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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ダンジョンの奥で裏ボスに殺された結果、世界の危機を救うハメになりました。

作者: Jayohya

なろうでは初投稿です。

 迷宮探索者の朝は早い。日の出前から起床して装備を整え、我先に迷宮を潜っていく。そうしなければおいしい狩り場で魔物を狩ることができないし、討伐で得た稼ぎが少なければ食っていくことができない。

 だが、何事にも例外はつきもので、ペンド村を拠点に迷宮探索をしているリリカは、太陽がしっかり登った午前9時頃に起きてくるのが常だった。


「ふぁ〜あ、おはよう」


 大きなあくびをしつつ、探索用の装備一式を身に着けたリリカが、2階の客室から1階の食堂へ降りてくる。装備と言っても厚手の服の上に安い革鎧を着けただけで、大した防御力はない。今年17歳になるリリカは迷宮探索を始めて1年になるが、その間ずっと使い続けている愛用の鎧であった。


「おはようございます、リリカさん」


 リリカがテーブルにつくと、宿屋の娘、ミヤが朝食を運んできた。

 人口百人に満たないこの村に一つしかない食堂兼酒場兼宿屋、『蛇の尾』の看板娘である。


「今日もダンジョンですか?」

「うん、今日は白蛇ダンジョンに行こうかなって」

「毎日ダンジョンって大変じゃないですか?」

「まあ、行かなきゃご飯も食べられないし、この鎧も買い替えたいから、ちょっと頑張ってるんだ」

「貯金無いの?」

「この前、いつも使ってるメイス壊しちゃって。武器無しでダンジョンはちょっとね」


 客がリリカしかいないのをいいことに、二人で話し込む。

 迷宮探索者は、ダンジョンに潜る際、事前にどのダンジョンのどこを探索するか届け出ておく必要があるので、決して無駄な会話ということもないのだが。


「じゃあ、夕方までには戻ってくるから」

「はい、いってらっしゃい」


 パンとスープだけの簡単な朝食を済ませ、いつも通り一人でダンジョンに向かう。

 迷宮探索者は基本的に複数人で行動することが多い。単純に魔物を狩る効率が上がるし、不測の事態にも対応しやすくなる。一人でダンジョンに潜るメリットはほとんどない。

 ではなぜ、リリカが一人でダンジョンに潜っているのか。その理由はスキルにあった。

 この世界では、おおよそ14歳になると、スキルが一つ手に入る。スキルは神の恩寵とも言われており、スキルが手に入れば一人前扱いされる文化があるのだが、リリカは人より遅く16歳で手に入った。が、その内容が問題だった。普通なら、スキルは朝、目が覚めた時に突然身に付き、その使い方もわかるようになっている。例えば【剣術】ならば剣を握った際にその扱いが上手くなり、【筋力強化】ならばスキルを発動した時に怪力を発揮できる。

 しかし、リリカの場合は、目が覚めたとき、スキルを習得した感じはあったが、それがどんなものか分からなかった。スキルを看破できる魔法道具を使ってもらったところ、名称不明、発動条件不明、効果不明のスキルだと分かった。

 その後、昔からの憧れだった迷宮探索者になったものの、特技があるわけでなく、スキルも不明だらけのせいで、誰ともパーティを組めなくなってしまったのだった。


(スキルがあったらもっと楽できてたのかな)


 もう何百回も考えたことをまた考えながら、ダンジョンへの道を歩く。ペンド村の周りには4つもダンジョンがあるが、全て蛇の魔物が出る。ダンジョンごとに出る蛇の色が決まっており、その色から赤蛇ダンジョン、青蛇ダンジョン、緑蛇ダンジョン、そして白蛇ダンジョンと呼ばれていた。

 どれも恐ろしく不人気で、この村を拠点にしてダンジョン探索をしているのはリリカしかいない。不人気の理由は探索した稼ぎがあまりにも悪く、人が1人、1日生活するくらいの稼ぎしかないためである。

 だが、蛇は一人でも討伐できたので、拠点を探していたリリカには丁度良かったのだ。



 宿から白蛇ダンジョンまでは、徒歩でおよそ30分の道程だ。

 村の人達に挨拶しながら歩いていると、前方から田舎の村に相応しくない、上品な雰囲気を纏った一団がやってきた。


「リリカさん、おはようございます」


 一団の中心で守られながらゆっくり歩く、儚げな金髪碧眼の少女がきれいなお辞儀をしながら挨拶をした。


「ディア様、おはようございます」


 ディア様ことエヴォーディア=ゼンガードは、このゼンガード王国の第8王女だ。なぜこんな片田舎に王女様がいるのかと言うと、この王女様は生まれつき体が弱く、療養に来ているのだ。かつてこのペンド村が王国の直轄領で、その頃から王族の療養地であったらしい。


「お体は大丈夫ですか?」

「ええ、お陰様で。最近は毎日散歩に出ても体を壊さなくなりました。リリカさんはダンジョンですか? 怪我に気を付けてくださいね」


 エヴォーディアが再度優雅に一礼し、お付きのメイドさんを伴って去っていった。


「うん、なんか元気でたし、今日も頑張ろう」


 可憐なディア姫はこの村でアイドルのような存在で、リリカも含めて村の皆に大切にされている。故郷を離れて、一人ペンド村にやってきたリリカにさえ優しかったのだ。好きにならないはずがない。

 ダンジョンへ向かう足を少し早めて、リリカは白蛇ダンジョンへの道を歩いた。




 ダンジョンにも色々あり、単純なものもあれば、複雑で迷路のようになっているものもある。

 ペンド村周辺のダンジョンは単純な方だ。縦に3部屋、横に3部屋、合計9の部屋が正方形に並び、それぞれの部屋から縦横に通路が延びている。各部屋に蛇が一匹ずつ出現するので、それを倒していくのだ。


「ていっ」


 向かってくる白蛇に向けて、リリカがメイスを振り下ろす。リリカの腕と同じくらいの長さの蛇だが、もう慣れた。メイスが蛇の頭に直撃し、蛇の動きが明らかに鈍る。


「この! この!」


 その隙を逃さず、2発、3発と追撃すると、白蛇が動きを止め、黒い煙になって消えていく。後には、小指の爪くらいの大きさで群青色の石が残った。魔物は生物ではなく、魔力が形になって動き出したもの、らしい。そのため死体が残らず、魔力の結晶である魔石を残す、という話をリリカは聞いたことがあった。

 難しい話はよく分からない。だが、魔石は魔法道具を動かす燃料になるので、売れる。大事なのはそこだ。

 待っていれば倒した蛇がまた湧くのだが、数時間に1匹ずつしか湧かない。流石にこれをダンジョンの中で待つのは効率が悪過ぎるので、毎日入るダンジョンを変えて、全部の部屋に湧きなおした頃にまた倒しに来るのだ。


「よーし、今日の分終わり!」


 最近は狩るのが相当速くなった。この村に来たばかりの頃は丸一日かかっていた蛇退治も、昼頃には終わってしまう。あまりにも慣れて退屈になったので、ここ数日は自分の限界に挑戦してみた。


「今日が一番速かったかな」


 蛇との戦闘は、9回とも手こずらなかった。少しでも早く終わらせるため、部屋間の移動で走ったりもした。その結果、今日は1時間かからずに終わってしまった。


(こんなことしてて、いいのかな)


 最後に倒した蛇の魔石を拾いながら、ふと思う。もう迷宮探索者になって1年だ。この生活を続けていてもスキルが使えるようになるわけでもなく、お金も少ししか稼げない。自分の思っていた迷宮探索者は、もっと輝いていた気がする。今の自分を変えたいとは思うが、どうすればいいのかわからない。


「まあ悩んでも仕方ないし、帰りますか」


 これ以上残ってもすることが無いし、出口へ向かう。今日もいつも通りのダンジョン探索だ。だがその途中にいつも通りでないものがあった。



 9部屋のうちの中央、前後左右が別の部屋に繋がっている部屋の、真ん中の地面が白く光っているのだ。


「何これ……」


 警戒しつつ近づいていくと、およそ人ひとりが入れるくらいの円が地面に描かれ、それが発光していた。

 今までこんなもの見たことがない。が、似たようなものの話を聞いたことがあった。

 転移陣。異なる2ヶ所を魔法的に繋ぎ、行き来できるようにしたものがあるらしい。それは、地面に描かれて、光っている間は行き来できるというのだ。

 これが転移陣だとして、どこと繋がっているのか。飽きるほど潜った蛇ダンジョンが見せた初めての変化に、リリカの胸が高鳴った。

 この先が危険かも知れない。そんなことも少し思ったが、リリカは光の中に飛び込んだ。この先にある物が今の自分を変えてくれる気がしたからだ。




 少しの浮遊感の後、目に入ったのは広大な部屋だった。円形の部屋は壁が見えないほど広く、天井は遥か高方にある。その中央にリリカは立っていた。

 余りにも広いが、闘技場みたいだと思った。もちろんリリカに闘技場に立った経験はない。

 ここには自分しかいないのだろうか。周りを見回すと、不意に背中に寒気が走った。慌てて振り返ると、いつの間にか自分の後ろ20歩くらいの距離に、人がひとり立っていた。

 体型からすると女性のようだ。背丈はリリカと同じくらい。長い銀髪を伸ばし、夜会で着るような黒いドレスを身に纏っている。だが、こちらを見据える視線が尋常でない。圧倒的な殺気を放ってこちらを睨んでいる。明らかに友好的では無い。


「あの……」


 数秒間視線が交錯した後、リリカが意を決して声を出す。その瞬間、目の前の女性が矢のような速さで飛びかかってきた。その両手にはいつの間にか、彼女の背丈より長い大剣が握られている。瞬きを一度する間に、剣を振りかぶった彼女が迫ってくる。咄嗟にメイスを横に構えて剣を受けた。メイスの柄が剣の質量に耐えきれず、叩き切られる。


「あ……」


 一瞬のことだった。

 メイスをいとも簡単に真っ二つにした彼女と目が合った。その瞳は金色。そしてその瞳孔は蛇の、あるいは竜のような縦長。

 ドラゴニュート。竜人。人とよく似た体躯に竜の力を秘めた、最上位の魔物。

 大剣の刃が左肩に食い込む。使い込んだ革鎧などで勢いは全く止まらない。鎖骨が割れ、肋骨が砕け、肺が潰れる。

 痛みを感じる間も無く、来なければ良かったと後悔する間もなく、剣がリリカの心臓を―――


『条件を満たしたため、スキル【融合】が発動します』


 意識が飛ぶ瞬間、リリカの脳裏に誰かの声が響いた。




「う……ん?」


 リリカが目覚めたのはダンジョンの硬い地面の上だった。なぜこんなところで寝ているのか。必死に思い出す。


「そうだ、私斬られて……」


 斬られたはずなのに、身体に痛みも傷もない。あれはリアルな夢だったのだろうか。

 だが、身に着けた革鎧が左肩の部分から斜めに切り裂かれ、血で汚れている。辺りには真ん中で2つに叩き割られたメイスの残骸もあった。


「あれ、夢じゃなかったんだ」


 思わず声が出る。しかし、そうなるとなぜ自分は助かっているのか。そして、あのドラゴニュートはどこへ行ったのか。さっぱり分からない。が、少しのヒントならある。切られた瞬間に発動したスキルだ。


「確か、名前は、【融合】」


 融合して何故助かったのかは分からないが、それ以外に助かる理由がない。

 またスキルを看破してもらえば分かるかもしれないが、そのためにはまず、ここを脱出しなければいけない。


「辺りを見回しても、扉も階段もなし、か」


 広大な部屋に脱出できそうなところは無い。ただ一ヶ所を除いては。

 その一ヶ所はリリカが倒れていたすぐ近くで、そこには転移陣が輝いているのだ。

 一度酷い目にあったのに、またこれに乗るのは抵抗があった。


「また乗るかどうか……うーん」


 悩んでいると、自分の指が視界の端に入った。そして違和感を覚える。自分の手の何かがおかしい。


「………」


 しばらく悩んで分かったのだが、自分の手が綺麗すぎる。ほとんど毎日ダンジョンに潜っているせいで、細かい傷とマメだらけだったはずの手が、傷のない真っ白な手に変わっている。

 他には、視力も良くなった。この部屋に来たばかりの時は遥か彼方に霞んで見えた部屋の端が、今ははっきり見える。

 下を見れば明らかに胸が大きくなっていて、壊れかけの鎧を押し上げている。

 そして、身体の内側から湧き上がってくる『力』。全く変わってしまった肉体の隅々までエネルギーが満ちている。今なら何でもできる。そんな万能感さえ湧いてくる。


 これが全て自分の不明なスキルのせいなのだろうか。

 リリカはしばし考えたが、答えは出ない。やはりここを脱出しなければ。

 何故か上がった視力でこの部屋全体を見回してみたが、目の前の転移陣を除いて他に脱出できそうなところは無い。


「ええいっ」


 意を決して転移陣に乗ると、軽い浮遊感の後、別の場所に出る。


「ここは……」


 見慣れた場所だった。白蛇ダンジョンの、転移陣のあった部屋だ。あの広大な部屋と比べると、酷く狭く感じる。自分が乗った転移陣は、もう消えていた。そう言えば、何故、ここに転移陣があったかも分からない。早く村に帰ろう。


 とても狭い白蛇ダンジョンであるから、すぐに脱出出来た。外に出ると空は夕焼けで真っ赤だった。


「うわ、もう夕方じゃん。早く帰ろ」


 ペンド村への道程を歩くが、その足は軽い。一日ダンジョンに潜っていた疲れなど全く感じなかった。




 行きよりも早く村に着いて、『蛇の尾』へ向かう。もう日が完全に沈んでしまっていて、道を歩いている人はいない。


「ただいまー」


 なんの気なしに『蛇の尾』の扉を開けると、中にいた人が一斉にこちらを向いた。店の中には『蛇の尾』のおじさんと、ミヤと、20人くらいのお客がいた。普段ならこの時間はほとんど客がいないのに、今日は5つあるテーブルが全部埋まっている。その全員が何も言わずにリリカを見つめていた。

 沈黙があまりにも長いものだから、リリカも何も言えず、扉のところで固まってしまった。

 数秒だったろうか、数分だったろうか、とにかく長いその沈黙を破ったのは、『蛇の尾』のおじさんだった。


「……いらっしゃいませ」

「……?」


 なぜおじさんがそんなことを言うのかわからない。普段なら、「おー、戻ったか」とか言うのに。

 リリカが首を傾げていると、おじさんがまた口を開いた。


「食事ですか? 宿泊ですか?」


 ますます意味がわからない。今まで何ヶ月もここに泊まっているのに。


「えっと、宿泊って言うか、もうここに泊まってるっていうか……」

「……どういうことですか?」

「えっ? え? 私、リリカですけど」


 リリカの言葉に、おじさんが目を見開く。同時に客がざわつき始めた。

 何事かとリリカが戸惑っていると、初老の男性が近づいてくる。この村の村長だ。リリカももちろん知っている。


「私は、この村で村長をしている、ベイルという。戸惑わせて申し訳ない。実は、リリカというこの村を拠点にしていて、貴女と同じ名前の探索者が昨日から行方不明でね。何か知っていることがあれば教えてほしい」


 一体どういうことか。貴女と同じ名前? 昨日から行方不明? 何が起きているのかわからない。


「あの、私がそのリリカなんですけど……。ほら、迷宮探索許可証もありますし」


 背中の道具袋から手のひら大のカードを取り出す。迷宮探索許可証は国が迷宮探索者全員に発行するカードで写真付きだ。これで、自分がリリカとわかってもらえると思ったが、村長は写真とリリカの顔を何度か見比べて、「いや、別人だろう」とつぶやいた。

 まさかの展開に、混乱していると、店の奥の方でこちらを見ていたミヤが声を上げた。


「あの人の鎧、リリカがつけてたやつと同じだ……。古くなったからもうすぐ買い換えるって言ってた!」


 半分壊れかけている上に、血糊の付いた鎧。そんなものを身に着けて、行方不明のリリカの許可証を持った『別人』。この女がリリカを害したのではないか。そんな疑いの視線が一斉に向けられる。


 「いや、その、あの……」


 突然のピンチにリリカが動けずにいると、『蛇の尾』の扉がバンと大きな音を立てて開いた。そこにいたのはエヴォーディアとお付きのメイドだった。


「リリカさんが帰ってきたと聞き、こちらに伺いました」


 メイドを3人引き連れて、エヴォーディアが店の中に入ってくる。庶民的な店にロイヤルすぎるエヴォーディアは明らかに異質だった。


「リリカと名乗る者が現れたのですが、どうも村にいたリリカとは別人のようで……」


 村長がエヴォーディア一行に説明をすると4人がこちらを向いた。そして、メイドのうちの一人が口を開いた。


「あなたがリリカさんでよろしいのですね?」

「は、はいっ!」

「ずっとこの村に滞在していた?」

「そうです!」


 口調がきついので尋問のようだ。メイドはその2つだけをリリカに尋ねると、後ろを振り返り、『蛇の尾』のおじさんを呼びつけた。


「店長。個人認証機を持ってきてください。彼女が、本当にリリカさんかどうかそれで確認できますので」

「え?」

「早くお願いします」

「はい、只今!」


 おじさんが店の奥から個人認証機を持ってきた。長く使っていないせいか、薄くホコリをかぶっている。人は一人ひとり異なる魔力の波動があり、そのパターンが迷宮探索許可証に登録されている。それを利用することで許可証を本人が使っているかわかるようになっているのだ。

 まず、村長が許可証を認証機に置く。リンと鈴のような音がなった。


「じゃあ、あなたの手をここに置いて」


 おじさんに促されて、リリカが右手のひらを認証機に置く。また、リンと音がなった。

 これでもし別人と言うことになったら、自分がリリカでないということが決定してしまう。心臓がひどく音を立てた。

 数秒後、認証機の画面を見たおじさんが口を開いた。


「認証できてる……」


 リリカが画面を覗き込むと、そこには「一致しました」と表示されていた。


「良かった……」


 思わず目が潤む。ここで別人と判定されらどうなっていたことか。

 目の前の女性がリリカと分かって、また店内がざわつく。


「リリカ」


 すぐ横にミヤがやってきた。


「ほら、鏡。自分の顔見てよ」


 ミヤに手鏡を押しつけられ、自分の顔を見る。

 そこに映っていたのは、銀の髪に、金の瞳。そして縦に長く伸びた瞳孔。顔立ちはあのダンジョンの奥で出会ったドラゴニュートと瓜二つだった。


「えっ、これが私?」


 自分の思っていた自分の顔と全く違う。この顔で、リリカの写真が入った迷宮探索許可証を持ってきて、「私がリリカです」と言われても、疑ってかかるのは当然だろう。


「リリカさん」


 鏡の中の自分を呆然と見つめるリリカに声がかかる。声の主は村長だった。


「君がリリカさんだと言うことはわかった。だが、一体何があってそううなったのか、教えてくれないか?」


 村長のその声で、また店内の視線がこちらを向く。皆、リリカの言うことを一言も聞き逃すまいと、一様に押し黙る。ざわついていた店内がしんと静まり返った。


「えっとですね、今日は私、白蛇ダンジョンに行ったんですけど、狩り終わって村に帰ろうとしたら、ダンジョンの中に転移陣があったんです。その陣に乗ったら、広い闘技場みたいなところに行って、そこに今の私みたいな姿のドラゴニュートがいたんです。それで、そのドラゴニュートに倒されたんですけど、気がついたらドラゴニュートがいなくなってて、そのドラゴニュートの姿になってました。外に出ようとしたら、その部屋に転移陣があって、それに乗ったら戻ってきました」

「ちょ、ちょっといいか?」


 村長に話を止められる。


「色々と気になる所だらけだが……まず、リリカさんは今日ダンジョンに向かったと言っているが、あなたがダンジョンに行ったのは昨日の話だ」

「え、そうなんですか?」


 自分では同じ日の内に戻ってきたと思っていたが、ダンジョンの中で気を失っていた時間は案外長かったらしい。


「昨日の夕方、帰ってこなくなった君を探しに行って、見つからなかった。今日は朝から人も探す場所も増やしていた。蛇の尾に集まっていたのは明日の捜索をどうするか話していたんだ」

「それは、なんというか……、ご迷惑をおかけしました」

「まあ、それは戻ってきてくれたからいいだろう。それよりも問題は、ダンジョンの中に転移陣が出て、その先にドラゴニュートが現れたことだな」


 村長が蛇の尾のおじさんの方を見る。


「信じられないな。今までにそんなことはあったのか?」

「ないよ。そんなことがあれば、この村ももっと流行ってるさ」

「それもそうか」

「あと、リリカに聞かないといけないのは、なぜドラゴニュートの姿になったか、ということだが……」


 村長がまたリリカの方を向いて尋ねた。当然気になるところだろう。


「この姿になったのは、自分でもよく分からないんですけど、スキルが発動したみたいなんです。あの、私の不明だったスキルが、です」


 リリカのスキルが不明ということはこの村の皆に知られていたから、また、皆がざわつき始めた。エヴォーディアまで目を見開いてメイドさんたちと何事か話している。


「それも、中々に信じがたいな。不明なスキルが突然発動するなんて」

「では、スキル分析機を使えばわかるのではないですか? そういう機械があると聞きました」


 村長の言葉に声を出したのは、なんとエヴォーディアだった。店長が慌てて、また店の奥から機械を持ってくる。


「じゃあ、ここに手のひらを置いてくれ」


 スキル分析機は、自分がスキルを手に入れたら皆使うことになる。リリカももちろん使った。基本的にスキルが変わることはないから、使うのは一生に1回だけ。この村ではめったに使われないから、これもうっすら埃を被っている。

 手を置いてしばらくするとリンと音が鳴り、分析機と繋がった印字機からスキルの書かれた紙が出てきた。



【融合】

 魔物の攻撃により死亡した際に発動。死亡させた魔物と融合し、その能力を継承する。

 このスキルは一度だけ発動する。発動済:対象『プラチナドラゴニュート』



 確か、ダンジョンの中で斬られた時、スキル《融合》が発動したと聞こえた。死亡が発動条件なんて、そりゃ分かりようがない。

 そう思っていると、印字機が更に紙を吐き出した。



【龍化】

 任意で発動。任意で解除可能。龍形態に変身する。



「えっ、何これ……2つ目のスキル?」

 リリカが戸惑っていると、また紙が出てくる。



【ドラゴン・スピリット】

 常に発動。身体的および精神的状態異常にならない。



「スキル3つだと!?」

「多すぎる!」

 周りがにわかに騒がしくなる。

 ほとんどの人が持つスキルは1つだ。稀に2つのスキルを持つ者が現れ、3つあればそれだけで奇跡の人扱いだ。

 そんな人間たちの動揺を無視して、印字機は印刷を続ける。



【龍魔法適正・極】

 常に発動。龍魔法に対する適正が極めて大きく上昇する。



【武具召喚】

 任意で発動。任意で解除可能。専用の武具を召喚する。



【超絶魔力】

 常に発動。魔力保有可能最大量と魔力回復速度が極めて大きく上昇する。



 ここまで紙を吐き出して、印字機はようやく止まった。

 スキル6つ。過去にこんな人間はいたのだろうか。

 皆が呆然としていると、メイドさんがリリカの横に来た。


「リリカさん、この紙をよく見せて頂けますか?」

「はい」


 メイドさんがリリカの手渡した紙を眺め、しばらくして顔を上げる。


「これは、【融合】以外はダンジョンの奥にいたというドラゴニュートのスキルで、それを引き継いだようですね」

「つまり、私が見たドラゴニュートは、スキル5個持ちだった?」

「その可能性が高いと思います」


 人間と同じように、魔物もスキルを持つ。魔物本来の強さによって脅威度は変わるが、スキル2つならばスキル1つの場合と一線を画す強さとなり、3つならばどんな魔物でも人類の脅威となる。では、5つなら?


「この世界で勝てる者は無いでしょう」


 エヴォーディアが小さく呟いた声が、やけに耳に響いた。






 翌朝、リリカはいつもの様に宿のベッドで目を覚ました。が、何かがおかしい。寝起きだというのに異様に頭が冴え、体が軽い。何なら今からでもフルパワーで戦えそうだ。

 何でこんなにも体の調子がいいんだろうか、と少し考えて、昨日、ドラゴニュートと『融合』してしまったことを思い出した。

 そう言えば、まだ自分の身体がどうなっているのか、詳しくは見ていない。昨日はあれからリリカが帰ってきたお祝いの宴会が何故か始まって、遅くまで騒いで、そのまま寝てしまったからだ。

 ベッドから降りて、洗面台にある鏡の前に立つ。鏡の中には、銀髪金眼の竜人が映っていた。


「ふーん、ドラゴニュートの身体って、こんな感じなんだ」


 一見するとほとんど人間と変わらない。しかし、瞳孔が縦に長かったり、犬歯が大きくなったりという変化はあった。肌も色白になった以外は変わらないが、下顎の裏と尾てい骨の所に、銀色の鱗が一枚ずつ付いていた。


「顔は……ほとんど別人だ」


 改めて自分の顔を観察する。元のリリカの顔の面影がある気はするが、昨日ダンジョンの中で一瞬だけ見たドラゴニュートの顔に近い。ドラゴニュートが8、元のリリカが2くらいの割合で混ざっていると思う。

 顔の輪郭や鼻の高さ、口元はドラゴニュートのものだ。そして目元だけは元のリリカの特徴がよく残って、わずかに垂れ目となっている。

 背中に掛かるくらいまで伸びた銀髪に触れてみた。硬い髪質はリリカの時と変わらなかったが、全く痛みのない髪となっていた。


「それから、このプロポーション、か」


 元々は、平均的な身長で、寸胴でもグラマーでもない特筆すべき所のないスタイルだった。だが今は身長こそ同じだが、過剰なくらいメリハリの効いた身体になっている。

 胸はものすごく大きくなった。両手を使っても、片方を覆いきれずに溢れるくらいだ。尻も安産型な大きさになっている。

 当然今まで着ていた服は入らないので、寝間着に宿のバスローブを借りた。今の身体は厚手のバスローブを着ていても、その超絶なプロポーションがわかってしまう。そう言えば、昨日の宴会で村の人たちの鼻の下が伸びていた。きっと偶然ではないのだろう。


「しかし、こりゃスゴい身体……あ、でも服は買い直しじゃん。お金ないなあ」


 そんな事を呟きつつ自分の身体をさんざん眺めまわしてから、寝室に戻った。ベッドの横のテーブルを見ると、その上に紙が一枚置いてあった。昨日、自分のスキルを印刷した紙をもらってきていたのだった。


「私のスキル……」


 いままでスキルなんて、あってないようなものだったから、いきなりスキルが6つに増えましたと言われても実感が沸かない。

 とりあえず何かスキルを使ってみようとして、もう一度スキルの書かれた紙に目を通した。



【融合】

 魔物の攻撃により死亡した際に発動。死亡させた魔物と融合し、その能力を継承する。

 このスキルは一度だけ発動する。発動済:対象『プラチナドラゴニュート』


【龍化】

 任意で発動。任意で解除可能。龍形態に変身する。


【ドラゴン・スピリット】

 常に発動。身体的および精神的状態異常にならない。


【竜魔法適正・極】

 常に発動。竜魔法に対する適正が極めて大きく上昇する。


【武具召喚】

 任意で発動。任意で解除可能。専用の武具を召喚する。


【超絶魔力】

 常に発動。魔力保有可能最大量と魔力回復速度が極めて大きく上昇する。




 この中で、【融合】はもう発動してしまっていて2回目が使えないし、【ドラゴン・スピリット】も状態異常にならないと試しようがない。

 【竜魔法適正・極】や【超絶魔力】はそもそも今まで魔法が使えなかったから、違いが分からない。

 【龍化】は、ここでも使えそうだが、ドラゴニュートがいたダンジョンの部屋は人間サイズのドラゴニュートにとって、どう考えても広すぎたし、天井もものすごく高かった。だが、ドラゴンに変身したらあの部屋でちょうど良くなるのではなかろうか。今、この宿の部屋で変身するのは、やめておいた方が良さそうだ。

 となると、今ここで試せそうなのは【武具召喚】だけだ。

 ではこのスキルを使ってみようとして、あることに気付く。スキルの使い方が分からない。


「スキルってどう使うんだろ。試しに、スキル名を叫んでみる? 【武具召喚】!!」


 リリカが叫んだ瞬間、目の前の空間が歪み、リリカの背丈よりも遥かに長大な大剣が出現した。柄がリリカの方を向き、床と水平になって宙に浮かんでいる。


「おおっ、本当に出てきた!」


 自分が確かにスキルを使えたことに興奮しながら、リリカは目の前の大剣を手に取った。

 白銀に輝く刀身は分厚く、剣と言うよりも金属の塊といった方が正しいかも知れない。見た目に違わず恐ろしい質量だが、ドラゴニュートの肉体を得た今のリリカは、「ちょっと重くて振り回しやすい」くらいに感じていた。本当に振り回すと、大して広くない宿の部屋が壊滅するので振れなかったが。


「でもこれ、大き過ぎて持ち歩きにくい?」


 腰に佩く大きさではないし、背中に背負っても地面に擦ってしまう。必要な時だけスキルを使って手元に持ってくるのがいいだろうか。

 リリカが大剣を持ったまま考えていると、目の前の空間が再び歪んだ。歪みの中から黒い何かが床に落ちてきて、ガタンと音を立てた。何が落ちてきたか確認する間もなく、次々に歪みから物が落ちてくる。

 色が全部黒いのでわかりにくいが、落ちてきたのは、胸甲付きのドレスに、肘まである長手袋、ヒールの付いたグリーブ、タイツに上下の下着だった。


「これもスキル? 剣だけじゃないんだ」


 スキルの名前は【武具召喚】だから、防具も含まれるのかもしれない。リリカは剣を床に置き、バスローブを脱いでしまって、小山を作っている防具を身につけていく。ドレスなど着たことがないから少々時間が掛かったものの、何とか着ることが出来た。

 グリーブまでちゃんと履いて、再び鏡の前に立つ。鏡の中には、リリカを叩き斬ったドラゴニュートが、その時の姿のまま映っていた。


「あのドラゴニュートも、きっと【武具召喚】を使ってたんだね」


 そう口に出して、リリカは思い出す。リリカがあの広い部屋に行った時、ドラゴニュートはドレスを着ていたけれども、剣は持っていなかった。そして、戦う直前にどこかから剣を取りだしていた。つまり、剣と防具は別々に召喚できるのかもしれない。でも、どうすればそんな事が出来るのかわからない。


「剣だけ消えろ〜」


 しばらく悩んだ末に口走った一言で、床に置いてあった剣が忽然と消えた。重すぎたせいでちょっと床が凹んでいるが、見なかったことにする。ひょっとしてドレスも消えるのかと試してみると、ドレス一式も消えた。また裸になってしまったが、再度【武具召喚】を発動すると、同じように剣とドレスが現れた。


「やった。これで私にもスキルが……」


 リリカは調子に乗って、剣やドレスを出したり消したりを繰り返した。慣れてくると、剣のサイズを大きくしたり小さくしたり、裸の状態から直接ドレス一式を身につけた状態にしたりすることもできた。

 とにかく、これでとりあえずの服が手に入ったし、スキルも問題なく使えたし、これからどうしようかと考えていると、突然部屋のドアがノックされた。


「リリカー? 起きてるー?」


 ドアが叩かれた後にミヤの声が響く。「はーい」と返事をしてドアを開けると、部屋の前に立っていたミヤにものすごくびっくりされた。


「うわあ!!」

「え? どうしたの?」

「いや、リリカじゃない人がが出てきたから……昨日変身したの忘れてて。声はそんなに変わってなかったけど」


 確かに出てくると思っていた人が全くの別人だったらびっくりするかもしれない。


「それにそんなドレス持ってなかったでしょ。どうしたのそれ?」

「これ? これは、スキル使ったら何か出てきた」

「スキルでそんなこともできるんだ……」

「ところで、なんで起こしに来たの? いつもは来ないでしょ?」

「うん。それがね、リリカにお客さんだって」

「お客さん?」

「詳しいことは知らないけれど、なんか大事な話みたいだよ?」


 朝から大事な話なんて、これまでになかった。急いでミヤと一緒に1階へ向かう。



 階下に降りると、昨日エヴォーディアと一緒にいたメイドの一人が食堂の椅子に腰掛けて待っていた。そして、リリカの顔を見ると立ち上がり、一礼した。


「私はエヴォーディア様のメイドを務めております、アンジェリカと申します。朝早くから呼びつけてしまい、申し訳ありませんでした」

「いえ、別に気にしてないです」

「ありがとうございます。それで、私がここへ来た理由なのですが、実はエヴォーディア様がリリカさんに会いたいと仰られまして」

「ディア様が?」

「はい。昨日もお話を聞かせて頂きましたが、ダンジョンで珍しい経験をしたリリカさんに是非もっと詳しい話を聞きたいとのことで、もしよろしければ、会って頂けないでしょうか?」


 今日は特に予定も無かったし、行くのは全く苦ではない。


「私なんかの話で良ければ、いくらでもします。で、いつからですか?」

「今からです」

「今から!?」

「はい。朝食も用意させて頂きました」


 アンジェリカさんが有無を言わせないといった顔でこちらを見る。その迫力に負けて、リリカは朝早くからエヴォーディアの元へ向かう事になったのだった。


 エヴォーディアの住む邸宅は、この村で間違いなく一番大きい建物だ。屋敷の前を通った事は何度もあったが、中に入るのは初めてだった。

 案内された部屋は、『蛇の尾』の食堂よりずっと広く、テーブルクロスの掛けられた長テーブルが中央に鎮座している。賓客があればここで食事会をするのだろうか。エヴォーディアは既にテーブルに着いており、その前とその横に朝食がセッティングされている。

 初老の執事に案内されるまま席に着いた。見たことが無いくらいおいしそうなパンとスープとサラダが、見たことが無いくらい高級な食器によそわれている。

 リリカは今更、目の前にいるのが王女様である事を自覚して、柄にも無く緊張した。変な汗が出る。


「お待ちしておりました」

「お、お招き頂き、ありがとうございます」

「そんなに固くならず、是非昨日のお話を聞かせてください」

「そんな面白い話ができるかは……」

「大丈夫です。どんなことでも良いですよ。さあ、スープが冷めてしまいますから、早く頂いてしまいましょう。頂きながらお話を聞かせて下さいな」


 ダンジョンの中であったことは、昨日の夜におおよそ話してしまっていたから、主にディア様の質問に答える形になった。


「では、ダンジョンの奥で出会った竜人は、今のリリカさんと同じ姿で、スキルは武具召喚しか使っていない様子だったのですね」

「そうですね」

「それから、召喚された武具ですが……」


 食事中、矢継ぎ早に質問するディア様に応えつつ、料理を口に運ぶ。食事は美味しいはずだが、緊張しすぎていて、あまり味はわからない。


 長い長い食事が終わり、「食後のお紅茶です」と、メイドさんがティーカップに紅茶を注いでくれる。また高そうなカップだった。


「お砂糖は必要でしょうか?」

「お願いします」


 リリカの注意がメイドに向いている間、エヴォーディアとアンジェリカが何事か小声で話している。元のリリカなら全く聞こえないほど小さい声だが、今ならば問題無く聞き取ることができる。


「やはり、間違い無いと思います」

「ですが、それではエヴォーディア様の……」

「……必要なことでしょう。リリカさんにお願いすることが大きすぎますから」

「はい、」


 不穏な雰囲気の話だった。聞こえなくても良かった。



 食後の紅茶も終わり、食堂にはリリカとエヴォーディア、アンジェリカの3人だけが残った。部屋に近くに人の気配は無く、人払いがされているようだ。


「リリカさんは、私のスキルをご存知でしょうか」


 ディア様が深刻な調子で話し始めた。


「いえ、知りません」


 それは本当だった。そもそも必要が無ければ自分のスキルをわざわざ他人に言いふらしたりしない。それが王族となれば尚更だ。


「……私のスキルは、【予知夢】です」

「予知夢?」

「はい」


 ディア様がうなずく。


「望まなくとも、近い将来に起こることを夢に見るのです」

「エヴォーディア様のスキルが判明してから、悪用を恐れた陛下はこのことを極一部の信頼できるもの以外に秘匿し、表向き療養ということにして王都から遠く離れたこの村にエヴォーディア様を移されたのです」


 2人がエヴォーディアのスキルとこの村まできた理由を話してくれるが、それはもしかしなくても国家機密では無いだろうか。


「それを、どうしてわたしに?」

「私は何もかもを夢に見るのではありません。世界に起きる重大事のみだけなのです」

「わたしとその重大事が関係あるんですか?」

「……私が見た夢は、『突如現れた黒い龍が全てを破壊し尽くす』というものでした。この夢は1ヶ月前から毎夜見ていました」


 そう言って、ディア様が目を伏せる。


「【予知夢】で見た夢が全て現実になるわけではありません。悪夢を回避するように動けば、夢が現実にならないこともあるのです。

 今回もアンジェリカに頼んで、黒龍に関する情報を集めました。しかし、龍の手がかりはなく夢の内容は1ヶ月間ずっと変わらなかったのです。ですが!」


 ディア様が叫んでこちらを真っすぐに見つめた。


「一昨日、リリカさんがダンジョンに行って行方不明になった夜です。その日の夢は違ったのです! 『黒龍と白銀の龍が互いに争い、決着が付かない』という夢に変わったのです!」


 徐々にリリカ様が興奮してくる。


「昨日の夢はさらに変わっていたのです! 黒のドレスに身を包んだ銀の髪の女剣士が黒龍に斬りかかる夢に! そして、今リリカさんとお話しして確信しました。夢の剣士がリリカさんだと。リリカさん、どうかお願いします! 黒龍を打ち倒し、この世界を救って下さい!!」


 大声で叫んだディア様がその勢いのまま頭を下げる。


「わたしなんかに頭を下げないでください! 急にそんなことを言われても……」

「救っていただけないのですか!?」

「わっ」


 ディア様がその姿に見合わぬ俊敏さで飛びついて来た。慌てて抱きとめたが、目に涙を浮かべてこちらを見るディア様と目が合ってしまった。

 聞かされた話は突拍子もないが、その表情は嘘をついているように見えない。


「……わかりました。そんな世界を滅ぼすような龍に勝てるかは分からないですけど、もしその龍が現れたら、やれるだけやって見ます」

「ああ、ありがとうございます! 流石はリリカさんです!」


 ディア様がさらに強く抱きついてきた。


「ディ、ディア様、そのくらいに……」


 そのくらいにして下さい、と言おうとした瞬間、建物が突如大きく揺れた。


 揺れは数秒ですぐに収まったが、外の様子がおかしい。まだ朝なのにも関わらず、辺りが暗いのだ。


「一体なにが……」

「空! 空が!!」


 アンジェリカの声で窓の外を見ると、快晴だったはずの空が一面分厚い雲に覆われていた。日の光すらほとんど通さないくらいに厚い雲は遥か彼方に見える山脈すら覆い尽くしている。

 そして、その山の向こうに山よりも巨大な影がうごめいていた。そのシルエットは龍そのもの。だがあまりにも巨大だった。冬になれば山頂が雪で覆われる大きさの山脈でわずかに胴体が隠れるのみであり、開かれた口で簡単に呑み込まれてしまいそうだ。


「嘘でしょ」

「……夢で見たのは、あの龍です」

「あんなに大きいの?」

「夢で見たときは大きさまで分からなかったんです」


 確かにあのサイズなら、世界くらい簡単に滅ぼせるだろう。問題はさっきそれと戦う宣言をしてしまったことだ。逃げたい。


「リリカさん……」


 エヴォーディアとアンジェリカがこちらを見ている。そんなに見つめられると逃げられない。


「分かりました。行きますよ! 予知夢では私、あれに勝ってたんですよね?」

「はい!」

「なら行きます!」


 あれに勝てる気などしないが、あれが出てくるという予知夢は当たったのだ。あれに勝つという夢も当たると信じるしかない。


「でもどうやってあの龍の所に行きましょう?」

「それならばスキルの【龍化】を使えばよいのではないでしょうか? 龍は一般的に飛行できますから」


 なるほど確かにそうだ。屋敷を破壊しては困るので、庭に出て【龍化】のスキルを使う。


「【龍化】!」


 小声で呟くと同時に、リリカの肉体は光に包まれ巨大化する。


「お、おおー」


 見る見るうちに目の高さが上がっていく。巨大化は、庭を埋め尽くし、屋敷より大きくなった時点で止まった。

 全身は人間の時の髪色と同じ白銀の鱗で包まれている。初めて変身した龍の姿だが、リリカはこの身体の扱い方が分かった。スキルの影響だろうか。

 少し「宙に浮け」と念じれば、巨体が音もなく浮き上がっていく。下を見れば、屋敷の外に来ていたエヴォーディアとアンジェリカがこちらを見上げていた。


「では、行ってきます!」

「リリカさん、どうかお気をつけて!」


 こちらを見続ける2人から視線を外し、さらに浮き上がれと念じると、高度はぐんぐん上昇し、あっという間に雲と並ぶ高さまで来た。

 まだ黒龍までの距離は遠い。だが、今の肉体ならば大した距離ではない。リリカは音より速く空を駆けた。



 龍の飛行速度は思った以上に速く、ものの数分で黒龍の詳細まで見える距離まで来ることができた。だが近づくにつれ、黒龍の巨大さがはっきり分かってしまった。その巨体で太陽が隠れて、辺りは夜のように暗い。今のリリカも人間と比べたら十分に巨大だが、この龍と比べたら誤差のようなものだ。


「この龍、大きすぎない?」


 倒すにしてもどうやって倒せばいいのか分からない。


「ディア様にどうやって勝ったか聞けば良かった」


 そう思いつつ、黒龍に向けて一直線に飛んでいると、不意に黒龍がその首をもたげた。何をするのかと様子を見る。すると黒龍は何かを探すように頭を動かし始めた。

 しばらくして黒龍はリリカの方を向いて首の動きを止める。その視線は間違いなくリリカを見ていた。

 黒龍の巨大な金色の瞳と目が合う。普通の人間なら、視線だけで恐慌状態に陥ってしまうが、リリカは【ドラゴン・スピリット】のお陰で精神の平穏を保つことができた。


「大丈夫、勝てる。勝てる」


 その視線の圧力に負けず飛翔を続けていると、突然黒龍の口が開く。飛行に集中していたリリカは、それに気付くのが一瞬遅れてしまった。


「やばっ」


 城を丸呑みできそうなサイズの口に、闇色の魔力が収束していく。龍魔法の一つ、ドラゴンブレスだ。リリカは避けようとするが間に合わない。解き放たれた魔力の奔流に巻き込まれ、なす術なく墜落した。




「うわああああああ!!!」


 バキバキと音を立てて森の木々を折りながら、リリカは落ちていく。いつの間にか【龍化】は解けて人間の姿に戻っていた。


「ああーっ!!」


 リリカの落ちた先には大岩があって、それに直撃する形になったが、轟音と共に岩の方が粉砕された。


「いたた……いや、痛いだけで済むって、この身体、頑丈過ぎるでしょ」


 【龍化】を使用した時に衣服を吹き飛ばしてしまったのか、何も身につけていない状態だったが、全身を見ても、リリカの肌にはかすり傷一つついていない。


「で、私は無事だけど、何も解決してないんだよね」


 リリカが墜落したのは黒龍がいる山の麓だった。上を見上げれば山の稜線の向こうに黒龍が変わらぬ姿で存在していた。

 ただ、あの龍の攻撃を受けても平気なのはリリカが龍と融合したからであって、ドラゴンブレスが都市に撃ち込まれたなら、間違い無く一発で壊滅だ。


「どうにかしてあいつを倒さないといけないけど、私の攻撃が通じるのかな」


 悩んでいても仕方がない。あいつを倒せるのは自分だけなのだ。でも、どうすれば……。リリカが思考の袋小路にはまっていると、ひゅうと冷たい風が吹いた。


「くしゅん! さむっ……私、裸じゃん。服着よう」


 この強靭すぎる身体でも寒さは感じるようだ。こんなところに普通の服はないから、武具召喚を使って装備を呼び出す。リリカの身体を黒のドレスが包み、手の中には背丈より長い大剣が現れた。

 あまりにも大きいと取り回しにくいから、長剣サイズに小さくしようとして、ふと気がついた。


「この剣、どこまで大きくなるのかな?」


 宿で試しに大きくなれと念じてみたときは、すぐに部屋に入らないサイズまで大きくなた。その時は少量の魔力が剣に流れていく感じがして、剣が大きくなっていた。それよりも沢山魔力を送り込むとどうなるのだろうか。試してみると、剣は流した魔力の量に応じて、更に大きく重くなる。

 全力で魔力を流し込めば、あの黒龍に匹敵する大きさになるのではないか。

 その巨大化させた大剣を龍にぶち当てれば倒せるのでは?

 降って湧いた黒龍撃破のイメージをリリカの頭脳が具体的な作戦に組み上げていく。



「よし、これで行こう」


 数分後、作戦が決まった。と、いってもリリカが白蛇ダンジョンで毎日やっていたことの焼き直しだ。つまり、できる限り不意をついて近づき、黒龍の頭に巨大化させた大剣を叩きつける、それだけだ。

 こっそり近づくために、巨大化してしまう【龍化】は使わず、この姿のまま跳躍して一気に近づく。さっき試しに軽くジャンプしてみたら、簡単に大木の梢を越えた。全力で跳べば、あの龍の頭を狙える高さまで跳べるはずだ。そして、一番近づいたところで剣を巨大化し、振り下ろす。

 それで勝てるかはわからないが、勝てると信じよう。姫様は私が勝つと夢に見たんだから。



 剣を握り直して、大きく息を吸い、吐き出す。正面はるか上方に黒龍の頭が見える。幸いこちらを見てはいない。


「行くよ」


 リリカは小さくつぶやくと地面を蹴って駆け出す。あっという間に最高速まで加速し、黒龍が目の前に迫ってくる。思い切り踏み切って跳躍すると、何かが爆発したような音が足元から起こって、リリカは空に飛び出した。とてつもない速度で飛翔し、雲を突き抜けても全く減速せず、空気が薄くなり始めたところでようやく減速し始めた。黒龍の頭と同じ高さまで跳べたらいいと思っていたが、今、目標の頭は遥か下方にある。

 そして、滞空すること数秒。リリカのちょうど真下に黒龍の頭が来た。


「今っ!!」


 チャンスはここしかない。大剣の切っ先を下に向け、スキル【超絶魔力】で生み出した莫大な魔力を剣に注ぎ込んでいく。


「はあああああああっ!!!」


 裂帛の掛け声と共に、魔力を流し込まれた大剣が巨大化していく。すぐに柄の部分だけでリリカの身体よりも長くなってしまったから、剣にしがみつくような格好になってしまったが、それでも更に魔力を流し込んでいく。

 黒龍が自身に迫る巨大な剣に気づき、上を見あげた。再度リリカと目が合うが、先程とは違い、リリカが上から見下ろすかたちになっていた。


「当たれーーーーっ!!!!!」


 その顔に狙いを定め、大剣を叩きつける。すでに剣は地面から雲に届くほど長大になっていたが、リリカの膂力はその長大な剣さえ振り回すことができた。

 黒龍は口を開き、ブレスを放とうとするが、もう遅い。黒龍の眉間に剣が突き刺さり、その頭蓋骨を割る。圧倒的質量と速度は、頭蓋骨を割る程度では止まらず、そのまま胴体を貫いて地面に突き刺さった。


「わーっ!?」


 地面に激突した衝撃で剣を放してしまい、空中に放り出されたリリカだったが、とっさに剣の鍔へ、しがみつき、落下は免れた。巨大化した剣は鍔の部分だけで人が何人も乗れるくらい広くなっていた。


「あ、当たった? 龍はどうなったの?」


 確かに手応えはあった。鍔の上に立って下を覗き込むと、頭を開きにされ、地面に縫い留められた黒龍が見えた。しばらく様子を見たが、黒龍はピクリとも動かない。そして不意に黒い煙となって消えた。

 突然のことでリリカは驚いたが、考えてみれば、いつもダンジョンの中で魔物が消えるときと同じだ。

 こいつも魔物だったんだ、などと思っていると、リリカの頭の中で声が響く。それは、白蛇ダンジョンの最奥で融合が発動したときと同じ声だった。


『龍神を撃破しました。神格が上昇します』


 突然の声にリリカが戸惑っていると、リリカの肉体に力が流れこんで、元からあった力と合わさり、一段強化された。


「え、なにこれ? 私、まだ強くなるの? それに、今倒した龍って神様だったの? それから、シンカクって神様の格? 私も神様ってこと?」


 次々疑問が浮かぶが、地面に突き刺さった大剣の鍔の上で、リリカの疑問に答えてくれる者は誰もいない。


「変わりたいとは思ったけど、こんなに変わらなくても良かったよ……」


 そのつぶやきも誰にも聞かれず、空に消えていくのだった。





 1ヶ月後、リリカは王都にいた。黒龍を倒した功績により勲章を授与されることとなったのだ。

 大剣が黒龍に突き立ったのは王都からも見えていたし、村から飛びたった銀色の龍が黒龍と戦ったのも沢山の人が見ていた。何より黒龍を倒した後のリリカが、村の近くまで【龍化】で変身して飛んで戻ったものだから、リリカが黒龍を倒したことは国中に知られることとなった。


 叙勲の話をアンジェリカから聞いたリリカはひどく戸惑ったが、「リリカ様の力が自らに向けられることを恐れているのでしょう」とアンジェリカは言った。


 そんなこんなで叙勲を終え、その後のパーティーも終わり、リリカは王城の一室で窓際に立って夜風に当たっていた。開かれた窓から入ってくる風は心地よく、今夜はよく晴れていて、月も星もよく見えた。

 夜空を見ながら考えていたのは、怒涛の1ヶ月のことだ。勲章とか正直実感がわかないが、また、気楽に冒険者ができたらいい、などと考えていた。

 すると、ドアがノックされ、エヴォーディアが入ってきた。


「リリカさん、ここにいましたか」


 そのまま、リリカの隣まで歩いてきて、エヴォーディアも空を見上げる。


「ディア様、すみません。側を離れてしまって」

「いいですよ。今日はお疲れでしょうから」


 今、リリカの公式な立場は、エヴォーディアの私的な護衛となっている。なんの後ろ盾もない冒険者では、国内外の有力者から圧力を受ける可能性が高いため、そのようになったのだ。


「そのドレス、よくお似合いですよ」

「ありがとうございます。これ、ディア様に頂いたものですが……」


 今、リリカが身に着けている濃紺のドレスは、今回の叙勲の際に夜会もあるからと、エヴォーディアが半ば無理やり渡したものだった。


「世界を守ってもらったんですから、これくらい安いものです」


 そう言って、エヴォーディアは微笑むが、すぐに目を伏せた。


「実は、昨夜また、夢を見たんです」

「えっ」


 エヴォーディアがわざわざそんな夢の話を言うということは……嫌な予感がする。


「世界を滅ぼそうと、空から沢山の魔物が降りてくる夢でした」

「その夢に私は……」

「いました。魔物と戦っていました」

「そうですか……でも、いつ魔物が来るかはわからないですよね」


 そう言ってリリカは空を見上げる。そこにはいつものように月が、見えなかった。


「え?」


 空全体が赤い。それも夕焼けのような赤でなく、血のような赤黒い色に染まっている。人間を超越した視力で空をよく見ると、赤い皮膚で翼の生えた人型の魔物が空を埋め尽くし、こちらへ向かっている。


「いや、これ数が多すぎるでしょ」


 魔物の大きさは人間と殆ど変わらない。だが、数が多すぎる。人間サイズの魔物が空に隙間なく並んでいるのだ。その数は少なく見ても億を超えている。それだけの魔物が一斉に転移魔法を使用して、この世界を滅ぼしにきたのだ。


「こんなのどうしたら……」

「リリカさん、こちらを」

「え? アンジェリカさん!?」


 いつの間にか部屋に入ってきていたアンジェリカが、一冊の古びた本をリリカに手渡す。


「なんですか、これ?」

「龍魔法についての本です。これまで龍魔法を使える人間は殆どおらず、古い本しか入手できませんでした。ですが、リリカ様は【龍魔法適正・極】のスキルも持っていらっしゃるので、有効に使えるかと」

「でも、魔法なんて使ったことないし……」


 そう言いながらもリリカは本を受け取って、中を見る。初めて見る言語だったが、リリカにはすべて理解できた。


「あ、やっぱりできるかも……」


 リリカは本を片手に、窓際に立つ。空を埋め尽くす魔物は数こそ非常に多いが、一体一体はさほど強くなさそうだ。今、この状況を打破するのに丁度いい魔法はこれだろう。開いたページには、龍魔法【龍雷】とその呪文が記載されていた。リリカはその呪文をそのまま読み上げていく。初めて話す言語だったが、正確に発音することができた。


『天は我が庭、我の城。此処に踏み入り荒らすものよ、その身を焦がす覚悟はあるか』


 リリカの詠唱に伴い、目の前の空間に魔力が凝縮していく。凝縮した魔力は激しく発光し、月が隠されたせいで暗くなった王都を照らした。


『受けよ我が怒り! 【龍雷】!!!』


 詠唱の終了とともに、空間にとどまっていた魔力が轟音と共に開放され、稲妻となって空に放たれた。何千何万もの稲妻が地上から空へと登っていく。魔物で赤く染まった空は、雷で白く染まった。

 無数の稲妻は魔物を貫き、焼き、撃破していった。一本一本の稲妻が、それぞれ万を超える魔物を焼き尽くした。

 白一色となった空は、稲妻が消えて、再びいつもの夜空に戻る。そこに魔物は一匹たりともいなかった。


「え? これで終わり?」


 魔法一発で魔物が全滅したことに戸惑うリリカだったが、再びあの声が頭の中で響いた。


『外宇宙の神と、その眷属を撃破しました。神格が上昇します』


 リリカの身体の中の力が増大する。


「嘘でしょ」


 呆然とするリリカに、エヴォーディアが飛びついてきた。結構な勢いで飛びついてこられたが、リリカは軽く受け止める。


「リリカさん、すごいです! あれだけの数の魔物を簡単に!」


 興奮し、瞳を輝かせながら話すエヴォーディアを見ながら、リリカは、もう絶対に平凡な冒険者には戻れないな、と考えていた。



 その後、頻繁にエヴォーディアが世界の危機を夢に見て、リリカはその度に世界を救うことになった。危機の規模は徐々に大きくなっていき、リリカたちの住む星以外の星も、銀河すら巻き込むようになった。

 そのうちに、白銀の龍神と、彼女に付き従う予知夢の姫の伝説は、全世界どころか全宇宙で広く知れ渡ったが、リリカは時々、平凡な冒険者生活時代を思い出していたという。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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[良い点]  勝てば勝つほど強くなって泥沼。ゲッターロボ 的で嬉しくない。姫さまに至っては神の領域になった主人公(※強くはなるが予知はできないなら)と何もせずに同格なのか。姫さますごすぎる。 [気にな…
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