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08.指針アウラ。


 ネロが獣化して、未だに検証が進まない。


 そうさっきから、ネロが動かない……。


 胸のあたりが上下しているところから呼吸はしているようだが……、さすがに心配になってくる。


 100cm前後の体長、漆黒の毛にしなやかな体躯……。


 囲炉裏の前で丸くなり、目を閉じている。


 大きさを抜きにすれば昔飼っていた俺の親友、ネロとそっくりだ……。


 ただ一点!違うところがある。


 それは尻尾!


 目の前にいるネロは尻尾が2本ある……。


 「これは!」


 『猫又』。


 日本の妖怪、化け猫の類、死臭を嗅ぎ分け連れ去り、何故か火車と同一視……火を操れるとか操れないとか……。


 十数年生きた猫の妖怪変化≪へんげ≫とも言われている。


 山猫系の猫又は恐怖の対象であるが、家猫系は守り神、付喪神に分類されることもある。


 ネロはどう見ても家猫……。


 日本で最も有名、且つ身近な妖怪がどうして……。


 「ライズ様!大変です!」


 アウラが何かに気付き、急に声を上げる。


 「どうした!」


 「ネロさんが!ネロさんが!…………。」 


 「だから、どうした!」    


 「顔を……、顔を洗ってます。明日は雨です!」


 「正直、どうでもいい!」


 「序に言いますと、ネロさんはもう………………………………、寝ちゃってます。」


 予想はしていたが……。


 「その思わせぶりな間は、要らないだろ!」


 「パトラッシュ……、もう僕は疲れたよ……。」


 ネロが寝言を言ったようだが……。


 「何ちゅ~、寝言だ!幼女神は一体ネロに何させたいんだ!」


 これでネロの検証は頓挫することとなった。


 ちょっと考えれば分かったことだが、ネロは8歳児。


 温泉に食事、囲炉裏囲んで寛いでいれば眠くなるのは時間の問題……。


 「まあ、しょうがないか。初日から結構色々やったからな。」


 「おもにライズ様でしたけども……。」

  

 ネロに関しては明日でも検証としよう。


 「ネロ抜きとなったが、まだ確認したいことがある。大丈夫だよな。」 


 「まあ、ネロさんは自分の考えが確立できてませんから、私たちで指標を示して上げるのが宜しいかと思います。」


 「なら話を進めるぞ。まず、俺たちパーティーの戦力だが、ある意味ネロも上位種族に分類するとして、3人とも上位種族、内二人が民間でいうところの土地神……、亜神に分類するとしよう……。種族だけなら過剰戦力だよな。」


 「ライズ様……、ちょっと捕捉させてもらいます。そう分類してしまいますとライズ様も現人神≪アラヒトガミ≫……、亜神に分類されます。よって亜神、3柱となります。実際は使徒と使い魔、従者ですけど、魔人種含めた現地人から見ると、彼らが神と崇めてる英霊らしき者より3人とも位階が上になります。ネロさんのみ、人化時の位階が現地人と同位ですね。」


 「戦力に問題がないなら良いか……。ネロに関しては俺たちで守れば問題ないだろうしな。」 

 

 「えっ?お気付きにならないんですか?ネロさんステータスだけならライズ様より上ですよ。」


 「えっ?」


 アウラにより獣化後、ネロのステータスを確認してないことに気付かされた。


  眷族

 

   名前:ネロ・フロスト 年齢:8/62 種族:亜人種猫獣人族


   職業:従者 LV:1/10 


   スキル:隠形 軽身 獣化(使用中) 爪牙 火炎 健常   


   称号:ライズの眷族 新妻 猫又


    HP:72/72 MP:309/309  


    STR:36 DEX:24 VIT:36 INT:24 AGI:60 MND:24 LUK:33



 (なんだろう……、勝てる気がしない……。)


 「何故、きっかり3倍になってるんだ!」


 「パワーアップは相場が3倍と決まってるそうです。」 


 「幼女神の差し金か!角突きかよ!」


 「角の代わりに、下半身に黒くて光沢のある立派なものが付きましたね。」

 

 「尻尾の事だと分かるが、ネロも女性だ!その言い方はさすがに失礼だぞ!」


 「すいません。失言でした。」


 「仲がいいのは分かるが、気を付けろよ。些細な事から亀裂ができる事もあるからな。」


 「経験からですか?」


 「そこは突っ込まないでくれ。アウラの過去も聞くことになるぞ……。」


 「失礼しました……。」


 「分かればいい……。話し戻すぞ。まず戦力については問題ないな。冒険者はした事がないが、冒険者パーティーの知り合いはいた。比較してみてもうち等は3人の少数パーティーだが人族でいうSランクと同等くらいのパーティーになりそうだな。」


 「捕捉します。それ以上です。多分、ネロさんのステータスを見て自分が最弱と勘違いされたと思います。ですがライズ様はまだ気付いてない見たいなので、言わせてもらいますけど……。ライズ様、放出系の魔術使えるようになってますよ。」 


 「えっ?」


 前世で深淵の魔女より色々と教示されたが、すべて不発に終わった放出系魔術……、それが使える……?


 「まあ、裏事情があります。それはですね……、前世での健常スキルが強力すぎて、魔力の放出を体の不具合と誤認してしまった事です。ですから、実は成人過ぎたあたりから、放出系魔術使えてましたよ。」


 「そうなのか?」


 「そうです。ですが、そのお陰で賢者になれましたよね?できる事を賢く使う……。その試行錯誤が今のライズ様の一番の武器です。そして何より、肉体強化と纏身術≪とうしんじゅつ≫、近接特化の異端なる賢者……。そんな境地に至ったのもその不具合のおかげです。そんな賢者たるライズ様が今度は遠距離魔術……。どうなると思います?」


 「死角無しのオールラウンダーか?」


 「そうです。つまりは、ク○ルス・ドアンさんが岩で無く、マップ兵器を持つのと同じ!」


 「余計分かりづらいわっ!クク○ス・ドアンって誰だよ!」


 「ファーストG15話検索です!」 


 「メニューからの検索で引っかかるのかよ!」


 「はい!ソースはシンラ様ですから。」


 (本気(まじ)か……。何でもありだな。)


 知恵を武器に近接から遠距離までこなせる、死角無しのオールラウンダー賢者。


 あらゆる精霊を言葉一つで使役する大精霊。


 まだ未知数ではあるが、隠形に秀でるであろう妖怪。


 と……、世界最強パーティーと言う位置付けが確定した。


 「まあ、何が来ても大丈夫ってことでいいのか?」


 「それなりに対処できますよ。流石に数で押されると面倒ですけど、竜種が出ても対処できます。まあ、竜種の方たちは頭がいいですから、よっぽどの事がなければ敵対はしないでしょうけど。」  


 「それは分かる。敵対するの馬鹿ばかりだしな。」


 「と言う事で、ライズ様は好きに生きて大丈夫です。」


 大精霊たるアウラ、直々のお墨付きだ……。


 「それなら安心だな……。だがこれからの事を考えると、問題は戦力以外の方が多い。」


 「私たちとの結婚生活の事ですか?それなら私は我慢しますので、どうぞ亭主関白でいてください!」 


 「はい?」


 「私たちはライズ様の3歩後ろをついて行くだけですので、どうぞお気になさらず……。」


 「いや、いや、いや、いや。お前らいつの時代の嫁だよ!俺の横に並んでくれよ!」


 「まっ、大胆です事……。」


 アウラが頬に手をやり、俯く仕草をするが……。


 「あざといな、アウラ。」


 「ですよね~。」


 「まっ、冗談は置いといて……。今後の食生活だ、このままだと栄養に偏りが出る。それに狩猟中心の生活にしろ、この辺りは極端に獲物が少ない。これは温泉と言うか火山の影響だろうな。拠点を別の場所に移すことも視野に入れている。だがここがどこだか分からないから、それも戸惑われると言った所だ。」


 「場所が分かればいいんですか?」


 何やらアウラには案があるような言い方をする。


 ライズは情報不足が一番の原因で動けないことを認識しており、アウラは自分が情報端末の一端だと言う事を自覚している。


 だが、ライズはその事を転生の影響なのか度忘れし、自分が中心となり二人を守らなければならないと勘違いしており、微妙に意識のずれが生じていた。


 「ライズ様は何故?私もしくは検索機能を使用しないのですか?」


 「あっ!」


 ライズは何かに気付く。


 そうシステムウインドウの『検索』。


 それは世界の真理開放によってもたらされた、規格外スキル。


 神による神の知識の情報公開……、その神がこの場所がどこかなど知らない訳がない。


 この世界を作ったのは神なのだから……。


 (余計な情報も多くありそうだな……。) 


 「もしかして忘れてました?あれですね、ライズ様は賢者としての引き出しが多すぎて、まだ現在の肉体を使いこなせていないようですね。」

 

 転生してから半日と少々、当然と言えば当然……。

 

 「しばらくは、ここで修行と言う事でいかがでしょう?食事の事は私に任せてください。3年間はここも安全とシンラ様から確約もらっていますからね。外敵も少ないようですし、そういう意味でもここ安全ですよ。」


 「それが無難か……。」


 「この場所に関しても大凡、特定はできておりますので、安心して下さい。」


 ライズは驚愕する……。


 ライズが現況を危惧する一番の原因をアウラは既に把握していたから当然である。


 「ほっ、本当か!」


 「その気になればライズ様もすぐわかりますよ。ですから、まずはライズ様の修行と言う事です。その間ネロさんも淑女教育及び、修行をしてもらいます。小屋の整備は追々でいいでしょう。」


 アウラがどこから持ってきたのか、いつの間に掛けている眼鏡の端をクイッ!と持ち上げる。


 (なぜだろう……、モードチェンジしていないのにアウラが『出来る女モード』になっている。)


 そんなアウラにライズは見惚れていた。


 「………………。」


 そんなライズの心情を他所に、アウラはズケズケと言う。


 「あっれ~!もしかしてライズ様、私に惚れちゃいました?いえ、間違いました。惚れ直しちゃいましたか?」


 危うく『うん!』と言いそうになる。


 アウラの言い間違いのお陰でライズは冷静になった。


 (こいつ……、調子に乗りやがった。)


 「そこ間違えるなよ!お陰で肯定せずに済んだが……。」 


 ライズの言葉にアウラは自分のミスに気付き、顔を青くする。


 「あ~~~!言質取り損ねた~~~!」


 ライズはアウラの肩に手を当て、さらに追加口撃する。


 「アウラ、大丈夫!そのうち言質取れる機会も訪れるって!」


 「本人からのその言葉が、もう機会が訪れないことを物語ってますよ!」

 

 こうして、3人の異世界生活1日目の幕が下される事となった。


 明日から本格的に始動を開始する、3人の異世界生活。


 果たして彼らの行く先には、鬼が出るか蛇が出るか……、まさに死と隣り合わせの綱渡り生活|(笑)。


 君は生き残る事が出来るか!


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