episode.2
episode.2
古めかしいカフェの角に、明るそうな雰囲気の男が座っている。
男の名前は芥川李畔。
国立大学の経済学部に通う大学生である。
孤児院で育ちながら、懸命に勉強して彼は大学に入学するとともに施設を出た。
努力家でありながら、笑顔を絶やさない彼は、大学でも人気者である。
今日はデートだ。
無類のコーヒー好きである芥川と、その彼女はよくこの喫茶店を待ち合わせに使っている。
カラン、と古めかしい音を立ててドアが開く。
待ち合わせ時間ぴったりだ。
「お待たせ」
「全然待ってないよ」と、芥川は笑った。
高校生の時から付き合い始めたので、交際は4年になる。
交際は、いまだに順調だ。
マスターが彼女にコーヒーと同じお盆に箱を乗せて持ってきた。
「え?これは・・・・」
「開けてみて」
箱の中には、時計が入っていた。
「これ!私が欲しかったやつ!!」
「誕生日おめでとう!」と、芥川が笑った。
その後、二人はいろいろなところを回った。
水族館や、ショッピングモールなどだ。
暗くなり、彼女と芥川は帰路についていた。
交差点で、信号を待っていると、彼女が急に抱きついてきた。
「どうしたの、急に」
「李畔くんと付き合えて私幸せだなーって」
「僕も、幸せだよ。でも、ちょっと恥ずかしいな」と、はにかむ。
信号が青に変わった。
「今日は、家寄っていきなよ。美味しいもの作ってあげる」
「ほんと?!やった!」
そういって、芥川は一歩踏み出した。
その時だった。
止まると思っていたトラックが二人の寸前に迫っていた。
彼ができたのは、彼女を突き飛ばすことだけだった。