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04.転生の心得


 「やあ、待たせたね。それにしても仲良くやってるようじゃないか。」


 後ろから声を掛けて来たのは、リンネシステムの生みの親、アウラの知識の元、幼女神シンラである。


 ライズは知識の元について問い詰めようとしていたが、その行為は叶わなかった。


 なぜなら幼女神の足元にしがみ付く様に、ライズより小さな幼女が居たからである。


 そしてその幼女の頭には、ピコピコと動く耳が乗っており、ライズの目をくぎ付けにしていた。


 「ネロ?」


 幼女は艶のある真っ黒な髪に褐色の肌をしており、ライズは何故か昔かっていた黒猫の事を思い出す。

 

 「「あっ!」」


 幼女神シンラと使い魔アウラが声をそろえる。


 「んな訳ないか。」


 「『んな訳ないか』じゃないよ!何してくれたのさ!」


 「へっ?」


 「あのね……。君は今、名付けした事で、眷族契約しちゃったんだよ。もっと重く考えて欲しいね。……と言う事で、この娘を責任もって育てなよ!」 


 どうやら、とんでもない事をしでかしたようだが……。


 「えぇ~っと……。詳細ナウ。」


 「取りあえず、メニューでステータス確認すると良い。」



 

  ステータス

 

  名前:ネロ 年齢:1/62 種族:亜人種猫獣人族


  職業:従者 LV:1/10 


  スキル:隠形 軽身 獣化 爪牙 火炎 健常   


  称号:ライズの眷族 


   HP:3/3 MP:64/64  


   STR:1 DEX:1 VIT:1 INT:1 AGI:1 MND:1 LUK:33



 「んっ?」


 パーティーからステータスの確認をすると、どうやら眷族になった事が分かるが、職業従者も気になる。


 「要は名付けの親になったって事!眷族と言っても、家族とか身内と思ってくれると良いね。そうだね……、可愛い嫁が出来たと思ってくれれば良いんじゃないかな?」


 「んっ?ちょっと待て、それじゃ……、アウラが嫁になったのも……。」


 「へぇ~。アウラって名前にしたのかい。うん、うん、まさにその通りだね。ここは言葉を具現化する空間、神の領域、故に言霊が宿ると言った所かな。お蔭で僕も幼女神に固定化されてるからね。」  


 「そんなの聞いてないし!」


 「言って無いからね。嫁にした事は予想外だったけど、元々君にこの娘を任せるつもりで連れてきたから、万事オッケーって事で。」


 何事も無い様に幼女神は言い放つ。


 「何で俺なんだ!そもそも、その子は誰なんだ!シンラ様が言ってた用事と関係あるのか!」


 ライズは幼女神へ、矢継ぎ早に質問を浴びせかける。


 「落ち着きなよ。取りあえず、一通り説明するからね。」


 「……分かった。」


 「それじゃ…………。」


 そうして話し出した幼女神の言葉に、ライズは耳を傾けるのであった。 

   

 

 

 幼女神シンラの説明、要約。 


  一、休戦協定破棄。


    人種が一方的に破棄、魔人種と衝突中。


    人種による奴隷狩りが横行、多種族が絶滅の危機に……。



  一、勇者召喚。


    人種がまたしても、勇者召喚。今回は240人、前回の約10倍、何故か全員日本から……。


    休戦協定締結中に人族が画策。生贄として亜人種を使い被害が多数出た。


    勇者召喚からあぶれた者も多く、地球の神たちと共に魂を再構築して来たので安心してとの事。



  一、ファスト・フロスト関係者の動向。


    深淵の魔女、弟子7人については無事。勇者召喚とは無関係。


    ただし、今後の戦況により左右される可能性有。



  一、ネロについて。


    今回の勇者召喚から溢れた者の一人。


    異質な魂の為、地球の輪廻には戻れない。


    面白そうな魂だったので、ライズに預けようと思ったとの事。前世の記憶は封印済。




 「とまあ、僕がした事はほぼ勇者召喚の後処理だけど…………あの魔法、ちょっと要らないかな……。地球人の被害も馬鹿にならないし、何より地球の神々と顔合わせるのも、面倒だからね……。」  


 幼女神が考え込む様に口元に手を当てる。  


 「ねえ!頼んでも良いかな?」


 「断る!」


 「まだ何も言って無いけど……。」


 「面倒事だろ?それに、傍観のスタンスは如何した?」


 「そうなんだけど、神託だと思って聞いてよ。お願い!」


 「そう言うのは、神殿にいる連中に頼んだらいいだろ!」


 「えっ!気付いて無かったの?アウルーラに僕の神殿ないよ。」


 「えっ!それじゃあれは、何をまつってるんだ?」


 「さぁ~。」

 

 幼女神は両手を上に向け広げ、分かんないと言うジェスチャーをする。 


 「差し詰め、人族至上主義の英霊(悪霊)とか。自分達に都合のいい妄想ファンタジーとかかな。まあ僕で無いのは確かだね。」


 ライズはアウル-ラでの宗教家達を毛嫌いしていた事を思い出す。


 極力関わりを持たない様に立ち回っていた。


 今、幼女神が言った事が正しいのなら……、いや正しいのだろう……。


 現在のアウルーラでの宗教は、単なる人族の扇動政治活動でしかない。


 「まあ、地球でも似たようなの多かったからな……。国、政治、人種、宗教が絡めば当たり前か……。」 


 「で……、お願いだけど……。」


 「はぁ~。しょうがない、言ってみろ。」


 幼女神はにっこり笑い話し出す。


 ライズはその笑顔に若干眩んでしまうが、気を張り耳を傾ける。


 「それでね……。僕の神殿……、いややしろで良いかな、仰々しいのも嫌いだし……。簡単な神のやしろを作ってほしいんだ。」


 「神のやしろ?」


 「そう、やしろほこらの方が分かり易いかな?僕を象った物を置いて、屋根が有ればオッケーだよ。」


 「それで良いのか?」


 「後は、たまに供物くれれば、僕の影響力がアウルーラに浸透して行くはずだからね……。本当は傍観のスタンスを崩すつもり無かったんだけど、世界の滅亡とか、種の絶滅に向かって進んでるから、何とかしないと僕の楽しみが無くなっちゃうからね。今回は少し毛色が違うんだよ!世紀末覇者状態だよ!ヒャッハーだよ!っと、そろそろ転生の時間だね!それじゃ、頼んだよ!新たなる生にて、あなた達に幸有らん事を……。」


 いきなり転生の時間が来た事を告げ、ライズ達が光に包まれ転生が開始される。


 浮遊感を感じたライズが叫ぶ。  


 「ちょっと待て~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」 

 

 ライズの叫びも空しく、幼女神シンラは笑顔で手を振りライズ達を送り出す。


 光が収束し、転生が完了する。


 幼女神が誰も居ない空間で独り呟く。 


 (後でメールするよ……。)


    



 一方、ライズ達は……。


 「クソ幼女~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」


 絶賛転生途中!


 光の渦に巻き込まれ、ライズ達は辛うじて意識を保っている。


 そして聞き覚えの無い音楽……。


 テッテッテレレ~~~~、テッテッテェ~~~!


 「何故!オープニングが流れる~~~~~~~~!」


 俺の叫びを他所に、頭の上から声が届く。


 「ライズ様~~~~!私も巻き込まれてます!私も巻き込まれてます!大事な事なので2回言ってみました!」


 その声と共に、ブチッ!ブチッ!と髪の毛の抜ける音が……。


 アウラがライズの髪を必死に掴んでいる。


 「アウラ放せ!禿げちまう!」


 ライズの必至の訴えも空しく。


 「え~!何だって?」


 と、こんなやり取りが何回か続く……。


 (鈍感系主人公ネタ仕込んでやがる。)


 そしてネロと名付けたもう一人の嫁は背中から腹に手をまわし抱き付いてきている。


 (んっ……。何だ……。) 


 ライズがアウラと駆け引きしている最中、徐々に締め付けが強くなってきていた……。


 「ネッ。ネ……ロ……さ……ん。放……して……。」


 ネロの締め付けにより、ライズのお腹が圧迫され、時折来る嘔吐感に苛まれていた。


 テッテッテレレ~~~~、テッテッテェ~ン。  


 オープニングの終了。


 それと同時に、ライズの口から黄褐色の液体が噴出された……。


 エロエロエロエロエロエロエロ~~~~~~。


 そして3人の意識もそれを境に途絶える。







 その日、アウルーラでは黄金のほうき星が各地で目撃されたとか、されないとか……。







 

 ライズ達の居た空間……、幼女神シンラの作り出した神の領域は地上との時間軸のずれにより、彼らは加速度的な成長を成し遂げていた。


 そして地上では、勇者召喚から1年の月日が流れており、勇者達もまた人種人族による偏向的基礎教育を終える所だった。


 彼等は否応なく時代の奔流に呑まれて行く事となる……。 


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