表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人食い狼と天才神官  作者: 紫菟
4/5

午の刻 教会裏手森の中腹

所変わって教会裏の森の中腹にて。


「小屋にしては、頑丈な造りだな。」


「長い間人が住んでいたからな。」


「ふーん。」


咳いた人狼に答えた聖職者の言葉に、問い掛けた本人は興味無さげに返す。


「貴殿はここに住むといい。教会にもほど近く、周りに住む人もいない。快適な環境であることは保証しよう。」


「ご丁寧にどーも。」


素っ気なく返して、ジャックは小屋の中を見回した。


先程言及した通り、「小屋」と言うには居住環境が整っている気がする。多少埃を被ってはいるが、木製の棚も机も椅子も寝台もあり、いつの間に用意したのか、清潔な布団と毛布が備え付けられている。小屋というよりは、ログハウスと言った方が正しい様相だ。


「日の出頃には教会にくるように。私はそれよりも前にいるから、来てくれるだけで大丈夫だ。何か質問は?」


「この状況自体甚だ疑問だが。」


「そうか。では、明日からよろしく頼む。」


微笑みを崩さずに宣う神官に、人狼は再び舌を打った。



神官が立ち去った小屋の中、ジャックは特に何をするでもなく佇んでいた。

彼にはひとつ、懸念があるのだ。


(…ガランはどうしているだろうか。)


妻・ガランとは、クリスと相対したあの夜以降、顔を合わせていない。自分がいなくても強かに生きていきそうな彼女ではあるが、流石に何の連絡もないとなると、要らぬ心配を…否、詮索をするやもしれない。

例えば、人に拐かされたとか…。


「…ふっ。」


そこまで考えて、人狼は自嘲的に笑った。


まさにこの状況の通りではないか。魔族の長がきいて呆れる。


それよりも懸念すべきは、要らぬ詮索をしたガランが、人へ反撃を打ってでないか、ということだ。人に対し憎悪の念の深い彼女のことだ、何をしでかすか分かったものではない。


(…しかし、今戻れば…。)


ガランたち魔族、全員がクリス達の考えに共鳴するならばまだ良い。しかし、人が魔族に敵対心を抱くように、魔族もまた人と敵対している。正面衝突を起こすのがおちだ。無闇に争いを起こすべきではない。


(…いつか乗り込んできそうだな、あいつ。)


ジャックは1人遠い目をした。


強かで聡明な彼女だが、中々どうして執念深い。自分が戻らないとなれば、居場所を探し出すくらいはしそうだ。


(…その時は、その時だ。)


今は、自らの成すべきことを成すしかないようだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ