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Re:スタート ♯.18

お待たせしました。

前回の続きです。

『どうすればいいんですかぁー』


 わんわんと泣く琥珀色のドラゴンの声が大きく響く。

 何故こんなことになっているのかというと、それは俺とアラドの専用武器が既に精霊器になっていることを知ったからに他ならない。

 大きな瞳に大粒の涙を蓄えながら琥珀色のドラゴンがいじける様に浮かんでいた体を地面に下ろし、不貞寝する犬のように丸くなっている。


 弛緩してしまっている空気を再び引き締めることが出来ないまま、俺は停止した時の中で不自然な形で止まってしまっている炎から離れた場所で大きな溜め息を吐いていた。


「おい、どうにかしろよ」


 自分の専用武器だからこそ両手に付けた手甲の防御力を熟知しているアラドは平然と停止した炎に触れながら言った。炎はドラゴ・エスク・マキナの攻撃といえど時間が停止している間は攻撃力を有していないらしく、アラド曰くそれは樹脂か何かで固めて作られたフィギュアのエフェクトパーツのような感触らしい。


「どうにかって言われてもな……」


 困ったと言うように呟く。

 何かいいアイデアは浮かんでいないのかと一時的ではあるが辺りが安全になったことで体を伸ばすように飛び回っているリリィを見るも、案の定サッと視線を外してきた。

 またも溜め息を吐き見るリリィはどれほどダメージは無いのだと言われても炎に触るつもりはないようで、興味の対象自体を体を丸くして寝ころんでいる琥珀色のドラゴンに変えているようだ。


 リリィが琥珀色のドラゴンの頭の上を飛び回る。

 それから、どうしたものかと考えている俺とアラドの視線に気付いたのだろう。琥珀色のドラゴンは若干機嫌が悪そうな感じで、


『何ですかぁ? 精霊器になれない私なんかに用でもあるんですかぁ?』


 随分とやさぐれたことを言うもんだと苦笑しながらも、俺は自分が告げるべき言葉を探した。そうして出てきたのが「精霊器以外には成れないのか」という疑問だった。

 こう言っては何だが、俺にはこの琥珀色のドラゴンが精霊器に拘っているようには見えなかった。精霊器に成るというのはあくまでも手段に過ぎず、目的はその奥に隠されているような印象を受けたのだ。


「そもそもお前の目的なんだ? ドラゴ・エスク・マキナに捕らえられているという状況は脱することが出来たんだ。何かするにしても精霊器になる必要なんて無いと思うんだけどさ」

『知らないんですか?』

「…何が」

『精霊器にならないと私みたいな存在はニンゲンの中では生きること何て出来ないのですよ。それは貴方の大剣にいる精霊も同じはずです』

「そうなのか?」

『はい。実はそうなのですよー』


 琥珀色のドラゴンの言葉を聞いてアラドが大剣から身を乗り出している精霊に問いかけると、精霊はあっけらかんとした物言いで返事をしていた。


『ですから、私は精霊器になりたかったんです。それで外の世界を見たり、美味しいものを食べたり、知らない場所に行ってみたり、美味しいものを食べたり、色んな人を見たり、美味しいものを食べたり、本を読んだり、美味しいものを食べたりしてみたかったんですぅ』


 身を起こした琥珀色のドラゴンが目をウルウルとさせながら言い放った。

 それだけ長い間ドラゴ・エスク・マキナの中に捕らわれていたというのだろう。結晶体の中にいた時のことを覚えているかどうか聞いてみたくなったりもしたが、それよりも琥珀色のドラゴンの目的の中に幾度も出てきた言葉が気になってしまう。


「美味い物を食べたいってのが随分と多い気がするんだけど…」

『気のせいです』

「いや…でも……」

『気のせいです』

「あ、そう。わかったよ」


 いつ止まるかも判らないと思っていた大粒の涙もピタッと止まった琥珀色のドラゴンが俺の顔の前に自身の顔を近づけてきた。

 急なアップで目撃するドラゴンの顔というものは初めて見たのだが、俺には不思議と狼や大型犬のような獰猛さよりも飼い猫が持つ愛らしさが印象として強く残っていた。


『分かればいいんです』


 納得したというように言葉を告げた琥珀色のドラゴンはゆっくりと丸くなって眠る犬のような格好に戻っていった。


「で、いつまでこうしてるつもりなンだ?」

「俺に聞かれても。この時間を止めているのは十中八九あのドラゴンだろうしさ。それに、このまま時間が動き出したとしても俺たちはあの炎に呑まれてしまうと思うんだけど」

「避ければいいンじゃねェか」

「……本気で言ってる?」

「あァ? 冗談に決まってンだろ。あの炎の広がり方を見れば逃げる場所なンて何処にもねェことくらい判ってンだよ」


 ドラゴ・エスク・マキナの吐き出す炎の射線は時間が停まるまで俺とアラドが立っていた場所はおろか、このダンジョンの一室の全てを覆い尽くさんと云わんばかり。

 唯一炎が届いていない場所はドラゴ・エスク・マキナの向こう側なのだが、そこに辿り着くまでには停止している炎を超える必要があった。


 ここで問題となったのは停止している炎は完全な固体となり、俺たちの侵入を防ぐ壁となってしまっていることだった。


 限られた一室の中でドラゴ・エスク・マキナから遠く離れようとすることは出来るだろう。しかしそれは炎が届くタイミングを僅かに遅らせるだけにしか過ぎない。

 加えて言えば離れた場所に立ち戦闘が始まって最初の炎を防いだ時と同じ防御アーツ〈連盾・エアトス・シールド・三式〉を発動させられればどうにかなるかもしれないと希望が残っているかのようにも思えるのだが、現実問題、今の自分の残りHPとMPでは満足な盾を作り出せるとは思えないのだ。


 この停止した時間の中でも〈ブースト・ディフェンダー〉によってHPとMPの自動回復が出来ていればこのまま時間を待つというのも一つの手に成り得るのだろうが、時間の停止は俺の自動回復までも止めてしまっていた。

 アイテムを使っても回復できるかどうか分からない。現状を鑑みるにおそらく使用することは出来るのだろう。しかし効果が現れるのはおそらくこの時間停止が解除された時。それでは襲い来る炎が自分たちを飲み込んでいく速さに勝ることは出来ないはず。


「なあ。お前はさ、この時間停止が解除されたらどうするんだ? 俺たちと一緒に炎に飲み込まれることになるのか?」

『そんな訳ないじゃないですか。私は――って、あれ? どうすればいいんでしょう?』

「考えてなかったのかよ」

『だって、精霊器になれないなんて思ってもみませんでしたし、そもそもあの状況で他に選択肢があったと思いますか!?』

「あー、まあ、無かったかもな」


 俺たちだけの場合、多少のダメージを覚悟すれば炎を突っ切ることは出来ただろう。実際に何の打ち合わせが無くとも俺とアラドは咄嗟の判断でそうしたはずだ。リリィは外着のフードに隠れ、精霊は大剣に、クロスケはガン・ブレイズの中に戻ってくる。そうすることで俺たちは多少のダメージを受けても生き残るはずだった。


 残念ながら俺たちの退路を断ったのは琥珀色のドラゴンが起こしたこの時間停止という現象によると言えるのだ。


「ここで一つ質問なんだけどさ。精霊器になる以外でお前が逃げられそうな方法ってないのか? 最悪の場合、俺とアラドなら負けることはあっても死ぬことは無いだろうからさ」


 死に戻りしたとして再び現れるのはダンジョン内にあるこの一室の前のフロア。

 そこからもう一度ドラゴ・エスク・マキナに挑むのか、それとも諦めて地上を目指すのかはそうなった時に考えればいいこと。


「それならさー。ユウがそのドラゴンをテイムすればいいんじゃないの? クロスケは精霊器になったことだし、今は誰もテイムしてない状態なんだよね?」

「それはそうなんだけどさ。可能なのか? っていうかこのドラゴンはモンスター扱いになるのか?」

「やってみれば解かるんじゃない?」


 精霊器となっているクロスケだってリリィがいたから偶然に俺のテイムモンスターとなったに過ぎない。≪魔物使い(モンスターテイマー)≫スキルを持つ他のプレイヤーのように別のモンスターを従わせようとした経験も無い。俺の中での≪魔物使い≫はあくまでもクロスケと一緒に行動するために必要だったから獲得したに過ぎないのだ。


 もう一つ。≪魔物使い≫スキルで従えさせることが出来るのはモンスターだけ。純粋な犬や鳥などの動物を従わせるには≪動物使い(ビーストテイマー)≫のスキルが必要となるし、アラドの大剣にいるような精霊を従わせようとすればそれ専用の≪精霊使い(エレメントテイマー)≫というスキルが必要となってくる。


 ドラゴンはモンスターである。

 しかし、高レベル帯に存在する炎の体をした龍や氷で出来た体を持つ竜なんかはモンスターの中でも精霊に位置すると聞いたことがある。

 ≪魔物使い≫でもテイムすることは可能らしいが、成功率は限りなく低い。それを僅かでも上昇させるには≪精霊使い≫が必須になるらしい。


 時間を停め、ドラゴ・エスク・マキナというボスモンスターの力の源として捕らえられていたほどのドラゴンは普通のモンスターといえるのだろうか。

 純粋なエネルギー体とまではいわないが、その身に秘めた力は明らかに他のモンスターよりも上だった。


「どうする? 試すか?」


 問答無用で従わせるのは趣味じゃない。

 相手が言葉を理解する以上は本人の意思を確認しておきたいと思ってしまうのが、俺がこれまでに他のモンスターをテイムしようと思わなかった理由でもある。


『それで、外に出ることが出来るようになるのですか?』

「成功すれば、多分な」


 そう言いながら俺は自身の右手にある輝石の腕輪に視線を落とした。

 モンスターをテイムすることに成功した場合、プレイヤーが身に付けているアクセサリの一つをモンスターとの契約の証にする必要がある。クロスケの場合は後に黒翼の指輪になったものがそれに当たる。

 契約とは違うがリリィが俺たちの世界に現れる時に使う扉の役割を持つ精霊の指輪も同様の意味を持つアクセサリだ。


 俺が装備しているアクセサリの中で呪蛇の腕輪は中々にして強い効果を持つアクセサリとして幾度となく強化してきた。今では同じ名前でも最初の頃に比べ耐性を与えることのできる状態異常の種類にが増え、このまま順調にいけば全状態異常耐性に至るのも夢ではなさそうだ。


 そうなると俺が装備しているアクセサリとして特別な効果を持たないのは一つ、輝石の腕輪だけになる。

 これは以前のイベントで配布された四天大陸それぞれに呼応する輝石と呼ばれる石に一つづ自分が選んだ効果を持たせることが出来る輝石が埋め込まれた金属板を腕輪に加工したものだ。

 大事なのは輝石だけで腕輪は飾り。

 だから腕輪として別の意味を持たせることも出来るはず。


 ≪魔物使い≫スキルにある基本能力の一つ『捕獲(テイム)』を目の前の琥珀色のドラゴンに向けて使用する。

 向こうからテイム状態になったクロスケの時には使わなかったその光は俺がこのスキルを習得して長く経つのに初めて目にする光だった。


 琥珀色のドラゴンを覆うように広がる光がその身に馴染もうとゆっくりとドラゴンの体の中に吸い込まれるように薄くなる。


「うおっ」

『あうっ』


 成功した、と思ったその刹那、バチっと大きな音と共に光が弾け同時に俺の右手も大きく弾かれてしまった。


「失敗、か」


 契約の証にするつもりだった輝石の腕輪に傷ついていないことに安堵しながらあからさまに落ち込む素振りを見せた琥珀色のドラゴンに視線を送った。


「何がいけなかったの?」

「なんだろうな。やっぱりドラゴンは精霊扱いなのか、それとも別の要因があるのか」


 考え込む俺の目に珍しくも戸惑うアラドの顔が入った。


「気が付いたことがあるなら教えてくれると助かるんだけど」

「テイムっていうのは相手の力が流れ込んでくるもンなのか?」

「…へ?」

「オマエがコイツをテイムしようとした瞬間、俺にも力が流れ込ンできた」

「アラドにも? もしかして精霊器になるべくして現れたモンスターだから特別だってのか」


 ぶつぶつと呟きながら考えていく俺の頭に一つの可能性が過った。


「アラドっ! アラドは何かアクセサリを装備していないか?」

「あン? 俺が装備してるアクセサリは全部コレだけど」


 そう言って見せてきたのは外着に取り付けられた十個ものバッジ。その一つ一つに強力な効果が備わっているのは傍から見てもわかる。


「その内の一つを契約の証にすることは出来るか?」

「コレなら別に構わねェけどよ」

「よしっ。それがあれば今度こそ」


 外着から取り外したバッジをアラドに握らせ、俺は輝石の腕輪を琥珀色のドラゴンに差し出した。


「おい、もう一回試すぞ」

『でも、また失敗するかもしれませんよ』

「その時はその時だ。ほら、いいからやるぞ」


 無理矢理、前に出させたアラドの腕を左手で掴みながら、輝石の腕輪を付けた右手を琥珀色のドラゴンに向ける。

 そして再び『捕獲』を発動させると今度は正しくその効力を発揮したようだ。


 俺の右手の輝石の腕輪から強制的に外れた四つの輝石が自動的にストレージに収まる。元々輝石が嵌められていた窪みには太陽の光を集約したかのような透明度の高い宝石が同じく四つ。

 簡素なものではあるが四色の輝石の色が栄えるように刻まれた装飾も自動的にそれまでとは違う意匠へと変化していた。


 目を見開いて変化した輝石の腕輪を見ている俺の隣でも同じようにアラドが驚きを露わにしている。

 その手の上に載せられた小さなバッジが俺の輝石の腕輪に新しく嵌められた宝石と同様の輝きを放つモノになったのだ。


◆◇◆◇◆


――条件が達成されました。

 スキル≪マルチ・スタイル≫にアーツ〈ブースト・ハート〉が追加されました。

 スキル≪マルチ・スタイル≫で使用可能強化種数が2から3に変更されました。

 特殊条件達成によりHP、MPが完全回復します。


――条件が達成されました。

 スキル≪手甲術≫にアーツ〈モード・ビースト〉が追加されました。

 特殊条件達成によりHP、MPが完全回復します。


◆◇◆◇◆


 突然脳裏に響く二人分のシステムボイスに驚きつつ俺とアラドの間を行き来する琥珀色のドラゴンがゆっくりと浮かび上がる。


『私に名前を付けてください?』


 口を動かさずに告げてきた琥珀色のドラゴンはまっすぐ俺を見ている。

 俺とアラド、二人が協力することによって『捕獲』することには成功したが≪魔物使い≫のスキルを持っているのは俺一人ということもあって、琥珀色のドラゴンは俺の従魔ということになったらしい。


「俺が決めていいのか?」

「好きにしろ」


 興味がないというように言い棄てたアラドだったがまたしても突然現した精霊がその前に立ち塞がった。


「ンだよ?」

『わたしにも名前を付けて欲しいのですよ』

「は? 別に精霊でいいじゃねェか。これまでも別に問題無かったンだからよ」

『でもでも、わたしだけ名前が無いのは寂しいのですよー』


 実体の無い手でアラドを揺さぶるように掴みかかる精霊はチラチラとリリィとガン・ブレイズの中にいるクロスケを見ていた。おそらくは自分と同じような存在が名前を与えられて、俺にその名を呼ばれていることが羨ましくなったのだろう。


 その気持ちは理解できる。

 名前というのはその個を示す中で最も大事な物だと思うから。


「俺はこのドラゴンに名前を付けるからアラドは精霊に名前を付けてあげるんだな」

「――なッ!?」


 ぽんっとアラドの肩を叩きつつ俺は琥珀色のドラゴンに向き合った。

 動物であれゲームのキャラクターであれ俺が名前を付ける時にはその姿からイメージを取る場合が多い。

 だから今、琥珀色のドラゴンの名前を考えて真っ先に浮かんだのはその体色を示す『コハク』というあまりにもストレートな名前。しかし不思議とそれをこのドラゴンの名前にしようとは思えなかった。

 別の名前をと考えたその時、風も無いのにゆらゆらと揺れる綿毛のような体毛が目に入ってきた。


「フラッフ。それがお前の名前だ」


 優しい声色で告げたその名は目の前の琥珀色のドラゴンを温かい光で包み込んだ。


「私の名前はフラッフ。ありがとうございます、マスター。いい名前ですっ」


 琥珀色のドラゴン改めフラッフの声に若干の変化が現れた。声自体はそれまでと同じだが、届き方というか聞こえ方に違いがあるように感じられるのだ。

 解りやすく言えば電話を通した声と実際に会って話した時の肉声の違いとでもいうべきか。

 先ほどよりも身近に感じられるようになったフラッフがアラドに視線を移した。


「アラドさまは精霊さんにどの様な名前を付けたんですか?」

「さ、さまって……っていうかさ。アラドもマスターなんじゃないのか?」

「いえ。マスターはマスターだけです」

「あ……そう」


 フラッフが言うようにアラドが精霊にどんな名前を付けたのか気になっていた俺は名付けをし終えたらしいアラドの方を見た。


「…ンだよ」

「わたしの名前はノワルになったのですよー」


 名前を得たことでフラッフの時と同じようにノワルの声がより近しく感じられるようになった。


「どうですかー? いい名前だと思いませんかー」

「あ、ああ。そうだな」


 ノワルが見せた予想以上の喜びように反してアラドの耳が赤く染まっていってる気がしたが、それは指摘しない方がいいのだろう。

 このノワルという名前に関しても、多分大剣の色とそこから伸びる手の色が共に黒であることに準えて付けられたであろうことに気付いたが、それはダーク・オウルという種の色からクロスケという名前だったことも考慮して黙っていることにした。


 俺がノワルと短い会話をしている間にフラッフはフードの中から飛び出したリリィと何やら小声で話をしているようだった。

 特別揉めている様子もないからこれはこれで放っておいても問題なさそうだ。


 無事にフラッフとノワルの名付けが終わったことにより、俺はこの停滞した時間の終わりを感じ始めていた。

 いつまでもこのままではいられない。

 何か打開策を講じなければやはりここで敗北する未来を覆すことはできやしないだろう。その為の切り札となるのが先程手に入れた新しい強化なのかもしれない。


 コンソールを操作してその性能を確かめようとした矢先、フラッフの「あっ」という短くも不吉な声を耳にした。


「申し訳ないのですが、限界みたいです」


 その言葉を発端にして停止していた時間が動き出した。

 伝わってくる俺たちを飲み込まんと迫るドラゴ・エスク・マキナが吐き出す炎の熱が、さっきのフラッフの言葉の意味を強引に理解させようとしているかのよう。


「速くさっきのアーツを使ってくださいっ! リリィさんは私の尻尾の中にっ」

「う、うん。わかった」


 焦るリリィがズボッとフラッフのふわふわの尻尾の中に隠れると、そのままフラッフもどこかに姿を消していた。

 フラッフとリリィがどこに消えたのだろうかと考えるよりも早く、俺たちに迫る炎が無情な現実を押し付けてくる。


「アラドッ!」

「わかってンよ!」


 ここまで来てしまえば悩んでいられる時間など無い。


「〈ブースト・ハート〉!」

「〈モード・ビースト〉!」


 獲得した力がどのようなものであるのかも理解しないまま、俺とアラドは瞬時にそれを発動させていた。


 そして次の瞬間。俺の視界を真っ赤な炎が覆い尽くした。



何故だ……何故戦闘が終わらない。

や、その…作者としましてはようやくこの章、というかこの第二シリーズでやりたかったことの取っ掛かりにまでもって行くことができたから進展してはいるのですが。それにしても進行が遅い。


できるだけ早くこの続きを投稿するつもりなので暫しお待ちくださいな。


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