表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月の姫と英雄たち  作者: ドラキュラ
反董卓連合軍編
33/155

第二十幕:動き出す時勢

曹操の陣を後にした閻象は少し急ぎ足で主人である袁術の天幕へと向かった。


「殿、遅くなりました」


天幕へ入ると袁術、劉備、孫堅の三人が居て閻象が入って来ると視線を向ける。


「これは劉備殿に孫堅殿」


閻象は劉備と孫堅が居る事に驚くも直ぐに冷静に一礼した。


「閻象、どこに行っていた?」


「はっ・・・曹猛徳の所へ行っておりました」


「曹操の?」


「向こうから直々に私を呼んで夜姫様の事について聞いてきたんです」


「・・・・・・・」


袁術は無言で閻象に座るように促すと自身は後ろの椅子に腰を下ろし劉備と孫堅も座った。


「何と言った?」


「私が知る限りの事を。しかし、嘘も織り交ぜて伝えましたので混乱するとは思います」


「そうか。で、どうであった?曹操は」


「乱世の奸雄と言われるだけあって抜け目がありませんし野心もあり危険です。しかも暗殺を警戒してか部下を二人左右に置いておりました」


それだけでも用心深いと閻象は言い本心もそう簡単には表さないと言った。


「そうであろうな。あの男は・・・袁紹と何時か雌雄を決するからな」


「袁紹様、とですか?」


この発言に三人は驚いたが袁術はさも当たり前のように言い続けた。


「あぁ。あの男の事だ。連合軍内でも同等の力を持つのは袁紹と見ている筈だ。劉備は義勇軍。孫堅は呉という国を持っているが豪族の集団でありその頭領でしかない。それを考えれば二人は後でどう料理しようと自由だ」


「・・・普段からそれだけ聡明なら苦労しないんですけどね」


ここで閻象は思わず本音を言った。


「口が減らん男だ。それで奴等にどんな嘘を吐いた」


「はい。実は・・・・・・・・・・・」


閻象は包み隠さず全てを話した。


「よくもまぁ・・・それだけの嘘が言えるな」


劉備と孫堅もその通りだと頷くしかない。


常人なら嘘を吐くも直ぐにボロを出すのだが、閻象はそれを出さないで貫き通したのだから酷い褒め方だが詐欺師の才能があるかもしれない。


「性分とでも言っておきましょう。しかし、私の推測なりに言ったので嘘ではありません」


「なるほど」


「はい。では、私にも話してくれますか?最初から全て」


「あぁ。孫堅も知りたいだろ」


袁術は孫堅に視線を送ると孫堅は頷いた。


「はい。あの時の夜姫様はまるで別人でした。その理由を知りたいです」


「分かった。ただし、何があろうと口は割るな。家族にも言うな。それを約束しろ」


『承知しました』


二人はそれに重々しく頷いた。


袁術はそれから話し時々だが質問は無いか訊ね質問があればそれに答えた。


「・・・そうでしたか」


閻象は以前、言われたからさほど驚かなかったが改めて言われるとやはり驚いてしまう。


「あぁ。道化・・・フェンリル・・・何者かは知らんが、彼等が来るまでは我々が夜姫様の護衛だ」


「彼等はいつ来るんでしょうか?」


孫堅が訊ねるも袁術は首を横に振った。


「分からん。道化からの連絡は無い。だから、何時までとは分からん」


それではどうする事も出来ないと四人は頭を抱えた時だ・・・・・・・・・


“呼んだか?”


誰かの声がして本来なら聞こえないのに今回は聞こえた。


「道化か」


袁術が聞こえてきた声に訊ねると声は・・・・・・・・・


“道化でないなら誰だよ。それはそうと初めましてか?孫堅、閻象”


「そなたが道化か。どうやって声を私達に」


孫堅は声からして壮年---自分達と同い年か、と推測しながら訊ねる。


“企業秘密だ。それはそうと今、結界を張ったから誰にも聞こえないぞ”


誰にも聞こえないようにしたという事を聞いて孫堅は半信半疑なのか試しに大声を出してみたが誰も近付く様子が無い。


“疑い深い性格だな。虎という勇猛な異名を頂戴している割には”


「性分だ。しかし、これは有り難い。質問をしたいのだが良いか?」


“何だ”


「夜姫様は何者だ?」


“何者?織星夜姫。年齢は20歳で身長と体重ならびにスリー・サイズは・・・・・・”


「違う。もっと具体的に教えてくれ」


危うくそのまま説明をしそうな道化を孫堅は止めた。


“それじゃ何を知りたい?”


「護衛を任じられたのだ。相手の事を細かく知りたいと思うのは普通と思うが?」


“言うね。まぁ、そうだな。教えてやろう”


“教えなくて良い”


また誰かの声がした。


道化に比べて若い声だ。


それと同時に天幕が開き狼が入ってきた。


夜姫の傍へ常に寄り添うフェンリルだった。


“姫さんは?”


“寝ている。今は髭が立派な餓鬼と酒好きの赤子が護衛をしている”


“さんざん蔑んだ二人に護衛を任せたのか?”


“いざとなれば直ぐに駆け付ける。それに諸葛亮と典医も傍に居るから問題ない”


“なら良いけどよ。で、何の用だ?”


“知れた事。こ奴等に姫君の事を教える事はない”


フェンリルは四人を見てから言葉を放ったが口は閉じられている。


“少しくらいは教えてやろうぜ”


“何を教える。姫君の事は我らが知っている。なぜ他人に教えなくてはならん”


“虎の言葉を聞いてなかったのか?護衛をするんだ。少しは知っておくべきだ”


“なぜ知る必要がある”


「・・・失礼ながらフェンリル殿。貴方様は夜姫様の何なのですか?」


孫堅はフェンリルに訊ねると彼は眼を孫堅に向けて答えた。


“護衛だ。もっと正確に教えるなら護衛にして斥候兼追跡を任されている”


“自分で教えてるじゃねぇか”


道化はフェンリルの説明に何だかんだ言いつつ説明していると皮肉るもフェンリルは平然としていた。


いわゆる無視というやつである。


「斥候兼護衛・・・夜姫様は戦に出た事があるのですか?」


まさか、と孫堅たちは思いながらも訊ねるとフェンリルは冷静に答えた。


“何度もあるさ。陽人の戦いで貴様に褒美をやろうとこ奴は言ったが、我から言わせればあれ如きの活躍で褒美など甘い評価だ”


こ奴とは道化の事か、と四人は推測しつつ続きが気になり訊ねた。


「あれ如き、と言いましたが夜姫様はあれ以上の働きを・・・・・・・」


孫堅たちから言わせれば陽人の戦いは厳しかった。


夜姫と言う人物のお陰で助かったが、もし居なければ自分は討ち死にという最悪な展開になっていただろうと推測できる。


そうなれば後はもう向こうの思うままにやられていた、と彼等は考えており厳しかったと評価するがフェンリルから言わせれば甘いとの事だ。


“貴様等が産まれる前より姫君は戦い続けた。一国どころか何ヵ国も時には相手にして勝ち続けた。それなのに『奴等』は姫君を褒めもしないし褒美もやらなかった。それなのに貴様はあれ位で褒美を貰うなど姫君を冒涜しているに等しい”


「私は別に夜姫様を愚弄など・・・・・・・・」


“そう責めるような事を言うなよ”


道化が助けるようにフェンリルを戒めた。


“責めてなどいない。ただ事実を言っているだけだ”


“見方によれば責めていると取られるぞ”


“知らんな”


“・・・姫さんに言おうかな”


ポツリと道化は言うとフェンリルは顔を天に向けた。


“貴様・・・姫君に告げ口をするかっ”


“餓鬼みたいに言うなよ。俺はただこう言うんだ”


嗚呼、麗しき姫君よ。貴方の魔狼は貴方様が敬愛している人物を嬲りました。


『十分に告げ口ではないか』


四人は道化の言葉に口を揃えて言った。


“これを姫さんが聞いたらどうするかな?”


“貴様・・・・・・・・”


何やら不穏な空気になり始めたので閻象が話を変えようとした。


「道化殿。私から質問して宜しいですか?」


“何だ?”


「貴方様は連合軍をどう思いますか?」


“連合軍を?そうだな・・・こんな物が出来る時点でもう一つの国が亡国になろうとしていると思うぜ”


“言えてるな。こんな軍が内部の敵を倒す為だけに出来たのだから一つの国が滅びる前兆と言える”


フェンリルが道化の言葉に賛同して続きを言う。


“前にも言ったが、こんな物が出来るという時点でもう手遅れだ。そして内部でも乱世に臨む心構えをしている。もうこの時点で確定している”


“その通りだ。で、運悪く姫さんは落ちてしまった。空から落ちて、な・・・そしてあの力と美貌・・・誰もが欲しがり傍に置きたいと思うだろうな”


もうその動きは彼女がこの世界に来た時点で起こっているだろ?と道化が問えば閻象は頷いた。


「はい。先ほども・・・・・・・・」


“曹操の下へ行き姫さんの事で話をしたんだろ?”


道化は分かっているとばかりに言ってみせる。


「その通りです。曹操をどう思いますか?」


“乱世の奸雄と言われるだけあって中々の腕前だな。おまけに役立ちそうな輩は家柄に関係無しに採用する懐の大きさもある。あれなら魏を治められても不思議じゃない。とは言え反発を抱く輩は多いし野望も身に余る所があるのは確かだ”


今は夜姫よりも董卓という人物を倒すのが先だろうがそれでも手は打っていると道化は言った。


「というと・・・殿と劉備殿を追い出す輩とも手を結んでいる・・・結ぼうとしているのですね」


“察しが良いな。その通りだ。お前等の味方をしつつ敵対している輩とも手を結んでいる”


どちらに転んでも損が無いように・・・あわよくば共倒れになった所を横から割り込む算段のようだ。


「そうですか。やはり・・・・・・・・・」


「殿、ここはもう直ぐにでも曹操殿を討ちましょう」


孫堅はこの会話を聞いて直ぐにでも動こうとするも袁術は冷静だった。


「それは駄目だ。今それをやればもう修復が出来ん。それは駄目だ」


「ですが、袁術殿。このままでは私と貴方様は追い出されてしまいます」


劉備も孫堅に同調する形で言う。


「それは分かっておる。しかし、それでは我々とその者たちとの間で争いになる。そうなれば曹操の思う壺だ」


「そうですが、このまま指を銜えている訳にも・・・・・・・・・・」


“案ずるな。そんな事は・・・姫君がさせん”


フェンリルが何処か面白くないような口調で言ったので四人はフェンリルに視線を向けた。


“餓鬼みたいに拗ねるなよ。まぁ、姫さんはあんた等を少なからず大事にしている。そんなあんた等を排除すると動きがあれば黙ってないさ”


道化が苦笑しているのか笑いを堪えながら説明してくれた。


「夜姫様が?一体どうやって・・・・・・・・・・」


“それは見てからのお楽しみだ。安心しろ。あんたに口付けをしようとした真似はしない。それの反対だ”


袁術はドキッとしながら反対と言われて考えてみる。


反対・・・・・・・・?


「どういう意味だ?」


“それはお楽しみだと言っただろ。なぁにその内にでも分かるさ・・・っといけねぇ。もう帰らないと”


“稚の面倒見か?”


「道化、そなたみたいな男に子が居るのか」


袁術は道化みたいな性格に妻子が居るとフェンリルの言葉から知り驚いた。


“あぁ居るさ。可愛い娘と綺麗な上さんがマイ・ホームで俺の帰りを待っているんだ”


こんな性格の男に妻子が居る・・・どんな妻子だ?と四人は気になった。


知り合いとは言えないがどう考えても性格は決して褒められるものじゃない。


それなのに妻が居て子が居るとは・・・・・・・・・


『どんな女性だろうか?少なくともこの性格に付き合えるのだから余程の女性だろう』


と失礼な事を四人は口を揃えて思うが当たり前と言えば当たり前のことである。


こんな性格の男に付き合うのだから器が大きい・・・それこそ慈母神のような女性でないと無理と判断してしまう。


「子はどれ位の歳ですか?」


孫堅が興味を引かれたように訊ねる。


“女の子でヨチヨチ歩きを覚えたばかりだ。いやー可愛い年頃だ”


ここだけは親としてか惚気ている口調だった。


「確かに・・・あの時は可愛かったな・・・どうしてあんな男勝りな娘に・・・・・・・・・・」


孫堅は道化の言葉を聞いて娘の事を思い出したのか深い溜め息を吐いて肩を落とす。


“そう言えばあんたの娘さんの渾名は「弓腰姫」だったか?”


「・・・そうです。どうしてあんな娘に・・・・・・・・・・・」


道化が何で知っているのかとは孫堅は訊かずに娘の性格を嘆き続ける。


もはや今は娘の事で頭が一杯らしい。


“さぁて俺は帰ってもう一人の姫を湯に入れないと”


そう言い残し道化の声は消えた・・・が最後の方は孫堅に対して同情している色が含まれていた。


“まったく・・・まぁ、稚を想う気持ちは解からんでもないが”


フェンリルは呆れながらも道化の気持ちを理解しているのか息を吐いた。


“我はこれで戻るが・・・くれぐれも軽はずみな行動は取るな。そうなれば尻拭いは姫君がする”


それは嫌だろ?と無言で問う彼に四人は頷いたのを見てフェンリルは天幕を出て行った。


残された四人もとい孫堅はまた娘が・・・・・と言うので三人は改めて夜姫が何者なのか気になりながらも戦に出ていた事という情報を手に入れたから良しとしようと思い頷き合った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ