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1月17日 2 その道が悪でも

 ○



「で、会長、そういうわけなんで!」

「そういうわけなんでってねぇ……」

 会長は珍しく、渋面を作る。

「個人情報保護法、って知ってるかい? ああごめん、知ってるわけがなかったね」

「知ってますよ!」

 まぁ詳しくは知らないのだけど。最近とみに厳しくなったりしたアレだろう。ていうかなんで知らないこと前提なんだよ。どんだけ馬鹿だと思われてるんだよ俺。

「最近、個人情報の取り扱いには、我が学園も厳しくなっているんだ。しかも一人暮らしの女の子の住所を、君のような野獣になんて。そんなものを教えたことがバレたら、さすがに僕の立場もまずいことになる」

 ……至極、最もだった。俺が野獣というところ以外は。真面目な話に一点だけつっこみ所を混ぜられると、果たしてそこをツッコんでいいのかわからなくて、非常にやりづらい。

「どのくらいまずいかというと、休みの日にたまたま通りで会った友人に声をかけたら、クラスで『いくら飢えててもあいつは無いよな』と普段からネタとして扱われてる女子とデート中だったのを発見してしまったときくらいまずいよ」

「それは気まずい!」

 ……別に笑ったりしないし、言っててくれればいいのに。言っててくれれば今度からその話題になった時、おもむろに方向転換とかしてやるのに。

 ていうか別にこれ、そんなにまずいことじゃねーよ。寧ろその光景を目撃された友人の方がまずいよ! ていうかまずいと気まずいは違うよ!

「ねぇ会長、冗談やってる場合じゃないんですよ! 荊原がマジでヤバいかもしんないんですって!」

「“もう、しょうがないなぁそう司君はぁ”」

「だからその表記やめろっつってんでしょ! あとそのカッコはダミ声を示す記号じゃありませんから!」

 後最近のドラちゃんはキレイな声になってますから、とツッコミたかったが、残念ながら息が続かなかった。はぁはぁ。

 しかし会長は俺のツッコミにはまるでお構いなく、口でドラえもんが秘密道具を出すときの効果音を奏でながら、ポケットから手帳を取り出した。ピコン! テュルルルン! テッテレテッテテーッテテーン♪ という感じだろうか。こういう効果音を表記するのは凄く難しい。我ながら頑張った方だと思う。

「もってけべらんめぇ! 秘密手帳~」

「なんでそこまでやって忠実に再現しないんですか!」

「ほら、著作権対策。一部分変えてオリジナルと言い張るのさ!」

「なら最初からそんな危ない橋渡るの止めましょうよ……」

 限りなく黒色に近いグレーで留まっていることを、今は信じたい。

「で、その手帳の中に荊原の住所が記されているんですね?」

「ああ、もちろん! ……ってなに問答無用で奪いに来てるんだい蒼司君!」

「いやちょっと今会長に構ってる時間無いんで……やりぃ!」

 ねんがんの荊原の住所を手に入れたぞ!

 いや立場は逆なのだけど。

 な、なにをするきさまらーと叫んで倒れたノリのいい会長を知り目に、ぱらりと手帳をめくると、会長の私的な情報がぞくぞくと目に飛び込んできたが、さすがに見て見ぬふりをする。荊原の住所は、手帳の最後の方に記されていた。この住所だと案外……というか恐ろしく学園に近いな。徒歩で十分というところだろうか。今から行ってみてもいいかもしれないくらいの近さだった。善は急げともいうし、不安なままでいるのは精神衛生上よくないし……。

 ……けれど、これで訪ねて行って、もしもそこに荊原がいなかったら。

 その時は、どうすればいいのだろう。

 さっきから考えまいとしている、最悪の展開。それが既に起こっている可能性は、どのくらいあるのだろう。



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