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5話
「あなたはもしや、稀人ですか?」
「稀人?」
「この世界とは別の世界から、稀に迷い込んでくる人のことです」
ふむ、この世界には俺のような存在は時々現れるようだな。
「多分その稀人とやらなのだろうな」
「おお! それならば辺境伯様に謁見されると良いでしょう、稀人は保護していただけるらしいので」
保護って何だ。
幽閉とかじゃないだろうな?
「とりあえず、服が欲しいのだが」
「そうですか? その服のままの方が稀人である証としてふさわしいと思いますが。稀人の子孫が、まれに稀人を偽ることがありますからな。まぁその時は処刑されますけどね、はっはっは」
自分が稀人と証明出来なければ処刑だと?
冗談じゃない、それなら辺境伯にわざわざ会うメリットが無い。