14.5 閑話 ナターリアの場合
私はナターリア。
クレセント王国男爵家次女として生まれ、幼少期、父より剣を仕込まれた。
よく小動物を捕まえて来ては、母に叱られていたのを覚えている。
野山を駆け巡っては、剣を振るっていた元気な子だったらしい。
9歳になり転機が訪れた、行儀見習いで王城に上がったのである。
第一王女ペリティア様にお仕えする事に……。
しばらくすると、毒見役の先輩が死亡した……。
ペリティア様暗殺を狙ったもの……。
私はこの時、初めて伏魔殿に来た事を実感した。
愛くるしいペリティア様は、この事が切っ掛けで心を閉ざす……。
そんなペリティア様を見て、私が守らねばと思った。
そして行儀見習いに精を出す日々が続く。
そんなある日、ペリティア様を狙う暗殺者が、たまたま私が居る時に現れたのだ。
私は近くの燭台を掴み、横薙ぎに振るう……、奇を衒ったのかそれは暗殺者の頭に直撃……。
暗殺者は意識を朦朧とさせながらも、ペリティア様に近づいて来る。
私は燭台を暗殺者の胸に刺し込む。
肉を裂き燭台が埋没する感触が手に伝わる。
暗殺者は早々に動きを止めた。
そして私は自分が人を殺したのだと自覚した……。
だが、それよりもペリティア様……。
震える身体に鞭を打ちペリティア様を探す。
ペリティア様は小さく屈み震えていた。
無事な事を確認すると私はペリティア様に抱きしめていた。
私が震えている事にペリティア様が気が付いたのだろう……、そっとその小さな体で私を抱きしめてくれる。
次の日、ペリティア様、守護の褒美を受ける事に……。
私はペリティア様親衛隊の結成を懇願……、願いも空しくそれは通らなかった。
表向きは人員不足。
概ね、ペリティア様を良く思っていない兄弟達の所為だろう。
今のままではいずれ……。
ならば……、私をペリティア様付きの騎士に……。
私は騎士に叙勲された。
私は四六時中、ペリティア様と一緒に過ごす、訓練の時はペリティア様が見守ってくれる。
そんな感じで数年の時が過ぎる。
最初はおままごとなど揶揄されてはいたが……、私も幼少期は家で剣を教わっていた事もある。
そのお陰か、近衛騎士ともある程度剣を合わせられる様になっていた。
そして何より仲間が増えた。
行儀見習いで上がってきた娘を勧誘したのだ。
おままごとの延長線上と周りの者は言っていたのだが……、どの娘も武人の出自、差異はあれど剣を嗜んでいた。
ほどなくして、王城に勇者が来た。
王子達も暗殺どころではない、下手したら勇者に王位継承権を取られかねない。
だがそれは皆無だろう……、何故なら勇者達の行動があまりにも酷すぎる。
何人もの使用人たちが手籠めにされたと聞く……、その上、城内での殺生事……、何がしたいのやら……。
そしてその手がペリティア様に伸びようとしていた。
私達は親衛隊の理念の基、ペリティア様の守護を慣行……、王城からの逃避行を計った。
すんなりと王城を出ての道中……、予想外の敵……。
盗賊……、よりによって『風の翼』……、ここいらを生業とする大盗賊団だ!
私も討伐隊に参加した事が有る為、彼らの厄介さは手に取るようにわかる。
親衛隊では遅かれ早かれ全滅が必死……、ペリティア様守護の任務もここで潰える。
劣勢に立たされる親衛隊。
一人、また一人倒れて行く。
だが、この身が朽ちようとも、ペリティア様だけは……。
そしてこの後起こる、蹂躙劇……。
そこで私は運命と言うべきか……、ライズ殿と出会う……。