図書館と鎌の少女
周りを見渡してみるが、こんな何も無いところに図書館があるなんて到底信じがたかった。だが、3年もここにいるユウリが言うなら、きっとあるのだろう。
ユウリは足音を鳴らしながら、私の先を行く。
彼の顔はよく見えないが、後ろ姿をみるに、緊張していないように見えた。
慣れているのだろうか。
ユウリ「着いたよ。エリちゃん。」
エリ「ここが...図書館?」
歩くこと20分ほど、私たちは図書館に到着した。
だが、この私には図書館があるようには見えなかった。
エリ「ここであってるの?」
真偽を確かめるために再度質問するが、彼は首を縦に振る。
どうやら本当にここにあるようだ。
ユウリ「みてて...」
するとユウリが地面の破片をとり、何も無い場所に放り投げた。
地面にコツンと当たった瞬間、とてつもない轟音をたて、建物が出てきた。
私の背より随分高い壁が前に現れ、驚きのあまり、声が出ない。
ユウリ「入ろうか」
彼の言われるがまま、私は図書館の扉を開けた。
扉を開けてまっさきに入ってきた感情が「汚い」だった。
本はそこらに散らばっていて、蜘蛛の巣のようなものがはられている天井。
そして血痕。まるで随分昔に戦争があったような内装だった。
ユウリは本棚に向かって歩き出し、本を探し始めた。
ユウリ「あった。この本だよ。」
ユウリはあるひとつの本を私の目の前に差し出す。
被っている埃をはらって題名をみる。
エリ「世界の...中心?」
ページをめくるとそこに書かれているのはこの世界の中心についてだった。
この世界では、常に霧が立ち込めている。
その霧は、中心に行くにつれて濃くなっていく。
その霧は、リメンバーシックの症状度合いを悪くすると言われており、中心は220000rdと推定されています。
中心から40000000〜20000000kmは290〜700rdと言われていて、リメンバーシックの症状は、強い頭痛。吐き気。耐性がない方は意識がなくなります。
中心から20000000〜10000000kmは700rd〜24800rdと言われていて、リメンバーシックの症状は、意味不明な外敵障害。全身の倦怠感と言われています。
中心から10000000〜5000kmは24800rd〜76400rdと言われていて、リメンバーシックの症状は、心停止。脳への強いショック。と言われています。
中心から5000km〜0mは76400〜220000rdと言われていて、リメンバーシックの症状は、ほぼ確実な死。もしくは消滅と言われています....
.....は?
正直何が書いてあるか分からなかった。
ユウリ「ど...どう?」
ユリ「う...うん...だいたい...」
嘘だ。わかったことはあまりない。分かったことは、中心に行けば行くほどリメンバーシックの症状が強くなるという事だけだった。
ユウリ「まだ何か....知りたいこと..ある?あるなら...本を探すけど...」
ユウリが本を本棚に入れようとした瞬間、ダンという音とともに扉が開いた。
???「何をしているーーー!?」
2人「!?」
そこに立っていたのは、ユウリより少し大きめくらいの白髪の女性で鎌を背中に背負っている。唐突な出来事に頭が回らない私達をおいて彼女は続ける。
???「なのらないなら!この鎌で!!」
すると彼女が鎌を構える。そしてとてつもない速度で走ってきて鎌を振り上げる。
ユウリ「エリ!しゃがんで!」
見ていない間にユウリは剣を抜いていた。
そして彼女は鎌を横降りする。
キーン...甲高い音がなり、鎌と刄が擦れ合う。
図書館に舞っていた紙が数枚切れる
???「にへへへへ...君面白いねぇ....へへ」
彼女はヨダレを垂らしながら後ろ飛びし、距離を離す。
エリ「なんなのこの子...」
ユウリ「分からない...でもこうなったら戦うしかない....」
???「じゃあ戦い決定だネ....」
するとまた彼女はすごい速度で走ってくる。
???「こんなのはどう?」
彼女は鎌を私たちに向かって投げる。まるでブーメランのように。
あえて大きく弧を描くように投げたのか、しゃがめば当たらなかった。
???「ンでもねぇ..狙いはそっちじゃないんだ。」
彼女はジャンプをする。それは図書館の天井に届きそうな程のジャンプだった。
そして弧を描いていた鎌を空中でキャッチしたのだ。
???「まっぷたつに...切れたらおもしろいねぇ!!!!」
彼女の鎌が私に牙を剥く。
ユウリ「危ない!!!」
ユウリは私を押すと剣で鎌を受け止める。
???「やっぱりきみ....面白いねェ..けどそろそろ決着つけないとね。」
もうユウリには余裕がない。いつ切られても、おかしくない。
???「そろそろ終わりにしよう少年。」
ユウリ「奇遇だね..僕も同じこと考えてたよ...」
???「ヘッ」
すると彼女はナイフを投げる。それは私の方に飛んでくる。
エリ「嫌...!!」
ユウリは剣でナイフを落とす。だが振り切ったあとの剣は隙が多かった。その時彼女は既に鎌を振り上げていた。
???「じゃあね...♡」
鎌の先はユウリの頭を狙っているように見えた。
エリ「やめて!」
???「ンぬ....?」
鎌は頭の数mmで止まる。
ユウリ「う...」
???「へへへ....リメンバーシック.....キたァァァ.....♡」
そう言うと彼女は舌をだしてその場に倒れ込む。
彼女は舌を出したまま息を荒くして顔を赤くする。
???「にへへへへ......」
数分後、彼女は落ち着いたのか、眠ってしまった。
私は彼女のポテンシャルでも驚かされていたが、リメンバーシックを気持ちいいと感じる人はこの人が初めてだった。
ユウリ「この娘起きるまで待ってようか。」
エリ「そうだね...でも私も眠くなっちゃった...」
私はそのまま寝てしまった。
「おきてー!」
誰かの声で私は起きる。
エリ「!?」
私は起きた時、驚いた。
なぜなら彼女の指が私の口の中に入っていたからだ。
私が体を起こすと、同時に指も抜ける。
???「あなたの口の中..暖かかったよ♡」
エリ「や..やめてよ...」
すると彼女はさっきまで入っていた指を今度は自分の口に入れてしゃぶり始めた。
そのとき、ユウリが図書館に入ってきた。
ユウリ「あ...2人ともお目覚め?食べ物持ってきたんだけど...食べる?」
???「えぇ!?食べる食べるーww」
彼女はユウリが持ってきた食料を手に取ると口に入れた。
ユウリ「あ、それは。焼かないと!」
???「いつも食べてるからへーキへーキ」
ユウリ「エリは...このパンとかどう?」
エリ「あ....いただきます....」
彼女は自分が食べたものを飲み込むと話をしだした。
???「自己紹介しようか?私の名前はミツキ。」
エリ「エリです。」
ユウリ「ユウリです。よろしくお願いします。」
そう言うとミツキは自分のことについて話し始めた。
ミツキ「私はね。中心から4000kmのミールタウンってとこから来たの。」
そう言うとユウリが食べていたものを少し吹き出す。そしてすぐ飲み込こんだ。
ユウリ「ミールタウン!?そんなとこ....位が高くないと行けないはず....」
もしかしてだけど、この人、すごい人なのかもしれない。変な人ほどすごい人が多いって聞いたこともあるし。
エリ「ねぇ。中心ってどんな感じなの?」
すると、ミツキは顔をしかめて、真剣そうに言った
ミツキ「いまは...少しおかしくなってるんだ。中心にいる人間がちょっと揉めててね。でも、そこまで悪いとこじゃないよ。面白いことが沢山。」
エリ「そうなんですね...私も中心に行ってみたいです」
ミツキ「じゃあ行こうよ。一緒に。」
エリ「え?」
私は軽く言ったつもりだった。
ユウリ「いいですね!行きましょう!」
エリ「え..え..?」
2人はもう行くことが決定したかのように楽しそうに話している。
ミツキ「エリも行くでしょ?こんなとこ、居てもなんもすることないし。」
確かにミツキの言う通りだ。この辺りは何も無い。なら中心に行くのも悪くないかもしれない。
エリ「わ..わかった。行くよ。」
ミツキ「にへへ...決まりね。」
するとミツキが立ち上がってこう言った。
ミツキ「じゃあ明日くらいに出発しようか。準備はしといてよね。」
ミツキはそう言うと図書館の扉を開けた。
そこから入ってくる光は、私たちを照らした。
まるで世界が私たちの冒険を歓迎しているように。
#1の冒頭の部分。エリがユリになってました。すいません
よんでくれてありがとうございます