ウンコと、少女と、ギルドの洗礼。
「ブリっ(では、開けるぞっ)」
「ちょっと!? まだ、心の準備が……!」
俺が“べちゃっ”とギルドのドアノブにへばり付いた、まさにその時であった――。
「オゥオゥ、嬢ちゃん! そんな可愛いナリして、この誰もが恐れる『血と笑顔と狂気のギルド《コエダメ》』の扉の前に立つたぁ一体どういう了見だ!? ああン!?」
――背後に、チンピラが現れたのだ。
長い金髪モヒカンヘアーを風に靡かせて、トゲ付き肩パッドとレザーアーマーを装着した厳ついチンピラだ。
「ギルドで俺達の洗礼を受けて、ヒィヒィ情けねぇ声を出してぇのかあ!? ああン!?」
「い、いぇ、その……私は、別に……」
少女に顔をグィグィと近付けては、こぼれ落ちそうな目玉でオゥオゥと威嚇するチンピラに、ヒィヒィと怯える少女。
これは、助け船を出してやらねばなるまいな。
「……わ、私、別に、ギルドに入りたかったわけじゃ、ありません……」
「ンだよ中に入る気ねぇのかよオイ! チッ。なら冷やかしは立ち去りやがれ! ったくよぉブツブツ……」
ぐにゅっ。
「ああン? ぐにゅ? ンだァ今の感……触……えっ?」
ブツクサと文句を垂れながら、ドアノブを掴んだチンピラが、自身の手をまじまじと見つめる。
そこには、ベッタリとへばり付いた、愛くるしい俺の姿があった。
……。
「ッひぃぃやあああああああっ!!!? ウ、ウンコォオオオオ!!!?」
情けない声を上げてカエルのようにひっくり返ったチンピラが、手に付いたウンコを地面に擦り付けながら、震える指先を少女に向ける。
「てっ、てめぇの仕業かっ!! こ、この女、可愛い顔して俺達のギルドにウンコをへばり付けてやがったのか!!」
「……はい?」
「何て奴だ! イカレてやがる! イカレやがるぜこの女はよォオ!!!?」
「オゥオゥどうしたどうした!? 何があった!?」
ギルドの中から飛び出してきたスキンヘッドのチンピラBが、扉を閉めるためにドアノブ(勿論、俺付き)をぐにゅっと握りしめ――。
「おわあああああああああっ!!!? なんじゃコレえええええええええっ!!!? あがッ……」
驚き、転がるようにして転がったチンピラBは、後頭部を強打してそのまま沈黙した。ストライクだ。完全にアウトである。
「あわわわっ!? どどど、どうするのっ、コレっ!?」
「ブリっ(うむ。えらいことになったな)」