30.ライズVS勇者
ギイン!
ライズの声がしたと思うと金属音が辺りに響く。
ライズがネロから預かったククリ刀型の聖剣で首を刈ろうとしたのだ。
それと同時に勇者の身体が横に飛んで行き建物と衝突する。
「反応したか?」
「「「「ライズさん。」」」」
4人が声を揃え、ライズを呼ぶ……。
「もしかして結構ギリギリ?」
ライズは4人の姿を見て、そんな風におもった。
「もしかしなくてもギリギリです。」
「裏技まで使っちゃいましたし。」
「でも、皆生きています。」
「私はまだまだ大丈夫でしてよ……。」
エレクシア一人が気丈に振る舞おうとするも……、ライズが観察するに一番傷がついており、足も小刻みに震えている。
「ふう~……。エレクシアさん、無理しすぎだ!後は俺に任せて休んでいてくれ……。」
「ですが……、相手は勇者!私達4人でも……。」
フレミーが何かに気付く。
「あっ、そうか!」
「んっ?」
「エレクシアさん師匠達の実力知らないんですよ。」
「そう言えばそうだな……。」
「どういう事でして?」
フレミー達3人が声を揃える。
「「「規格外……。」」」
「まっ、見てれば分かるよ……。それに……。」
ライズはアイテムストレージから大きめの布を4枚出しフレミーに渡す……。
「その煽情的な姿で居られると俺も実力が出せない……。」
ライズの言葉に4人は姿を確認する。
皆、装備が剥がされ、インナーのみとなり所々肌が露出している。
「「「「ヒャ~!」」」」
顔を赤くしながら急いで布で体を覆う。
(勇者恐るべし……。こんな手で俺の行動を阻害してくるとは……。)
勇者をやり手と認識するライズであった。
ガラッ、ガラッ……。
勇者がいる方から音がする。
「いっつつつ~、何だいきなり!」
「ああ、やはり反応していたか……。首落とそうとしたんだがな……、あいつらと比べて少し強いか?」
「はん?あいつら?」
「家のが世話になったからな……。」
「家の?」
「エルフの少女だよ!まあ、お前には俺の友人が世話になったようだし……、生きていてくれた事には感謝しよう。お陰でお前が懺悔する時間が出来た……、自分の罪を数えながら死ね!」
ライズはそう言うと勇者へ襲い掛かる。
接近するライズの動きに、後ろから見ているエレクシアは驚愕する。
(えっ?勇者並じゃないですの!どういうことですの?)
そして接近したライズは、左手でボディに一撃入れる。
それを勇者は左手で止める。
間髪入れずライズの右手でロシアンフックのコンビネーション!
勇者は辛うじて、スェーバック……。
「ほう……、これも躱すか。」
「お前は……何だ……!ボクサーでは無いようだが……。」
勇者がボクサーと言うからには、ボクシング経験者なのだろう……。
この世界に来ての勇者補正とチートスキルを受け、暴虐武人に振る舞い、ボクシングの経験を活かしエレクシアすらも遊び程度に相手したのだろう。
「ほう……、我が拳に興味があるのか……。」
ライズがそう言うと、勇者が小刻みにリズムを刻み出す……。
漫画、映画ではやられ役も多い、スポーツではあるが……。
足を使いだしたボクサーは手に負えない……、逃げに徹されれば捕らえる事は難しいだろう。
彼らの目は異常とも取れるほどの動体視力を誇っている。
ライズに後ろから声がかかる。
「ライズ!気を付けなさい!私もそれでやられました。」
(なるほど……。ボクシング特有の動きにい付いていけなかったか……。相手が本気になった様だな。)
「ならば答えよう……。我が名はライズ!シンラ神拳継承者!我が拳は一子相伝に付き、見たものは死あるのみ。相手は死ぬ!!!ホッアタァ~~~!」
そう叫ぶと勇者へと殴りかかる……、ライズのそれはテレフォンパンチもいい所だが……。
ブフォーーーー!
その手には魔力が宿り轟音とともに繰り出される。
勇者はその拳に危険を感じたのか……、受け止めようとせず横に躱す。
どうやら正解を引き当てる。
ドゴォーン!
勇者がの後ろの建物に、ぽっかりと大穴が開く。
「何なんだそれ!」
その光景を目の当たりにした勇者は、鳥肌が立ち冷や汗が止まらない。
「よくぞ我が剛拳を躱した、だが無駄口をたたく暇はないぞ!」
そう言いつつライズは勇者に接敵する……。
勇者もそれに合わせ、カウンターを取ろうと前傾姿勢になる。
(ほう……、ジョルトとは……勇気があるな勇者の名は伊達でないと言う事か。だが……。)
そう……、ライズはボクサーでは無い、それに付き合うほどのお人好しでは無かった。
右肩でフェイントを入れる。
釣られる様に勇者が右手を伸ばす。
それを待っていたとばかりに、上半身を反らしライズの左足が胸当てを縫う様に勇者の右肋骨下へと突き刺さる。
通称三日月蹴りである。
「グヘッ!」
勇者の口から何かが抜ける。
高速思考スキルを持つライズ相手の接近戦は愚の骨頂である。
だが勇者はまだ倒れない……。
(この辺は勇者補正か……。面白い!)
「まだ倒れんか、なら行くぞ!」
ライズは肉体強化を使い勇者に近付くと大股に開き、拳を突き出す。
勇者は脇腹を抑えながらそれを躱す、どうやらカウンターを取る余裕はないらしい。
それを見るやライズは、次なる拳を突き出す。
勇者はそれも躱す。
そして徐々にそのスピードが上がってくる。
「オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!……。」
ライズの声が響く。
勇者はそれを躱し続けるも、足を使う余裕もなく時折被弾し、その鎧が所々凹んでいる。
ライズは連撃を繰り出しながら、別の事を考えていた。
(1、2、3、4、5、6……16、一秒間に16回……。これは『ライズ名人の16蓮華』と名付けよう!)
そして……、勇者が一歩後ろに下がる。
それを見たライズは一歩足を踏み出し、右の拳を突き出す。
「オラァーーーー!」
その拳は勇者の胸へと突き刺さる。
ゴォ~~ン!
重い音が辺りに響くとともに勇者は後方へ飛ばされる。
ズッザザザザ~~!
辛うじて踏ん張ろうと、足と地面のすれる音がする。
勇者の胸当ては大きく陥没しているが命に別状はない……。
(くっそ~!やっぱ、固って~~~~!)
勇者の胸当てはミスリル、オリハルコン等希少金属を使い、神?の祝福を受けた神具と呼ばれる物……。
そんな事はお構いなしにライズは拳一つでボコボコにしていた。
「くっ!」
勇者が苦悶の表情で息を漏らす。
「ほう……。よく持つ……、丈夫なものだな。」
「うっ、うるせー!畜生っー!何なんだよっ!」
「ならこれなら如何かな?」
ライズは握っていた拳を開き、貫手とする。
「ヒョォォォーー!」
「くそ!何なんだよ!」
そして戦闘が再開される。
その戦闘を蚊帳の外で見ている4人……。
全員が口を開け、茫然としていた。
「何ですの……。あれ……。」
エレクシアが呟くも、それに答えれる者は居なかった。
「あなた達、ライズさんの事知ってるのでしょう?」
「知ってはいますが……、規格外としか……。」
「実際、戦闘は見た事ないです。」
「ネロさんなら、見た事があると言うか何と言うか……。」
3人の回答にエレクシアはヤキモキする。
「一体どういう事なのです。」
「ネロさんから、魔獣との戦闘に介入して貰いましたが……。」
「風が吹いたと思ったら、魔獣の首が落ちていました……。」
「そのネロさんが、ライズさんの方が強いと……。」
「つまり、どういう事ですの?」
エレクシアの頭が追い付かない。
「つまり、初めて見ました。」
「と言うか……、腕から先が見えていません。」
「師匠……、笑顔で戦っていますね。」
「…………。」
つまりはよく分からないと言う事である。
だが4人の共通認識として一つ確信をもっていえる事があった。
「「「「戦闘狂か!」」ですの!」
ライズはと言うと……。
「シャオ!シャオ!シャオ!シャオ!シャオ!シャオ!シャオ!シャオ!」
拳を貫手に変えただけで、戦闘法はそんなに変わって居らず勇者に連撃を加えている。
ただ一つ違うと言えば、魔力の質が打撃から斬撃へと変化していた事である。
それにより、鎧には多数の斬撃痕、勇者自身は無数の切り傷を負い、徐々にだが顔色が青く変化していった。
勇者からしてみれば、動けば隙になるし、動かなければ良い的となる。
「ヒャッハ~~~!」
ライズの掛け声の変化に、勇者は反応してしまう。
ビクリ!とした身体の硬直にライズは、鎧の無い脇腹に貫手を突き出す。
「ぐっ!」
辛うじて直撃を避けた勇者ではあるが、その脇腹を大きく切り裂かれていた。
傷が深く無いのだが、傷口が広く処理しなければ、持って10分と言った所だろう。
真っ赤に染まったその体に鞭打ち、ライズと相対する勇者……。
緊迫する状況の中、女性の怒声が辺りに響く。
「あなた達!何してんのぉぉぉぉー!」
その声で勇者の身体がまたしても硬直した。
ライズは空かさず、勇者に近づく。
そして……。
「シャオ!」
腹を左から右へ……、鳩尾からヘソ下までを十字に切り裂いた。
「あっ!」
勇者の間抜けな声が、聞こえる。
そのまま勇者から距離を取り、声をした方を向き女性の質問に答える。
「粛清と害虫駆除かな……。」
「はい?」
その女性はキョトンとする。
辺りが一瞬の静寂に包まれるも……。
「あっ、あっ、あっ、あっ……。」
勇者から声が漏れる。
勇者は必死に腹を抑えているのだが、次の瞬間吐血し抑えていた手が離れ、腹からは数メートルにも及ぶ腸と臓物が辺り一面に零れ落ちる。
そしてビクビクと痙攣を起こし、前のめりに横たわる勇者……。
だが内臓の損傷は少ないため、勇者の意識はまだ残っていた。
(あっ、はははは~!こりゃ18禁物だよ!切腹に介錯が必要な理由が分かった気がする。)
脳内麻薬が出っ放しのライズはのんきにそんな事を考えていた。
エレクシア、サシャ、ニーナ、フレミーの4人は勇者の惨状……、ライズの血塗られた手を見て顔面蒼白となっている。
それに我慢できずフレミーの口から、吐瀉物が吐き出される。
「エロエロエロエロ~~~~~!」
その臭いにやられ順に残りの3人も吐き出す。
「「「エロエロエロエロ~~~~!」」」
こちらはこちらで酷い惨状へと変わっていった。
そして声を掛けてきた女性……、フードを深くかぶり表情は見えないが、その肩を震わせていた。
「ユイト~~~~~~~!」
女性はそう絶叫する……。
その拍子にフードが脱げる……、黒髪ショートに眼鏡……。
「よくもユイトをっ!」
「えっ?ユイトって誰?」
「何をぬけぬけと!」
「その勇者ならまだ生きてるぞ!」
「えっ?」
女性は振り向くとビクビクと小刻みに痙攣してる勇者に、懐から小瓶を出し近づいて行くが……。
ヌチャ!
その女性の足元には、勇者の腸が踏みしめられていた……。
「あっ……。」
ビクンッ!ビクンッ!ビクンッ!
一頻り大きく体をはね上げた後、その勇者は硬直し動かなくなる。
ライズは両手を合わせ黙祷する。
(チ~ン……。)
目を開けると女性は、小刻みに肩を震わせる。
その女性にライズは声を掛ける。
「さて、あんたは何を望む?」
「ぶっ……。」
「ぶっ?」
「ぶっ殺す!」
ライズに向かい、女性は抜剣する。
「ふっ……。戦闘狂か……。」
ライズは溜息をつき、女性をそう判断する。
すると後ろから4人の叫びが聞こえた。
「「「「お前が言うな!!!!」」」」
「あれ?」




