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乙女ゲーの王女と従者の英雄譚【旧題:異世界転生の罪と罰】  作者: 武美館
第一章 編入生の優等生と劣等生
8/100

冒険者達と主人公達

少々短めです。戦闘描写は次話入れます。今回は雑魚ばっかりなのでこの人達なら無双しちゃうようなので。


アミル視点です。


*2020/8/20容姿とかかみ合わないところも修正しました。

「ああ、ひどい目にあった!」

「エメル~もうちょっと静かにしないと~」


現在は学院の講堂とも言える教室で朝から徹夜明けの四人の生徒たちがバラバラに座っている。当然ながら他の生徒達には遠巻きに見られて噂でもされているのだろう。


エリシアが渡してきた依頼の山は全て簡単にこなせるものではあった。ただ夥しい量の依頼は五人がかりでも移動や調査で徹夜しないと終わらせられなかった。生まれ変わってもブラックな仕事を強いられるとは思わなかった。その上エリシアが広範囲魔法を使い、集めるはずの討伐部位や素材を台無しにしていた。因みに二次被害として爆発魔法を使った場合に起こることは想像以上に醜悪で悲惨な結果を生み出した。


勝負は結果的にエリシアが広範囲魔法をぶっ放したから勝ったが、色々と問題だったみたいで結局罰金として報酬を持ってかれた。そして途中で汚れる理由になったエリシアに魔法で綺麗にしてもらって一応朝の授業までに間に合った。学院を始めるとしてはある意味最悪な始まりだ。


ふと斜め後ろに気配を感じたので振り向いたら淡い桃色が掛かった金髪の娘がいる。


「あの~、...大丈夫でしょうか?」

桃色金髪の娘が少し遠慮がちに問いかけてきた。


「あー、悪いな。昨日徹夜で雑仕事をしてただけだ」

あまり興味がないのでそっけなく答えてから教室の前に向く。


「宜しければ隣に座ってもいいでしょうか?」


「...別にいいけど」

教室の後ろで座って遠巻きに見られている人の隣にわざわざ座られると...クマノミに巣くわれるイソギンチャクな気分だ。


前世と同じように自由に座れる場所を選べられるとある程度の個人差が出てくる。教室の前に座っている人たちは炊いて目立ちたがり屋かエメルみたいに興味津々なのが多い。窓のそばを選ぶのはほぼ確実に教室内の出来事には授業も含めて興味がない、現在のエリシアのように。そして教室の一番後ろで座る生徒たちは大抵サボるために座っている、そして確実に昼寝するか人間観察で時間を過ごす。俺は後者であり今は横目で何故か隣に座って真剣に授業を受けている娘を観察している。


視線に気が付いたのかその娘が様子を窺うように笑顔を向けてくる。奇妙な娘だとしか思えない。


朝の授業が始まる時間が少し遅いと思ったら教室にセオファニア王女殿下とセオドア王太子が入ってきて前に立つ。王女殿下は確認するかのように教室中に目を走らせ、俺を含めた冒険者達に目を止めた。


「皆さん、弟共々同じクラスであることを光栄に思いますわ。どうか今後も同じく晩学に励む見としてよろしくお願いします」


意味がわからない。わざわざ国の王女が高等部のクラスで自己紹介するのにいささか違和感を感じる。それも王太子が同じ場所にいるのに。その違和感も王女殿下の次の言葉で解消される。


「わざわざ私が挨拶するのも理由がありまして、ご存じの方は多いと思いますがこの学院は貴族外からの編入生を受け入れることになりました。その世話係とも言える役を我が母、女王陛下に貰い受けました。その編入生の数名は王都で名高い冒険者達なので、どうぞ彼らに武術や魔法のご指導を願うのなら私を通してください。勿論、その実力は確かなものですし、クラスの皆に今日の戦闘授業で見せていただきます。あなた達、自己紹介をお願いします」


王女殿下のせいで悪目立ちしてしまった。わざわざ他の編入生を外して冒険者をピンポイントでクラスに紹介するのに理由があるのだろう。ただそれは俺たちにとっては物凄い迷惑なだけだ。それぞれの目的があって俺たちは学院の編入生としての申し出や承諾し、指導とかは報酬を弾むとの事で問題はあまりない。だがこの間クフェリン家の嫡子での試合もあり、王太子のような考え方が多い貴族社会では面倒極まりない。


順に名前を述べるだけの自己紹介をし終えたら王女殿下と王太子も席に着き授業が始まった。当然ながらも徹夜明けの皆さんは早くもうたた寝してしまう。エメルはほぼ爆睡状態で授業の先生に睨まれていた。エリシアは服装でよくわからないが徐々に猫背になっているところを見ると寝ているのだろう。


授業に集中して習う気力は出ないので腕組んで寝る態勢にに入った。気持ちよく夢の国に飛び立つ所で隣の娘が話しかけてきた。


「お休みのところすいません。少しお伺いしたいのですが?」

微笑しながら彼女は小声で窺うように聞く。


質問に答えないと眠らせてくれないようなので用件を聞く。


「先ほどの紹介であなた達が他の編入生達の戦闘訓練の指導をしてくださるのですね?」


「一応そのような話になってる」

急に違和感を感じる、何故この娘がその事を知っているのか。


「私も編入生の一人ですの。ミシェル・レブランジュと言います。今後もよろしくお願いいたします、眠そうな冒険者さん」

顔を綻ばせながら彼女は自己紹介した。そして彼女の名前が今までの眠気を吹っ飛ばす。


幼少の頃は妹がいた。妹は俺と同じ黒髪黒目で母親似だった。二人はモルドレッド家の一員で贅沢な生活ではなかったがそれなりに裕福だったのは覚えている。妹と揃ってやんちゃでよく母に怒られていた。ただ妹は妙なことを言う子でもあった。


後になって自分の前世の記憶が蘇り、妹も転生者だった事に気づいた。妹は自分が乙女ゲームのモブとして生まれ変わったんだとよくはしゃいでた。時たま部屋に籠って日記帳に思い出せる限りのゲームの世界の情報を書き込んでいたのも知っている。ただ前世の記憶が朧気だったみたいで主人公の名前はいイリノヴかレブランジュか覚えてはいなかったようでそれは悩みの種だったみたいだ。けれど鮮明に覚えていたのは悪役令嬢の方だった。ヴァルトレギナ公爵家の御令嬢、ロザリンド、そして悪役令嬢と主人公のいざこざから発展する数々の出来事。


そして妹はローザがバッドエンドでひどい目に合うのを知っていた、そしてそれは彼女は見逃せなかった、心の優しい子だったから。けれどその優しさは届くことがなかった。


手に冷や汗が出ているのがわかる。


ある日屋敷は賊に襲われた、それも盗賊とかではなく連携が取れて訓練されている暗殺集団の類だったのだろう。


呼吸が浅くなって拳を握っているのが何故か遠く感じる。


屋敷が焼かれている最中、無残に刺された妹を見つけた。瀕死の状態で押し付けたのは焼き崩れそうになっている彼女の日記帳だった。


「アミルさん?大丈夫なのですか?アミルさん?」


まるで走馬灯のように繰り返される記憶の渦から唐突に呼び出される。横を見ると心配気に顔を覗き込んでくるミシェルがいる。


「...大丈夫だ。授業に集中しろ」

言葉遣いがさっき思い出した記憶のせいで荒くなる。


「授業初日で徹夜明けで出頭するような方には言われたくないのです。」

彼女はそれほども毒づかれたことをまり気にしていないような口調で言葉を返す。


「私は貴方がいびきでもかかない限り気にしませんからどうか安心して眠ってください。午後の授業は貴方達は忙しいようですから」


彼女の言葉に何故か頭がすっきりし、だんだんと睡魔に襲われて夢の世界に引きずり込まれていく。


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