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第4話 刺客

 出発当日、荷造りを終えてティファらを待っていた。着替えくらいでいいだろうとは思っていたが、まさか合格してしまうとは夢にも思わなかった。


「おまたせ〜!」

「アンタにしては早いじゃない」


「なんでお前らの方が遅いんだよ」


「だって皆にバイバイ言ってたら遅くなっちゃったんだもんっ」


「とにかく出発しましょ!」


 ティファがそう言って少し経つと、馬車がやって来た。


「おまたせしました。どうぞお乗りください」


 馬車の運転手は俺たちを一瞥してからスッと前を向きおした。


「ありがとうございますっ」


 ティファとユーリは馬車に先に乗り込む。俺が最後に乗り込もうとした時、運転手から独り言が聞こえた。


――コイツか――


 この言葉に引っかかりはしたが、この馬車も王国から派遣されている馬車だ。何も問題はないだろう。おそらく試験でのことがウワサにでもなっているのだろう。

 ひとまず聞かなかったことにして乗り込み、ティファとユーリの会話に参加した。

 一時間ほど経っただろうか、馬車が止まった。着いたのかと思い、外を見渡すが、建物らしい建物は見当たらない。

 運転手に何かあったのか尋ねてみたが、返事がない。仕方がないので一旦外にでて運転台を見てみると人影が無かった。その時、あたり一面に霧がかかりはじめた。

 驚き、ティファ達に運転手がいないことをとにかく伝えようと馬車に戻ると、二人とも眠っていた。


「やはり貴様には効かないか・・・・・・」


 声のする方へ振り返ると、運転手がいた。しかし明らかにこちらへ敵意を向けている。


「・・・・・・何をしたんだ」


「ここで死んでもらおうと、催眠魔術をかけたんだがね。やはり神の権能を持つだけはある・・・・・・」


 こいつはこの力のことを知っているらしい。


「お前は何か知っているようだな・・・・・・」


「貴様にはここで死んでもらう・・・・・・」


 言い終わるやいなや、周囲から大量の針が飛んできた。


「これには致死量の毒が入っている。貴様とて触れれば死は免れないだろうな!」


――ヤバイ――


そう思ったとき、また脳内から声が聞こえた。


「・・・・・・スィエラ・タィコス」


 気付くとまた魔術を唱えていた。無意識に何を使えば良いかがわかるような気がする。

 自分と馬車の周囲に風が渦巻く。まるで台風の目の中にいるような状態となった。四方八方からきた毒針は全て吹き飛んだ。


「ハッ。これはもしかすると最強なんじゃないか」


 自然と笑みが溢れた。周囲を囲っていた嵐の壁が解けると、運転手はこちらを睨んでいた。


「やはり、この程度では死なぬか・・・・・・」


 運転手は奥の手と言わんばかりに、ポケットから小瓶を取り出した。それを飲み干した刹那、奴の身体がみるみるうちに変化した。

 身体中から魔力がまるでドーピングをしたかのように溢れ出している。目も焦点があっておらず、いかにも不安定な状態だ。


「あのお方のために・・・・・・ここで死ねぇ!!」


 運転手は右腕を刃物へと変化させ、こちらへ突っ込んできた。


「何度やっても無駄だね」


 もう一度、同じように嵐の壁を出現させた。


――スパッ!!――


 奴は鋭利な右腕で持って壁を切り裂いた。そしてそのままこちらへ切りかかってきた。



「チッ。 じゃあこれを使うか・・・・・・アダマス!!」


 周囲を光が包み込む。そして右手に光が収束し、アダマスの刃が出現した。

 脳内に流入してくる情報によると、これは万物を切り裂く鎌であるらしい。無論魔術であっても破壊することが可能だ。


――ズザァア!!!――


 俺はアダマスの刃を持って奴の右腕ごと首を切り取った。その時の奴の顔は何が起きたのかまるでわからない顔をしていた。


「あっ、ミスった。奴から情報とれねぇじゃん」


 とにかく、ティファらを起こすか・・・・・・と思い、馬車へ乗り込もうとしたとき、来た道から馬車が向かってきた。


「こちらにいらっしゃったんですか!? まったく心配しましたよ〜」


「もしかしてあなたが迎えの馬車?」


「はい、そうですよ! 迎えにいくと、もう既に出たって言うではないですかぁ! とても心配しましたよぉ」


 こっちは気さくなオジサンだった。たぶんこっちは本物だろうと思い、寝ているティファ達を運んでもらうように頼んだ。

 俺は少し疲れたので、馬車に先に乗せてもらうことにした。



――


――――


――――――


「着きましたよぉ!! こちらがイオルコス魔導士官学校です!」


 目の前にそびえ立つは西洋のお城をモチーフにした壮大な校舎であった。


「せっかくの転生なら、もうすこしダラダラできる生活になるといいなあ〜」


「んもうっ、ディオスはやる気ないんだから〜」


 そう淡い期待を抱きながら、学生生活が幕を上げるのだった。

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