表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/100

お茶会と編入生 その2

ちょっとした説明回でもあります。


セオファニア視点です。


*双子に見えると不自然かと思い、修正しました。


これで序章は終わりになります。


*2020/8/8 読みやすく修正しました。セオファニアの口調も少し変えています。

アミルの質問には一旦情報を整理して答える。あと、カーラにお菓子の追加も頼みました。


「それについては学院側の対処を少し変えてみる方針になりました。もともと学院の生徒たちは中・高等部の間に数年親の下とか、例えばローザと私の場合は母上の侍女として行儀見習いを中等部と高等部の間に二年間程ついていました。あなた達にもそのような研修の時間を授けるにしても学院に編入して理由がなくなりますから、一応今ここにいない二人も含めて戦闘関連の授業は参加自由との形でその間にそちらの仕事をする時間とします。

勿論指南役やお手本、迷宮などのガイドとかの役割はギルドの通しての依頼として扱いますから、その時は是非出席させてもらいます。門限とかもあなた達の場合は既に稼いでいる身ですし貴族のご子息とは違い箱庭育ちと言うわけでもないので不問にします。」


一通りの説明を終えたら編入生達はそれぞれ納得したような表情をしている。いな、一人はお茶を、一人は新しく来たお菓子に夢中ですけど...


「忙しくなりそうですな~」

「お兄ちゃん、頑張ろう!こんなにも素晴らしい仲間も新しく出来ることだし、オーガブレイドもいるしな!」


ゲホっ!!


ネルソン兄妹のやり取りで“オーガブレイド”の名前にアミルがせき込みました。飲んでいたお茶が肺に入ったのでしょうか。そして横にいるローザも横を向いて小刻みに震えている。


「そのオーガブレイドとやらは?」

平常心を装ってお茶を飲みなおしているアミルと口元が少し緩んでいるローザを横目に見ながら問う。


「殿下、オーガブレイドとはアミルと名乗るとあるB級冒険者のことです。噂だと一人で王都付近で暴れまわっていた突然変異のオーガを大剣で一刀両断にしたとか」

答えたのはエメラルダではなく私の後ろに佇んでいるエイブでした。そう言えばエイブに冒険者ギルドでのアミルの事を調べさせてもらっていたわね。


「このクソガキが、変なあだ名のなんかつけやがって」

「誰がクソガキだ!」


「まあまあ、面白いあだ名ではないか。学院にその名が知れ渡った時に君を見る皆の顔は面白いことになっているだろうな。君は影を薄くさせる傾向があるからな、これぐらいの名声があった方が我がヴァルトレギナ家の寄子として相応しいと思うが?」


「このような名声はどうかと思いますがね」


ローザは愉快そうにアミルのあだ名が暴露されることを想像しているのか顔が綻ぶ。アミルは無関心だった態度とは別に少々棘が入った雰囲気が出ている。余程オーガブレイドというあだ名が嫌なのでしょう。


「私はもう十三だ!毎回私のことをアンリと揃って子ども扱いなんかして!」

「カッとしちゃダメだよ~エメル~、ここにいる皆はもう十六超えてるから。ほら~、美味しいお菓子があるから」


一方ネルソン兄妹は騒がしいが微笑ましい兄妹風景を広げている。なんとなくホラティオの方が苦労性で可哀そうな気がしてきましたけど。


「そーだ!殿下!今日ここにいない編入生達ってどういう者なのだ?強いのか?!」

「エメル~、だからもうちょっと静かに~」


「...ん、私も興味ある。成績優秀の編入生。ここにいるバカたちと違う?」


「妹をバカにするとは許せませんね」

「...あ?...おい魔女っ娘確かあんた」

「アミル?あなた達も王女殿下の御前です、少しは行動を慎んではどうかな?」


今ここにいない編入生達に興味を見せる中、エリシアの一言でアミルも含めてた冒険者達全員が一触即発状態になりましたが、ローザの一言には殺気があったのか全員が押し黙る。ローザは場を鎮める役を買って出ましたからには私の出番はないのはいいのですけれど...編入生達が問題児ばかりな様な気がしてなりませんわ。前途多難です。


「ローザ様の仰る通りです。それに、このような機会や学院ではどれくらいの節度をわきまえるのか習うのも学院の編入生としての一環ではないでしょうか?」

エイブはおどおどしながらも人を納得させられるような理由を述べる。一見頼りないように見えるがエイブは私の側近として相応しく、頭の回転も速いし空気を読むのも上手い。


編入生達もにらみ合い名がらも渋々納得したみたいでけんか腰ではなくなった。そして私は先ほどの質問を答える事にする。


「あとの二人の編入生に関しては少しは事情を知っていると思いますが、一応説明しておきます。彼女たちは貴方達冒険者のように推薦入学という形ではなく、一般的に公開した学院の編入試験に受かった奨学生二人です。

戦闘技術の面では冒険者ではないし、魔獣との戦闘もした事がない人達ばかりなので採点しませんでしたが、魔力は一定の基準、というよりこの学院の平均は上回っています。戦闘経験自身はありませんが二人ともは魔法に関しての逸材であり、勉学の方も上位の成績を取れるでしょう」


「おお!それならいずれ戦ってみるのはありってことだよな!!」

「エメル~、そんな直ぐにけんかを吹っ掛けちゃダメだよ~」


「セオファニア殿下、学院の高等部では大半の生徒たちは何らかの形で戦闘訓練をしていますが、経験が全くない状態の編入生はいささか問題がじゃないか?邪魔と思う生徒も出てくると思えますし」


ローザの指摘はある意味正しい、特に貴族社会と平民という格差をつけられるような状況では。ですがゲーム内では逆に攻略対象と仲が良くなるにつれてその様ないざこざが逆に消えるし、秀才とも言える主人公に初歩を教えるのもそのまた攻略対象達です。問題となるのは未だに奨学生の内どちらが主人公なのか特定出来ないこと。二人は同じような環境で育ち、姉妹かと思えるほど性格と容姿が似ている。そしてここで主人公出ない方の奨学生の手助けと共にゲーム内のもう一つあった設定を使うことにしました。


「それについて対応策はあります、故に編入生皆さん、そして学院に通う王族とその婚約者共々事前に顔合わせをしたかったのです。王族と侯爵令嬢とは知人の仲だと思わせれば他意を持つ生徒たちも近寄りがたいでしょう、勿論それを逆手に取られる可能性もなくはありませんが。

戦闘関連の経験不足についてはここに冒険者達を招いた理由の一つでもあります。出来れば冒険者で戦闘経験はもう積んでいるあなた達に彼女二人にご教授して欲しいわ」


出来る限りの接待顔で微笑んでお願いした。しかし、答えは期待した通りのものではありませんでした。


「...ん、教えるの面倒」

「...魔法使えねぇから無理」


エリシアには何となく教える事に問題がありそうですからね、はい...ん?


「アミル殿は報告では魔法は使えるのでは~...?」

エイブはおどおどしながら私が疑問を持った事を聞いてくれる。


「...もう一度言うが、俺は()()は使えねぇ」


ローザを見て確認するが、苦笑気味ながらも肯定した。


「私なら教えていいよ~!こう、ドカーンとかババっと教える!!」

「私と妹は遠慮しておきます、すいません。妹の性格がこのようなので、そして私は主に治療や支援魔法系統専門なので」


ここまで来て計画が崩壊し始めました。色々な意味で物凄い心配事を学院に持ってくるような編入生な気がしてなりません。自然と頭を抱えてしまう。後ろで無表情で立っていたナタルいささか苦笑気味になるのがわかります。エイブもオロオロしている。


「皆さん、ここは少し前向きに検討してはどうかな?戦闘への鍛錬が必ずしも魔法だけとは限らないし、奨学生達にもあなた達と似たような戦法を好む者達もいるかもしれない。もう少し彼女たちの事を教えていただけないでしょうか、セオファニア殿下?」


またもローザは話を良い方向に持っていってくれます。本当に悪役令嬢なのかと思うぐらいにいい娘ですし...制作陣に文句の一つや二つを入れたくなります。彼女も溺愛とまではいかないがそれなりに弟のセオの事を好いている事は一目瞭然ですが、何故あのバカ王子が好きな理由自身は彼女からは聞いたことはありません。


「わかりました、私ももう少し前向きに検討しましょう。一人は父親が王宮での護衛兵でしたので多少は読み書きができます、そしてもう一人は母親が元冒険者でしたので少々薬学を学んでいます」


「...ちょっと待って...その冒険者の名、何?」


「確かイミスです」


イリシアの質問に答えるとエメラルダ以外の冒険者全員が記憶を探るような仕草をしました。全員が頭傾けるのは何となく奇妙な風景ですが話を続けさせていただきます。


「二人とも身体能力は高い方ですしスタミナも働いている身として多少なりともありますから、最低限の訓練にはついていけるかと。魔力を見たところ、二人ともの潜在魔力は壮大なもので“トリニティー”の冒険者達と匹敵するほどのものかと思われます」


その説明を聞き、未だに無関心でお菓子を(まだ)食べているエリシアは少しばかりの興味を示しました。勿論ネルソン兄妹は先ほどからは私の説明は聞いていますが。


「そして二人ともには試させて見たところ、大抵の魔法系統を扱えます。正に白紙の状態で秀才を秘めている生徒たちと言っても過言ではないと思います」


勿論、主人公の見分けがつかない理由もそこにある。二人とも主人公と同じような才能を秘めているからこそ主人公がこの娘、とは断定できません。


「セオファニア殿下、ちなみにその二人のお名前を聞いても宜しいですか?」


「アナスタシア・イリノヴとミシェル・レブランジュです」


そして私は見逃しませんでした。エリシアの眼が少しだけ見開いたこと。ホラティオのやつれている目がほんの僅か鋭くなった事を。そしてアミルの視線は気づかれないほど素早く悪役令嬢になるであろうローザに行ったことを。


第一章は主に問題児にもうなり始めている編入生達がメインになると思います。


これまでに読んでくれた方には感謝します。宜しければ評価お願いします。まだまだこの話を続けたいと思いますので今後もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ