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幕間 アップデート~『ギルドポータル』と『輝石』について

 その日、VRMMORPG【ARMS・ONLINE】のプレイヤー全員に一通のメールが届けられた。


 内容はこうだ。



              ※                   ※



【ARMS・ONLINE】運営からのお知らせです。

この度のアップデートで二つの機能が追加されることが決定いたしました。



ギルドポータルについて


 ギルドポータルとはギルド施設内に設置できる簡易版の転送ポータルになります。


 ギルドポータルとは特定の町とギルドホームを直接行き来するためのもので、ギルドマスターのみが設置及び管理が可能です。


 設置条件は以下の通りとなります。

      ① ギルドポータル設備の購入。これはギルド会館で可能となります。

      ② ポータルを繋ぎたい街へギルドマスターが直接赴き、その街にあるギルド会館で自身のギルドを登録することにより使用が可能です。

      ③ 通常の街にある転送ポータルと同手順で移動が可能になります。



輝石について


 キャラクターレベルが30を超えたプレイヤーにゲーム内メッセージにより配布いたします。現在のレベルが30に達していないプレイヤーにもレベルが30に到達次第メッセージをお送りします。


 輝石は四つの石から構成され、それぞれに効果を付与することができます。なお、輝石はそれぞれの大陸で一つだけ付与することが可能です。

 また、輝石に付与できる効果は数種類ありますが、その効果は同種スキルの四分の一程度の効果となっています。

 四つの石に付与する効果を同種で重複させることにより効果を強めることができ、全てを統一することでスキル一つ分の効果を得ることができますが、輝石の効果はレベルアップすることはありません。

 全ての効果を統一したとしても同種スキルのレベル3程度の能力値となります。

 なお、輝石に付与する効果は何度でも付け直すことが可能ですが、効果の付け替えを行いますと他の効果はリセットされ初期状態に戻ってしまうのでご注意ください。




             ※                   ※




 メールに添付された画像にある虹色に輝く四つの宝石。これが輝石なのだろうと俺は携帯で拡大した画像を見て思った。

 記されているアップデートの実施予定日は明日。

 毎度のことながら事前に何の知らせもない、突発的なものだと思う。


「悠斗。これ見たか?」


 俺が今見ているものと同じ画像を表示させている携帯を振りながら駆け寄ってきたのはクラスメイトであり、ゲーム内でもフレンドの春樹だった。

 ゲームの中の『ハル』とは違い現実の春樹は平凡を絵に描いたような風貌をしている。ま、それは俺も同じか。

 あの世界の自分は云わば理想の自分だ。

 こうだったらいいのに、という希望を無意識のうちに詰め込んで作り上げた自分像、それがゲームキャラクターの外見を決める一因となっているのは否めない。


「輝石ねえ。これもβテスト時代にあったものなのか?」

「いや、これは無かった。正式版から追加されたものだと思う」

「ってことは、春樹もこれがどういうものなのか知らないってことか」


 何か知っていれば参考となる意見を聞きたかったのだが、そう上手くはいかないらしい。

 春樹から話が聞けないことは確かに残念ではあったが、自分でも予想以上に落胆した顔をしているのか、春樹が俺を励まそうと大袈裟に背中を叩き励まそうとしてきた。


「そんな顔するなって。付け直し出来るみたいだし、色々試してみればいいだろ? そういうの得意だろ?ユウ」

「お、おう」


 検証や実験は生産職の方が戦闘職よりも得意だというのはその所持している設備からも明らか。だが輝石というアイテムがどういう類いのものなのかは実際に触ってみないことにははっきりとしない。


「それで、いい結果が出たら俺にも教えてくれ」

「お……おう」


 笑顔で俺に図々しいことを言ってのけて春樹はチャイムの音と共に教室から去って行った。

 代わりに教科担任が入ってくる。

 教卓に名簿を置き、黒板に教科書の内容を書きだしていく。

 意識半分でそれをノートに書き写しながらも、俺の頭の中は翌日に控えるアップデート、その中でも輝石のことで占められていた。

 新しい要素はワクワクしないといえば嘘になる。

 だがそれは輝石の性能にではなく、画像に映っていたそれが皆、別の形をしていたからだ。

 共通している箇所もある。四つの宝石がそれだ。けれどそれ以外は違っていた。武器に直接付いているものもあれば鎧に装飾の一部として埋め込まれているものもあった。

 新たなアイテムを自分の思うように形が変えられるなら。

 そんなことを考えながら受けた授業は困ったことに何一つ頭に入ってこないまま終わってしまった。



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