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月の姫と英雄たち  作者: ドラキュラ
反董卓連合軍編
47/155

第三十三幕:真の臣下に

えー、本格ファンタジーを目指していたんですが・・・・やっぱり、無理でした!!


彼女からは怒られましたが、お許しは得たので、何とかなります。(涙)

「何の音だ?」


洛陽を焼き払う準備をしていた者達は、空に木霊する乾いた音に首を傾げ空を見る。


しかし、何も見えない。


あるのは雲と太陽だけだ。


「それより速くやろうぜ。もう直ぐ連合軍が来るんだ」


仲間が未だに空を見上げる男に声を掛ける。


「そう、だな。だけどよ・・・・本当にやっちまうのか?」


「董卓様ならやるさ。それで連合軍が足止めされるなら良いだろ?」


「そうだけどよ・・・大罪だぞ」


都を移す行為と墓荒らしは・・・・・・・


「今さら言うのか?」


「・・・そうだな・・・ん?」


「どうした?」


「何か、音が聞こえないか?」


「音・・・聞こえるな」


乾いた音と剣の音だ。


「・・・城から聞こえるな」


「あぁ。まさか、とは思うが・・・・・・」


「どうする?」


「行ってみる、か」


現在、城でも大急ぎで遷都の準備をしているが、董卓達は連合軍をどのように迎え撃つかも会議している筈だった。


そんな所へ雑兵の自分達が行って良いのか?


そう思うが、音は未だに聞こえる。


ここは行くべき、と判断して二人は城へ向かった。


その城にある城壁では・・・・・・・・・


「このっ!!」


「遅いわね。前より腕が鈍ったんじゃないの?」


バンッ


乾いた音がすると同時に・・・・・・・・・


ガギィン


盾で防御する音がする。


僅かな間に流れる音であった。


赤い髪に水色の瞳をした女と、紫と銀色が混ざった髪に月の色をした瞳を持つ娘が城壁で戦っていた。


赤い髪の女は剣と盾。


月の瞳を宿した娘は武骨と繊細な物---“拳銃”を握っている。


「貴方、私を婚約者を寝盗った淫売、と言ってたけど違うわよ」


月の瞳を持つ娘---夜姫は武骨な拳銃---“モーゼル・ミリタリー”の引き金を引きながら言った。


モーゼル・ミリタリーから発射された弾が空を斬り裂き、女の額を撃ち抜こうとする。


それを女は剣で斬って、恫喝するように訊ねた。


「何が違うのよ?!貴方は、私から愛しい男を奪ったじゃない!!」


「奪ったんじゃないわ。向こうから私に近付いて来たのよ」


「嘘よ!彼が・・・彼が私以外の女に眼を向けるなんて有り得ないわ!!」


赤髪の女は直ぐに否定した。


夜姫が何と言おうと・・・恐らく死んでも信じないだろう。


そんな気が前面に押し出されていた。


「大した自信ね。その割には・・・・他の男と寝てたんでしょ?裸で、しかも彼が買った寝台の上で」


「ッ!?」


赤い髪の女が動揺する。


それを夜姫は見逃さずに繊細な拳銃---“ワルサーP38”の引き金を引いた。


モーゼルに比べて反動は、それ程ではない。


どちらも歴史に名を残す自動拳銃である。


ワルサーP38から発射された9mmパラベラム弾が赤い髪の女を掠めた。


ツゥ・・・・・・・・


頬から血が流れる。


「私の顔によくも!!」


「あら、ごめんなさい。だったら、今度は・・・心臓を撃って上げる」


「やれるものならやってみなさい!!」


赤い髪の女は激昂した状態で剣を振り下ろす。


夜姫は避けようとせず、ワルサーP38の銃身で受け止めた。


普通なら斬れる筈だが・・・見事に剣を受け止めている。


傷一つ付いていない。


「なっ!?」


「駄目ね。そして遅いのよ!!」


夜姫が笑みを浮かべたが、直ぐに険しい顔で赤い髪の女を蹴り飛ばす。


脇腹を思い切り蹴られた赤い髪の女は、僅かに血を吐き出し城壁にぶつかる。


「ゲホッ・・・・・・・」


「もう終わり?そんな実力では・・・彼を私から取り戻せないわよ」


「まだ、よ・・・必ず貴様を倒して、彼を私の手に取り戻してみせる!!」


城壁の一部を掴み、立ち上がりながら赤い髪の女は夜姫を睨む。


「残念だけど無理よ」


「どうしてよ!彼は私の婚約者よ!!」


「元が付くわ。だって、彼は妻子持ちよ」


“おい、姫さん・・・何も今、火に油を注ぐような真似をする事ないじゃないか”


誰かの声がした。


男の声で、その声は夜姫を誘導した声であった。


「あら、居たの?」


“居たさ。まぁ、途中からは姫さんに任せたけど”


「相変わらず無責任ね。だから、こんな状況を招いたのよ」


“否定はしない。だが、姫さんだって責任の一部はあるんだぞ?”


「あら、どうして?」


「愛しい貴方!居るのですか?私の愛しい殿方!!」


赤い髪の女---鬼女と言える形相で何処から聞こえるのか、分からない声に呼び掛ける。


「返事をして上げたら?」


夜姫は退屈そうに声に語り掛ける。


“何を言えと?俺は、その女に捨てられたんだ。今さら返事をする義務も義理も無い”


「酷い男ね」


“だったら、姫さんはどうするんだ?”


「・・・・・・本当に酷い男ね。私にそれを訊くなんて」


“今さら気付いたのか?俺って性格悪いんだぜ”


「・・・後で“お仕置き”するわ」


“出来るなら、どうぞ。それはそうと、そろそろ董卓が来るぞ”


「一度は会ってみたかったの。でも、その前にあの子たちは来ないの?」


「愛しいお方!どうして、私の声に返事をしてくれないのですか?!」


赤い髪の女は戦う事も忘れて声に語り掛ける。


所が、一向に返事は来ないから憐れだ。


「何とか言って上げなさいよ。あんな状態で殺しても目覚めが悪いわ」


“そんな事を言われてもねー。やる気無いんだもん”


「だもんなんて言葉を使わないで。それはそうと“あの子達”は、まだ来ないの?」


“もう直ぐ来る。とは言え董卓と同じ、かもな”


「・・・・だったら、ここを離れるまでよ」


そう言って夜姫はモーゼルとワルサーの銃口を同時に向けた。


赤い髪の女は、やっと夜姫と戦っていた事に気づく。


「また会いましょう」


それだけ言って引き金を引いた。


左右に弾が排出されて乾いた音がする。


弾は女の肩に命中した。


「肩のお返しよ」


夜姫は冷たい声で言いながら、モーゼルとワルサーの銃口から出ている白い煙を吹き消す。


「・・・・覚えておきなさい。必ず貴様を殺して、彼を取り戻してみせる」


「しつこい女は嫌われるのよ?」


「黙りなさい!この売女が!その首を必ず切り落とすわ!!」


それだけ言い残して、女は姿を消した。


同時にドアが蹴破られる。


「・・・・・・」


夜姫は城壁から飛び降りた。


『!?』


ドアを蹴破り、城壁に出た董卓達の驚愕した眼が入る。


それを見ながら夜姫は城壁から落ちたが、直ぐに体勢を整えて地面に着地すると走り出した。


『お、追え!!追うんだ!!』


董卓と思わしき男の怒鳴り声が上からする。


カー、カー、カー


聞き慣れた鳴き声が上空から聞こえて、夜姫は飢えを見上げる。


2匹の黒い鳥---鴉が夜姫の前まで飛んで来た。


「よく来たわね。早速で悪いけど、何処か安全な場所を探して」


『カー』


夜姫の言葉に2羽の鴉は鳴くと、直ぐに消えた。


“これで、あの煩い馬鹿犬が来たら前と同じだろ?”


誰かの声がした。


いや、夜姫には、その声が誰かのか分かっていた。


「えぇ。でも、違うわ」


“違う?”


「貴方も混ぜて皆が揃ってこそ・・・・初めて昔に戻れるのよ」


“そう、だな。しかし、まだ時間は掛るぞ”


「そう。仕方ないわね。それはそうと、劉備達は?」


“もう直ぐ来るんだが・・・内輪揉めが発生した”


「あらあら・・・ご主人様が困っているのに駄目ね」


“誰に言っているんだよ。劉備達か?”


「いいえ。少なくとも劉備達は実に良い人たちよ。それこそ・・・私が望んでいた父みたいに優しいわ」


“・・・・・・・・”


夜姫の言葉に男は無言になる。


それはそうだろう。


この男を始め夜姫に従う者達は、彼女の触れて欲しくない過去を知っている。


だから、親の愛情を受けずに育った・・・・彼女の言葉は耳に痛い。


「貴方が落ち込む必要なんてないわ。もう昔の事よ。私だって、何時までもわらべみたいに泣いたりしないわ」


“そうだけどよ・・・どうするんだ?”


「劉備達を“真の臣下”にするのか?」


“あぁ。俺等としては、ここに来るまでの繋ぎとしておきたい”


「それは駄目よ。彼等には恩があるわ。それを返さない所か利用するだけなんて・・・・私は許さない」


“昔、さんざん利用されたからか?”


「そうよ。それをどうして他人に出来るの?否・・・私は出来ない」


“・・・分かった。それじゃ、真の臣下にするんだな?”


「えぇ。するわ。爺は怒るでしょうけど」


“怒るだろうな・・・・それこそ一国が灰になるならマシだ”


一国どころか全国を灰にしそうだから怖いのだ。


「爺は過保護過ぎなのよ。私だって、もう恋人の一人くらい持っても良いでしょ?」


“幼い頃から見て来たんだ。父親役として娘に近付くのは害虫なんだろうぜ”


「貴方も?」


“まぁ、娘が彼氏なんて連れて来たら・・・・血の雨が降る事は保障する”


「嫌な保障ね」


まったく、もってその通りだと思わずにはいられない。


だが、元来・・・父親という生き物は娘には甘いものだし、溺愛する傾向があるのも否定できない。


だから、その爺とかいう人物の行動も極端に言えば、父親役を担っているなら当然と言える。


傍から見れば、とんでもない迷惑な話だが。


“そう言うなよ。それはそうと、袁術はどうするんだ?”


「ああ、彼も居たわね。そう言えば・・・まだ報酬を与えていなかったわね。フェンリルが邪魔したせいで」


“まぁ、あいつも独占欲が強いからな。でも、くれるんだろ?”


「当たり前よ。命がけで私を護ったんですもの・・・一夜の相手くらいはしないと、ね」


それを言う夜姫の顔は、とても妖艶にして美しい顔だった。


“・・・・・・・・”


声の主は夜姫の言葉に何も言わず気配を消した。


それから直ぐに鴉達が戻り、夜姫は案内された方角へと消えて行く。


それと同時に連合軍もまた動き、董卓軍も夜姫を探しつつ・・・・洛陽を燃やす手筈を始めた。


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