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21.完成!社と御神体と。


 フロスト王国建国から3か月、王都内に突如現れた、深緑地帯……。


 アウラの精霊術により、おにびただしい樹々が成長を促されていた。


 その深緑地帯に一つの鳥居、そこを潜りうねった階段を上ると空間が広がっていた。


 そこは地球でいう所のパワースポット……、正面には社……、その右隣にもこじんまりとした家屋……、左方にはそれなりの大きさの道場が建ち……、木造建築で構成されたその建物と周りの緑が相まって、一種の癒し空間となっている。


 「後は御神体を置いて完成だな。」


 「シンラ様も、お喜びになるでしょう。」

 

 「お兄様、道場の使い勝手、見て来ても宜しいでしょうか?」


 「あまり無茶するなよ。ネロの全力だと倒壊の可能性もある。」


 「はい!グレイスさん基準で動いてみようと思います。」


 親衛隊基準で有れば、壊れる事は皆無……、ライズは錬金術を使い建物の強化を行っており、物理的に強度が上がっていた。


 「それと魔術は使用禁止な。」


 「分かっております。」


 そう言うとネロは道場へ向かった。


 残された、ライズとアウラはネロを見送り、話を詰める。


 「では、お披露目についてだが……。」


 「最初はペリティア様と親衛隊……、後は王国の要人……。その後で一般開放が一通りの流れになります。」


 「御神体はどうする?」


 「社内は、御神体を奥の部屋に設置、私、ライズ様、ネロ様、後はペリティア様と巫女二人のみ入場可、手前は神事を行う部屋として開放し使うのが宜しいかと……。」


 「いや、そうじゃなく、御神体は何にするかと言う事だが。前みたいに氷像と言う訳にもいかないだろ?」   


 「そうですね。シンラ様は分かり易く偶像で良いとおっしゃいましたが……。神力の通りやすい素材で有れば、送受信も容易と思います。差し詰め水晶とかですかね?」


 「ちょっと待て!送受信ってどういう事だ?」


 「送受信は送受信です。地球でも使っていたと思いましたが、水晶に力を加え周波を同調させる事で、送受信を可能とする技術でしたよね?」


 「ああ、スマフォの事だな。」


 「それと同じような物です。今現在地上ではライズ様のみ、神力を保持しております。私はライズ様を通してシンラ様と通信できますが、それを御神体と言う中継基地を通しても出来るようにしようと言うのが、シンラ様の思惑となります。更には御神体から溢れ出すシンラ様の神力により、周りの隠れた存在能力を引き出すと言った効果もあります。」


 「それで、社建てたら放置で良いと言ってたのか……。」


 「まあ、あの方からしてみれば、本当にどうでもいい事なんですがね……。」


 アウラが言うからには、本当なのだろう。


 「それじゃ、一丁、水晶でも作るか!」


 ライズ地面に手をつき、錬金術を行使……、石英を集め一つにまとめる、不純物を取り除くと、無色透明の球体が出来た。


 ずしりと重量感がある……、約1Kg位だろうか。


 ライズは水晶玉を見つめ疑問を口にする。


 「これいくらで売れる?」


 「共通金貨で金貨10枚位ですかね?量産しますか……?多分、魔力媒体としても優秀ですよ。属性付き魔力媒体の無属性版と言った所ですね。完全な無属性版はライズ様の持っている、その一つだけだと思われます。」 


 「んっ……。つまり……。」


 「希少価値が高いと言う事です。この世界では魔力が干渉するため、無属性は皆無です……、絶対と言っていいほど属性や不純物が付きますね。」


 「えっ?それじゃ、アウラって……。」


 「今頃、私の凄さに気付きましたか……。」


 ドヤ顔で胸を張るアウラなのだが。


 「いや、そうじゃなくって……、ボッチだったのか?」

  

 「んっ?」


 予想外のライズの言葉に、アウラは図星を突かれ口を噤み、視線が定まらず挙動不審な行動をとる。 


 そんな事はお構いなしに、ライズの質問は続く。


 「いやだから、アウラって……。」


 「そんな事ないもん!」


 ライズに最後まで言わせず、アウラが否定する。


 その表情は、今にも泣きそうなくらいに目に涙を溜め、頬を大きく膨らませていた。


 (精霊も泣くのか……?精霊の涙……、特殊アイテムとかでありそうだな。)


 ライズは的外れな事を考えながら、アウラで遊ぶのもこれ以上悪いと思いフォローする。


 「昔はともかく、今は俺達が居るから問題ないし、これからも一緒だろ?」


 「うん……。」


 アウラは俯きながら小さく肯定する。


 「それじゃ、何を落ち込んでるんだ?」


 「だって……、ライズ様がボッチだって……。」


 「ああ、俺も前世はほぼ一人だったからな……。アウラと同じだな。」


 ライズにとっての前世は、人との関わりはあるものの、それは全て社交的な付き合い、仲間と呼べる存在はいなかった。


 唯一の仲間として、深淵の魔女がそう呼べるかもしれないが、母親代わりでもある。


 弟子たちも居たが、師匠と弟子ではある程度の壁も存在し、深淵の魔女とライズの関係ほど深い物でもなかった。


 (そういや俺も心許せる人いなかったなあ~……。)

 

 「そういう意味ではアウラは、初めて心許してるのかも……。」


 ライズの口から言葉が漏れる。


 それを聞き逃すはずの無いアウラは、満面の笑みでこたえる。


 「えっ、何だって?」


 鈍感系主人公御用達の、聞こえない振りである。


 「そういうの良いから、俺も含めアウラもネロも察しは良いだろ……。」


 「つまんないです~、ブ~~~。」


 「ブーイングもいらないし。まず、その辺の事はいいよ。察しろ!」


 「わ~!ライズ様照れてる。」


 すっかり元気を取り戻したアウラは、ライズを責め立てる。 


 「面倒くさっ。」


 「ライズ様、それ言い過ぎです。結構傷つきますよ。」


 どっかの主人公などは、冗談とか言って笑い飛ばすのだろうがライズは違う。


 「本気で言ってる、気を付けろ!」 


 極端に面倒臭いことが嫌いで合理主義なライズは本気である。


 「すっ、すいません。」


 もう既にペリティアのたっての願いとして、フロスト王国女王顧問の役職をさせられている。


 関わった手前、断りずらく渋々ながら了承していた。


 顧問、ただの相談役ではあるが、しばしば親衛隊が呼びに来て登城する羽目に……。


 その所為か、業者から見た工期はかなり早いようだが、ライズの予定を大幅に遅れる事になった。


 「面倒ごとは、これ以上要らないから……。」


 「そうですね……、私の方もこの前やっと、教育が終了したばかりですし……。」


 アウラはアウラで、シンラ神教経典など目に見える形で教義を示してほしいとペリティアから依頼を受け、渋々執筆作業を行っていた。


 「「はあ~。」」


 二人の溜息が境内に響く。


 ライズはそのまま水晶を見つめる。


 「で……、これどうする?」


 「今思ったんですけど、希少価値が高いと言う事は、面倒ごとの引き金にしかなりませんね……。」


 「だよな~。」


 「う~ん……、ではそれが見えないように囲ってしまっては?」

  

 アウラは悩みながらも答えをくれる。


 ライズはそれにインスピレーションが浮かぶ。


 「よし!」


 ライズはアイテムストレージから木材を出しそれを削りだす。


 「何を造ってるのですか?」


 「まあ、見てろ!」


 そういうとライズは黙々と作業に集中する。


 「出来た!」


 数刻が過をぎライズは声を上げる。


 「そっ、それは……!」


 漆黒に黒光りするフォルム。


 正面には円を描くように数字が並び、その上に指をひっかける穴、そしてそこに指を掛け回すとギミックが発動する。


 頭頂部には棒状の物、その両端は膨らみその下方は窪みがある。


 そっとその棒を手にすると……。


 チンッ!


 何やらギミックが発動する。


 その棒から螺旋状に管を巻き本体へとつながっていた。


 「な、何!黒電話作ってるんですか!」


 「分かり易いだろ。通信機器だ!」


 「ま、まあ、ところで水晶はどこですか?」


 「予想は付いてるだろうけど、本機の中だよ。」


 「う~ん、確かにこれが何か、この世界の人達は分からないでしょうが……。勇者に見られたら一発ですよ。」


 「あっ!」


 「まあ、創作活動に夢中で忘れてただけでしょうが、気を付けて下さいね。」


 「すまん。」


 「これは奥に置くとして、こちら側にはそれっぽい物でも飾っておきましょう。」


 ライズは雪山時代、温泉増築の際に終い込んでいた石を出す。


 「これでいいか?」


 「まあ、飾ってしまえば、それとなく見えるでしょう。それに、神事にも使えそうです。」


 「神事?」


 「要はお祭りですね。例えばこの石を国の力自慢に持ち上げてもらい、五穀豊穣を願うとかですね。」 

 

 「そんなんでいいのか?」


 「最初なんてそんなものですよ。その後から利権やしがらみが絡んできて、ああした方が盛り上がるとか、こうした方が利益になる等の損得勘定で祭りが出来てく訳です。地球でもそうですよ。ユ○スコに文化遺産登録されれば拍が付き、人が多く集まり金を落としてくれるなどの思惑が付きまといます。いいのは登録時に生きている人達だけですが……。その後の維持管理をされる後世の人の事などお構いなしですね……。当初の願いを蔑ろにし、後世に憂いを残す。つまらない世の中です。」


 「随分口が達者だな。」


 「そりゃそうですよ。私はお願いされる側でした、ですから願いが薄れていく事は目に見えて知っています。嘆かわしかったですよ。そんな感じでしたので数百年ほど、その国を放置してたら滅びましたね。森は枯れ果て砂漠化してますよ。」


 「軽く言ってるように聞こえるがいいのか?」


 「良いんですよ……。シンラ様から説教は受けましたが、お咎めは受けませんでしたから。」


 (幼女神も大概だな……。どうせ大笑いでもしてたんだろうけど……。)


 「それじゃその線でペリティアにも相談しよう。それとお披露目の日程も決めないとな。」


 「はい!そうしましょう。」


 そうして、ネロを迎えに行き、3人で王城へ向かった。





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