01 異世界に転生した俺の話
俺は異世界に転生して、のんびり過ごしているたった一人の人間だ。
俺がいる惑星に、他の人間はいない。
でも、別に辛かったり、悲しかったりはしないな。
雄大な大地に健康的な足で毎日立ちながら、笛を吹いているぞ。
今の所、やるべき事といったらそれだけだけど。
一人だから人の目なんて気にせず、自分の好きなように生活を送っている。
なに?
説明不足?
なんでそうなってるか教えてくれって?
まあ、これだけじゃ何が起こったか分からないよな。そうだな。
じゃあ、ちょっと時間軸をきゅるきゅるっと前に戻して説明するか。
俺の名前は、十六夜王一夜。
読み方は「いざよいおういちや」だ。
創作物でもなかなか出てこないバリバリの中二ネームで個性的な、親からのギフトだ。
おかげで、苦労したぜ。
学校の入学初日とか入社初日とかな!
自己紹介する時の緊張感は半端ない。
最初でこけると後が大変でさ、俺の周りからざーっと人がいなくなるんだよ。
そういうわけで、人生一つ単位で一人をこじらせた俺は、多少性格があっぱらぱーになっちまった。
誰かに合わせるとかよく分かんないから、話が飛んじまったらごめんな!
おっと、笛が詰まってるな、叩いてなおそ。
がんがん。
物を粗末にしちゃいけません?
そういうもんか。
悪い悪い。
さーてと、今日の夕飯何にしようかなー。
豚ウシの肉を焼いてステーキにしようかなー。
あ、豚ウシっていうのは、この世界に生きてる生き物で、俺が名付けた。
歌の様なすべすべな肌してるんだけど、牛みたいな体格してる。
お肉は牛よりの味。
あれうまいけど、調理するまでが大変なんだよなー。
俺、運動神経壊滅的だから、狩猟とか難易度高いし。
事故で死んじゃった豚ウシを見つけて、ちゃちゃっとやるか、罠を使って獲物が掛かるのを気長にまつかしか方法ないから。
おっと失礼。
話がそれちまったな。
人と会話すんのに慣れてないもんだから、多めに見てくれや。
つーわけで、俺は一人ぼっちな人生を過ごしていたわけだ。
両親ズギフトの影響からミラクルを起こして、人に囲まれるわけでもない俺の人生は、ある時唐突に終わる。
神様が落とした落とし物に、俺の頭がダイレクトアタックだ。
うっかり死亡して、第一の人生が強制終了しちまった。
天に召された後の神様の慌てっぷりといったら、見てるこっちが気の毒になるくらいだぜ。
そんで、普通こういう時は即生き狩らせるのがセオリーなんだけど、奇跡的で猟奇的な角度でクリーンヒットした神様の落し物は、いい感じに俺の頭をえぐったらしい。
見せられないよ!
な有様になってしまった俺は、第一の人生を強制終了ってわけだ。
まあ、俺は人生に未練なんてなかったから良いけど、他の人だったらやばかっただろうな。
神様のうっかりで人生終了なんて、ふざけるなって怒鳴っていただろうさ。
でも、そうならなかったのは、俺だから。
そう、俺だから。
まあいっか、って思ってさ。
特に前の人生に親しい人間いなかったし、やりたい事とかもなかったし。
まさか一人ぼっちな人生がこんなところで約に立つ?
とはな。
ともかく、生き返らせる事はできなくなったんで、俺は次の人生にレッツゴーすることになった。
っていっても、前の人生みたいに中二ネームをつける親の子供は嫌だし、人間同士の団結力がものを言うようなコミュニティに生まれるのも、ちょっと疲れそうだ。
だから、神様にお願いして人がまったくいない世界に転生させてもらったってわけ。
俺の目の前をもこもこの羊が走り回っている。
前世では羊って呼ばれている生き物だけど、俺の記憶とはちょっと違う姿をしている。
もこもこなのは同じだが、まきまきした角がカラフルなんだ。
赤い角の羊がいたり、青い角の羊がいたりする。
やつら皆見た目が同じだから、色で個性を出そうとしたんかね?
もこまき羊と命名した。
ん?
人間だって、他種族を見れば大体似たような姿に見えるものかもなって?
そんなもんか。
ところで、俺の家の前にあるUFO早くどけてくんね?
このままじゃ俺、家の中に入れないんだけど。