04 暑さに弱いヒートカゲの話
ってな感じで毎日、羊達を誘導しているんだが、俺がやってるのはそれだけじゃない。
他にもあるぜ。
人間がいないと、人に合わせる必要性がないのは楽だが、何もないってのは退屈だからな。
俺は退屈になりたいわけじゃない。
自分が第一だけど、誰かの役に立ちたい気持ちがあるし、生きてるなら刺激がほしい。
ってなわけで俺は、粘土をこねたり、木を切ったりして、建物を作っている。
これは、趣味もあるが、とある動物ーートカゲのためだな。
前世、俺がいた世界でよく見かけたトカゲよりも、少し図体が大きくて、触れると熱いのが特徴だ。
こいつらの事は、ヒートカゲと命名した。
この世界のトカゲは、熱中症になりやすいのが特徴だ。
環境に適応できない個体がちょうど増えている頃らしく、暑さに弱いトカゲばっかりなんだ。
それも生物の定め、と思って滅びる傍観者然として眺めるってのも考えたけど、トカゲたちはトカゲたちなりに、日陰を作って涼もうとしているみたいでさ。
試しにヒートカゲ用の家を作ってみたらトカゲたちが真似し始めたので、生きる意思があるなら、手伝ってやろうと。
未来の生態系がどうなるか知らんけど、今目の前で頑張ってる連中を見て見ぬふりできるほど、賢くないんでな。
何かあったら、後の生き物さんたちごめんよ。
どういうわけで、俺はヒートカゲ達に家作りを教えているのだ。
あ、ちなみにこの世界のトカゲって二足歩行して、両手もかなり器用だぜ?
それをもっと早く言え?
家だけに?
あっ、そんな目で見ないで。
すんません。
冗談です。
ヒートカゲたちが他の種族の力なんて借りねぇぜ、って感じなら話は別だったけど、俺が自分の家作っているのを見て、不器用ながらにまねっこ始めたんで、手伝ってんだ。
基本はあくまでも教えるだけで、奴らの根性と知恵と努力にかかってるけどな。
でも、ヒートカゲたちは頑張った。
俺が教えた家作りの知識と技術を吸収し、何とか家を作れるようになったのだ。
そんで、全体的に群れの中でもさらに暑さに弱い個体や、お年寄り、子供、雌なんかを優先的に涼ませている。
今は家の数が少ないけど、そのうち全部のヒートカゲが涼めるようになるだろう。
いい事した後って、なんだか気分がいいな。
まあ、俺は勝手に趣味で家を作っただけだが。
あ、この恩がきっかけでヒートカゲ達は俺に脱皮した革をくれるようになった。
丈夫で伸縮自在な革なんで、色々な細工物につかえて便利なんだよな。
バッグとかポーチとかに仕立ててるよ。