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動く、山 ♯.5

 グラン・リーズの元へ飛来していく大砲の弾は砦の中に無尽蔵とも思わせる量が蓄えられていた。

 木製の樽にはバリスタの矢が束になって置かれ、投石器の弾は、それこそ足元に乱雑に置かれているのだった。


「……当たった」


 この砦にいる誰かが撃ち出した大砲の弾がグラン・リーズの甲羅に命中すると小さな閃光を伴って爆発が起こり、甲羅の表面を焼いた。そう思わせるほどの炎と黒煙が巻き起こったというのにその背にある木々が燃えることはなかった。緑一面の甲羅はそのままで、グラン・リーズにはダメージを受けた様子すらない。

 用意されていた設備の威力が思ったほどでないのか、砦の中にプレイヤーたちの戸惑いの声が響く。


「撃ち続けても意味がない。そう判断するのは尚早かな」

「どうだろうな。アレを見る限りそう思ってしまうのも無理は無さそうだけど」


 自嘲気味なムラマサの一言に俺はグラン・リーズを見つめながらな答えた。

 連続して撃ち出されていく砲弾やバリスタの矢を受けても平然と、というよりもそれらが命中している事すら気付いていないようにグラン・リーズは進む。

 それまでになかったことと言えば一つ。グラン・リーズのHPバーが俺の目には映し出されることは無かったのだ。俺一人の異変だけなのかと焦りを感じたりもしたが、その現象はここに居る皆、少なくともパーティメンバーである三人には見受けられた。

 この意味が何なのかと考える。

 純粋にHPバーが隠されているだけなのか。それとも別の理由があるのか。

 俺が答えに至る前にシシガミからのフレンド通信が入った。


「どうかしたのか?」

『緊急事態だ。他の砦に無数の新種モンスターが押し寄せて来たらしい。そのモンスターの対処に追われこちらの増援に来ることは困難というよりも砦付近から移動することすら難しくなっているようだ』

「こっちも同じことになりうると?」

『グラン・リーズが出現していることも関連しているかどうかは不明だが、モンスターの影は確認されている』

「確認って、シシガミはどこにいるんだ?」

『砦の最上階。そこで指揮をしている。……不本意だがな』


 他の砦にいるプレイヤーから受けた報告とはおそらく炎武のメンバーからなのだろう。だからその分信頼度の高い情報だとも言える。

 となればここにモンスターが押し寄せて来るというのも時間の問題というヤツだ。

 慌てて近くの窓から身を乗り出し、遠くの方へ目を凝らす。

 モンスターの影というのもは確認できなかったが、不自然に草木が揺れ動くのが見えた。それがモンスターが近付いて来ているという証ならば、間違いなくそれは目の前まで迫っている。


「俺たちはどうしたらしい?」

『何故俺に聞く?』

「なぜって、シシガミがここの指揮をしているんだろう」

『炎武の関係者だけだ。他のプレイヤーのことは知らん』

「それなら俺たちも炎武の関係者ってやつだろ。シシガミの知り合いなんだからな」

『ならば迫り来るモンスターの対応に当たってくれないか』

「グラン・リーズはいいのか?」

『設備も足りてはおらぬし、それもどこまで効果があるのかまだ不明だ。それならばユウ達には新種のモンスターを倒して貰った方がいいと判断したまでだ』

「解った。何かあったら教えてくれ」


 シシガミとのフレンド通信が切れた。

 そして通話中からずっと睨みつけていた窓の外に見えるモンスターの影というものがついに姿を現した。

 動く木。ツリーウォークと呼ばれる種類のモンスターが蠢き近付いて来ているのだ。新種というのはそのツリーウォークの体が微かに赤みを帯びているのが見えたからこそ気付いたことなのだろう。

 ここからではまだ新種のツリーウォークの全貌を確認することができないことからその正式な名を知ることは出来ない。

 だが確実にこちらに攻撃を仕掛けてくると分かってる以上、戦う以外の選択肢は残されてなかった。


「シシガミから指示があったのだね」

「気付いていたのか」


 シシガミが指揮を執り始めたということを予め知っていたかのようにムラマサが俺に問いかけてくる。


「そうなるとは思っていたよ。あの言い争いを止めるように頼んだ時からね」


 肩を竦めるムラマサは自分の思い通りに事が進んでしまったことを申し訳なさそうにしていた。


「それで、オレたちは何をするんだい?」

「向かってきているモンスターの対処だ」

「え? それじゃグラン・リーズは無視するんですか?」

「……なんで戦わないの?」


 ヒカルとセッカの驚きは当然だろう。

 このイベント最大目標はグラン・リーズの討伐。それもすべての大陸で同種のモンスターの討伐速度を競っているのならば、近くにいるプレイヤーはそれに全力で当たるべき。

 しかしこれがグラン・リーズとの最初の接近であり戦闘だ。

 用意されている設備もどこまで有効なのか、プレイヤーの攻撃は何が適当なのか確実なことは何も分かっていない。

 どのようにすればこちらの攻撃でダメージを効果的に与えることができるのかを知るための、言ってしまえばここの戦闘は試金石なのだ。

 効果的な攻撃を探すという目的も含まれているのならばこちらが繰り出せる攻撃のパターンは多ければ多いほどいいはず。とはいえプレイヤーが繰り出せる攻撃の種類には細かな違いは数多くあれど基本的な違いにはそれほどの数は無い。

 斬撃か打撃、射撃か魔法。

 属性を無視するのならば基本的にはこの四つに分類される。

 四種類ならば俺たちがいなくても試すことは出来るはずだ。

 これから先の戦闘を有利に進めるためにも有効手段を見つけることは急務となるが迫り来るツリーウォークに対処するのも大切なこと。

 ヒカルとセッカの二人に俺の考えを含めた一通りの説明をすると納得してくれたようだ。


「……でも私たちだけでツリーウォークってのはどうにかできるの?」

「大丈夫。オレたちだけが戦うわけじゃないはずさ。そうなんだろ?」

「多分な。いくらシシガミでも俺たちだけに戦わせたりはしないはずだ。というかシシガミの奴は自分が戦いたいんじゃないのか? 指揮をすることも嫌々って感じだったからな」

「ああ、そういえばそんな感じでしたね」

「それに、この砦の大きさを考えると一つのパーティで対処するのはどう考えても現実的じゃない。ギリギリのラインを保つにしてもだ、少なくとも十組以上のパーティは必要になるんじゃないか」


 近付いてくるツリーウォークの数を正確には掴みきれていないがその数がこれまでにあった複数との戦闘の比ではないことは容易に想像がついた。

 俺たちだけで戦いに出向いたのならばあまりにも多勢に無勢。確実に敗北してしまうことだろう。


「それじゃ行こうか。向こうも待つつもりなんて無いのだろうからね」


 連続して大砲やバリスタを撃ち出すプレイヤーとその弾を運んでいるプレイヤーのなかを突っ切り俺たちは砦の外へと出た。

 僅か十数分前までの穏やかな雰囲気はどこに行ったのか、視界にはモンスターの接近を告げる警告が止めどなく映り込んでくる。


「これは邪魔だね」

「……ちょっと戦い難い」

「動き辛いです」


 三者三様に視界の警告が煩わしいと口に出した。

 俺も手でそれを払おうとしてもできず、これを視界に入れたまま戦わなければならないとかと諦めようとした時、ふとそれが止まったのだった。


「あれ? 消えましたよ」


 戦いやすい場所を探して砦から離れようとしたことが良かったらしい。

 どうやらあの警告はプレイヤーにモンスターが接近していることを告げるものでは無く、砦にモンスターが接近しているということを伝えるためのものだったようだ。

 そしてそれは砦の外にいるプレイヤーにだけ適応される。

 意味合いとしては砦から離れてしまい砦自体を無防備に晒すことが無いようにということだろうか。


「ここならば戦いやすいね」


 俺たちが立ち止まったのは街道から外れた場所にある広い草原。ここは本来ならば初心者を脱却した中級者が自身のレベル上げや装備強化のための素材を集めたりする場所だ。

 グラン・リーズが近付いているからなのだろうか。平時ならばいるはずのモンスター群が軒並み姿を消している。


「最初はどう動きます?」

「相手の特徴すら判明していないんだ。まずはいつもの感じで戦う方がベストだろうね。それで有効な攻撃を見つけられたらそれを中心にした戦い方にシフトしていく」

「……回復は私に」

「いや、今はまだ所持しているアイテムを中心にしよう。もしセッカの攻撃が有効だと判明すればセッカには攻撃の要になってもらう必要があるのだからね」

「……ん。わかった」

「それじゃ私は使える状態異常攻撃を色々試してみますね」

「頼んだ」

「ユウは銃撃メインで。オレたちの中で遠距離系の武器を使えるのはユウだけなんだからね」

「解っているさ。ムラマサこそ属性の弱点を探ってくれよ」

「勿論さ」


 一通りの打ち合わせを終えると、草原に森が押し寄せてきた。

 正確には森と見紛うほどのツリーウォークの群れ。

 剣銃の銃口を向けようにも群れのどこに個体がいるのか遠目からでは判別し辛い。


「囲まれます!」

「解っているさ。先制はオレに任せてくれ」


 ムラマサが咄嗟に刀でいつもの構えを取る。


「燃やせ≪カガリビ≫!」


 刀身に熱が宿るとその刹那、横薙ぎに振り抜く。

 すると迫り来るツリーウォークの先頭が軒並み火に包まれた。


「やはり木は火に弱いってことなのかな」

「……そうでもないみたい」


 満足そうにそう呟くムラマサを嘲笑うかのようにツリーウォークの進行は止まらない。


「何というか、燃えたままの木のモンスターが襲ってくるというのも変な感じがします」


 複雑そうな表情を作るヒカルの言う通り、ムラマサのアーツ≪カガリビ≫を受けたツリーウォークはその体ともいえる幹と葉に火を灯しながらも平然としている。

 相手は木だから痛点は無い。そんなことだけでは説明しきれないような光景が目の前に広がっているのだ。


「あれがあのツリーウォーク『リーズ・ウォーク』の特性なのかもな」


 炎を纏いながらも接近してくるツリーウォークの全貌がようやく露わになった。

 剣銃を構えるといつものようにその上に名称とHPバーが浮かび上がる。名称は後でゆっくりと歩を進めるグラン・リーズに由来してか『リーズ・ウォーク』。幸いにもHPバーは一本のみであれらがボスモンスターではないことを表していた。


「……特性って火耐性みたいな?」

「グラン・リーズが大砲の弾を受けて平然としているのを見て気付くべきだったということだね」

「だな。あの調子じゃ他の属性もどこまで効果があるのか分かったもんじゃないな」

「木という見た目で判断するなら最も効果がありそうなのが火だったからね。もしかすると水の方が効果があるのかもしれないけれど」

「普通ならツリーウォーク系のHPを回復させてしまうんですよね」

「ああ。その通りさ」


 ツリーウォークなどのモンスター種には偶に弱点属性とはもう一つ、吸収属性というものが備わっているものがある。

 吸収は耐性に比べると格段に相手にはし難く、運が悪ければ攻撃側の攻撃が全て相手のHPを回復させてしまうということになりかねないというものだった。

 その為にプレイヤーには一つの属性を極めるということに対する危険性というものが生まれ、結果として水と氷や火と熱など類似していても別種の属性の攻撃手段を持つことが中級以上のプレイヤーには必須事項となってしまっていた。

 何よりもその必須事項はパーティを組めば何とかなるというものではなく、あくまで個人で用意すべき最低条件という認識が広まってしまったことが戦闘に不得手なプレイヤーには不評だったが、後にサブ武器と呼ばれる専用武器以外の武器を用いた戦闘方法が広まることで不評の声は幾分か収まりを迎えた。

 何よりそれまで強化と耐久度の復旧しか表立った役割を持てなかった武器の鍛冶職プレイヤーにある一定の需要が生まれたことも戦闘が苦手という部類に入る生産職プレイヤーの不満を減らす要因になったことは確かだった。


「水を使うのは最後。あくまでも他の属性を試してみてからってことでいいだろ」

「うん。その方がいいだろうね。それとヒカルの状態異常攻撃だけど」

「相手が植物型ですから使用する順番も考える、ですよね?」

「ああ。中でも植物系が頻繁に使ってくる毒と睡眠の使用には気を付けろ。最悪こっちの攻撃を発端に向こうの状態異常攻撃が来ないとも限らない」

「わかってますって。これでも結構長い期間、状態異常攻撃を使う練習はしているんですから、いろんな特性は覚えていますよ」

「……私もついているから大丈夫」

「セッカちゃんは最近状態異常回復の魔法をたくさん覚えたんだよね」

「……ヒカルちゃんと一緒にいると覚えた方が安全だから」

「何かそれ違う意味に聞こえるんだけど」

「……気のせい」


 ゆらりゆらりと燃え盛るリーズ・ウォークが目前に迫る。

 熱がこちらまで届きそうな距離まで近づかれたその時、俺は剣銃の引き金を引いた。

 アーツを発動させずに撃ち出した弾丸は炎に遮られることなく命中する。たった一度の銃撃によるダメージとは思えないくらいにリーズ・ウォークのHPが減った。

 あれほどの数が相手でもどうにかなりそうだという光明が見つけられたというようにヒカルが喜んでみせる。

 しかしムラマサは険しい顔つきのまま刀を振るい続けるのだった。


「これなら意外と簡単かもしれませんね」

「だといいのだけどね」

「何か気になることがあるのか?」

「このイベントはまだ始まったばかりだということさ」


 ムラマサの言葉の通りにリーズ・ウォークの群れは途絶えることなく押し寄せてくる。

 この時既に飛来していく大砲の弾とバリスタの矢がグラン・リーズに命中するたびに聞こえてくる轟音が不吉な音に聞こえ始めていたのは言うまでもない。

 ムラマサの不安が的中したのはグラン・リーズが突如咆哮を上げた時。

 それまでただ歩いていただけのそれが立ち止まったのはプレイヤーが撃ち出している大砲やバリスタの効果が現れたからではない。そう気付いた時には遅かった。

 グラン・リーズの口から放たれた超高温の熱戦が砦の一角を溶かし、同時に石で覆われている砦の表面までも融解させてしまったのだ。

 砦から離れリーズ・ウォークと戦っていたプレイヤーはまだいい。

 問題は砦に残って大砲やバリスタを撃ち続けていたプレイヤーの方だった。

 表面を溶かしたことはそのまま近くにあった大砲等の設備までも破壊したのは言うまでもないことだろう。しかし同時にそこに居た数十人のプレイヤーまでもが熱線を浴びこの戦線から離脱を余儀なくされたのだ。


「被害状況はどうなっている!?」


 砦から離れた場所にいる俺の耳にもシシガミの声が届く。

 そして誰のものと判明すらしない悲鳴も絶えず聞こえてくるのだった。


「そんな――」

「……私たちもあそこに居たら」


 呆然と立ち尽くすヒカルとセッカの気持ちは痛いほどわかる。

 決して親しくはないにしろあの場所にいたプレイヤーは先程まで同じ場所にいたプレイヤーたちなのだ。HP0がそのままゲームオーバーにならないことは十分に理解しているがキャラクターが死亡して受けるデスペナルティというものがこれ以上のイベントの前線参加を許さないものにしてしまうことは明らか。

 大砲やバリスタを撃つという役割につくことが可能だとすればまだいいが、デスペナルティを受けたプレイヤーが攻撃して十分な効果を発揮できるかどうかという不安材料は残ってしまう。

 あまりにも早すぎる退場劇に理不尽過ぎる威力のブレスを吐き出したグラン・リーズというモンスターを睨みつけていた。


「一度砦に戻るかい?」

「……戻っても出来ることはない、と思う」

「しかし……」

「大丈夫です。私たちはここでリーズ・ウォークの侵入を阻まなければならないんですから」

「そうかい」

「砦にはシシガミがいる。アイツなら何とか立て直してくれるはずだ」


 先程声が聞こえていたのだからシシガミは無事なのだろう。ならば後はシシガミの巨大戦闘ギルドのギルドマスターとしての腕に期待するしかない。

 俺が残っていても出来なかったであろうことだ。

 そういう意味では俺たちをこの場所へと向かわせたシシガミの判断は的確だったということだ。


「向かって来ているモンスターがリーズ・ウォークだけという保証も無いんだ。俺たちはここで出来る限りリーズ・ウォークの数を減らしておこう」

「はい」

「……わかった」

「了解!」


 グラン・リーズのブレスによって中断させられていたリーズ・ウォークへの攻撃を再開した。

 それから十数体のリーズ・ウォーク討伐して判明したことはあれらの弱点となる属性は無く、吸収属性は火だけだということ。効果のあった状態異常は麻痺が一番で次いで腐食。

 リーズ・ウォーク自体のステータスを想像するに抜きん出て高い項目は無く、ATKもDEFも並。SPEEDが若干低く、MINDが微かに高い。INTは相手が魔法を使って攻撃してこなかったことからも検証できなかった。

 総じてプレイヤーが取る戦い方としては威力の高い攻撃での純粋な力押しが最も効果的だった。

 俺のアーツ未使用の剣形態の剣銃での攻撃で五回程度クリーンヒットさせるだけでHPを全損させられることからもリーズ・ウォーク自体の戦闘力は大して高くないようだ。

 問題となるのは群れで襲ってくることだけ。

 それもパーティで互いの隙を潰しながら戦うことで対処しきることが可能となった。


「どうやら砲撃が再開されたようだね」


 俺と背中を合わせて周囲を警戒しているムラマサが呟く。

 途切れ途切れながらも聞こえ始める爆発音は確実にグラン・リーズがいる方向から聞こえてきているのだ


「砦の修復は出来ていないみたいだから、残っていた設備を集結させたってことか」

「攻撃をするにはそれでいいはずだが」

「また同じブレスを吐かれれば今度こそこの砦は堕ちるって言いたいんだろ」

「まあね」

「シシガミも何も考えずに攻撃しているわけじゃないだろ。それに砦はまだ四つ残されているんだ。ここが駄目でも次があるさ。元々一つの砦だけで戦闘が終わるとは運営側も思ってはいないはずだからな」


 ここに来てようやくこのイベントの全貌が見え始めた。

 各大陸に設置された五つの巨大砦。

 砦が置かれている街道を侵攻する巨大モンスター『四皇』

 討伐までの順位争いと、予め知らされた失敗条件。

 それらが意味することは。


「砦の数はそのままイベント失敗までのカウントダウンってことだ」


 淡々と告げる。

 より明確になった敗北までの道筋を歩みたくはない、そう思っていても現状は明らかにプレイヤー側が劣勢だ。

 そういう意味では先ほどのブレス攻撃がもたらした被害よりも進路上にあるヴォルフ大陸最北端の砦が無視されたという事実の方が俺たちにとってより痛手となる。

 期せずして俺たちの敗北までの時計の針が一つ進められてしまったのだから。



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