02 不時着した宇宙船と人間
私はエジソー・ブラッシュ。
宇宙を旅する冒険家だ。
故郷では、冒険をつづった何冊もの本が出版されている。
宇宙船が壊れてしまった。
このままではまずいと思った俺は、時空間ワープの最中に手頃な世界へ転移し、近くの惑星に不時着した。
その惑星には、ぱっと見では建物らしい建物がないから、意思疎通のとれる生き物がいないと思っていたのだが、そうでもないようだ。
息も絶え絶えな宇宙船が墜落する前にたどり着いたのは、小さな家の前。
そこに男性が住んでいた。
どうやら、この惑星の唯一の人間らしい。
俺はさっそくその人間と接触をはかった。
未発達の惑星の人間とコンタクトをとる事は禁止されているが、背に腹は代えられない。
俺は故郷に帰りたいし、知らない惑星でやっていく度胸もないのだから。
まあ、バレなきゃ大丈夫だろう。
そんな事で、俺は自分の状況を唯一の男に説明した。
だが、男は多少性格があれなのか、話がまともにかみ合わない。
苦労して話を伝え終わった頃には、日が暮れる頃になってしまった。
不時着したのは昼頃だったというのに。
話の後に、彼の家の世話になれるようになったのは数少ないメリットだろう。
しかし、この男は、なんで一人で平気なのだろうか。
この惑星に、人間はいないようだし。
普通一人ぼっちになれば、どんな人間でも寂しく感じるものだろう。
意思疎通のできる相手がいないことを悲しく思う事だろう。
だが、目の前の男からはそういった感情がまったく感じられなかった。
故障した宇宙船の内部で一晩過ごすのは怖いため、男の家でお世話になった俺は内部を観察する。
手作りの家だといそこは非常に小さく簡素なつくりだ。
だが、過ごすのには申し分のない快適さがある。
彼が提供してくれたご飯はなかなかの味だ。
彼の腕が良いのか、それとも素材が良いのか。
久しぶりに人の手でつくられた料理は、俺の腹を満たしてくれた。
ここのところ、宇宙食ばかりだったからな。
人の手のかかった食べ物がこんなにも美味しく感じるとは。
俺も人の事は言えないなと思った。
俺は、過ごさせてもらっている身だからといって、革でできたソファーで横になり、眠りについた。
翌日。
何とか船を修理できたため、、俺はその船に乗り込んだ。
これでこの惑星と、そこに住む唯一の男ともさよならになる。
男は、一応といっていい素振りで手を振ってくれたが、最後までよくわからない人間であったなと思った。
この惑星の豚ウシ肉のステーキは美味しかったので、近くを寄った時に顔を出してみても良いかもしれない。