転生してました
意識が浮上し、ぱちりと目を開けた。
すでに周囲は明るい。
もう朝かぁ、起きなくちゃ。
そう思って体を起こそうとしたけれど、何故か起き上がれない。
疑問に思いながら、顔と体を動かしてみる。
うん、大丈夫、顔も手も足も動く……って、あれ?
何、脇にあるこの木の格子?
あ、反対側にもある……って、えええ!?
わ、私、何でか閉じ込められてる!?
あ、でも上には格子ない。
なら起き上がれば逃げられる!
よぅし、とっとと逃げ……って、そういえば起き上がれないんだった!!
な、何、何で!?
だ、誰か助けて~~~!!
「びえぇぇぇぇ~~~!!」
…………んっ?
あれ、私今、ちゃんと喋ったよね?
なんか泣き声しか出てなかったような……?
い、いやいや、そんなはずない。
よし、もう一度。
誰か助けて~~!!
「びえぇぇぇぇ~~!!」
………………。
……あれ?
やっぱりちゃんとした言葉じゃなくて、泣き声しか出て、ない……?
ど、どうしてぇ!?
「はいはいお嬢様、どうなさいました?」
え?
混乱の中、上から聞こえた声に顔を向ければ、いつの間にかひょこっと顔を出していた、優しそうな顔立ちの、見知らぬお婆さん。
えっと……貴女、誰ですか?
★ ☆ ★ ☆ ★
あれから数日。
聞こえてくる話、私に話しかけてくる人達、ろくに動けない自分の体の状態から、ようやく、自分の身に何が起きたのか理解できた。
どうやら私は、転生というものをしたらしい。
しかも、異世界に。
凄いね、本当にあるんだね、異世界。
最初は信じられなくて、目が覚めたら消える、夢かと思ったよ。
今はもう、認めたけど。
転生した私は今、赤ん坊だった。
あの日見て、閉じ込められてると思った原因の格子は、ベビーベッドのものだった。
プリムというのが、今の私の名前らしい。
まだ確認した事はないけど、一日に何度か顔を見せる今のお父さんとお母さんを見る限り、なかなか可愛い姿に生まれ変わったんじゃないかと思う。
ああ、鏡が見たい。
というか、起き上がって動きたい。
ただ天井を見つめる日々は、もう飽きた。
赤ん坊というのは、とても暇で、色々耐え難い。
トイレにも行けず、我慢の限界を迎えた末におしめを替えられた時は、情けなさと恥ずかしさで散々泣きわめいた。
……それにしても、どうして転生なんて事になったんだろう?
私の記憶が確かなら、私はまだ十二歳の小学生だったはずだ。
生まれ変わるには早すぎる。
なのにこうして転生しているし……一体何があったんだろう……ええと……?
私は転生前の最後の記憶を思い出そうと、目を閉じそれに集中した。
次第に最後の日と思われる記憶が浮かび上がってくる。
……あれ、そういえば、あの時も何故か知らない部屋で目を覚ましたっけ。
いや、部屋っていうか、あそこ、なんだか倉庫っぽかったような?
で、確か、知らないおじさんがいて……何故か、縄で、体を縛られてて……?
そのおじさんがどこかに電話してて、身代金がどうとか言ってたような……?
……………………。
……うん、怖い、考えるのやめよう!
これ以上考えちゃ駄目な気がする!
過去は過去!
振り返らずに転生した今の人生を今度こそ末長く平穏に生きよう!!
……前世のお父さん、お母さん、凄く凄く悲しませてしまっただろう親不孝な娘を許して下さい……。
遠く、世界まで隔たれてしまったこの場所から、貴方達のこの先の幸せを祈っています……。