表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/45

恐怖、のち、安堵と喜び

今日はフローラ視点です!

「さて……フローラ、話がある。大事な話だ」


お父様がそう切り出したのは、贅が尽くされた美食と穏やかな談笑に包まれた、いつも通りの夕食が終わった直後だった。

お父様は、父親としての優しい笑顔から、国王としての真面目で威厳に満ちたものに表情を変えている。

その様子を見て、私は姿勢を正し、次の言葉を待った。


「フローラ。次に行う王家主催の宴、その舞踏会から、そなたを社交界に出す。そなたの力については、心配なきよう手を打つ。……テイエリーに、明日、娘のプリムを伴って私を訪ねるよう申し伝えた。プリムを宴に出席させ、そなたの側に控えさせる」

「……えっ?」

「舞踏会に出る理由を、そなたの力の事を、明日テイエリーとプリムに話す。……覚悟をしておきなさい、フローラ」

「…………」


……私を、社交界に?

……プリムを出席させて、私の側に?

……プリムに……私の力の事を、話す……?

お父様から告げられたその内容に私は絶句して、ただ呆然とお父様を見つめた。

お父様の表情は変わらず厳しいものだったけれど、その目には私を気遣う光が見え隠れしている。

その事から、私の力をプリムに話した後の事を、お父様も危惧なさっているのがわかる。

でも、それでも、仰った言葉の撤回はなさらない。

……もはや決定事項なのだとわかって、私は俯いた。


「……承知致しましたわ。お父様」


俯いたまま、それだけを言って頷くのが、精一杯だった。


★  ☆  ★  ☆  ★


翌日、私はお父様の執務室の前で静かに佇んでいた。

手を組んで目を閉じ、心の中で繰り返し祈りを捧げる。

どうか、プリムが私を恐れませんように。

どうか、プリムが私を敬遠しませんように。

どうか、プリムが私を嫌いになりませんように。

どうか、どうか、どうか。

何度も何度もそう繰り返していると、ふいに、お父様の執務室の扉が開く音がした。

顔を上げると、プリムとテイエリー様が開いた扉の向こうから姿を現し、私の視界に映る。

そして、プリムが、私を見た。


「っ」


目が合った瞬間、私は息を飲んだ。

体が強ばるのがわかる。

逃げ出したい気持ちが胸一杯に広がり、私は踵を返そうとした。

けれど、まさにその瞬間。


「あ、フローラ様!」


いつもとまるで変わらない声色で私を呼ぶ、プリムの声が聞こえた。

プリムは私に駆け寄ってきて、明るく話し出した。

本当に、いつもと何も変わらないプリムに、思わず『私が怖くないの?』と尋ねてしまう。

プリムから、"怖い"だなんて言葉、聞きたくはないのに。

……けれど、プリムから返ってきた返事は、予想していたものとはまるで違った。

あまりにもあっさりと、まるで大した事ではないかのように、プリムはその言葉を口にした。

その事はとてもとても嬉しかったけれど、昨夜から今までずっとプリムに嫌われる事を恐れ、思い悩んでいた自分が馬鹿みたいに思えて、私はプリムにそっけない態度を取り、歩き出してしまう。

心の片隅でこんな態度のまま去ってはいけないと思いつつも、足は止まってはくれなかった。

けれどプリムは、私のそんな態度も気にしてはいないように、背後から『また明日!』と明るい声をかけてくれた。

私はそこでやっと『ありがとう』と、小さくても素直な言葉を紡ぐ事ができた。

そして私は自室に戻り、一人笑顔を浮かべながら、胸に広がる喜びと安堵を抱きしめ、それに浸った。

止めどなく溢れる、温かい涙を、流しながら。

リクエストされてたフローラ視点ですが、如何でしたでしょうか……。

書くのがだいぶ遅くなりました、すみませんでした。

フレイ視点は、舞踏会の終了後に書きます。

もう少々お待ちくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ