に居るムラマサが向けてくる生暖かい視線を受けていることからするとどうやら聞こえてしまっていたらしい。


「貴方たちはこれからどうするのか聞いてもいいかしら?」

「そうですね。ちょっとした用事を済ませてしまおうと思います」

「そう…この里を出て行ってしまうのね?」

「ええ。まずは近くの町に戻ろうかと」

「だとすればサラナの町が近いかしら」

「サラナ…ですか」

「森に近い町で私たちも偶に買い物に行く町なのよ。多種族が暮らす町で賑やかな町よ」


 グラゴニス大陸にある町の一つということからも多種族が暮らすということに関しては珍しくはない。それに加えて賑やかというのも容易に想像ができる。

 しかし、堕翼種のリーリヤが買い物に行って噂にもならないのは何故なのだろう。


「一ついいですか?」

「何かしら?」

「リーリヤさんが買い物に行くときは変装か何かをしているのですか? こう言っては何ですが、オレはこの里に来るまで堕翼種の人を見た事が無かったもので」

「その通りよ。人里に降りる時は変装するのがこの里の慣わしなの。といってもこの翼を隠すくらいでいいとされているのだけどね。まあ、昔は全身に至るまで他の種族に見えるように変装するのが普通だったらしいのだけど、最近はそうでもないわよ」


 俺と同じ疑問を抱いたムラマサの問いにリーリヤが返した答えに納得していると、一瞬俺の方をムラマサが見た、気がした。


「よく解りました。ではオレたちもこの里のことを他の人に話さない方が良いですよね」

「そうねえ。お願いできるかしら。実は私が声を掛けたのだってそれを言うように里長様にお願いされたからなの」

「解りました。ここの事は他言しないと約束します」

「あら? 随分と簡単に受け入れてくれるのね。私は別にそこまで無理強いするつもりはないのよ」

「そうなのですか?」

「私たちは隠れ住んでいるわけじゃないもの。確かに誰彼構わず話されるのは困るけど、仲の良い人たちにくらいは話してくれてもいいわ」

「わ、わかりました。では、あまり言いふらさないようにするとだけ」

「ええ、それで構わないわ」


 元からあまり固く言うつもりがないように見えるリーリヤに反して強固に他言しないと言うムラマサ。二人の態度の温度の差を見るのが思っていたよりも面白い。


「でもいいのですか? 里長さんには秘密にするように言って来いと言われたのでは?」

「大丈夫よ。里長様だって私がこう言うって予想していると思うもの」

「随分と理解しているのですね」

「それはそうよ。だって里長様は私の妹だもの」


「は?」

「えっ!?」


 俺とムラマサの声が重なった。


「え、ええっ! だって年が! それに外見だって! ええっ! ごふんっ、げふんっ」


 声に出して咽て慌てふためいているのはムラマサだ。

 普段の男らしい話し方をする彼女をよく見ている俺からすれば、驚き混乱しているムラマサの声や口調はいつもより随分と女の子っぽく思えた。


「あらあら。驚かせたかしら?」

「え、ええ。それは月の里の里長さんのことですか? それならオレはまだお会いしていないのですが」

「違うわ。日の里の里長のユサミネよ。貴女も会ったでしょう?」

「そ、そうですね」


 多分、今ムラマサはユサミネのことを思い出しているのだろう。

 俺だって信じられない気持ちだ。

 見てみろ。いつも感情をあまり露わにしないアラドも驚愕に目を丸くして固まっているぞ。


「失礼ですが、年齢を聞いてもいいですか?」


 いつもは誰だろうと友人と話すように話す俺も、思わず丁寧な口調になってしまっていた。


「あら? 女性の年を訊ねるなんて野暮よ」

「…すいません」

「まあ、私は別に隠しているわけじゃないしいいのだけどね」

「…はあ」

「それで、私の年齢だったわね」

「はい。失礼ですがユサミネ、さんとリーリヤさんでは随分と見た感じが違うので」


 老婆然としていたユサミネに比べるとリーリヤは異様なほど若々しい。

 ユサミネが姉でリーリヤが妹だと言われたのならば随分と年の離れた姉妹だと言える――それも随分と無理があるような気がする――が、事実は逆だと言う。

 信じられないと思ってしまうのだって無理はないだろう。


「そうでもないわよ。ユサミネとは百も違わないはずだもの」

「へっ!?」

「ひゃく!?」

「あら、その様子だと知らなかったみたいね。堕翼種っていうのは他の種族に比べてもかなり長命種なのよ。寿命っていう点だと一緒なのはエルフくらいかしらね」


 エルフといえば古今東西問わず寿命が長い種族だと言われている。

 それに匹敵するとなれば堕翼種もかなり長命だということだろう。


「いやいやいや、見た目の違いはそれじゃ説明できていませんって」


 咄嗟に詰め寄ったムラマサがリーリヤの肩を掴むと大きく揺らした。


「そうかしら? これまでの会話でヒントがあったと思うのだけど」


 困ったように、それでいて何かを堪える様に笑うリーリヤの表情からはどこかで見たような印象を受けた。それは悪戯が成功した子供のようであり、子をからかう親のようでもあった。


「ちなみに私は嘘は吐いていないわよ」


 ムラマサに揺られながらも俺にウインクしてきたリーリヤの目はその一言が真実であることを物語っていた。


「だったらどうして見た目にそんな違いがあるのさ!」

「あら? 解らないのかしら?」

「解らないよっ!」


 そう問いかけるリーリヤを前に俺は自分の顎に手をやり考え始めた。


「変装、か?」


 ヒントはこれまでの会話の中にあり嘘は無いと言われ考えていた最中に目に入ってきたアラドを見て浮かんだちょっとした思いつきだったのだが、どうやらそれが正解だったようだ。

 悪戯心満載だったリーリヤの表情がみるみるうちにしょげていく。

 何となく申し訳ない気になりはしたものの、それはこの際無視しておくしかない。


「当たりです。これが本来のユサミネの姿よ」


 作務衣のような服の胸元から取り出してきたのは小さな一枚の写真。

 この世界に写真があることにも驚きだが、そこに映し出されている今と変わらない姿のリーリヤとその隣に並ぶ見慣れない子供の姿に驚いた。

 リーリヤの言う通りなのだとすればこの子供こそが俺たちが会ったユサミネのはずだ。


「……子供?」


 もう何度目になる驚愕にいつもの調子を取り戻したらしいムラマサは先程リーリヤを掴んだ時に乱れた服を直しながら写真を覗き込み呟いた。


「この写真はいつ撮ったものなんです?」

「そうねえ、確か二年前かしら。今とそんなに変わってないと思うのだけど」

「確かに…」


 ムラマサが写真とリーリヤを見比べながら頷いている。


「ということはユサミネは本当にこんな感じなのかい?」

「信じられない?」

「まあ、オレたちが見たのは老人の姿をした彼女だからね」


 今もユサミネと聞いて思い浮かぶ姿は写真のそれでは無く記憶の中の老婆だ。


「変装していた理由はオレたちと会うからか?」

「だいたいその通りね。子供の格好じゃ侮る人がいるのも確かだし」

「それで、あの時ユサミネの前にいても俺たちに敵意を向けてきた人が居たのか」

「あー、あの人たちはちょっと違うの」

「違う?」

「なんて言うか、ユサミネを守ろうとする親戚のおじさんみたいな?」

「ああ、同じ里で暮らしているとそんなこともあり得る…のか?」


 納得と疑問が交互に押し寄せて来る。


「オイ。なンでコドモを里長なンかにしたンだ」

「それは私たちが里長を決める方法が関係するのよ」

「どういう意味だ」

「口外しないって約束するなら教えるわよ」

「約束するとも」


 代表して答えたのはムラマサだ。俺とアラドはそれに続いて頷いてみせた。


「私たちの里長を決めるのは個人が保持している魔力量が関係するのよ。それで里長は里の中で最も魔力が高いものが務めるという決まりなの。例外は赤ちゃんだけなんだけどね。ユサミネの場合は生まれたばかりで既に当時の里の中で一番魔力が高かったの。だから成長してそのまま里長の座に就いたってわけ」


 なるほどと得心したと伝えるのと同時に写真をリーリヤへと返す。


「それなら今のユサミネは何歳なんだ? 赤ちゃんから成長するまでって言ってもそんな時間が経っていないように見えるけど」

「どうかしら。私たちの感覚ではそうかもしれないけど、他の種族からすると長い時間が経っているんじゃないかしら」


 疑問符を浮かべ首を傾げる。


「ユサミネが里長になったのは生まれてから九十年が経った時よ」

「つまり今は90歳というわけかい?」

「じゃあ、リーリヤは190歳以上?」

「失礼ね! まだ187歳よ!」


 確かに長命種のようだ。

 リーリヤの年齢は人間では生きれない時間だし、ユサミネだって子供の身なりには似つかわしくない年齢をしている。

 自分たちの感覚でいうとユサミネは変装した姿が実年齢通りという感じだろうか。

 もう一度写真を見せてくれないかと頼み込んで、そこにある二人の姿を見て自分たちの感覚に合わせるならば外見は実年齢の十分の一程度なのだと思えばいい気がした。

 その場合二十代前半と言う見立ては間違っていたとなるわけだが。


「わかったわかった。色々と驚きだったけどな。それで俺たちはそろそろ行こうと思うんだけど」

「あら、そうなの?」

「先を急ぐって訳じゃないけど、俺たちがここにいてもすることがなさそうなんでな」


 いつの間にか軟化していた自分の態度に気付きながらも無視して俺は使った食材のことを伝えた。


「全部使ってもいいって言われてたんじゃなかった?」

「そうなんだけど、この短時間で食べ切るのは無理だよ」

「そりゃそうよ。何たって一週間分くらいは備蓄してあるんだから」


 ということは一週間近く滞在することも可能だったってワケか。まあ、そんなに長いするつもりはないけど。それに一週間も居ては秘鍵争奪戦イベントが終わってしまう。

 それでは困るのだ。


「まあ、出発するって言うのなら止めないわよ。でもその前に渡しておくものがあるの。ついて来てくれるかしら」

「何処に?」

「日の里にある私の家に置いてあるわ。どっちにしても里を出てサラナに行くのなら日の里から向かった方が近いしね」


 日の里について行くことを了承するとリーリヤは近くに居る男の堕翼種に一旦離れると声を掛けた。

 歩き出すリーリヤの後に続き日の里へと進むとそのまま里長の家の前で止まった。


「ユサミネは今は居ないわ。とりあえず取ってくるから待っててくれるかしら」

「ああ」


 家の中へと入って行くリーリヤを見送り、俺は日の里の中を見渡した。

 月の里の修復の為に人が忙しなく活動していた月の里に比べ日の里は静かだった。

 そういっても寂れたという感じは無く、例えるなら住人の多くが仕事に出た後の住宅街みたいなものだろう。

 あまり子供の声が聞こえてこないのは長命種故か。

 泣き喚くのは赤ちゃんの頃だけであり、それも彼らの感覚で言えば正にあっという間になるはず。堕翼種の子供はその僅かな期間の後に精神的な成長をみせるということのようだ。

 落ち着きのある子供が進んで自ら親の手伝いを行うという光景は現実では珍しいが、この里では日常の一コマでしかないのだろう。


「お待たせ」


 ガラッと音を立てて開かれた戸を潜りリーリヤが再び現れた。


「これを三人に渡しておくわ」


 俺たち全員に手渡してきたのは木製の根付。葉っぱのような形をした飾りとそれに繋がっている真っ赤な組み紐。

 どこかの民芸品かと見紛うそれを俺は首を傾げながら見た。


「これは何だい?」

「簡単に言うと私たちの里に来るための通行証みたいなものよ。それがあればここに転送ポータルを使って転移することができるわ」


 説明台詞を口にする彼女はやはりNPCのようだ。


「この里に転送ポータルなんてものがあったのか」

「一方通行なんだけどね。それからこれも渡しておくわ」


 リーリヤが渡してきたもう一つの品は一枚の羊皮紙。

 そこには地図らしきものが描かれている。


「この辺りの地図よ。これがあればサラナに着くまで迷うことは無いと思うわ」


 コンソールにあるマップを使えば迷わないだろうと思ったことは内緒だ。


「それじゃあ、私は月の里に戻ることにするわ」

「ああ。色々とありがとう。ユサミネにもよろしく言っておいてくれ」

「もちろんよ。次に会う時は変装しなくていいって伝えておくわ」


 にこやかに言い切るリーリヤに対して苦笑を返し、去って行く彼女の背中を見送った。


「さて、行くか」


 ようやくかと言うようにアラドが鼻を鳴らして歩き出した。

 俺とムラマサは慌ててその後を追う。

 日の里から一歩外に出ると、そこに広がっていたのは懐かしい一面森の光景だった。


「迷わないっていうのはこういうことなのか」


 リーリヤから渡された地図をストレージに入れないまま持っていた俺がそう呟くと、ムラマサが怪訝そうな視線を向けてきた。


「持ってみればわかるよ」


 と、地図をムラマサに渡す。


「おおっ。これは凄い、これなら確かに迷うことは無さそうだ」


 今頃ムラマサは目にしているのだろう。地図から伸びる赤い光のラインを。その光が向かう先は言わずもがな、サラナの町のはず。

 この地図の仕組みがゲーム的のものなのか、それとも堕翼種である彼女たちの持つ特別な技術なのかは解らないが、コンソールのマップを見て進むよりも確実なのは疑いようがなかった。


 それからムラマサはアラドを呼び止め、地図を渡してその効果を体験させていた。

 地図を持ったアラドを戦闘に迷うことなく最短距離を進む俺たちがサラナの町に着いたのは僅か数分の行進の果て。

 この時ほど肉体的な疲れを知らないキャラクターの体を嬉しく思ったことはない。




長らく続いた【月の里、日の里篇】がやっと終わりました。

章の内容で言えばまだ途中も途中で、一日目が終わり二日目の冒頭なのですが、とりあえず主人公たちの活動の舞台を変えることができてよかったです。


ではここからは小話を一つ。

今回出てきた堕翼種というNPCですが、本作が異世界ファンタジー系だったのならば幾許か掘り下げられそうな脳内設定がありました。

エルフと並ぶ長命種であり、黒い翼を持ち、魔力――本作の場合はMPにあたるのですが――が高い種族ということで、実は原初から世界に存在した種族の一つ、みたいなことを考えていました。

魔力の高い魔人族の始祖のような種族であり、同時に人族の中で魔力が高い人はその血を微かに受け継いでいる的な。


本作は主人公視点の物語であり、主人公が知り得ない情報は中々作中に出しづらいことに加え、ゲーム的には関係ないのでおそらく出てこないとは思いますが。


では、あとがきはこのくらいにして。

おそらく次回が本年最後の更新になると思います。何せ12月29日ですからね。大掃除も佳境ですよ。師走も終わりですよ。


ああ、各時間を多く取れればいいのですけど。

大丈夫、週一の更新は途切れさせるつもりはありませんから。


では、また来週。



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