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キソウチカラ ♯.18

 モーレイの様子に戸惑いを覚えたのはヒカルやセッカだけではなかった。

 むしろその意味を知っているスキッドの方が顕著だっただろう。

 自分の目に映るHPバー。

 そして、その下に追加された一つのアイコン。その正体はこれまでのゲームプレイから知っているものだった。

 麻痺。

 モンスターとの戦闘ですら確実に致命的な隙を生み出してしまうそれがモーレイのHPバーの下で自己主張するかのように点滅し続けているのだ。


(だから言ったんだ。あのアイテムを使うのは止めておけって)


 声に出さなかったのはせめてもの抵抗だった。

 誰に対する抵抗なのか。そう問われると真っ先に浮かぶのが戦っているヒカルとセッカの存在、次に膝をついているモーレイを責めたくなる衝動を堪えている自分。

 これがモンスターとの戦闘で会ったのならば即座に逃走を測り、安全になった場所でモーレイに文句の十や二十を言っていたはずだ。

 しかし今は戦闘中。

 それも自分の攻撃が予想外の効果をもたらして戸惑っている相手の真ん前。

 スキッドは膝をつくモーレイの手を掴み強引に立ち上がらせるだけで精一杯だった。


「……助かる」

「動けそうか?」

「もうしばらくはムリだ。けど、そうも言っていられないんだろ」

「そうだな。ビスマギアのあの声を聴いたらここで負けてなんかいられないさ」


 弱々しくも長剣を構えるモーレイを見てスキッドはその指に光る小さな宝石のついた指輪を苦々しく見つめている。

 暗く、蠱惑的に輝く宝石が施された指輪アイテム。

 それは一般的なショップに出回っているものではない。自分たちの冒険に出て手に入れる類の、いわゆるドロップアイテムと呼ばれるものだった。

 モーレイが付けているのはその中でも呪われた(カースド)アイテムと総称される、特殊なものだった。

 性能だけで言えばかなり高レベルな生産職プレイヤーが作り上げたアイテムに引けをとらない。ある一点だけを鑑みなければ凌駕しているとすら思えるもの。だが、その一点が何よりも重要なポイントとなっているが故に使用しているプレイヤーの数は限られているのだった。

 ある一点。それは自身になんらかの悪影響を及ぼすということ。

 あるものは装備者のパラメータのいくつかを初期値近くまで減少させるらしい。

 またあるものは装備者に回復不可の状態異常を与えるらしい。

 そういった効果が現れるのはその反動ともいえるプラスの効果があるからだ。

 異常なほど攻撃力を高めたり、異常なほど頑丈にしたりと。

 プラスの効果のすべてが異常なほどであるがゆえにマイナスの効果にも納得がいく、というのが通説となっていた。

 モーレイの所持しているものはその通説からすればマイナスの効果が軽いものだった。

 与えられるプラスの効果も自身のスピードアップという一般的なものでそれも高レベルプレイヤーが作ったアイテムに比べてもそんなに見劣りしないというレベルでしかなく、だからこそマイナスの効果もさほど問題視する必要がないと判断したのだった。

 モーレイに降りかかったマイナスの効果。それは状態異常に対する耐性を皆無にするということ。モンスターとの戦闘では使うわけにはいかないそれもプレイヤーとの戦闘ならばさほど問題がないはずだった。

 何故ならPVPという舞台に限ればプレイヤーは飛躍的に状態異常になる確率が低くなるのが常だったから。

 常であるからこそ、それを行ってくるプレイヤーがいるとは思えなかったのだ。

 ヒカルからしても状態異常の付与に100パーセント成功するとは思っていなかった。少しでも牽制できればいい、そのくらいにしか捉えてなかったのだ。たとえ自身の最大の攻撃でもあり最近の基本的な戦闘スタイルだとしても。

 だから攻撃を仕掛けていたヒカルも一瞬戸惑った。

 そのせいでモーレイとスキッドが合流する時間を与えてしまっていたとしても。


「……いけそう?」

「大丈夫。私たちなら勝てるよ」


 ヒカルの隣に来たセッカはこの戦いで自分の役目を援護ではなくヒカルと共に戦うことにあるのだと思うことにした。

 ユウもムラマサも多分、一人で勝つことができる。だからこそ一人で二人のプレイヤーと戦うヒカルの隣に並び自分も戦うことを選んだのだった。


「行くよ」

「……うん!」


 フルプレートメイルのセッカがメイスを構え走る速度は軽い防具しか纏っていないヒカルよりも遅い。そのためにたった二人の陣形は半ば自然と縦に並ぶ形となった。

 横に広がるモーレイとスキッドの二人とは対照的に見える。

 同時に攻撃を加えるモーレイとスキッド、二の矢となって多段攻撃を仕掛けるヒカルとセッカ。

 二つのペアによる攻防は次第に過激さを増していった。

 中でも際立っているのはヒカルの攻撃を自ら盾となって受けようとしているスキッドの存在。

 その理由が呪われしアイテムであることを知らないヒカルはこの異様なとしか思えない光景に戸惑いを感じてた。けれど攻撃の手を休めず、動きに精彩を失わないのはその後ろにセッカという頼もしき存在がいることを感じているからだ。


「ぼくのことはいいからスキッドは後ろのあの子を」

「だめだっ。役割分担するなら後ろの子はモーレイがするべきだ」


 器用にも言い争いながら戦うモーレイとスキッドは徐々に集中力を損ない始めた。

 戦闘が思い通りにいかないことなど珍しいことではなくてもその根本たる要因が自分にあれば自然とそれを挽回しようとして無理が出てくる。

 その状況が今であり、現実が襲い掛かってきているのだ。

 無論、戦闘真っただ中のヒカルとセッカにとっては二人が逡巡している時間などは鑑みる必要性は皆無であり、言い争いの中で生まれる隙は攻撃を加える絶好のチャンスでしかない。

 これまでヒカルの後ろに控えていたセッカが走る速度を上げてその隣に並んだ。

 突如スキッドの目の前まで迫っていったセッカは躊躇う気配すらなく、その十字のメイスを振り抜いていた。

 ガンッという音が響き、スキッドが床に倒れ込む。

 セッカの視界に映るスキッドのHPバーは三割ほど減少しているが戦闘という目的を果たすのには何の支障もないはずだ。それでもなお直ぐに立ち上がろうとはしないで目眩を治そうとしているように目頭を押さえているのはセッカの放った一撃がスキッドにクリーンヒットし軽いスタンに似た症状を併発させたからだった。


「スキッド!?」


 いきなりセッカの一撃を喰らい膝をつく相方を心配して足を止めたのが悪手となった。モーレイの無防備となった背中にヒカルの短剣の斬撃がさく裂する。

 ヒカルがこの戦闘で常時発動させている≪パラライズ・エッジ≫というアーツはその名の通り麻痺を付与する効果がある。しかしその効果が及ぶ範囲は使用者のレベルと攻撃を当てた対象の抵抗力に影響を受ける。基本的にはモンスター、それもレベルの低い雑魚モンスターほど効果が現れやすく、反面にボスモンスターには効きにくい。中でもプレイヤーという存在に対してが一番効果が現れにくいとされている。

 それはヒカルもこの獣闘祭に臨む際に行った特訓で十分すぎるほどに理解していた。

 だからこそヒカルにはこうしてモーレイに強力な麻痺が現れるのが不思議でならなかった。理由が呪われたアイテムであることを知らないのだから仕方がないのだが。


「あぐっ……あっ……」


 一度目よりも大きい傷が刻まれたからだろうか。先程よりも麻痺の影響が強く出ている。


「……こっちは任せて」


 淡々と告げたセッカがよろよろと起き上がり長剣を構えようとするスキッドに再びメイスを叩き込んだ。

 この時メイスの先が仄かに光っていたのは後衛として援護用の魔法に特化しようと決める前に覚えていた≪片手槌≫スキルにあるアーツのライトエフェクトだろう。

 初撃よりも威力の増した二撃目はスキッドの残HPを大きく削り、続けて繰り出された三撃目が僅かに残っていたHPを奪い取った。

 ヒカルが麻痺を受けて動けないモーレイの目の前で消えたスキッドの残滓を眺めていると、モーレイのその目から静かに戦意というものが消えていったのだった。


「私たちの勝ちですね」


 すでに決まったことを確認するかのようなヒカルの言葉にモーレイは静かに頷くことしかできなかった。





 時間はちょっとだけ巻き戻る。

 ユウと戦っているプレイヤーが声を上げ、それに呼応するようにラウンチとモーレイとスキッドが叫んでいた。


「ほう、やる気が戻ったみたいだな」


 感嘆して声を出すムラマサにラウンチが挑戦的な眼差しを向けてくる。


「当然だ。おれはまだ負けるわけにはいかないのだからな」


 おれたちではなく、おれ、か。

 ムラマサはラウンチの僅かな変化を敏感に感じ取っていた。

 一人ではムラマサに敵わないかもしれない、だから確実に勝つ為にも仲間を待つことにした。それはある意味正しい選択だったのだろう。パーティ同士で戦っているのだからこそ選べる選択肢だ。けどそれは自分一人が劣勢で仲間は優勢の時にしかできない選択でもあった。

 つまり現状選ぶことのできない選択肢。

 何かにすがるように、それこそ仲間に助けを求めているのだということははっきりと頭では理解していない、おそらく無意識のことだったのだろう。

 しかしだからこそこうして自分一人でも戦うと意識を切り替えたことは称賛に値する。

 この短時間で自身の弱気を打ち砕いたのだとすれば今ムラマサの前にいるラウンチは別人だと捉えるべきだ。


「行くぞォ!」


 先んじて動き出したのはラウンチだった。

 今度の一撃はウォーアックスにしっかりと体重が乗せらているようで迫力がそれまでとは違っていた。


「これは……さっきよりも当たるわけにはいかないね」


 ラウンチにはムラマサが飄々と軽口を叩いているように聞こえたみたいで、見て解るほど顔を赤くしているが、その実ムラマサの言葉に偽りは何一つ含まれていなかった。

 当たると軽いダメージでは済まされない。

 それが今のラウンチが振るうウォーアックスを見てムラマサが抱いた感想だった。

 飄々として見えるのは自分の感情を相手に悟らせないようにしているせい。とは言え余裕が全くないかと問われれば答えは、否、なのだが。


「クッ……何故、こうも当たらないっ」


 最初こそその勢いは目を見張るものがあったが、ムラマサに回避され続け、ウォーアックスが空を切ること十数回。次第に疲労が現れ始めてきた。

 ゲームに疲労も何もと言うかもしれないが、VRゲームの利点なのか欠点なのか、脳が体を動かしていると認識している以上、疲労という名の結果は常に付きまとってくる。実際の肉体が疲労したわけではなく、あくまでも精神的なものでしかなくとも、戦闘という非日常の行為の中、真剣になればなるほどそれを現実ではないと切り離して考えることは難しくなってしまう。

 結果として、激しく動けば息が切れ、また休めば動けるようになるという現実そのままの不文律が存在しているのだった。


(そろそろか……)


 ムラマサがウォーアックスを刀で受け流さずに敢えて回避し続けるという戦法を選んだのには理由があった。

 額に汗を滲ませ、息を荒くするラウンチは徐々にその動きに精彩を欠き始めていた。

 ムラマサ自身その理由としてはいくつか思い当たることがあるのだが、その中でも最たるものがラウンチの使うウォーアックスの自重に腕が耐えきれなくなってきているということだろう。

 本来重い斧や槌系の武器は連続して振るうことよりもその一撃の威力を重視して作られる。戦斧となった斧であってもそれは変わらない。そして、このゲームで一撃の威力を高める最も簡単かつ効果的な方法はその重量を増すことだった。

 振り下ろすにしても振り回すにしても武器そのものにそれなりの重さがあれば自然と勢いは増す。遠心力や重力を味方につけるというのが武器を自由自在に操れるようになるための第一歩なのだとムラマサは以前共に野良パーティを組んだハンマー使いが言っていたことを思い出していた。

 だがそれは当然デメリットも存在する強化方法なのだと言っていたのは自分の刀を打ち直して貰ったユウだ。

 重ければ重いほど筋力値――このゲームの場合はATKとDEXに分類される――が必要となり、細かい攻撃が行いにくくなるのだとも。

 当然高レベルのプレイヤーになればその問題はレベルアップや装備品の恩恵でパラメータを伸ばすことで解消できるらしいが、自分の力量以上の武器を持つとその武器に振り回されるのだとため息交じりに話してくれたことがある。

 鍛冶に詳しくないムラマサから見てもラウンチの振るうウォーアックスはラウンチ自身のレベルに釣り合わないということはないようだが、かといって完璧に操りきれているわけでもない。武器に使われることは無くとも使いこなせていない。そんな印象は最初に対峙した時から感じていた。

 短い戦闘時間のなかでこのことを生かす場面になるとは思っていなかったムラマサも、気合を入れ直したラウンチを見てしまえば、敢えてこの弱点とも言える箇所を攻めることにしたのだった。


(ここで負けても、次には繋がるはず)


 言葉に出さなかったのはおせっかいだと言われかねないと思って自重したに過ぎない。

 実際声に出していればラウンチの反感を買ったかもしれないが、幸い今は胸の中で呟いただけだ。

 そもそも戦闘で相手の弱点を攻めるということ自体普通の事のはずでも、あえてそれを戦いの中で教え、修正させようなんてことはよく見知った仲間内での練習ですることだ。

 このような舞台で、まして初対面の戦闘相手がすることではない。それでも思わずそうしてしまっているのはラウンチという人物が今回の騒動に関係無く、純粋にこのイベントに参加してきたプレイヤーだったからかもしれない。

 それに、戦いの中で僅かながらも精神的な成長を見せるラウンチにはムラマサは好感を抱いたからだ。


「そんなっ……ビスマギアがやられた……だと」


 ムラマサが回避に徹していたおかげでラウンチは自分たちとちょうど反対側にいるユウと彼と戦っているハルバードを持つプレイヤー、ビスマギアの姿を見ることができた。

 しかしながら残念なことにラウンチが目撃したのは銃形態となっているユウの剣銃から絶え間なく光の弾丸が撃ち出され、その内の一発がビスマギアの体を貫きHPを全損させている場面だった。

 信じられないというように口を開けたまま慌てて自分の後方、モーレイとスキッドがヒカルとセッカと戦っている方を見た。

 そこにはよろめきながら立ち上がったスキッドをセッカのメイスが打ち抜く姿が見えた。更にはその近くでモーレイがどういうわけかHPを半分以上残しているにもかかわらず戦意が消えてしまったのように両手を上げている。

 慌ててパーティメンバーにHPバーが並ぶ視界の左上を見ると、モーレイのHPバーの下に見慣れないアイコンが表示されているのが分かった。

 戦闘職である以上見慣れていないだけでラウンチはそのアイコンが示すものが何なのか理解している。


「麻痺、それも強麻痺、だと!」


 どうしてプレイヤーにプレイヤーが使う麻痺が効くのか?

 そうモーレイに問い詰めたくなる衝動を抑え、もう一度自分たちの現状を冷静に分析することにした。

 自分たちの側で生き残っているのは自分と強麻痺を受けたモーレイだけ。それに反して相手はまだ全員が生き残っている。

 無論無傷ではないが、それでも人数差を考えるとあまり気にしなくてもいい程度のダメージしか受けてないともいえる。


「一つ、聞いてもいいか」

「なんだい?」

「あなた方のパーティはあなただけが特出して強いのか?」


 そんなわけない。そう知りつつもラウンチは問いかけずにはいられなかった。

 自分たちが勝ち上がる可能性は残すところその一点だけ。

 自分たちが弱かったとは思わない。

 自分たちの準備が足りなかったとも思わない。

 ただ、相手の方が強かっただけ。

 そんな現実を受け入れることができずに口からでた言葉はムラマサが醸し出す穏やかな空気が否定していた。


「いや。オレたちのパーティはそれぞれ出来ることは違っても皆同じくらい強いよ」


 正確には強くなったのだと胸の中だけで付け加える。

 そうすれば誰が一番戦闘に長けているのか、これから戦う他のプレイヤーに隠すことができるはずだ。


「そうか……」


 目を閉じラウンチは持っているウォーアックスの切っ先を地面に付けた。


「この試合おれたちの負けなのは認める。だけど最後におれと全力で打ち合ってくれないか? 今の自分たちがどのあたりにいるのか感じてみたいんだ」


 勝ち上がることが目的で、その為には自分の手の内は出来るだけ晒さない方がいい。それを知るからこそ荒唐無稽な頼みをしているという自覚はある。

 けれど、このままではこの戦闘に納得が出来そうもないのも事実だった。

 コテンパンに負けたとしても、相手の実力の一端すら引き出せなかった。そう感じているラウンチは懇願するかのような眼差しをムラマサに向けていた。


「わかった」

「えっ!?」


 刀を鞘に納めながら告げられたムラマサの言葉にラウンチは驚いた顔をしている。


「どうした? 打ち合うのだろう? オレの準備は出来ているけど、合図はどうするんだい?」

「あ、えっと、このコインが落ちた時、では駄目か?」

「いや、問題ない。投げるタイミングは任せるよ」


 一歩、また一歩後ろに下がっていくムラマサは五メートルほど下がったところで立ち止まり浅く腰を下ろした。

 それはこの戦闘が始まって最初に見せた居合いの構え。

 一撃に全てを込めて行うこの立ち合いに最も向いていると判断したムラマサが選んだ攻撃手段なのだと即座に理解し、ラウンチもこの状況で最も適し己が得意とする攻撃方法を選択した。

 地面と水平にウォーアックスを構える、突きの姿勢。本来槍やハルバードのような武器が適した攻撃方法なのだが、ラウンチはビスマギアと稽古しているうちに自分も体得し、今ではそれに対応したアーツも使えるようになっている。


「いくぞ!」


 コインが甲高い音を発しながら宙を舞う。

 くるくると回転し地面に落下したコインが金属がぶつかる音を出したその瞬間、ラウンチはアーツを発動させて突進していた。

 ≪戦斧≫スキルにあるアーツ≪猛進≫は≪斧≫スキルにある≪突進≫の威力上昇版ともいえるアーツだった。威力が上がり凄まじい攻撃力を発揮できる反面、反動と突進に耐えられるだけのATKとDEF、攻撃を命中させるためのDEXがそれなりの高い水準で求められるアーツとなっていた。

 ライトエフェクトの色は黄色。

 属性で言えば土、だろうか。

 観客の息を呑む視線集中する中発せられる光は流星の如く真っすぐ目の前に立つムラマサまで伸びていった。


「≪風刀(ふうとう)・閃≫」


 静かに呟かれた言葉に反応しムラマサの持つ刀に薄い緑の光が宿る。

 巨大な弾丸のように迫り来るラウンチの突き出すウォーアックスがムラマサを捉えるその刹那、目にも止まらぬ速さで鞘から抜かれた刀がラウンチを切り裂いていた。


「おれの……負けだ」


 ガクッと膝をつきながらも決して倒れこんだりはしないラウンチの口から発せられたその言葉に反応して遥か彼方、観客席の上部に設置された解説席からムラマサの勝利が告げられる。


『勝者。ユウパーティ!』



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