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静かな時間

学校。

教室の扉を開ける。

窓際後ろから2番目の自分の席に座り、即座に顔を机に伏せた。

勇人に声をかける者はいない。


授業中、うつろうつろしながら授業を聞く。


昼休憩

自分の前の席にDQNっぽい学生がたむろって弁当をつついている。

「でさー○○が××でさー」

「あっひゃっひゃっひゃ、たしかにうけるわっ」

「あっひゃっひゃっひゃっひゃ」


勇人も弁当を食べている。しかし、机を並べる者はいない。

勇人は弁当を食べ終えるとすぐに顔を伏せた。


10分ほど眠り、寝疲れて起きた。


鞄から本を取り出す。

教室は騒々しく、勇人は静かに本を読む。

そういう生徒は勇人のほかに何人かいた。

静かに本を読む勇人の耳にDQNの声が入ってきた。

「まじきもくね」

「わかる、なにこいつ」

「なに本読んでんの。かまととってやつ?」

「それたぶん使い方ちげーよ」

「そうなん?」

「おいちょっと見せろよ」

「なに読んでんの?」

「ちょっ」

勇人が読んでいた本を不良っぽい生徒が奪うように勇人から取り上げる。

開いてあったページを数秒読んで、読むのが面倒になったのかぱらぱらとページをめくり、本にかけてあった広告の入った紙カバーをぐしゃっと外す。

「ひゃっ」

「ラノベだこれ!」

「ラノベ?ラノベ?ラノベって何?」

「これだって」

「これ? これがラノベ」

「そうそう、萌えってやつ。まじきもい」

「ひゃっひゃっひゃっ」

「まじいんのかよこんなん読んでんの」

「お前そんなこと言うなよ」

「なにお前もしかして読んでんの」

「まぁね」

「まじかよ。お前きもっ!」

「きもって、ひゃっひゃっひゃっひゃ」

勇人は何もしなかった。怒りもせず、泣きもせず、自分の受けるダメージを最低限にとどめるために、ただ、何もしないことを選択した。

「これ貸してくんね。俺、実は本読むんだよ」

と、唐突な発言に勇人は驚いた。

「読まねえくせに」

不良たちがにやにやする。

「な、貸してくれるだろ?」

そういうことか。

ならば、俺に選択権はない。

勇人は、その本はもうきっと戻ってくることはないだろうと確信した。


その日の授業をすべて終えて、ブルーな心を胸に、勇人は下校した。

帰り道、勇人は寄り道をした。

街をぶらぶらした。立ち寄るところはいつもきまっている。

書店でマンガやゲームやラノベのコーナーを眺め、CDコーナーでよく知りもしないアーティストの曲を聴き、ゲームセンターで時間をつぶす。格ゲーでうっぷんを晴らしたり、シューティングで自己満足感を得たり、ゲームセンターで勇人は自由になれた。

それはいつもならばである。

勇人は前述した不良がゲームセンターに入る姿を見たのである。

今日のことがあった後で、とてもではないが、奴らのいるゲームセンターに入ろうとは思えなかった。

今日はもう帰ろう。そう思ってその場を立ち去る。

頭のおかしい彼女にあったのはその帰路である。

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