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ヒスティマⅥ  作者: 長谷川 レン
第一章 桜の思い出
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連合軍



 ショウに入って早々、派手な帰還だなとガルムに言われ、少し苦笑いをしてしまうが、何はともあれ、迎えてくれたのがミュアとガルム、そして一応知り合いであるデルタ出会った事に、ボクは安堵した。

 ショウに向かうと決めても、ボクはその場所を知らなかったのだ。その代わり、世界地図が頭の中にでも入っているのかと言いたいほどのキリの記憶の地図を信じて、ここへとようやくたどり着いた。この時代に戻って来てからまだ二時間ぐらいの話だ。


「それにしても、四人とも無事でよかったぁ! これで少しはショウの空気が良くなる!」


 顔に青いたんこぶが出来ているデルタがそう言っている所を見ると、どうやら今までショウの空気が悪く、兵士の士気もよくなかったみたいだ。

 ちなみに「久しぶりのハグだぁ!」とか言いながら飛び出してきたデルタの顔面を鞘で殴っておいたので青いたんこぶが出来ている。なのにこれだけ饒舌に喋れるなんて、さすがデルタだ。


「帰って来たんですね……」

「長かったような、短かったような、だな」


 実際にはボク達にとって時間が流れたのは二週間。だけど、この元の時代ではすでに二ヶ月経っていると言うのだ。どう変わったのか、まだよくわからないが、ここからでも見える白い塔を確認する事が出来るのであまりよくない戦況だろう。


「リク様。カナ様がお待ちですが、先に宿の方へと向かいますか?」


 宿、と言う事は、ボク達の疲れを案じての事だろう。だけどボク達はこれっぽっちも疲れていないので、その申し出は断った。


「いえ、早く母さんの所へと連れてってくれますか? すぐにでもライコウへと向かいたいですから」

「わかりました。ではガルムさん、デルタさん。門の見張りをそのままお願いいたします」

「任せておけ」

「リクちゃ~ん♪ 後で宿の場所教えてね? 俺が仕事なんて放棄して今すぐにでも向かってあげヴゥッ」

「お断りしますね?」


 静かに魔法の玉を腹へと放っておいたのだが、デルタはやはり倒れる事なく踏ん張った。この人の体力は一体どうなっているんだろうか。前よりは格段に強くなっていると思うんだけど……。


「久しぶりのリクちゃんがこの二ヶ月で俺のあしらい方を覚えてくるなんて……」

「いや、二か月前も同じような物だっただろうが」


 ガルムの冷静なツッコミが飛ぶ。

 前の様に追加で襲ってくるのかなと思っていたのに、なぜか引き下がったデルタにボクは不思議に思う。いつもだったらここら辺で抱きついてくるぐらいはすると思ったのだ。


「えっと、二人とも、どうしたんですか? なんだか、元気が無い様に見えますけど……」

「「――ッ!?」」


 ボクの言葉に、一瞬驚いた顔をした二人がすぐに平静を取り戻したかのように表情を戻す。


「い、いや。そんな事ないよ? 俺はいつでもリクちゃんLove(ラヴ)だからな!」

「そうだぞ。元気が無いと見えるのは、きっと戦争がずっとジリ貧だからだろう」


 士気が低い、と言う事を言いたいのかな。でも、それとはもっと別のような気がするのだが。


「リク様、行きますよ?」


 これ以上言っても話してくれるとは思えず、ボクは二人に頭を下げてからミュアについて母さんがいるショウの城へと向かって行った。



★★★★★★★★★★



 ボク達が街を歩いていく中で、いろんな人が商店街を歩いている。でも一番多いと思われるのが兵士で、鎧を着た人が大多数だ。


「街の人達、全員ショウの国の人ですか?」

「違いますよリク様。鎧につけている国の紋章を見てください。ショウの紋章は刀を飾った物。あの人達は別の国の兵士です」


 何故他の国の兵士が? そんなふうに思っていると、ミュアの隣を歩いていたリンスマリアが答えた。


「今、ショウはライコウへの中継所として兵が集まってるんだ。ヘレスティアはあまりにも強大でね。そしてあの塔によって我々全員を操る事も出来ると言う。その証拠も見せてね。とある国が操られて他の国へと攻めたんだ。その所為でヘレスティア以外の国は連合軍を組むことにした。今までの諍いを一度水に流し、共同してあれを倒すとね」

「一つ疑問~。どうしてヘレスティアは一度に全員を操らなかったの~? 絶対そっちの方が効率良いよね~? 悪魔を解き放たなかったのは疑問に残るけど~」

「さぁね。でも、おそらく楽しんでるんだ。最終兵器でそれを持っているとして、お前らは何処まで戦えるのか、とか。普通だったら他の国は、いや、他の国は大体ヘレスティアへと使者を送って同盟、もしくは命乞いをしに行った。だけど、ヘレスティアはそれを拒否。そしてその使者を通して言ったみたいなんだ。歯向かわなければ滅ぼす、とね」


 わざわざ国を敵に回し、戦争を起こしている。確かに遊んでいると言っても過言ではない。でも何のためにそんなことを。


「ともかく、各国はヘレスティアではない国へと使者を出し、連合軍を組んで一番近いショウへと集まっているんだよ」

「と言っても、全ての国では無く、一部ですが。連合軍は自由な国ライコウ、科学の国ショウ、炎立ち上る国アラレウンド、水の豊富な国ウルシール、常闇の国ゲネテシス、宗教を重んじる国ロースクルス、断崖絶壁と言われる国ハーロンです」


 意外な事に、その内三つともよく知っていた国であった。過去からあった国で、戦争をしたけどすぐに蹴りが着いてしまった国だ。


 ボクが兵士、もしくは騎士の紋章を確認していく所、ショウの刀の紋章の他、炎の紋章があるのがアラレウンドで、雫の紋章がウルシール、黒い爪のような紋章がゲネテシスで杖の紋章のロースクルスと何となくわかる範囲で見てみた。

 ただ、ハーロンらしき紋章は見つけられなかった。

 誰もかれもがいかつい男、と言う事は無く、その中でも優しそうな人や、知的な人もいた。それでも一部と言うだけあって、その他は頬に傷があったりでちょっと怖い。

 だけど誰一人として女という人や、ましてはボク達と同年代ぐらいの人は一人としていなかった。


「今ここに集まっている兵士はざっと五千でしょうか? それでもヘレスティアには届きませんが」


 五千で届かないとは、軍国であるヘレスティアは一体どれだけの兵隊が居ると言うのか。


「今はカナ様の意向で攻撃をしていませんが、他の国はそうとも限らないのでしょう。それも、今日か明日で終わりですね」

「今日か明日で終わりってどういう事?」

「四人が帰られたからです。カナ様はこの事も全て見て(、、)いましたよ?」


 そっか。母さん、未来を見ていたんだ。ボク達がどれだけ強くなったかとか、全部わかってるんだ。

 時の神〝クロノス〟。母さんは自分の事をそう言っていたそうだけど、ボクにとっては、ただの自由すぎる母親だ。キリに事実を言われた今も、それは変わる事は無い。


「迎えにはこねぇンだな」


 キリがそう口にした時、ミュアは嘆息をしながら答えた。


「現在カナ様は各国の王との会議で抜けられないのです。たぶん、会議がなければ飛んできますよ」


 それは文字通り、そうするということなのだろう。

 うん。やっぱりボクにとって、母さんは母さんだ。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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