涙
その後、今度はアラレウンド王と話す事になるのだが、話す内容は大体同じ。しいて言えば世間話が少し違ったところだろうか。最後はやはりウルシール王と同じように儀式をせずに魔力をあげるやり方だけを教えた。不公平と言うのはよくないだろう。
「確か、カナさんの部屋ってここだったわよね?」
「はい。二階の南から四番目と言っていましたから」
数えてみても、ここであっているだろう。中からキリとマナの魔力も感じるから間違いない。
ボク達がさて中へ入ろうとして扉へと手を掛けた瞬間――バンッ。
「「え――?」」
「――ッ」
中から急に扉が開かれたかと思うと、涙を流していたマナがボク達を一瞥仕方と思うと、すぐさま横をすり抜けて窓から外へと飛び出していった。
「マナちゃん!?」
一体何があったのかと聞こうとする前に出て行ってしまったので聞く事すらかなわなかった。
「あらリクちゃん♪ ウルシール王とアラレウンド王のお話しは終わったの?」
「よぉリク。今来たのか……」
目の前で起きた出来事に驚いていると、中から母さんとキリの声が。
今追いかけても何が出来ようかと考え、ボクは二人から話を聞くことにして中へと入った。
「あの、マナちゃん。一体どうしたんですか?」
「ンなもん、見りゃわかるだろ」
中を見ると、母さんが座っているイスの前のテーブルに、黒剣が置かれておりその剣はどこか懐かしい魔力を帯びていた。
「それ……真陽さんの剣……ですか?」
「あぁ。どうやら、神の特権とやらでな、カナが冥府から持って来たんだってよ」
その事で、ようやくマナが泣いて外へと出て行った訳がわかった。
「まさか、母さんは真陽さんが死んだってことをマナちゃんに!?」
「今言わないと何処で言うのよ。いつかはばれるのよ? それに、本来なら過去でキリちゃんか誰かが教えてこちらに帰って来た時にはすでに知っていると言うのが私のシナリオだったんだから」
「シナリオってテメェッ!」
キリが母さんの前のテーブルに拳を叩きつけた。
テーブルは壊れそうなほどに亀裂が入ったけどギリギリのところで押しとどまった。
「お前は俺達をシナリオの一部としか思ってねぇのか! 自分の息子だって巻き込んでんだぞ!」
「ん~。まぁシナリオって言うのはさすがに酷かったわね。悪かったわ♪ でもね? 私にとってじゃない、リクちゃんにとって一番良い時代のルートを通らせてるの♪ パラレルワールドなんていくらでもあるんだから♪」
「だからってなぁ!!」
キリが納得いかないような顔をしている。それはボクだって、ソウナだってそうだ。
だけど、今ここでボクはキリに向かって何か言えるだろうか。言えない。母さんがボクのためにとやっているために、ボクが何か口を挟めるだろうか。
無理だ。そんな事をしてもキリがもっと怒りそうな気がする。ボクが今この場で口を挟めそうもない。
「一番納得いかねぇのは、どうして親友とも呼べた真陽を死なせなきゃいけなかったって事だ。助けれたんじゃねぇのか?」
「確かに助けれたわ♪」
「じゃあ――」
「でもそれは真陽ちゃんが許さなかったの♪」
キリの言葉を母さんが切った。
「なんでだよ」
「八月二十七日」
そう言われてボクもキリも、ソウナも分からず疑問に思う。
「その日がどうしたよ。確か、ヘレスティアに襲われたのは八月二十五日だったよな? 何か関係あんのか?」
「ええ、あるわ♪ だって、とある人物にとって一年間で一番大事な日だもの♪」
そう言われて考えたけど、いくら考えても出ては来ない。一体何の日だと言うのだろうか。そう考えていると、隣で声が聞こえた。
「マナさんの誕生日。確か、毎年家で真陽さん含めて豪華に祝ってくれるって言ってたわ」
「そうよ♪ もう準備も万端。マナちゃんが帰ってくるのが二ヶ月後になると言ったら真陽ちゃん、にべもなく二十四日に祝うと言ったわ。逃げるには二十四日の夜にはライコウを出ているしかなかったの。そうでなければ途中まで来ているヘレスティアの軍勢に会って殺されてしまうのだから」
「そんな……ッ」
じゃあ真陽は、自分から死ぬ事を選んだと言う事……。
「お前が、助けれなかったのかよ……?」
「無理よ。ヘレスティアの軍勢の中には王もいたの。王と私では、私の負けで私も死んで、真陽ちゃんも死んでたわ。あの戦争はね、完全にこちらの負けだったのよ。不意打ちされてなくても負けてたわ。しかも、私の行動範囲にはヘレスティア王と言う制限を掛けていた奴もいたのだから。そうでなかったら白夜ちゃんと鬼族の娘以外全員血祭りに上げてたわ♪」
その瞬間、ゾクッと冷たい悪寒が背筋を襲った。
笑顔では居る。笑顔なのだけど、決して笑ってはいない。本気の目だ。
本気で、母さんは全員殺していたのではないだろうか。いつの間にか背中にはギリシャ数字が舞っている大太刀を背負っている。
「わかった? これで私のお話しは終わりなのだけど……まだ何かあるかしら?」
まだ何か。そう言われて誰も口にする事は出来なかった。キリはテーブルに打ちつけていた拳を引いていたし、ソウナだって難しい顔をしている。
言いたくても言えない。まだまだ言いたい事はあったかもしれないけど、今の一言で何も言えなくなってしまった。
「二人とも、行きましょう。マナちゃんを捜さないと……」
「…………ええ」
「…………クソッ」
二人を引きつれて、外へと扉を開けて出ようとした時。
「あぁ、待って。リクちゃんはここに残って貰えないかしら?」
「え?」
何だろう。そう思ってボクはその場に立ち止まる。
二人が出て行ったのを見計らってから、母さんが口を開いた。
「リクちゃん。二ヶ月ほど、ユウちゃんを見てないの♪ もし町で見かけたらここへ来るように言ってくれないかしら?」
「ユウが?」
何かあったのだろうか。
「もし町で見かけず、ライコウで見かけるような事があったら、これを渡して♪」
そう言って渡されたのはシンプルな指輪。強い炎の魔力が込められているから何かしらの魔法具かもしれない。
「わかった、けど……」
「あとこれとこれとこれね♪」
「多くないですか!?」
急に指輪を渡されたと思ったら何かの資料やらがどっさりともられた。
「あはは♪ 冗談よ♪ それよりも、リクちゃんおっきくなったわね~♪」
「大きく? えっと、何が……?」
別段。視線が高くなった訳でも無いのに、一体大きくなったとは?
その時、母さんがイスから立ち上がってテーブルを回り込んできた。
「ここに決まってるじゃない♪」
そうやって急に――胸を掴まれた。
「ひゃん!? かかか母さん!? いきなり何――ひゃぅ!?」
「むぅ。この柔らかさ、大きさ……。リクちゃん、Bの壁を越えてCになったんじゃない? 私なんてAの壁すら……けしからんわ♪」
「そんな事……しら……んぁ! はぅ……も、もう……やめれぇぇええええええ!!」
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