私たちにさす希望の光
創造神と出会い、私は中心に行くことを約束した。
だが...生憎ミツキが戦闘の時、頭を負傷していた。
そのため、包帯が外れるまでは、図書館で情報収集をすることにした。
私が知った情報を、ある程度まとめようと思う。
まず、この世界に生まれた人は、それぞれ能力を持っていること。
能力は、自分自身では分からない。
私の能力は、エルが言っていた身体能力の上昇...と..リメンバーシックの発動だろうか?
リメンバーシックの発動条件は不明のままだ。
そして、この世界の強さは
I,II,III,IV,V,Xで表されることもわかった。
どの基準で決められるのか、それも分からない。
振り返ってみたが、分からないことが多い。
どうしても、この密室空間ではインプットできる情報が限られているのだ。
____数日後。
ミツキの頭の傷は完治し、包帯が外れていた。
私が朝早くに起きた時、彼女は外で鎌の素振りをしていた。
空を切る音が、振る度に木霊する。
彼女はかなり真剣そうな目つきで遠くを見つめていた。
1時間ほどすると、彼女は汗だらけになり、鎌を背中に収めた。
汗で濡れた顔は、なにか美しく見えた。
ミツキ「いたのか。」
彼女は、息を切らしながら私に話しかける。
私が頷くと、返事をすることなく私の隣に座る。
彼女と2人切りになったことはなく、なにか新鮮だった。
時々彼女の顔を伺うが、遠くをずっと眺めていた。
しばらくすると、立ち上がりそのまま図書館の方へ歩き出す。
それを見て私も背中を追う。
彼女は落ち着いた様子で進む。
彼女が進む度、キシ...キシ...と金属音がする。まるで時計の針のように。
そして図書館の前に着いた。
重々しい扉を開ける。
そこには少年が1人。
ユウリ「朝早くからお疲れ様....ミツキちゃん。」
そう言うと、続けて、
ユウリ「今日は...エリちゃんも居ないから...心配したよ。」
普段は、ユウリより早く起きたことがなかった。
心配されて当然だろう。
ユウリ「ほらみんな。朝食は作っておいたから...食べよ?」
今日の料理は、すり潰した木の実と砂糖を混ぜた物をパンに乗せて焼いたものだった。
ミツキが手を合したあと、勢い良くかぶりつく。
サクっという音がした後、ミツキが幸せそうな顔をする。
それを見て、私もかぶりつく。
美味しい。口に入れて咀嚼する度、木の実の旨みが舌に伝わる。
私も幸せそうな顔になる。
ユウリはそれを見て、微笑んでいる。
ミツキは身を乗り出し、
ミツキ「ユウリ!!このパン美味いな!!よく動けそうだ!!!」
ユウリは少し困った顔をしながら、ありがとうと返事する。
全員が食べ終わると、ミツキが話を切り出す。
ミツキ「私のケガが完治したもんだから、今日から中心に行く冒険に行く。」
私とユウリは何故か拍手をする。
ミツキ「君たちも存じている通り、この世界に生まれたものは"能力"を持っているね?それを共有してから冒険をした方が言うと思うんだ。」
確かにそうだ。だが...
エリ「能力は自分自身では分からない____」
ボソッと呟く。
ミツキ「そう。だが、分かる方法がある。それは____」
ミツキ「私の能力だ!!!!!!!!!」
私とユウリは顔を見合わせる。
彼女は話を続ける。
ミツキ「私の能力は、髪の毛や、細胞。なんでもいい。相手の物を口から摂取することで能力がわかるのだ!」
エリ「つまり、私の髪の毛を食べたら私の能力がわかるって事ね。」
ミツキはそう、と言うと私の髪の毛を1本抜いた。
するとそれを長い舌の上に乗せ、口に含む。
ゴクッといい、喉仏が動く。
ミツキは、驚いた表情で私に話しかけた。
ミツキ「お...お前の能力は....『身体能力の上昇に加え、想いの強さが、リメンバーシックとして、相手に伝わる』..らしい。お前...強くね?」
ユウリ「すごいね...リメンバーシックの能力なんて..滅多に見ないよ。」
じゃ今度はお前な、と言うとユウリの髪の毛を抜く。
そして摂取した。
ミツキ「少年の能力は....『外敵傷害を受けそうになった時、感覚がある状態で時間の進みが遅くなる』...お前ら...強くないか?能力だけでもIIレベルじゃないじゃないか。」
ミツキは少し苛立った様子で、頬を膨らます。
____まぁ.......し....当然か....
ユウリ「うん?ミツキちゃん。何か言ったかな...?」
するとミツキはユウリを無視し、鎌を背負った。
そしてこう言った。
ミツキ「さ。冒険に行こうか」
私たちは強く頷いた。
私は図書館の中をもう一度眺めた。
もうここともお別れ。
悲しいような、寂しいような感情が私にのしかかる。
だが、ここにいる訳にも行かない。
エルが....私を待っているのだ。
____さぁ。行こうか。
彼女の声で、私たちは強く、1歩踏み出した。
その1歩は、地獄への1歩か、もしくは天国への1歩、どちらになるのだろうか。
次回から冒険します。