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お相手調査 2

それからというもの、私とフレイ君はとにかくあの女性に関する情報を集めて回った。

お抱え医師さん達の仕事場付近を見回る騎士様から始まり、メイドさんに、医師さんの所に出入りする薬師さん、医師さん達が時折気分転換という名の休憩に訪れる範囲を担当している庭師さんなど、ありとあらゆる人達に、あの女性を知っているかと尋ね、その情報を聞いて回ったのだ。

その結果わかったのは、あの女性が、仕事熱心で優しくて穏やかな、とてもいい人だという事だった。

欠点といえば、物事に対してちょっとだけ後ろ向きで臆病な一面がある、という事だけだった。

お父さんとの仲が、所謂"友達以上恋人未満"な関係なのは、どうやらこの欠点が理由なのだろうなと推理してみた。

一方、お父さんのほうの理由といえば、やっぱり、私の存在だろう。

初婚のあの女性を、いきなり私の、一児の母にする事への躊躇は勿論、私があの女性を母として受け入れ、なつくかどうか、という問題もある。

けれど、それならば。

お父さんとあの女性を街で偶然会わせ、私とフレイ君も含めて、四人で交流する機会を作っていけばいい。

私は、それがあの女性なら、新しいお母さんができる事は受け入れられる。

家族として、仲良くできると思う。

だから、問題はあの女性のほうだ。

突然こんな娘ができる事に抵抗はあるかもしれないけど、なんとか仲良くなりたい。

お父さんの、幸せの為にも。


「でも問題は、どうやって街で偶然出会って交流するか、なんだよねぇ。これにはまずお父さんとあの女性のお休みの日が一緒になって、尚且つ、二人とも街におでかけしてくれないと無理だし」

「そうだな。旦那様は俺達で連れ出せるとしても、あの女性は……。それに、休みの日を合わせるって問題もある」

「うん。……実はそれが一番、難しいんだよねぇ」


お父さんのお休みの日は、出張に行っている場合を除き、十日に一度と決まっている。

一日休んだら九日働いて、また一日休む。

けれど、お抱え医師さん達のお休みは、週の始めに、自分で休みたい日を医師長さんに申告して決めるらしい。

これではいつがあの女性のお休みとなるのかわからないから、合わせようがない。

でもだからといって自然と合うのを待っていたら、いつになるのかまるで見当がつかないし……。

う~~~ん……。


「……これは、もう一人協力者が必要だね! あの女性に休みの日を指定して取らせる事ができて、かつ、街に連れ出す事ができるくらいあの女性と親しい人の協力が!」

「……彼女側の協力者か。そうだな、探してみよう、プリム」

「うん!」


私達はこの日から、あの女性と親しい人物を協力者とする為に、毎日午後からこっそり女性に張り付き、女性と交流する人達の中から、協力をお願いするべき人を見極めるべく、じっと目を凝らした。

何故午後からなのかは、勿論、午前中は庭師の仕事をする為だ。

お父さんが出張でない間は私もフレイ君も自分の家にいるが、毎日通いで自分達に任された場所の花達の世話はしてきている。

今回も、お父さんの幸せの為の一大プロジェクトの最中とはいえ、それを疎かにはできないからね!


「あ、プリム、またあの女性だ。ほら、来た」

「あ、本当だ……!」


フレイ君が私の名を呼んで促す方向に視線を向けると、そこには三日に一度、医師の女性と会って庭の片隅にあるベンチでお茶をする、医師の女性と同じ歳の女性がいた。

この女性は出入りの薬師さんで、医師の女性に薬を卸している。

薬師の女性は今日も、ベンチに腰を座っている医師の女性の隣に腰をおろした。


「う~ん……この数日の張り込み調査の結果を見るに、あの女性が一番親しい人物みたいだよねぇ。会ってる回数も多いし。協力者、あの女性にお願いしたらどうかな、フレイ君?」

「待て、プリム。会ってる回数は多くても、一番親しいとは限らない。それなりに仲は良くても、ただ仕事上親しくしている、というだけだったら、私的な事に関する協力は頼んでも無駄だ。……もう少し近づいて、二人の話の内容を聞いてみよう。もし私的な内容の、それも深く突っ込んだ内容の話をしていたなら、頼んでみる価値はあるから」

「え、こっそり覗き見ているだけじゃなく、盗み聞きもするの? ……う……わ、わかった」


これも、お父さんの為、お父さんの為!

たとえ何を聞いても絶対に他言はしないから、許して下さい、お二人とも!

私は二人に向かって心の中で深々と頭を下げながら、フレイ君と共に音を立てずこっそりと二人がいるベンチに近づいて行った。

すると、二人の会話が耳に入ってきた。


「さて、それじゃあそろそろ結果を報告して貰いましょうか、ツェリ。昨日のお昼、テイエリー様をちゃんとランチに誘えた? お弁当、喜んで貰えたの?」

「え、ええ……頑張って誘ったわ。お弁当も、美味しいって、言って貰えたの……!」

「そう……! やったじゃないツェリ! よく頑張ったわね!」

「!?」


聞こえたその内容に、私は目を見開いて固まった。

……昨日の、お昼?

お弁当……?

え……嘘、お父さん、昨日のお昼、この女性と一緒に食べたの?

そ、それなら……それなら、そこに混ざれば、四人で交流第一回目は既にできていたんじゃない……!!

なんてことっ、せっかくの機会を見逃していたなんて!!

私はその場にがっくりと項垂れ、察したらしいフレイ君が慰めるように私の肩をポンポンと叩いたのだった。


覗き見や盗み聞きは褒められた行為ではありません。

リアルでやっちゃ、ダメですよ(笑)

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