1月17日 危惧
一月十七日
……あれから、一週間が経った。当初の目的を忘れ、女子Aをおちょくるのに愉しさを見出していた俺であったが、さすがに違和感を感じ始めていた。アマツが学園にやってきてから八日が経つ。それから荊原は、一度として登校していないのだ。そのうえ、メールも電話も、一切返さない。
もしや、と思う。
もしや荊原は、アマツのヒントから独自に犯人を見つけたのではないか?
そして――、
荊原の消息が分からなくなっているということは……。
いやまさか!
考えすぎだ!
けれど、ただ単に学校を休んでいるだけでなく、一週間も連絡がつかない、というのは。
少なくとも、普通じゃない。
つまり異常事態だ。
俺はまず、警察に電話することを考えた。けれど、荊原がやろうとしていることを考えると、警察はマズイと思いなおす。荊原自身が、純粋に被害者というわけではないのだ。もしもアイツが既に復讐を果たしていた場合、警察を呼ぶことは逆に仇となる。放課後殺人クラブを一向に捜査しない警察に、不信感を持っているというのもあった。
俺は考えた末、とりあえず彰に電話してみる。そういえば、捜査チームは二班に分かれていたのだ。俺に内緒で、何かをやっているのかもしれない。
そんな、淡い希望。
それは当然のごとく、否定された。
「そうだね。あの女とはファミレスで会ったとき以来、なんも関わってないよ。考えすぎじゃないのソーちゃん? 一週間学校サボるくらい普通……いやでも、一週間音信不通ってのは普通じゃないよな、確かに。ましてやソーちゃんからのを、あのビッチが。……ん、しょうがない、捜させるか。どっか行きそうなところとか、ある?」
……荊原が行きそうなところ。ダメだ、何も思い浮かばない。意外と付き合い浅いんだよな、俺達。
一つだけ、思い当たる場所と言えば。
「彰。あいつ市内で一人暮らししてるらしいんだ。その家を調べられないかな?」
「家ぇ?」
「ああ。どうにかならない?」
渋い声色が返ってきた。
「まぁ、どうにかなることはなるんだけどさ。俺がその住所を調べるとすると、裏の道を使うことになるんだよ。ガラの悪いなんて表現じゃきかねぇゴミどもが、あのビッチの住所を知ることになるんだ。俺はお勧めしないよ」
……うぅ、確かにそれはゾッとしない。一応女の一人暮らしだし、そこらへんの配慮は必要だな。
「それに、そんなことをしなくてもソーちゃんなら、正規のルートでヤツの住所を調べるくらい、できるんじゃないの?」
「え?」
「アイツを使うんだよ」
アイツ。
そう言われて、すぐ思い至った。
確かにそうだ。さすがに学園は荊原の住所を把握しているだろうし、学園の情報と言うのはつまるところ、あの男の掌の上なのだ。
あの、便利な邪神、会長の。
いやもちろんいいか悪いかで言えばとっても悪いことなのが……今はありがたい。もしかしたら人命がかっているかもしれないし、今は穢れた力を使ってでも住所を割りださなければ。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いたけれども、俺は教室には帰らず、生徒会棟へと向かった。




