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朝の食卓
「おはよう勇人」
流し台に立つ彼の母が彼に背中を向けたまま言った。
勇人と呼ばれた彼は無言で卓に着く。卓には新聞を読んでる父の姿があり、すでに自分の分の食事が並べられていた。
「おはようは?」
エプロンで手をぬぐいながら彼を咎めるように母が言う。
「おはよう」
食事をとりながらの息子と母の会話
「で、どうなの、学校の方は」
「普通だよ」
「そう」間をおいて母親が尋ねる。「楽しい?」
「変なことを聞くなあ」
「いえ、だって…」
「楽しいよ。めちゃくちゃ楽しい。決まってんじゃん」
「そ、そう…」
会話が途切れる。母が食事に箸をつけようとして止める。
「ねえお父さん」
父が新聞から目を離さず「うん?」と言う。
「…」母の視線が次第にうつむき、しばらく沈黙する。
「なんだ」父が新聞から顔を上げて母の顔を見る。
「ううん、やっぱり、なんでもないわ」一転して明るく振る舞う母。「あはは」
「変な奴だ」再び新聞に隠れる父の顔。
玄関先
彼が言う。
「いってきます」
家の門を出る。




