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月の姫と英雄たち  作者: ドラキュラ
反董卓連合軍編
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第二十七幕:再び眠りへ・・・・・

高級そうな寝台に一人の娘が寝息を立て寝ていた。


年齢は二十を越えたか越えていないであるが、人形のように綺麗な整形された顔立ちで見る者を誘う妖しさを持ち合せている。


髪の色は銀と紫。


この世の者ではない髪の色で髪艶もまたそうであった。


手で幾ら掬おうと零れ落ちてしまう程に艶やかであるが今は誰の手にも触れられる事は無く惜し気もなく寝台の上に晒している。


着ている衣服は土などで汚れており顔も同じであるが、それすら差し引いても・・・やはり魅力的であった。


「う、ううん・・・・・・」


娘が僅かに寝返りを打つが眼はまだ覚めない。


この娘の名は織星夜姫と言い都内の公立大学に通う二年生である。


しかし、どういう経緯か三国志の時代に来てしまい眼が見えないという事態に陥ったが反董卓軍に参加していた後に「蜀」を治める劉備玄徳に助けられ事無きを得た。


この時はまだ蜀を治めてはいないし本来なら反董卓連合軍にも参加していないのだが、ここでは参加している。


おまけに“三顧の礼”として有名な諸葛亮が既に劉備の部下として仕えているし他の者たちにも正史でも演技でもない形で出ているから訳が分からない。


だが、何よりも訳が分からないのは夜姫自身と言える。


所属している劇団の衣装作りを終えて試しに着た途端に気を失って眼も見えず三国志の時代に来たというのだから。


本当なら泣きたい気持ちであるが生来が優しく我慢強いからか・・・誰にも弱さを見せようとはせずいたが・・・そこが男の保護欲を刺激と言えば良いだろうか?


或いは彼女が天の姫という事もあるのか反董卓連合軍では不自由なく生活できたが今は違う。


今、彼女は洛陽に居る。


何故なら連合軍が倒そうとしている人物---董卓の手により攫われたからだ。


だが、当の本人は寝ているからそれも分からない。


もう1日は軽く経過しているのに一向に眼を覚まさないのは以上であるが理由も分からない為どうする事も出来ないのが現状である。


“・・・可愛い寝顔だ”


誰かの声がしたが誰にも聞こえない。


“そうだな。しかし、よく眠る姫君だな”


また誰かの声がするも誰にも聞こえなかった。


“力を使い果たした、と言えるかもな。若しくはあいつ等が助けに来るまで寝ているか”


“まるで眠り姫だな”


“知らないのか?姫さん、眠り姫みたいな話に憧れているんだぜ”


眠り姫とは簡単に言えば眠る姫を王子がキスで眼を覚ませて結婚する、という童子向けの本である。


しかし、本当の童話はかなり恐ろしい内容となっているから子供たちの間では結婚した所で終わっているのが常である。


“そうなのか。それで我らは何時、ここへ来れる?”


“同じ質問を何度もするなよ”


“貴様は焦るという事を知らんのか?こうしている間にも姫君は何処ぞの愚か者に手籠めにされるかもしれないではないかっ”


声が些か荒くなった。


それが眠っている夜姫にも聞こえたのか・・・・・・


「うううん、うううう・・・・・」


寝返りを打ち僅かに顔を歪めた。


“姫さんが泣きそうじゃねぇか”


“・・・・・・・”


片方に言われ先ほどまで声を荒げていた者は沈黙する。


“まぁ、焦る気持ちは解かるが我慢しろ・・・って、誰か来たぞ”


“何?”


両方の声が扉の開かれる音で遮られた。


ギィ・・・・・


僅かな音を立て扉が開くと滑り込むようにして巨大な影が入って来る。


その影は鎧に身を包んでおり眼が殺気立っていた。


“何だ、ただの傲慢な餓鬼じゃねぇか”


“何を暢気な事を言っている。殺気だって居るではないか!!”


片方が暢気であるのに対して、もう片方は殺気立っている事に慌てている。


「・・・・・・・」


寝室に設けられた窓から月の光が入って来て影を照らす。


影は男であった。


年齢は二十代半ばから後半で逞しい顔つきと身体が特徴である。


男の名は呂布。


三国志の中では最強と名高い武将であるが裏切り癖があり主人を何度も裏切っている。


現在は董卓の養子として護衛を務めている呂布だが、先ほどの会議ではここに来る事を禁じられていた。


それなのに来ている。


彼を知る者がいれば直ぐにでも止める事だろう。


何せ彼は今まで戦場では敵無しだったのだ。


自分の並み外れた腕力もあるが、彼の指揮する軍団---五原騎兵団の実力もある。


そんな彼だが・・・負けた。


今、目の前で寝ている娘一人にだ。


しかも、呂布自身も手傷を負わされるという失態を犯してしまい、彼としては屈辱極まりである。


となれば・・・やる事は一つしか無い。


「・・・起きろ。小娘」


呂布は寝台で眠る娘---夜姫に声を掛けるが、寝息を立てるだけで起きない。


「起きろ。貴様ともう一度勝負をする」


「・・・・・・・」


夜姫は寝息を立て答えない。


それが呂布を刺激し苛立たせる。


「・・・起きろ。さもないと、この場で絞め殺すぞ」


ドスが利いた声で夜姫に言うも寝息を立て続ける彼女に・・・呂布は大木のような手を夜姫の首に当てた。


「・・・起きろ。そうしないと、このまま力を込めて殺すぞ」


「・・・・・・」


それでも夜姫は眼を覚まさない。


「・・・なら、死ね」


呂布は力を込めた。


ググググっ、と音を立て夜姫の細い喉が絞まる。


「・・・・ッ」


夜姫は息苦しさを覚えて両手で呂布の手を退かそうとしたが、まったく腕は動かない。


寧ろ余計な体力を使い力を失って行く。


「さぁ、起きろ。そして戦え・・・俺を前みたいに倒せ!!」


更に力を込めて呂布は懇願するように最後は叫んだ。


“自分を倒した奴に一種の憧れでも抱いているのか?”


“何を悠長な事を言っている。姫君が死にそうなんだぞ!!”


誰かの声が2人分したが、誰にも聞こえない。


だが、片方は焦っている。


“ええい、忌々しい餓鬼が!食い殺してやる!!”


“実体が無いのに言っても意味無いぞ”


“くそっ。姫君、起きて下さいっ。そのままでは死んでしまいます!!”


声が必死に声を掛けるも夜姫は眼を開けようとしない・・・・・・・


「起きろっ。本当に殺してしまうぞっ」


呂布は声を荒げ片手から両手で首を締め出した。


「起きろ。早く起きて俺と戦え!!」


「・・・・・・ッ」


尚も夜姫は起きない。


これでは死んでしまう。


「この小娘がっ。勝ち逃げか!!」


「ッ!!」


カッと夜姫の眼が開き呂布の手を掴むや万力のような力で喉から手を退かした。


「・・・寝ている娘を襲うなんて恥を知りなさい」


バンッ


両手を引き離し空で弾くと呂布の身体を蹴って寝台から追い出した。


「そうだ。それで良いっ」


呂布は蹴られたと言うのに笑いながら立ち上がって夜姫に叫ぶ。


両手は震えているが、呂布は喜んでいる。


『この感じだ。この感じだ。この感じこそ俺が望んでいた物だ!!』


「何の用?私は眠いの」


夜姫は寝台から身体を出して立ち上がると右手で長い髪をバサッと振り払った。


「知れた事。貴様と勝負をしに来た」


「耳は飾り?私は眠いの。力を使い過ぎたのよ」


「力だと?」


「貴方には分からない事よ。さぁ、出て行って。それとも力づくで追い出されたいの?」


「やれるものならやってみろ!!」


呂布は剣を鞘から走るように抜いて、夜姫の頭上に迫った。


「死ね!!」


上段から一気に振り降ろされた剣は空を鋭く切り・・・夜姫を唐竹割りにする筈だった。


「遅いわね。眠っても避けられるわ」


夜姫は素手で何と剣を受け止めていた!?


しかし、一度、呂布はそれをやられたから驚かない。


「それでこそ俺を倒した女・・・・ぐはっ!!」


呂布は夜姫を褒めようとしたが、最後まで言う前に夜姫に突き飛ばされた。


閉じられた扉を突き破り廊下に出る呂布。


気絶しているのか呂布は眼を閉じている。


「・・・余分な力をまた使ってしまったわね」


これではまた眠る時間が伸びる。


後・・・2日か3日だろう。


本当なら後1日くらいで眼を覚ませた筈なのに・・・・・・・・・


「・・・何時になったら、力が戻るのかしらね?皆も心配しているだろうし・・・・・・・・」


“姫君・・・・・・・・”


“・・・・・・・・”


声の主は娘に語り掛けるが当然の如く夜姫には届かない。


「・・・・・・」


夜姫は唐突に倒れた。


そしてまた眠りの世界へ旅立って行った・・・・・・・


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