久しぶりのお城です
あの女性、ツェリさんとの交流は、あれからも順調に進んでいった。
私やフレイ君がツェリさんと親しくなるのを見て勇気を振り絞ったのか、なんとお父さんがツェリさんを家に呼んだ事から、今ではツェリさんと私とフレイ君で仲良く夕飯を作り、お父さんの帰宅を待って一緒に夕食の食卓を囲む仲だ。
食べた後は勿論、毎回お父さんがツェリさんを自宅まで送って行く。
計画は順調そのものである。
そんなある日、私とフレイ君が午前中の家事を終え、お茶を飲みながら休憩していると、お城から王様の使者がやって来た。
王様が私を呼んでいるらしい。
何のご用だろう? と首を傾げつつ、私とフレイ君は使者さんに連れられ、久しぶりにお城へと足を向けた。
「久しいな、プリムにフレイ。突然呼び立ててすまぬ。よくぞ来てくれた」
「お久しぶりです、国王様。それに、フローラ様も。お元気そうで何よりです」
「ええ、貴女もねプリム? 本当に、元気そうで良かったですわ。あれ以来会っていないから、とても心配していましたのよ?」
「あ……。……ご心配おかけして、ごめんなさい、フローラ様。……でも、私、もう大丈夫ですから。ちゃんと、元気ですから!」
「ええ、そのようですわね。……本当に、良かった……」
「フローラ様……」
よほど心配をかけていたのだろう。
私を見つめて微笑むフローラ様の目は、涙で潤んでいる。
……心配かけた分、後で何かで返さなくっちゃ。
「さて……プリム。今回ここへ呼んだのは、フローラの、例の力の件だ。実はこの度、フローラの婚約が決まってな。私の弟の息子なのだが……フローラはいずれ、その公爵子息の元へ嫁ぐ事となる。その為、数日後にその公爵の領地へ視察に行く事が決まったのだ。だが、視察には少なくない数の人との関わりがあろう。フローラだけでは、自身の力のせいでまた昏倒しかねない」
「あっ……そ、そうですね、わかりました! 私も耳栓役として一緒に行きます!」
「なら、俺も。俺はプリムの護衛だ。プリムが行くなら俺も行きます」
「うむ……そう言ってくれるとありがたい。……同行者には、テイエリーもフローラの護衛の一人として加えるつもりだ」
「え、お父さんも?」
「ふふっ、メイドから聞きましたわよプリム? 貴女が最近、テイエリー様ととある女性の仲を取り持っているらしい事! 彼女達の情報網は甘くはありませんのよ。……今回訪れる公爵様の領地にはねプリム、恋人達が求婚するに良い場所として有名なデートスポットがありますのよ?」
「!! 求婚って……それは、つまり」
「……そうだな。だいぶ仲も深まってるし、旦那様には、ここらで一気に……」
「……王城に仕える医師ならば、万一の怪我や病気の時の為に同行させる事は当然だ。フローラの為にこちらの願いを快く引き受けてくれるそなた達への礼として、その人物を私が指名しよう」
「! わぁ……ありがとうございます、王様!!」
そうと決まれば、お父さんにはそういう場所がある事をさりげなくアピールしなくちゃ!!
そして、領地へ行ったら……勇気を出して頑張ってよ、お父さんっ!!
「公爵領への旅か……早速準備をしないとな」
「旦那様」
「ん? ああ、フレイ。プリムは準備は始めたのか?」
「旦那様。公爵領には、プロポーズに適した場所があるそうです」
「……うん? ……プ、プロポーズ……?」
「プリムが目を輝かせて張り切っていました」
「は? ……え? え!? お、おいフレイ、何を……!?」
「……旦那様。公爵領にはプロポーズに適した場所があるそうです。プリムが目を輝かせていました。……よろしいですね? お覚悟を」
「な、な、なっ……!! ……うう……先日注文したブレスレット……指輪も追加で頼まなくては……」




