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月の姫と英雄たち  作者: ドラキュラ
反董卓連合軍編
16/155

幕間:総大将の気持ち

幕間を入れ忘れたので足しておきます!!

私は自陣に帰ると直ぐに腹心達を集めた。


腹心達は私の傷を見て尋ねてきたが大丈夫と答え要件を伝えた。


「夜姫様と義勇軍を我が陣に入れる」


腹心達はこれに驚いたが直ぐにこう言ってきた。


『なぜ夜姫様だけではないのですか?』


当然と言えば当然だ。


義勇軍など入れた所で意味など無い。


寧ろ彼等から言わせれば要らない荷物を押し付けられたような物だ。


しかし、私は続けた。


「私では夜姫様を安心させられない」


私ではなく・・・私達では夜姫様を安心させる事が出来ない。


部下達は夜姫様が安心できない、と聞き何も言えなかった。


「夜姫様は、ここに誰も知っている者---親しい人物が誰も居ない」


そしてやっと知り合えたのが劉備達だ。


そんな夜姫様を一人ここに連れて来たらまた混乱し動揺するだろう・・・・・・・・


「私は夜姫様の為には劉備達も連れて来るのが良いと考えている」


悔しい事だが、我々では“今”は夜姫様を安心させる事が出来ない。


「もし、私の考えに賛同できない者は・・・ここから出て行って構わない」


以前なら絶対に口にしない言葉だ。


部下達は驚いたが、嘘ではないと判ったのか暫く考えるように無言で顔を俯かせた。


どれくらい時間が経過したのか分からない。


「・・・・私は殿の考えに従います」


私の部下であり主箔を務める閻象えんしょうだった。


私が決める事に何かしら色々と小言もとい反対の言葉を述べる。


だが、今回に関しては賛成してくれた事に対して少らず驚いた。


「何故、と訊いても良いか?」


「恐れながら天の姫であらせられる夜姫様は殿が先ほど仰った通り誰にも親しい者が居りません」


「・・・・・・」


「その上・・・盲目では怯えてしまうのも無理はないでしょう」


親しい者もおらず眼も見えないとなれば誰だって怯える。


「本当ならば怯えている筈ですが、運よく劉備殿の陣に降り立ちました」


献身的な程に介抱されたなら劉備に懐くのも無理は無いと閻象は語った。


「そうでなくても劉備殿に懐いても仕方ありません」


劉備殿は貴方と違い心優しいと言われた。


「一言余計だ」


「本当の事です。話を戻しますと殿の言いたい事は解ります」


そんな夜姫様を劉備から引き離して一人連れて来るなど出来ない。


「くどいようですが私はその意見に賛成です」


下手に引き離せば今以上に不味い、と閻象は語った。


「他の皆様はどうですか?」


「私も賛成です」


閻象の言葉に賛成を表したのは孫堅だった。


私の部下であり総大将の一人でもある孫堅は実に猛将と呼べる実力を誇っている。


その力は部下や仲間として迎え入れれば心強いが反面で敵に回したら恐ろしい相手でもある。


孫堅が閻象の言葉に賛成すると他の者達も納得できる言葉を言われて仕方無いと思ったのか私の意見に従うと言ってくれた。


ただし・・・抜け目が無く宴をしようと言ってきた。


妥協案とも取れるがこの場合は抜け目が無いと言って良いだろう。


宴が開かれたら夜姫様も出席する。


その時、自分達の名を売り覚えてもらおうという算段だろう・・・・・・・


ここで断るのも手だが、どうせ直ぐに言って来るのは明白だ。


なら、ここは早めにやっておいた方が良いと判断し了承した。


「では、夜姫様が休まれる天幕と義勇軍の天幕を用意しろ」


『はっ』


部下達は直ぐに取り掛ったが、閻象は一人残り私を見てきた。


「何か言いたいのか?」


「はい。殿・・・貴方様は何か悪い物でも食べましたか?それとも敵に斬られて生まれ変わったのですか?」


「・・・貴様は私に斬られたいのか?」


毎度毎度の事だがこの男は一言余計な上にこと私に関しては容赦なくズケズケと物を言う。


「いいえ。ただ、以前の殿でしたらそのような沈痛そうな顔をしませんし劉備殿を毛嫌いしていたので」


「今でも嫌いだ。しかし・・・夜姫様の事を考えれば握り締めた拳を開き手を結ぶ」


「劉備殿の陣で一体なにが起こったのですか?」


「・・・他言はしない、と約束できるか?」


「貴方様にお仕えしてから一度でも貴方様と交わした約束を私は破った事がありますか?」


質問に質問で返された私だが、直ぐに首を横に振り否定した。


この男が私の配下になってからだが、今までただの一度も他言をした事が無い。


つまり私を裏切るような真似はした事が無いのだ。


ただの一度も・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・夜姫様に助けられた」


私はこいつだけには真実を教えようと思い口にした。


最後まで聞き終えた閻象は些か信じられない顔をしたが改めて私を見て頷いた。


「左様ですか。それならば納得もいきます」


天の姫---夜姫様の胸を鷲掴みにした上に顔を引っ叩かれたのですから改心する、とこの男は余計な部分を強調してきた。


「貴様は本当に一言余計だな」


「性分です。それで殿としては夜姫様を見てどう思いましたか?」


「・・・美しかった。そして・・・・・・とても哀しくて優しい方と思う」


あの時の夜姫様の姿は美しかった。


それと同時に私を見つめる月の瞳は何処か切なかった。


しかし、私を罵倒する声には温もりが含まれており心が温まった・・・・・・・・


「だが、分からない事もある」


今度は皆で幸せになりましょう。


貴方達は待っていて・・・そうすれば巡り逢えるから。


「夜姫様は過去に何か遭ったのでしょうね」


輪廻転生は死んでから様々な物に生まれ変わる事を意味する。


前世の記憶は無いのが普通なのだが、あの様子を見る限り夜姫様は記憶があると思える。


「かもしれん。だが、夜姫様の様子を見る限り何も覚えていない」


「となると一瞬だけその記憶が蘇るのかもしれませんね」


閻象の言葉に私は付け足すように言った。


「若しくは何かしらの出来事が発作で蘇るのかもしれん」


確かに、と閻象は頷いた。


「それで殿はどちらだと思いますか?」


「どちらでも良い。私はただ夜姫様の害を排除するだけだ」


これにまた閻象は眼を丸くさせた。


「本当に変わりましたね。以前などぜひとも美しいから妻にしたいとばかり口にしていたのに」


「ふんっ。あんな自分・・・胸糞悪くなるだけだ」


「過去もまた自分でしょうに・・・・・」


「煩い。それで分かっていると思うが他言は無用だぞ?」


「分かっております。私もむざむざ殿に斬られたくはないので」


「だったら、少しはその口を慎め」


何時か斬るぞ、と私は言ってやった。


「性分なので出来ません。では、私は宴の準備をします」


そう言って閻象は出て行ってしまった・・・・逃げたと言っても良いな。


しかし、それを追わずに私は部下を呼び夜姫様が着る着物は用意するように伝えた。


「畏まりました」


部下は一礼して天幕を出て行き、私は来るのを待つ事にした。


暫くして部下は戻ってきた。


手には黄緑色の絹で織られた着物がある。


「これくらいの物しか用意できませんでした」


流石に天の姫が着る物は用意できないと部下は言ってきたが私は首を横に振った。


「良い。夜姫様も文句は言わない。わざわざすまない」


それを言われて部下は驚いた顔をしたが、直ぐに一礼して出て行き私は着物を手に馬に乗ると数人の部下を引き連れて劉備の居る陣へと向かった。


私が行くと劉備が出迎え訊ねると夜姫様は未だに目を覚まさないと言われた。


まだ覚めないのか・・・・・・・・・


まさか永遠に目覚めないのか?と一瞬だが思ってしまった。


そんな自分を恥じて私は着物を渡した。


それから暫くして典医が来た。


「夜姫様が目覚めました」


だが、皺だらけの顔は何か遭ったと告げている。


直ぐに私は典医が案内した場所へ劉備達と向かった。


夜姫様は急いで用意された寝台の上にいたが、上半身を起こして汗を掻いていた・・・・・・


しかも、息が荒い。


何か遭ったと直ぐに察して訊ねようとしたが劉備が先に夜姫様に声を掛けた。


「夜姫様、どうなさいました?」


劉備が訊ねると夜姫様は声の方向を見てから答え始めた。


「夢を見たんです・・・何処か分からない部屋に私は居ました」


鎖で繋がれた自分に近付く男。


背はそんなに高くないが他人を威圧するだけの貫禄があり・・・・・・・・・


「私を・・・汚すんです」


そこへ典医が入り「私が来た時は悲鳴を上げていました」と付け加えた。


私は拳を握り締めた。


夢とはいえ・・・夜姫様を汚すなど言語道断。


人の事を言える身分ではないが、それでも私は鎖で拘束した女を汚すほど落ちぶれていない。


第一夜姫様にはそんな真似をしたりしない。


絶対に・・・・・・・・・


劉備は夜姫様を軽く抱き締めて安心させるように言葉を紡いだ。


「ご安心を。この劉備が御傍に居ります」


私は劉備が羨ましいと同時に悔しかった。


私も夜姫様を抱き締め安心させたい・・・・・・だが今の私では無理だ。


それでも、何時か必ず夜姫様を安心させられる男になると誓う。


それから劉備は私が渡した衣服を夜姫様に手渡した。


『袁術様は・・・無事ですか?』


私は名を呼ばれ安否を気にする夜姫様の元へ行き膝を着いた。


「ここに居ります」


夜姫様は私の手を握って来た。


温かく少しでも力を入れてしまえば容易に折れてしまいそうな手・・・・・・


そんな手が私の手を掴んだ。


「袁術様・・・ご無事で何よりです」


貴方様は本当に優しい方だ。


自分も殺され掛けたのに他人の私を心配して下さるのだから。


「はい。貴方様もご無事で何よりです」


私は夜姫様に微笑んだ。


見えない瞳でも良いから私の笑顔を貴方に見せたい。


「・・・・・・尽きましては今後の事についてお話があるのです。御身体は大丈夫ですか?」


「はい」


私は劉備に視線を移し「話しても良いか?」と訊ねた。


それに劉備は頷いたので私は話し始めた。


「・・・・・・・」


夜姫様は最後まで無言で聞き続けた。


「夜姫様の事を考えるともっと安全な場所に移動させるべきと判断しました。もちろん劉備殿達も一緒です」


私は最後の言葉に・・・嫉妬が込められている事に気付いた。


自分ではない男が夜姫様を安心させられる。


それが狂おしくて我慢できなかった。


声を上げて言いたかった。


私が貴方を安心させたい・・・護ってみせる。


だが、その気持ちを私は抑えた。


あの時・・・助けてくれたのは夜姫様だ。


そんな相手に護るなどおこがましいにも程がある。


もっと強くなり・・・改めて言おう。


「夜姫様。私共も参りますから行きましょう」


劉備が沈黙している夜姫様を説得するように話し掛けた。


「・・・劉備様はご迷惑ではないのですか?袁術様はご迷惑ではないのですか?」


夜姫様は私と劉備に訊ねてきた。


「ご迷惑など・・・貴方様を迎えられて光栄です」


私は何を言うのか、と思いながらも本心を告げた。


「でも、私は何も出来ない上に眼も見えないんですよ?」


自分は迷惑以外の何でも無い、という口調で夜姫様は語った。


「夜姫様。失礼ですが、貴方様はご自分を卑下し過ぎます」


これに私は少し怒りを覚え夜姫様に跪いたまま叱り付けるような口調で喋り出した。


「貴方様は何も出来ないと仰いましたが、それは違います。貴方が居るお陰で劉備殿達は今も奮戦しておられる。そして私もまた貴方様に出会い諭された事で眼が覚めたんです」


貴方様には人を良い方向へと導く力がある。


それはとても大事な事だ。


そう・・・とても大事な事なのだ。


「私は貴方様を迷惑などと思った類いはありません」


利用価値がある、とは思ったと正直に私は語った。


「それは私が天の姫、だからですよね?」


「はい。ですが、今はそのような気持ちはありません。この身は全て貴方様の為に捧げます」


「どうして、私に・・・・・・・」


「貴方様を・・・・・・・・・・」


そこまで言ったが止めた。


いま言うのは駄目だ。


もっと自分を磨いてから改めて言おう。


「いえ。何でもありません。それで夜姫様。御答えは?」


私は無理やり答えを訊ねた。


「・・・ご迷惑・・・・いえ。どうか、私を連れて行って下さい」


お願いします、と夜姫様は頭を下げてきた。


「畏まりました。尽きましては、私の方から送った衣服を着て下さい」


血が付いたそれでは兵たちの眼があるから、と心の中で言いながら頼んだ。


「分かりました。時間が掛りますが、よろしいですか?」


「勿論です。女性が着飾るのは時間が掛りますからね」


「袁術様は・・・女性の扱いに長けていますね」


夜姫様は僅かに笑みを浮かべて言ってきた。


「え?あ、いや、その・・・・・・」


「冗談ですよ」


「夜姫様・・・・・・」


思わぬ悪戯に私は夜姫様を少しばかり恨めしく思った。


だが、その笑みを見て皆が破顔して笑い出し私もまた笑った。


嗚呼、やはり夜姫様には笑顔が似合うと思わずにはいられなかったのだ・・・・・・・・・


「では夜姫様。こちらへ」


典医は夜姫様の手を取り人目を離れた。


残された私達はその場で夜姫様が帰って来るまでこれからの事を話し合う事にした。


「では、夜姫様は一番奥の天幕へ移動するという事で」


劉備は私に確認するように訊ねてきた。


「あぁ。あそこなら一番、安全な地帯だ。そなた達義勇軍はその天幕の近く。無論私も一緒だ」


一番奥の天幕なら余程の事で無い限りは敵も来れない。


しかし、念には念を入れておく必要があるから後で何かしらの手を打っておかなくてはならない。


「孫堅殿はこの事を御存じですか?」


今度は孫堅の事を劉備は訊ねてきた。


彼も総大将の一人だが私の部下だ。


だが、あの男は私の下で何時までも居る男ではない。


何時か・・・近い日には独立か何かしらの行動を起こす事だろう。


「孫堅にも伝えておいたが、快く受け入れてくれた」


閻象とあの者位だ。


夜姫様と義勇軍を迎え入れても良いと言ったのは。


「そうですか」


「うむ。それからこれは部下からの要望なのだが・・・夜姫様と宴を共にしたいと言っている」


「それは夜姫様に訊かないと何とも言えませんね」


劉備の言葉に私は頷いたが夜姫様の事だから・・・・・・・・・


「夜姫様の性格を考えると話せば出ると言う筈だ」


「ですが、夜姫様はまだ起きたばかりですよ」


「それでもあの方の事だ。体調など大丈夫と言って聞かんだろう」


頑固な所もある夜姫様の事だ。


負い目を感じているから、こういう所で補おうと思っている筈だ。


「そうですね・・・・・・・」


劉備は私の言葉に一理あるのか頷いた。


だが、私の中ではもう夜姫様は宴の話をすれば出ると確信していた。


それから暫くして夜姫様が典医に連れられて帰ってきた。


私が渡した衣服を身に纏った夜姫様は謝罪してきた。


「時間を掛けてすいません・・・・・・」


「いえ。それでは参りましょう」


私は夜姫様の手を取り馬に乗せた。


「少し揺れますが、我慢して下さい」


「は、はい・・・・」


夜姫様は馬に乗るが初めてなのか少し怯えていた。


だが、私の愛馬は怖がった夜姫様の気を感じたのか優しく鳴いた。


「わ、私、初めてだからゆっくりお願いしますね」


夜姫様は人間に話しかけるように馬に話し掛けた。


対して馬は承知したとばかりに頷きゆっくりと走り出した。


それを部下達が追い掛け、義勇軍達が続く。


「夜姫様、大丈夫ですか?」


私が訊ねると「大丈夫です」と答えが返ってきた。


「それより夜姫様。宴の事・・・本当に良かったのですか?」


まだ目が覚めたばかりなのだから、無理はしない方がと私は言った。


「いいえ。大丈夫です」


「ですが・・・・・・」


「徹夜した事もありますから大丈夫ですよ」


「・・・そう、ですか」


この方に言っても無駄と私は確信した。


「夜姫様は頑固、ですね」


「えぇ。一度決めたら梃子でも動かないと子供の頃から言われましたから」


子供の頃からとは・・・・・・・・・


それから私と夜姫様は陣へ行くまで他愛ない話をして過ごした。


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