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決意

「……それでは、これで失礼する。プリムよ、此度の事、本当に感謝する。さすがは、テイエリーの娘だな」

「ええ、本当に。まだ幼いのに、勇敢ですこと。フローラは良い友人を得ましたわね。しばらくして落ち着いたらまた、フローラと遊んであげて。今日は、ゆっくり休むのですよ」

「はっ、はい! あの、わざわざどうも、ありがとうございました!」


私はベッドで上半身だけを起こした状態のまま、去って行く背中に深々と頭を下げた。

……ああ、緊張した。

お城の敷地の中とはいえ、まさか一介の庭師の家に、しかも平民にお礼を言う為だけに、国王夫妻が直々に会いに来るなんて思わなかったよ……。

こういうのって、普通は誰かを使者に立てて言付けるんじゃないのかなぁ。

ちょっと変わってるな……いい意味でだけど。


「それにしても、私もフローラ様も、無事で本当に良かった……」


お城に侵入した賊は、四人いたらしい。

二人が陽動としてわざと騎士様方に見つかり、遠ざけているうちに、残りの二人がそれぞれフローラ様がいる可能性の高い自室と、庭園を捜索し、拐う計画だったそうだ。

私が気絶させたあの男性は、そういう仕事をする為の訓練を終えたばかりの新人で、今日が初仕事だったらしい。

どうりで、子供に撃退されるおマヌケさんだったわけだ……。

運が良かった。

今回私達が無事だったのは、どうやらただそれだけの事だったようだ。


「……でもそれじゃ、まずいんだよねぇ……」


まさかあんな場面に遭うとはまるで思ってなかった。

お城っていうのは騎士様が守る、絶対安全な場所だと思ってた。

……フローラ様と関わる限り、この先またあんな事に遭遇する可能性がないとは言えないだろう。

それを考えると、とても怖い。

お婆さんになるまで長生きする、という私の人生の目標に対して、とんでもない障害になる。

だけど……だからって、既に大切な友達になっているフローラ様との縁を切るなんて選択肢は、あり得ない。

……それならば。


「要は私が、身を守る術を身につければ、いいんだよね!」


幸い私は騎士の娘!

剣だって魔法だって、才能には恵まれているはず!

その才能を開花させればいい、それだけの事!


「今度お父さんが帰って来たら事情を話して、早速剣から教えて貰おう!」


★  ☆  ★  ☆  ★


「プリムゥゥゥ~~~!!!!」

「え、お父さん? お帰りなさ、いっ!?」

「プリム、無事かっ!? 怪我は!? どこを怪我した!?」


数日後、バターンというけたたましい音を立てて玄関の扉が開かれた。

そして直ぐ様、血相を変えたお父さんがウッドさんの家に飛び込んで来る。

リビングにいる私を見つけると、お父さんは私の肩をガシッと掴んで、早口に捲し立てた。


「ちょ、お、落ち着いてお父さん? どうしたの? 私、どこもけがなんてしてないよ?」

「は? ……怪我して、ない……?」

「う、うん。してないしてない」

「……は……な、何だ、そうか。……良かった……」


私がこくこくと頷くと、お父さんは、は~~……と深く息を吐きながら、床に膝をついた。


「……城に戻ったら陛下に呼ばれて、先日お前が、賊から王女殿下を、身を呈して救ってくれたと、礼を言われたから……てっきりお前が、大怪我をしたのかと……。……本当に、良かった」


次いでそう言って、私を優しく抱き締める。


「あ……。あの、心配かけて、ごめんなさい。えっと、フローラ様がさらわれそうになった時、その場に私もいてね。フローラ様をかついだ犯人が、私のほうへ走ってきたから、私、むがむちゅうでその辺にあったものを投げたの。それがうんよく当たって、犯人はきぜつしたから、けがはなかったんだよ」


お父さんが慌てて駆け込んできた理由がわかった私は、安心して貰う為に当時の状況を説明した。


「……そうか、物を投げて……。……まあとにかく、無事で本当に良かった。陛下の言葉を聞いた時は、心臓が止まるかと思った……」

「ご、ごめんなさい。……あ、あの、それでね、お父さん。私、フローラ様とはずっとお友だちでいたいの。だから……また同じようなことがあったとき身を守るために、私に剣とか、魔法とかを教えてほしいの!」

「え? 剣と、魔法を?」

「うん! 私お父さんのむすめだもん、きっとさいのうあると思うの!」

「プリム……。……わかった。教えよう。だが、私の教え方は厳しいぞ? それでもいいか?」

「うん! だいじょうぶ、私、がんばれるよ!」


私がそう決意を伝えると、お父さんは嬉しそうに頷いてくれた。

こうして、私は自分で身を守る術を身につける事になったのだった。

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