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01.エピローグからの、プロローグ

久々の投稿です。

仕事の合間で書いてますので、不定期投稿となりますがよろしくお願いします。


 『世界アウルーラ』


 この世界は魔素と呼ばれる物に満たされ、それを糧とし多種多様な生物が生活を営み、弱肉強食の世界を作っていた。


 そこで一つの命が尽きようとしている。 


 ファスト・フロスト58歳


 今現在、部屋のベッドに伏しており、周りには私の死を惜しむべく仲間が見ている。


 もう直ぐ天寿を全うし、眠りにつく事だろう。

  

 視界も無く、時折聞こえるすすり泣く声……。


 自分ではそんな惜しむような人間ではないと思っていたが、周りから見ればそうではないらしい。


 思えば、色々あった……。


 ああ……、これは走馬燈なのだろう……。


 もう時間切れの様だ……。


 ここは思い出に浸り、このまま逝くとしよう……。


 ………………。


 …………。


 ……。


 彼の脳裏に次々と思い出が流れ込んでくる。


 そして走馬燈が迸る中、可笑しな事に気付く。


 ………………。


 「スタッフロール?いやエンドロールか……。」


 彼は声にならない声を上げる。


 そして……。


 「FIN……?」


 ………………。


 …………。


 ……。


 どうやら、私は死んだ様だ……。


 ピロロ〜ン!


 脳内に音声が響く。


 それに続き無機質な声が聞こえる。


 「ファスト・フロスト、ヒトゾクジンシュヒューマンゾク、キョウネン58サイ、アウルーラカンスイシャ、ショクギョウケンジャ、ロウスイニヨルシボウヲカクニン。」


 「カミノコトワリニモトヅキ、リンネシステムヲキドウシマス。」


 「システムオールグリーン。」


 「ゲンセノキオクノホカン。………………ホカンカンリョウ。」


 「ゼンセトノキオクヲトウゴウシマス。………………トウゴウカンリョウ。」


 その言葉と同時に私の中に膨大な情報が流れ込んでくる。


 ………………。


 …………。


 ……。


 そして……、私は思い出す。


 私は転生者だった……。


 一度目と言っていいのだろうか、地球で日本人として生まれ不慮の事故により、命を落とす。


 「…………カンリョウ。…………二ヨリ、カミノマヘイソウカイシシマス。」


 記憶の確認をしていた時も、淡々と響いていた声が終了を告げる。



 「やあ、アウルーラでは大往生した様だね!まさか君が僕の世界を完遂するとは思わなかったよ。」


 そして目の前に居る幼女こそリンネシステムを構築した神……。


 諸悪の権化である……。


 「諸悪の権化とは酷いね……。君を巻き込んだのは悪いと思うけども、勇者召喚に介入して来たのは君の方なんだからね。」


 ああ……、そうだった、こいつは心を読めるんだった。

 

 「気にするのはそこかい!これでも神なんだから少しくらいは敬っても罰は当たらないよ。前みたいに『幼女来たー!』とか『僕っ娘来たー!』とかは勘弁だけどね。」


 そんな事言ったっけ?


 「もう忘れたのかい?僕はドン引きだったからよく覚えてるよ。それにしても魂のままだと何もかも洩れて来て、話が進まないから仮初の身体与えるね。う〜ん……、今回は老衰だったから、こっちかな。」


 パチッ!


 幼女が指を鳴らすと、ファスト・フロストの魂を光が包み込み徐々に人の身体を形作っていく。


 そして光が収まりファスト・フロストに五感が蘇る。


 「んっ……、これは……?」


 周りを見渡すと、漆黒の空間ではあるがどこか安心出来る気持ちになる。 


 目の前には先程まで神々しいまでに光り輝いている幼女とぼんやり認識していた者が、五感の獲得と共にはっきりと視認する事ができた。


 銀髪ロングにクリッとした漆黒の瞳、陶器の様に透き通った真っ白な肌、白のワンピースの幼女が気品ある椅子に足を組み鎮座しこちらを見下ろしている……、そしてその可愛らしい口が開かれる。

  

 「どうだい?久々の身体だろ、霜山一(しもやまはじめ)君。」


 そう懐かしき、身長170cm体重98kg不摂生真っ盛りのお腹ぽっちゃり、顔には吹き出物だらけ……、ブラック企業退職後、求人活動真っ只中のくたびれたスーツ姿の日本人、霜山一39歳!其の人の姿がそこにはあった。

 

 「またこの姿になるとは思わなかった。むしろアウルーラで過ごした身体の方が長くなってるんだけど……。」


 「そこはまあ、大した問題じゃないさ。魂としては同一個体な訳だしね。」


 「で……、俺がここに呼ばれた訳を教えて貰おうか!」


 俺は幼女に向かい上から目線で質問する。


 「何で神にである僕に向かってそんな偉そうなんだい!まあ、僕は心が広いから君のような態度を取られても怒ったりしないけどね。」


 そう言っているが、頬を膨らませプンプンしている。


 「で……、どうなんだ?」


 「もう……、せっかちだね君は。それじゃ改めて話すよ。」

 

 幼女が嘆息し話を続ける。


 「僕はシンラ!この世界アウルーラを管理している神だね。」


 「それは知ってる。」

 

 「むっ!茶々を入れないでくれたまえ。これから本題なんだから。」

 

 幼女の不機嫌そうな顔を見るのも乙な物では有るが、ここは素直に謝って置こう。


 「ああ、すまない。」


 「分かればいいんだよ、分かれば。それじゃ話の続きだ。」


 一旦間を置き幼女神が話を続ける。


 「まずは霜山一君。アウルーラ、完遂おめでとう!」


 「んっ?意味が分からないが、ありがとうと言えばいいのか?」


 「そうだね、その説明をしようか。」 


 「そうしてくれると助かる。」


 本当に意味不明な事だが、説明してくれると言うのであれば素直に聞くとしよう。


 「先の転生の事から話すよ、アウルーラにある人種の国が行った勇者召喚だけど、あれは異世界集団転移なんだ。そこには色々と条件が付いていてね。集団で行動してる事、身体能力に伸びしろが有る事、そして若くして寿命が尽きそうな事、要は地球人の引き抜きだね。よくもまあそんな魔法作ったよ、って感心するね。」


 んっ?今聞き捨てならない事を言ったような気がする。


 「ちょっと待て!幼女……、もといシンラ様は関与してないのか?」


 「関与してないよ、基本僕は傍観だからね。それよりも幼女って何だい!幼女って!」


 「そうか……。でも前も幼女……、もといシンラ様が現れただろ。」

  

 「ああ、あれは君が勇者達を助けようとして巻き込まれた訳で、家の世界の人間が行った事だからね。その所為で君の魂が消滅するのは僕の意図するところで無かったからだよ。それに魂の疲弊具合がとんでもなかった、そんな状態で介入してきた事に驚いてね。成人するまで限定だけど健常の祝福付けて転生させた訳さ。ところで幼女ってさっきから言ってるよね?」


 「そう言う事か。それで病気も怪我も無かったのか。ここは素直に感謝しよう。ありがとう、幼女神……、もといシンラ様。」


 「また幼女って……、まあ君の中では僕の格が上がった様だしそれで良しとして置こう。ついでに言うと深淵の魔女の所へ送ったのも僕の粋な計らいだよ。」

 

 「なっ、なんですと〜!」


 深淵の魔女……。


 彼女の名はアトリー・ブラッティー、世界唯一のハーフエルフ族。

 

 金髪碧眼スレンダーな体躯、齢300歳にして、20代前半の美麗な容姿をしていた。


 エルフ族から禁忌者、人族からは異端者として、断罪対象になっている。 


 そして俺の育ての親、兼師匠だ……。


 「どうしたんだい?そんなに驚いて、彼女はお人好しで子供好きだろ?問題でもあったかい?」


 「えっ!い、いやっ……、そうなのか……。」  


 確かに育てて貰ったと言うのは事実だが、成人して数年後に俺の前から忽然と消えてしまった。


 それに思い出す事と言えば、人を実験動物として見ているんじゃないかと思うほどの過酷な修行……。


 モンスターの群に放り込まれた事もあった……。


 特に酷かったのが7歳の時のゴブリン集落、災害級に指定される上位種がいるのにもかかわらず。放りこまれた……。


 流石にあの時は命の危機を感じたっけ、三日三晩奮闘し、疲弊した体力では最後に残ったゴブリンロードに歯が立たなかった。


 最後の最後に手を差し伸べてくれたのも、深淵の魔女たる彼女なのだが……。


 「こんなお使いも出来ないのかい。」


 「あんたがいないと、あたしが食事の準備をしないといけないじゃないか。」


 「回復してやるからさっさと済ませな!」


 等と言われたのを覚えている……。


 んっ?要約すると……。


 助けてくれたのに対し、『勘違いしないでよねっ。あなたを助けたのは食事の為よ!食事の為っ!』って事か!


 あれでツンデレだったのか……。


 何て不器用な。


 物思いにふけっている霜山一に幼女神が声を掛ける。


 「彼女のお蔭で成人してからも何とかなっただろ?本当は彼女がアウルーラ初の完遂者候補だったんだけどね……。如何せん長命種だからね。君が初の完遂者となった訳だ。」


 「ところでさっきから言っている完遂者ってのは何だ?」


 「君はそれと無く感じてると思うけど、アウルーラは所々ゲームに似せて作っているんだ。完遂者とはゲームクリア者って事かな。死ぬ間際、走馬燈とスタッフロールを見ただろ?あれは完遂者への配慮だね。何かそれっぽいだろ?」


 「まあ……、確かに……。でも実際、ゲームとは懸け離れた生活だったぞ?」


 「そりゃそうさ。飽くまでも地球の知識を参考に僕が作った世界だからね。そこで生ている者にとっては、そう言う生活環境でしかないよ。知識を得、外から見て初めてそう言う世界だと気付く物さ。」


 「神のみぞ知るって事か……。」


 「上手い事言うね。地球の時の言葉かい?」


 「まあそんな感じ……。」


 「そうかい。それじゃ話の続きだね。君は世界初の完遂者になった。ゲームクリアには特典が付いてくるって言えば君はどう思う?」


 「それでここに呼ばれたのか……。本当にゲームの世界だな。」


 「そう言う事。で、特典なんだけど元の世界に帰す事も出来るよ。来た時と比べ魂も大分回復したみたいだし、また一からやり直す事になるけどね。」


 「と言う事は、他の選択肢もある訳か……。」


 「話が早くて助かるよ。ぶっちゃけ今言った選択肢はあんまりお薦めじゃないんだ。僕の世界の完遂者だけど、向こうの世界に行くものに対し僕は何もする事が出来ないからね。向こうの輪廻に乗せて貰うのが精一杯だね。」


 「管轄でもあるのか?」


 「そう!向こうには向こうのルールが有り、それにより管理神も違う、地球は多くの神が共同で管理している。僕が何か言った所でルールの変更は在り得ないからね。」 

 

 「と言うと幼女神の世界への転生って事になるのか?」


 「君がそれを望むならね。でも、いいのかい?僕の世界は言わば、危険と隣り合わせの命がけのハードモードだけど。地球の方が安全な上位世界と言っても過言じゃないよ?安全水準、寿命、倫理観、知能どれをとってもほぼ完成されつつある世界だし……。」

 

 「う〜ん。まあこっちの世界の方が生きてる気がするって言うか……、何だろう?気に入ってるのかな?」


 「嬉しい評価だね。それでこそ完遂者って事かな。それじゃ特典についてだ!基本、世界内の転生は僕のリンネシステムの通常仕様だから、特典とは言えない。つまり転生に際し付加価値が付く、そこで君には記憶の継続と……、新しい身体だね。通常人種の上位個体、ハイヒューマンの身体を与えるつもりだけど……、そうだね君は親とか欲しいかい?母胎に転生って事も出来るけど。」


 「親か……。前世や現世では親族に恵まれなかったから、家族に憧れは有るけど……。特に必要は感じないな、肉体年齢とかも弄れるんだろ?」


 「そうだね。ただ幾らハイヒューマンでも新生児でアウルーラに放り出すのも気が引けるし、現世では物心ついた時には魔獣狩りしてたんだろ?3歳児位の身体なら問題無いかな?その分、死亡時より3年ほど後の世界に転生するけど問題ないだろ?」


 「ああ、それで良い。」


 「それと、完遂者ってのは単純に寿命が来ればなれる者じゃないんだ。アウルーラに対しどれだけ尽くしたかにもよる所がある。要は世界に対しての貢献度と言った所かな。」


 「そうなんだ?」


 「で、君はアウルーラに対し多大な貢献をした……。」


 「そんな事したか?」


 「ああしてるね。まず一つ目は種の保全、人種と魔人種の戦争を休戦協定締結させた、あのままだとドンドン数が減っただろうし、世界の発展の阻害に成ってたから止めて貰った事に対し感謝している。」

 

 「したな〜。」

 

 「二つ目は異世界人からの干渉の緩和、まあ勇者達の事なんだけどね。彼等の様な存在はアウルーラに取って薬にもなるし毒にもなる。彼らがもたらす知識と技術により大きく世界が発展するんだけど、その反面脆く崩れやすい、そしてそれが争いの火種になるからね。地球での記憶が無いにも拘らず君は上手く使ってたよ、お蔭で丁度いい緩衝材に成ってたんだ。」

 

 「そうか?ところで勇者達は完遂者になれなかったのか?あいつ等の方が強そうだったけどな。」


 「そうなんだよね〜。候補としてはかなり優遇された方なんだけど……。何だい彼等は、男性の半分がテクノブレイクって……。」


 どうやら、異世界で彼らは、はっちゃけやり過ぎた様だ。


 「女性にしてもだ、あれはヒステリーって言うのかな?高慢な態度で接するものだから原住民から相当恨まれてたよ。結局、原住民とのトラブルで殺されてたね。まあ勇者召喚した国の調整不足なんだろうけど、地球人って精神的に幼すぎやしないかい?」


 そう勇者召喚されたのは、ほぼ十代の日本人……。


 そんな成人もしてなく、自分の考えもまともに持たない、日本的社会主義教育、要は生産的従業員育成教育しか受けていない。 


 モラル、知識を植え付ける高等教育とも言えるが、抑制、保護された教育では精神向上は望めない。


 社会に揉まれやっと精神向上望める。


 精神的に幼いのは当たり前か……。

  

 「何とも言えないな、そもそも戦争とか他人事でしかない世界だったからな……。」


 「それにしてもねぇ〜。まあ勇者達は完遂者に成り得なかったって事だね。彼等の事はこれくらいかな……。で、三つ目の貢献だけど弟子の育成になるね。君の弟子が完遂者候補に挙がって来たからね。」


 「それは俺の貢献なのか?」


 「思う所があるかと思うけど、間違いなく君の偉業だよ。7人ほど完遂者候補になったね。弟子の育成って意味では深淵の魔女の貢献が一番なんだ、何せ君を育てたって実績があるからね。」


 「完遂者ってのは、重要なんだな。」


 「当たり前じゃないか、僕が何年暇してると思ってるんだい?3万年は暇してるんだよ、完遂者の歩んだ物語を唯一の楽しみに頑張って来たんだ、それこそ世界最大の貢献になるのは当たり前だよ!」


 ダメだ!この幼女神……。


 本音をここでぶっちゃけやがった!


 「なあ……、ここで俺にそれを言うのはどうかと思うが……。」


 「………………。そっ、そうだね!何せ僕も初めての事だから、テンション上がっていた様だ。今の事は聞かなかったことにしてくれないかな。」


 「まあ、別に構わないけど……。」


 「ありがとう助かるよ。と、まあ大きい所はかな、細々とした所はもっとあるんだけどね。で、何で貢献度の話をしたかと言うと、その貢献度に対しても特典が付くからなんだ。」 


 「ほっ、ほ〜〜。随分優遇されるんだな。」 


 「まあね。それじゃ特典について話そうか……。」


 そうして幼女神による完遂特典の説明が続く……。



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