目覚め
「決着をつけるぞ……」
彼は眼前にそびえる忌々しいそいつを指さした!
「魔王!」
それに答えてそいつが咆哮する!
「来ぉおおおおい!!! 勇者ぁああああ!!!」
倒れた仲間たちを背にして、勇者は魔王にとびかかる! 全身全霊の全力を剣に込めて!
「ぉぉおぉおおおおおおおおおぉおおおおおっ!!!!!」
魔王は両腕を開き構える!
両腕の間で魔力を練り上げ、今までで最も巨大な魔弾を作り上げる。
勇者の剣と魔王の魔弾がぶつかりあう! その瞬間!
「勇者様ぁああああっ!!!!!!」
突然割って入る僧侶の声! そこには目に涙を浮かべた彼女の姿!
拡散する魔弾!
「えっ!?」
勇者は邪悪な光に包まれて……
ゴツッ!
「痛ててててて……」
と、彼は床にぶつけた頭をなでた。
頭をなでながら彼は部屋に鳴り響く目覚ましの音に気づき、アラームを止めて時計の針を見つめる。
そして、大きなため息をついた。
「なあに? 今の音」
階下から聞こえる母の声。
「なんでもないよ!」と、彼はうっとおしそうに答えた。
「もうご飯できてるわよ」
「はーい!」
彼は腰を上げて部屋の扉へ向かう。
扉を開けて外に出る。扉を閉める前に彼は部屋の中を振り返った。
「俺、ゲームのやりすぎかなあ……」