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1月18日 昼 青年の主張

 一月十八日 昼





 できることと、できないこと。その境目を知ることが、大人になると言うことだ。

 俺はそう思う。

 だから俺は、個性尊重なんて意味不明な教条を掲げる今の教育も、よくある、『諦めなければ絶対に夢はかなう!』なんてキャッチも大っ嫌いだ。

 だってそうだろ?

 個性のある奴は産まれた瞬間から個性があって、そして個性的であり続け、死ぬまで誰が何をしたってそれを失うことはない。大体、人から与えられた『個性』ってなんだ。そんなもの陳腐なキャラクター付けでしかありえない。諦めなければ夢は叶う、にしたってそうだ。もしそんな理屈が通るなら、義務教育で必死こいて何が何でも絶対に諦めない根性とやらを教え込めばいい。そしたら、世の中の野球選手とアイドルの数は幾何級数的に増大することになるはずだろう? それで皆幸せになるはずだろう?

 諦めなければ夢は叶う。この言葉は、一体どれだけの人間を殺してきたのか。ああ、それを信じたいって気持ちは分かるよ。俺もそうだ。できるならそうであってほしい。ただ、俺のまだ少ない人生経験からで恐縮だが……いや、まだ少ないながらもそんな結論に辿り付いてしまうって言うのが、何よりの証明になるのかな。いいか?

 この世界には自分には絶対にできないことがある。

 いくら努力しようが、諦めなかろうが、絶対にできなくて、

 そしてそれを『できる』奴は、何の気なしにその不可能性を飛び越える。

 才能は努力よりも遥かに力を持ち、

 凡人は天才に一生涯勝つことはない。

 残酷で、そんなこと絶対に認められないほどに凄惨だけど、

 それがこの世界。

 俺達が今生きている、この世界の真実。

 いや、そんな大層な形容で語られるものなんかでもないか。皆そんなこと、心のどこかで気づいてる。でなければ『神』や『運命』なんて言葉が産まれるはずないもんな。

 そうだ、当たり前のこと。

 俺はレーシングドライバーにはなれないし、

 名探偵にもなれないし、

 成績は中の下以上にならないし、

 身長は平均から離れないし、

 顔の造形も平均点を超えないし、

 親は普通のサラリーマンだし、

 英検は三級だし、

 漢検は準二級。

 つまり凡人だ。

 どこからどうみても。

 ははは、そんな俺が、こんな異常事態に対応できるわけないだろう?

 言わば、この結果も必然。

 俺が何をした所で、荊原は放課後殺人クラブの正体を暴いたし、それを追って死んでいた。

 ならば、それを、なぜ悲しむことがある? 何の責任がある? ないさ! そう決まっていることがそうなったところで、俺には何の関係もない。それともいるのか? リンゴが木から落ちることや、水が百度に達すると気体になることに、怒ったり悲しんだりする奴が。

 俺は全ての運命を受け入れる。

 そう決めたんだ。

 だから、悲しくなんて、ない。



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