第二話:”何か”とハカセ
「夏美、私とお話しましょう」
誠に遺憾ながら、私、藤堂夏美は、”人の姿をした何か”と仲良くお話ししてしまう関係になってしまいました。あの恐怖の誕生日以来、”人の姿をした何か”はロウソクを消しても、電気をつけても、ケーキを食べ終わっても、ハカセがノンアルコールのワインでベロンベロンに酔っぱらっても、その翌日になっても。”何か”は人の姿をしたまま、私の目の前で、笑って話しかけてくる。
こうなりゃ、女は度胸。えぇ、目を凝らしてみてやりますとも。じっくりと見つめてやったその”何か”はどこぞのお姫様のような、立派な十二単の出で立ち。肌の色は色白だと思うんだけど、まぁ半分透けてるから何か怖い。色白のさらに上をいってる。まぁ透けてる意外は普通のお姫様な格好をした女の子なので、それ程怖くなかった。だから、うっかり優しい言葉をかけちゃったんだよ。
「どうしてこんな所にいるの?」
って。そりゃ聞いちゃうでしょ。そしたらもうすごく満面の笑みで延々と語り尽くされて。もう、これだけ語り合ったら私たち、親友ですよね!っていうもんだから、親友は一日にして成らずです、と断った。だけど、友達にはされちゃったっていうね。
この”何か”なお姫様の言うには、天国で大人しく暮らしてたんだけど、ふと覗いた下界に自分にそっくりの女の子が恋いにヤキモキしているから、応援してあげようとお節介で降りてきたそうな。そんな気軽に現世にこれちゃっていいの!?
で、そのそっくりで、ヤキモキな女の子ってのが私のことらしく。
「そうは言われても、ヤキモキなんてしてないしねー。」
「そんなことないよ!私にはわかるの!
なんて言ったって、カミサマにだっておまえは才能あるって褒められたんだから!」
なんの才能だよっていう。どうも、あの世は結構イージーな世界みたいだ。あまり死ぬのが怖くなくなってきた。とりあえず、私ではこんな超常現象は処理できないので、困った時のハカセ頼みに限る。ケータイで今すぐこい、このハカセ野郎!って呼び出した。ハカセはこういうと喜んで来る。困った子だわ……。
「夏美、あがるぞー」
ハカセが玄関をあけて入ってくる。家の鍵の隠し場所ばれてるとか、どうなの。そしてハカセはノックもせずに私の部屋のドアを開けてくる。年頃の乙女がいるんですがっ!
「ハカセ、ノックしなさいよ。」
「なんだよ、夏美が呼び出したんだろ。」
それで、ホイホイついてくるなんて、このハカセ野郎!っていうとまたこの男は喜ぶだけだから言ってやんない。
「とりあえず、ハカセ。これ何とかして。」
私は地面に立っているようにみえて、地に足がついていない、どこかの猫型ロボットのような、目の前の”何か”を指さして言った。だけど、ハカセは不思議そうにこちらを見ている。あぁ、その可能性を考えていなかった。
「これって、そこに何かあるのか?」
藤堂夏美。霊能力者レベル1。うれしくないし。