27.勇者、再び……。
ライズ達が冒険者ギルドへ行って数日後……。
二人の少女がギルドへ入ってきた。
ライズ、サシャ達により奴隷から解放された双子のエルフ、リアとミアである。
現在はライズ達の所で巫女の修行中、大精霊アウラを崇拝している。
そして、薬草採取の依頼をするべく、冒険者ギルドへお使いに来ていた。
「サシャお姉ちゃん達かエレクシアお姉ちゃんいますか?」
「ダメ、ミア!ギルド通すの。」
ライズは懇意となった、サシャ、ニーナ、フレミー、エレクシアに指名依頼を出すようになっていた。
受付嬢も何時ものやり取りに慣れた手つきで依頼を受理する。
そしてギルド内に居るサシャ、ニーナ、フレミー、エレクシアを呼びに受付嬢は席を立ち、二人は受付で待つ事となった。
ダンッ!
勢いよくギルド入り口のドアが開けられる。
「勇者、殺った奴いるか!」
そう言って入ってきたのは、ガラの悪い男が3人、後ろにフードを深く被った者が一人の計4人。
そして4人それぞれ教会の紋章が付いた物を身に着けていた。
ギルド内にいる冒険者達は気付く……、この4人が新たに教会より派遣されてきた勇者であると……。
「おいおい!誰か返事しろよ!」
一人の勇者がそう叫ぶ。
周りの勇者は辺りを見回す。
そして気付く受付に居るリアとミアに……。
「あ~ん?ここは子供もいるのか?」
「見ろよ!こいつらエルフだぜ!」
徐に勇者2人が近づきリアとミアに手を伸ばす。
「お待ちなさい!」
その二人を止めるように後ろから声がかかる。
勇者が振り向くとそこには金髪ドリルのドレスアーマー……、エレクシアが立っていた。
「あ~ん?」
勇者の一人が、ヤンキー紛いの威圧を放つ。
エレクシアの後ろに居たサシャ、ニーナ、フレミーの足が強張る。
「私の依頼主に何か御用でして?無いようでしたら、引いて頂きたいのですが……。」
エレクシアの左手親指が鞘から、剣を引き出し、直ぐにでも抜剣出来る態勢になっている。
「ちょっと!もめ事起こさないでよ!ギルド絡むと面倒でしょう!」
勇者達の後ろから声が発せられる。
どうやら後ろのフードの者、声の質から女性である事が伺える。
「行くわよ!」
そのフードの女性がそう言うと、他勇者3人を引き連れギルドより出て行った。
「ふう~。」
エレクシアは張り詰めた緊張を解き放つ。
するとリアとミアがエレクシアに話しかける。
「「お姉ちゃん、ありがとう。」」
「いえ、当然の事をしたまでです。オ~~~~ホッホッホッ!」
何時もの高笑いにより、ギルド内の緊張がほぐれた。
そして……、冒険者達より称賛の声があげられる。
「姉ちゃん、やるな~。」
「勇者相手に凄ぇ~。」
「あの威圧で動けるなんてなぁ~。」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
その日称賛の声が続く間、エレクシアの高笑いもギルド内に響いていた。
さらに数日が経過する。
「見つかんねぇ~な。」
「もう、いいんじゃね?」
「なら、お目付け役もいない事だし。」
「「「楽しみますか!」」」
路地裏に手3人の男勇者が声を上げていた。
一方、フードの女性勇者はと言うと……。
「何で見つかんないのよ!」
教会クレセント支部……。
教会本部より教わった場所には存在せず、代わりにあった物は緑あふれる林と、診療所らしき建物……。
木々の育ち具合から、数十年の月日が経っている事も分かる。
明らかに教会とは別物、そう判断した後、王都内を隈なく捜索するも、一向にそれらしいところが存在しない。
王都内にある宿に拠点を構え、早3日。
教会本部からの依頼……、教会クレセント王国支部から連絡が途絶え、勇者達は生存不明……、それの調査なのだが……。
「一体どこなのよ!」
来てみれば国名も変わり、教会は存在せずでは報告のしようも無い。
丸っきりの他国へ来てしまったのだろうか?
そんな思いも無くはない……。
連れの3人は問題ばかり起こそうとする……、一人女性勇者は辟易としていた。
そして男勇者3人に話は戻る。
路地裏から出た3人は、ブラブラと街を散策する。
時折、道を歩く女性にちょっかいを掛けながらも、大きな問題にはなっていなかった。
そして冒険者ギルド近くを通りかかると、遠くに金髪ドリルが見える。
相手も気付いたようで、嫌悪な目を向けられる。
そのまま金髪ドリルはギルド内に入ってしまった為、遊び道具にする事を断念する。
またもやブラブラとする。
そして……、日もだいぶ傾いた頃、おもちゃを見つける事となった。
「よう、久しぶり!」
「とは言ってもそんな立ってないがな。ギャハハハ!」
「と言う事で、一緒に来てもらおうか。」
3人の目の前には冒険者ギルドで見かけた、エルフの少女が二人いた。
同時刻。
冒険者ギルド内……。
「すいません。家のリアとミア来てませんか?」
受付でライズが尋ねる。
「今日はもう帰りましたが……。」
「そうですか……。」
ライズの趣味なのか……、ライズとネロはリアとミアを「夕飯の時間ですよ」と呼びに冒険者ギルドへ来ていた。
過保護とも取れる行動ではあるが、エルフである彼女達はある意味目立つ。
前にギルド内で絡まれた事を聞かされたライズは、少しでも遅い時間になると迎えに来るようになっていた。
すると丁度良いタイミングか、ギルドへと一組のパーティーが入ってくる。
「あれ?ライズさん。」
「どうしたんです?珍しいですね。」
「今日の分の薬草はもう納めてますよ。」
サシャ、ニーナ、フレミーである。
「どうしたもこうしたも、リアとミアを探しに来たんだけど、どうやらすれ違ったらしい。」
「そうなんですか?」
「何なら一緒に探しますよ。」
「そうですね。私達も暇してますし。」
3人が、手伝いを申し出てくれる。
「ん、いいのか?薬草採取で疲れてるだろ?」
「薬草採取で疲れませんよ。」
「今日も直ぐに終わったし。」
「ですよ~。」
「そうか、それじゃお願いするよ。見つけたら家に頼んでいいか?」
「「「任せて!」」」
すると、入口より声が聞こえた。
「何が任せてですの?私もお願いされて宜しくてよ。」
そこにいる全員が入り口を向く……、丁度帰って来たエレクシアが顔を覗かせていた。
「「「「………………。」」」」
「お帰り、エレクシアさん。それじゃ、お願いしようか……。」
「任せてですの……。で、何がありまして?」
ライズは一通りエレクシアに説明をする。
「そうでしたの……、私が協力するのですから大船に乗ったつもりで居て下さいまし……。」
こうしてライズ、ネロの他、サシャ、ニーナ、フレミー、エレクシアによる捜索が始まった。
取りあえずパーティー単位……、3手に分かれての捜索する。
自ずとエレクシアは一人となる。
「それにしても何処へ行ったのかしら?」
ライズがギルドから社までの道で出会わなかった事から、どこかに寄り道していると考えられる。
とは言ってもエレクシアはリア、ミアの行動範囲が分からない……。
「大船と入ったものの、これでは役に立てませんわね……。」
目立つ容姿をした二人なのだからと、エレクシアは聞き込みを開始する。
ギルドまでの道で聞き込みをするも、とりわけ有力情報が出てこない。
「少し足を伸ばすとすれば、商業区の方かしら……。」
エレクシアは商業区へと向かう、すると露天商の一人から、それらしい情報が出る。
「そうだなぁ~。ちっちゃいエルフが歩いてるのは見かけたな。」
「で、どちらに行かれましたか?」
「いや向こうへ歩いて行くのは見たが、どこと言われてもねぇ~。」
「そうですか……。」
「そういや暫くして、教会の紋章を付けた装備の3人組も歩いていたなぁ~。あれは勇者って奴か?この国から勇者が居なくなったって聞いていたが、また戻って来たんだな。」
「それ、本当ですの?」
「ああ、あれだけ目立ってたんだ見間違いって事は無いな。」
「ありがとうございます。」
エレクシアは露天商に礼を言うとその場を離れた。
(まさか……、無いとは思いますが……。あの時、確かに3人で居ましたし……。)
嫌な予感が過る。
(最悪も考慮に入れないと……、であれば……。)
エレクシアの足は、自然と倉庫街へとむけられる……。
この時間の倉庫街は、人足が少なく悪人が何かするのに打って付けの場所……。
長らくそっちに行った事が無かった、エレクシアではあったが、彼女の感がそっちだと告げていた。