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キソウチカラ ♯.11

「≪身刀術≫と≪魔刀術≫か。何が違うんだ?」

「そうだね。≪身刀術≫はアーツ特化の刀スキルで≪魔刀術≫は魔法特化の刀スキルって感じかな」


 ムラマサが悩んでいる理由は解らないし、実物を見ていないから二つの分岐がどのような変化をもたらすのかは想像することも出来ない。

 不用意に何かを言うわけにもいかず、黙っていると気まずい空気が漂い出してしまった。


「あー、そこまで重く考えないでくれなくてもいいぞ。オレの中では一応どっちに分岐させるのかは決まっているんだからさ」

「そうなんですか?」

「まあね。けど一つ問題があってね。それをどうクリアするのかを決めかねているんだよ」

「問題ってのはなんなんだ?」

「それを話すにはまずオレがどっちを選ぶのかを言う必要があるな」

「そう、だな。教えてくれるか?」

「当然だとも。皆はオレが刀を振るう時に様々な属性の攻撃を重ねて使っているのは見たことがあるよな」


 頷き肯定の意思を示している俺の脳裏に思い出されるのはムラマサが刀を振るい戦っている光景。

 そこには刀を振り抜いた軌跡を辿り氷が発生したり炎が巻き起こったりしている様がある。

 自分で火属性の効果を輝石の一つに宿してみてわかったことだ。あれを強力なものにして攻撃に載せるとおそらくはムラマサと同じような攻撃ができるだろう。そしてそれはかなり強力なものになるだろうことも。


「あれは魔法攻撃に分類されているんだ」

「アーツじゃなくて、ですか?」

「一応攻撃としては通常攻撃になるのかな? 属性魔法が載っているから派手に見えるけどアーツではないのは使っているオレが言うんだ。間違いないさ」

「ってことはムラマサが選ぶのは≪魔刀術≫なんだな」

「その通りだよ」


 今までムラマサのスキルのことを詳しく聞く機会など無かったための新事実だ。

 俺はムラマサの氷を出現させたりする攻撃は全てアーツだと思っていた。それこそ状態異常の効果を付与した攻撃を使うヒカルのように。


「それで、問題ってのは何なんだ? 今の説明じゃアーツを使ってはいないことと魔法攻撃ができるってことくらいしか分からないぞ」

「おや? 意外だね。ユウならすぐに勘付くと思ったんだけどね」

「俺なら?」

「そうとも。自分で武器の修理や強化をするユウなら、ね」


 挑発的な笑みを浮かべるムラマサに誘われるように思考を巡らせる。

 するとわりとすぐに一つの可能性に思い至った。


「もしかして、武器を変える必要があるのか?」

「その通りさ。アーツ主体の身刀術にしても魔法主体の魔刀術にしても今のままの刀じゃ十分な性能を発揮できないみたいなんだ」


 自分の刀を撫でるように触るムラマサはどこか淋し気な眼差しを刀に向けていた。

 何となくだがその気持ちは理解できる。

 これまで相棒として戦ってきた武器が突然自分のスキルとは釣り合わない、変えるべきだと他人に言われたような気持ちになっているのだろう。

 だとしてもこのまま強化もしないで使い続けるのではスキルを強化する意味がないにも等しい。

 それならば、


「俺がムラマサの刀を打ち直してもいいか?」

「打ち直すんですか? 私のときみたいに強化するだけじゃダメなんですか?」

「ヒカルの時もほとんど作り直したと思うけどさ。ムラマサの刀の性能が限界に達しているのなら新しく打ち直した方がいいと思う。これから先も使うことになるのだろうし、その時また強化できるようにするためにもね」


 現状の限界に達しているところまで鍛え上げられた武器を目にする機会は俺にとってはまだ少ないことだった。

 それだけ武器の強化派には幅と種類があるし、一点特化させた強化は普通は行わないことだからだ。

 武器の強化にはいくつかの項目がある。中でも代表的なものは攻撃力と耐久力、それに長さや重さなどの形状に現れるもの。それらを自分好みになるように鍛えていくのだが、どうやらムラマサは攻撃力には手を付けず耐久力だけをひたすらに伸ばしてきたらしい。

 なのに自身の攻撃の際に発生するごく僅かな耐久力の減少にも耐えられないようになる、そう判断したらしいのだ。


「いいのかい?」


 自分でも刀の強化が難しいと思っていたのだろう。ムラマサが少しだけ驚いたように聞き返してきた。


「俺も自分のこれを強化するつもりだったからさ。別に構わないよ」

「……ユウも武器を作り直すの?」

「まあね。このまま強化してもいいんだけどさ、この大陸特有の鉱石もそれなりに貯まったし、インゴット化にも成功してるからね。いい機会だし打ち直してみようと思っているんだ」


 このタイミングで強化しようとは思っていなかったけど、これもきっかけの一つだと思えばそれほど悪い感じはしない。


「そういうことだからさ、二人の武器も一緒に強化しようと思えばできるけど、どうする?」

「……私はいいや」

「私も大丈夫です。このままでも当分使えるはずですから」

「わかった。それでも一応武器の修理くらいはしておくからな」


 二人が俺の提案を了承するとそれぞれの武器を手渡してきた。

 短剣とメイスはそれぞれ耐久度が三割から四割近く減少していた。あの戦闘で減ったにしてはかなりの減少具合だと思えるがそれでも簡単に修復可能な範疇だ。


「ユウも武器を作り直すとなれば、やはりスキルにも大きな変化があったのかい?」


 刀を鞘ごと腰から引き抜いて手渡しながらムラマサが訊ねてきた。

 ヒカルとセッカが武器を作り直したりしないのはそのままでも使用に耐えうるから。それはそのままスキルに大きな変化がなく、まさしく強化だけをしたということに他ならない。

 その反面ムラマサはスキルに大きな変化があり武器の作り直しが必要となった。このことを理解しているからこそムラマサは俺にも同じことが起きたのではないかと思ったらしい。

 その通りだった。

 俺の持つスキルの二つが今回の強化で新たなものに変化した。

 一つ目が≪強化術≫改め≪強化術式≫

 これまで二つの種類の強化をキーワードを言うことによって発動させていたが、今度はあらかじめ設定した強化パターンをキーワードを言うことによって発動させることができるようになる。更にその効果は最初の強化を三回重ねがけしたのと同等。その上消費MPは≪強化術≫のときと変わらないときた。これは良い感じのスキル強化になったと思う。

 もう一つが≪剣銃≫改め≪剣銃術≫

 俺が剣銃を作り直そうと決めたのはこのスキルが原因だった。


「それは?」

「見ての通りだ。この武器専用スキルの強化版ってやつさ」


 ≪剣銃術≫は残念なことに技が増えたわけではなく、武器と使用者である自分の基本性能が底上げされるというものだ。

 それだけならまだいいのだが、この底上げというものが厄介なことこの上ない。武器の性能がスキルの恩恵に対応していないと耐久力が著しく減少してしまうのだ。残念なことに今使っている剣銃ではぎりぎりその対応外となってしまっていた。


「ってなわけで俺はこれから鍛冶を始めるけど、皆はどうする? 何もすることがないならログアウトして休憩してきてもいいけど」

「そうですね。そうさせてもらいます」

「……私も?」

「もっちろん。一緒に休憩しようよ。ね」

「……いいけど」

「オレはユウの鍛冶を見学させてもらってもいいかな?」

「ああ。好きにしてくれ」

「それじゃ、私たちはこれで失礼しますね」

「……また連絡する」


 そう言ってログハウスの自室に戻っていく二人を見送り、俺は手元に残った三つの武器と自分の剣銃を持って工房へと向かうことにした。


「これがユウの工房なんだね」

「付け加えるならヴォルフ大陸の、だけどな」

「ギルドホームにも同じようなものがあるのだったね」

「ああ。こっちをここまで近づけるのは苦労したぞ」


 鍛冶を行う炉と調薬を行う専用の机。それに細工などを行う大きめの作業机。

 これらの道具を揃えることから初めてようやく最近完成したのだ。


「言い忘れてたけど、このログハウスの部屋数は少ないんだ」

「解っているともさ。オレには部屋は要らないから気にしないでくれ――」

「え? 違う、違う。俺はこの工房を自室としても使うから俺がそれまで使っていた部屋を使ってくれるかって言いたかったんだ。ムラマサも仲間になったんだしこのログハウスで一人だけ部屋がないのは不公平だろ?」

「いいのかい?」

「まあ、俺の居た部屋が嫌じゃなければ、だけど」

「嫌だなんてとんでもない。有り難く使わせてもらうよ」

「ああ、それと部屋に置いてあるものは自由に使ってくれても構わないから」

「いいのか? ユウが自分で集めたものなのだろう?」

「別にいいさ。あの部屋にあるのはティーセットくらいだからさ」


 ティーセットは自室の他にも共有スペースとこの工房にも常備してある。使わなくなった部屋にあるものをどうしようとそれは俺の知るところではない。

 まったく気にしていないと言わんばかりに俺は手早く工房にあるティーセットを使いお茶を淹れ始めた。


「リリィも飲むだろ?」

「クロスケの分もよろしくねー」

「あいよ」


 いるのが当然の妖精と黒梟の分も合わせて四人分のお茶をティーポットに淹れて俺は作業机の上に置いてあるカップに注いでいった。


「なんだか家庭的なんだな」

「は? 誰が?」

「ユウのことでしょ」

「このくらい誰でも出来るだろ」

「この世界では調理のスキルが無ければ美味しいものは作れないだろう? わざわざスキルを習得してまで料理しているんだから十分家庭的だと思うけどね」


 クスっと笑いながら机の上のカップの一つを手に取って一口飲んでからムラマサが告げた。


「そうは言っても俺の場合は必要に駆られてだったからな。リリィやクロスケがいなければ今でも調理スキルなんて取ってないだろうし、こうしてお茶を淹れたりもしてなかったと思うぞ」


 ストレージの中からお茶菓子になりそうなものを探しながらそう呟く俺をムラマサが生温かい目で見つめてきた。


「なんだよ」

「いいお茶請けは見つかったかい?」

「はぁ。まぁ、これでいいか?」


 ストレージにあったのは以前試しに作ったログハウスの周辺に自生している果物を使ったシフォンケーキだった。

 ストレージに入れておけば腐ることもなく、現実のように賞味期限が無いのが幸いし作って試食したまま忘れていたそれはまだ十分な量ができたての状態で残っていた。


「早く切り分けてよー」

「わかってるって。ちょっと待ってろよ。ムラマサも食べるだろ?」

「ああ。頂こう」


 それぞれに切り分けたシフォンケーキを渡すと俺はまずヒカルとセッカの武器の耐久度回復を始めた。

 使うインゴットは特別な物ではなく使い慣れている鉄のインゴット。普通と違う点があるとすれば俺が自分で生成しているということくらいだろうか。

 耐久度の回復は強化の鍛冶に比べて簡単に終わる。

 溶かしたインゴットに刀身を浸し、傷を修復するだけでいいのだ。

 耐久度を全快させた短剣とメイスを壁に立てかけると続いてムラマサの刀の強化に取り掛かった。


「さてと。どんな感じにするかな。ムラマサ何か希望はあるか?」

「そうだね。刀身の長さは今と変わらないほうがいいかな。あとは今よりも耐久度が高いと助かる」

「複数の属性にも耐えられるように、だったな」

「できそうかい?」

「やるだけやってみるさ。と言いたい所だけど、俺はムラマサほど色んな属性が使えるわけじゃないからな。手伝ってもらうことになるとは思うぞ」

「勿論だとも。オレは何をすればいいんだい?」


 興味深そうに身を乗り出して俺の手元を覗き込んでいたムラマサが立ち上がる。

 瞳にやる気を漲らせて俺の隣に並ぶムラマサに俺は棚から取り出した鋼のインゴットを手渡した。

 このインゴットを選んだ理由は刀といえば材質は鋼だろうという安易な想像に過ぎない。このゲームでは鉄だろうと銀だろうと金だろうとインゴットであればどのような武器も作り出すことができるのだが俺の手持ちで一番刀にイメージが繋がるものがこの鋼のインゴットだった。


「それにムラマサが使える属性を覚えさせてくれ」

「覚える? これがか?」

「このゲームのインゴットはその精製の段階で触れた魔法の属性を記憶する性質があるんだ。だからこれを一度溶かしてからもう一回インゴット化させるからその際に魔法を使ってほしいんだ」


 おそらくは生産職のプレイヤーでなければ聞き流すような情報だったのだろう。ムラマサは初めて聞いたと言わんばかりに目を丸くして驚いていた。

 市場に属性が付与された武器や防具が出回り始めたのはこの精製方法が周知されたからだというのを俺は工房の設備購入の為にいくつかの町を巡っていた時に知った。


「了解した。その為にも一度刀を返してくれるかい?」


 預かったまま作業机の上に置かれていたムラマサの刀を投げ渡す。

 危うげなく受け取った刀を鞘から抜き力を抜いて構えるとムラマサが小さく「ありがとう」と言った。


「ムラマサが属性を使うにはそれが必要なのか?」

「それはそうさ。なんたってオレの属性を操る術は≪刀≫スキルにある一つだからね」


 地面に直接置かれた石製の器の中にある鋼インゴットに向かってムラマサが刀の切っ先を当てる。


「一応言っておくけど少しだけでいいんだからな。強すぎると壊れるぞ」

「分かっているとも」

「最初は溶かすために火の属性だ。俺も手伝うから火力を合わせろ」

「ああ」


 輝石に付与した能力である火属性が出現させる炎はまだまだ小さく弱々しい。けれど使い方さえ覚えれば小さな種火でもインゴットを溶かすくらいは出来るようになる。

 必要なのは火力ではなく熱量。

 熱を一点に集めた炎を当てることでインゴットは溶け始めた。


「これでいいかい?」

「ああ。良い感じだ」


 真紅に染まりドロドロに溶けた鋼が石製の器に貯まった。


「インゴットは溶けたし、火属性はこのくらいで十分だろ」

「次は他の属性なんだね」

「そうだ」

「何からすればいいんだい?」

「別に何でもいいんだけど、そうだな。折角融かしたのを固めるのは避けたいかな」

「だったら氷は避けたほうがいいな」

「風もな」

「となれば残るはこれだ」


 溶けたインゴットに突き刺さる刀にバチッという音と共に白い閃光が走った。

 雷の属性。

 しばらくの間、刀を伝い雷の属性が溶けた鋼のインゴットに注がれると銀色だったそれが微かに曇ったようになり黄色が加わった。


「もういいぞ。次の属性を頼む」

「わかった」


 バチバチっと音を立てていた雷の属性が収まると今度は微かな風が工房の中に流れ出した。

 ムラマサが次に選んだ属性は風のようだ。

 炉に火がくべられているから工房に立ち込める熱気はそれなりものになっている。窓が全開で時折吹き付ける風が熱気をさらってくれているがムラマサが風の属性を使ってからはより一層過ごしやすい空気になったと感じる。

 黄色が混じった銀色に今度は薄い緑色が重ねられる。

 光の当たり具合で三色に見える鋼のインゴットが冷気を纏い始めた。

 インゴットの表面に霜が張り、風の属性を浴びて固まり始めたそれを完全に固めた。

 子供の頃に遊んだ粘土を彷彿とさせる形で固まった鋼のインゴットの表面に張られた霜の下に透明感のある青色が宿った。


「ムラマサから聞いていた属性はこれで全部だけど、他に使えるものはあるのか?」

「あるぞ。というより増えたと言った方が正しいかな」

「どういうことなんだ?」

「刀の強化に先んじて≪魔刀術≫スキルを習得したんだけどさ。これまで使えなかった属性も使えるようになったんだよ」


 いつの間にスキルを強化したのかと感心しているとムラマサは刀を握ったまま告げた。


「土の属性と水の属性だね」


 この二つも魔法やスキルの属性だとしたらスタンダードなものだとは思うけど、魔法を専門に使うプレイヤー以外でここまで多岐にわたる属性を操る人はそうそういないはずだ。


「この二つも使った方がいいのだろう?」

「そうだな。ついでだし、鋼のインゴットも耐えられるとは思う」

「耐えられるとは?」

「インゴットに属性を覚えさせるのも限界があるってことさ。この鋼のインゴットは俺が持っている中で一番魔法耐性が高いから大丈夫だと思うけど、一般的なインゴットだと記憶させられる属性はせいぜい三つが限界なんだ」


 火属性を使えるようになってから何回かインゴットに属性を与える実験を経て得た結果だ。

 同じ属性だとしも強化を重ねがけする時の如く属性は何度も重ねることができる。その度に与えた属性の耐性と攻撃力が増加するのがわかったが、インゴットの限界を超えて覚えさせると自壊してしまうこともあった。

 今使っている鋼のインゴットは中でも属性耐性に秀でているという特徴がある反面、防具には使用できず、また武器として使うには刀剣カテゴリにしかできないという欠点があるものだった。

 コンソールを出現させて鋼インゴットの詳細なステータスを読みながら俺はまだ属性を覚えさせることができるとムラマサに告げた。


「ということはこのインゴットはかなりレア素材だってことなんじゃないのかい?」

「まあ、俺が持つインゴットの中では一番のレア度なのは確かだな」

「そんな物を俺のために使って良かったのかい?」

「いいんだよ」


 レアアイテムだからこそ自分に使うべきと考えるのは誰もが同じこと。しかし、この場合に限ってしまえば今の俺には使い道が無いというのが事実だった。

 今のムラマサが覚えさせている属性の数ほど俺は魔法やアーツを扱えていないし、ムラマサが合流するまでパーティの中で属性的なものを使っていたのはヒカルだけ。そのヒカルが使うのも状態異常付加でありシンプルな属性というのには程遠いと感じてしまうのだ。

 いつかは使うことになるのかもしれないが、そのいつかを待って今を逃しては意味がない。


「さて、こんなものかな」


 土の茶色と水の藍色が鋼インゴットに馴染む頃、ムラマサはインゴットから刀を引き抜いていた。


「後は俺の仕事だ」


 溶けた鋼インゴットをもう一度元のインゴットの形にするべく輝石を用いて灯した火の宿る炉の中にそっと入れる。

 程なくして精製された鋼インゴットは当初の銀色ではなく、光を反射し七色に輝く玉虫色に変化していた。


「刀を貸してくれ」

「それをどうするんだい?」

「溶かして芯にするんだ」

「芯?」

「ああ。刀ではあまりすることは無いんだけどさ、剣を打つときにするのと同じようにその中に入れて支柱にするつもりなんだ」


 鍔と柄を外し剥き出しになった刀身を一度燃え盛る炉の中に入れ、素早く取り出した。

 真っ赤になった刀身を属性を覚えさせた鋼インゴットの上に乗せる。

 次は金槌を使い叩く。

 リズミカルに、均等に力が伝わるように。

 隣でムラマサが黙り視線を送ってくるが今は鍛冶に集中しているために気にならない。それに、ムラマサが注目しているのは俺にではなく、俺が打っている刀の方だ。

 金槌で一打一打叩かれる度に金属の塊でしかなかったものが一振りの刀へと変わっていく様は何度も見ている俺からしても面白いと感じるのだ、初めて至近距離で目にするムラマサは俺なんかより大きな感動を覚えているのだろう。

 そうして鍛造を繰り返すこと数十分。

 俺の手には波紋が綺麗な一振りの刀が出来上がった。



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