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灰色商館、七階

本日2回目の更新です!

ドキドキしながら、七階の部屋の扉を開ける。

さて、今度はどんな商人さんがいる事やら……。


「あ……い、いらっしゃいませ。ようこそお客様、私のお店へ……」


私達が部屋に入ると、それに気づいた商人さんがこちらを向き、頭を下げた。

私はじっと、そんな商人さんを観察する。

黒いとんがり帽子に足下まである長い黒いローブ、そして丸眼鏡。

典型的な魔女スタイルだ。


「……は、初めてのお客様ですよね……? どのような人材をお探しですか……?」

「孫の護衛を探している」

「お、お孫様の護衛、ですか……わかりました。では、少々お待ち下さい……」


このやり取りはもう何度目だろう。

商人さんはそう言うと、やはり奥の扉へ消えて行った。

それにしても、あの格好に、どもりながらぼそぼそと小声で話す口調……つくづくここには、個性的な商人さんが多いんだなぁと思うよ。

いや、むしろ、そういう人しかいないのかもしれない。


「お、お待たせしました……」


奥の扉から出てきた商人さんは、数人の女の子達を連れていた。


★  ☆  ★  ☆  ★


「プリム!」

「お、お祖父ちゃ……うぁぁぁぁん、お祖父ちゃぁぁぁん……!!」


翌日、私は朝から大泣きしていた。

ウッドさん達が必死で慰めてくれたが泣き止まず、困ったウッドさんがお祖父ちゃんを呼んだらしい。

駆けつけたお祖父ちゃんにしがみつき、私は泣き続けた。

原因は、昨日あの魔女の商人さんのお店でお試しを承諾して来てくれた女の子だった。

彼女は身分など気にせず、私が庭師の仕事をお手伝いしている間も、地面に座り、分厚い本を読んで過ごしていた。

これなら今度は大丈夫かも、と私はほのかな希望を抱いた。

けれど、彼女は相当偏食なようで、昨夜も今朝も食事にあれこれ文句をつけた。

ククルさんは終始困ったような顔をしていて、申し訳なく思った私はそれをやんわり宥めて食べさせようとしたら……いきなり一言、『帰る』と言って、眩い光を放った後に姿を消した。

どうやら転移魔法を使ったらしい。

またしても護衛獲得に失敗した私は、そのショックから泣き出した、というわけである。


「プリム、プリム、泣くな。話はウッドから聞いた。お前は悪くないぞ。好き嫌いするのが悪いとは言わないが、しすぎるのは問題だ。少しでも食べさせようとしたお前は悪くない。だから泣くな。護衛も、まだ階は残っているし、それも駄目だったとしてもまた他の階へ行けばいい。な? 気にする事は何もない」

「うぅぅ~~……」

「ほら、泣き止みなさい。失敗は成功のもとだ。絶対にプリムを選ぶ者はいる。だから気分を落ち着かせて、また私と商館へ行こう」

「うぅ……っ、は、い……っ」


そうして、抱きしめてくれたお祖父ちゃんの腕の中でひとしきり泣いたあと、私はまた、灰色商館へと向かった。

次が、案内を受けた最後の階。

護衛を手に入れられる自信なんて、もう欠片もない。

お祖父ちゃんはああ言ってくれたけど、次で駄目だったら、また別の方法を考えたほうが、良さそうだなぁ。

お祖父ちゃんだって暇じゃないんだし、こうも頻繁に私に時間を割いて貰うのは、悪いもんね……。

次でいよいよ真打ち登場します!


◆  ◇  ◆  ◇  ◆


魔女っ子の偏食劇場


ククル「さあ、召し上がれ!」

魔女っ子「……私、お魚駄目なの」

プリム「え?」

ククル「あら? 昨夜は、お肉が駄目だと言っていなかった?」

魔女っ子「お肉も駄目。あと、あれとあれとこれとこれとそれとそれも駄目。入ってるから、食べれない」

ククル「あ、あら……じゃあ今朝の料理全部じゃない? 困ったわね……どうしても駄目?」

魔女っ子「うん、駄目」

ククル「そ、そう……でも、ううん……」

プリム「あっ……ね、ねぇ! 一口だけでも食べてみない? ククルさん、料理上手だし! 今朝のご飯としてこれらが出されたわけだし、残すのもったいないし! ね? ねっ?」

魔女っ子「…………これ、食べなきゃご飯抜きって事?」

プリム「え? ……そ、そうだって言ったら、食べてくれる?」

魔女っ子「……ふぅん。なら、帰る」

プリム「へっ!?」

魔女っ子「さよなら」

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