表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百鬼夜行  作者: 布眠夢懋
5/7

episode.5

不満げに道をゆく久利生は、後ろを振り向き、再び大きなため息をついた。


「付いてくるな」


「何よ。私がまた狙われるかもしれないでしょ。あたしじゃこの刀使えないんだから、守ってよ」


「はぁ?!」


久利生は喉奥で、愚痴を飲み込んだ。

言ったところで面倒になるに違いないと思ったからだ。


バイクを走らせていると、静岡県に入った。


「ねぇ、どこに向かってるのよ」


道沿いのラーメン屋に入ると、雪野が話しかけてきた。


「ラーメン1つ」

「二つ

。お願いします」


久利生はため息をつきながら、二人分の料金を店員に渡す。


「優しいじゃん、おごり?」と、からかうように笑う雪野。


「手切れ金だよ。さっさと消えてくれ」


「何よ。感じわるい。あのねぇ、あんたがくるのが遅いから死にかけたのよ」


なんとも理不尽で面倒な奴である。


二人分のラーメンが届く。


「お待ちどう」

「どうも・・・・、煮卵もらいますね」


カウンター横にあったお盆に乗っていた煮卵を一つ貰う。


「あいよ。50円ね」

「私はいらないから」


久利生は文句を喉元にとどめた。



「それにしても、いいところね。景色もいいし」


静岡県道9号を走っていると、自然豊かで、気持ちのいい風が吹く。


調べておいて正解だったな、と呟く。


「なかなかいいところじゃん。褒めてあげる」


流石に苛立ちを隠せなくなった久利生はバイクを路肩に止めた。


「どうしたの?」


無言で、雪野のバックを掴み、山道に投げ込む。


「何すんのよ」

「お前がうるさいからだ」


久利生は再びアクセルをかけた。

今度は流石に雪野は付いてこなかったが、ミラーに映る山道に入っていく彼女の姿に少し後悔を覚えた。



「何よ、あいつ」


雪野は一人で草を掻き分けながらバックを探していた。


高い木々が並ぶ山では、草むらというものは出来にくい。

日光が遮られて、光合成が出来なくなるからだ。


つまり、比較的容易に探せるはずだったのだが・・・・


「あんなところに・・・」と、雪野。


バックは、視線の先、一本の杉の枝に引っかかっていた。


面倒だなぁ、と呟いたが、慰めてくれる人物はそこにはいない。


雪野は渋々、杉の木を登り始めた。

幸い、枝打ちがされていない木を登るのは女の力でも容易かったが、細かい木の皮に擦りつけたことで、白いスニーカーが汚れたのをみて、雪野は顔をしかめた。


元の道に戻ろうと、きたみちを振り返ると、女が一人立っていた。


「妖刀をよこせ」と、呟いた女の目は黒に染まっていた。


まるで鴉のように、一切の他の色がなかったのだ。


小さく悲鳴をあげた雪野をあざ笑うかのように、女は躊躇なく懐から小刀を取り出す。


雪野はたまらず、山の奥へと逃げ出した。


少しの傾斜が、運動不足の彼女の足に疲労を蓄積していく。


数分走ったところで体力が切れたのだろうか、雪野が立ち止まり、息を整えていた時だった。


すぐ後ろに何かが落ちたような音が聞こえた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ