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ウンコと、少女と、冒険者ギルド。


 ――小鳥のさえずりさえ聞こえない程に、街の人々が活気に包まれている。


 子供達の明るい声が鳥の歌の代わりとなり、大人達を笑顔に変えているからだ。


 それを祝福するかのように、街中に張り巡らされた水路から零れた光の粒が、爽やかな風に吹かれ空へと舞っては消えていく。


 ――そんな、眩しい笑顔に溢れたこの街で、この世の終わりのような顔をして歩く少女と、シャクトリムシのように体を『への字』に曲げながら進む愛らしい物体がいた。


 そう、ウンコである。


「うう、なんで私がこんな目に……」


「ブリッ(はじまりの村から北に数キロの地に、このような美しい街があるとはな)」


「私、女の子なのに……」


「ブリリ(それに、この蛍のように漂う光は、水路から漏れ出した魔素エーテルの光か)」


「皆して大痔主、大痔主って……」


 この街――、眩き笑顔と聖なる水溢るるオマルへは、意識を取り戻した少女に半ば無理矢理案内されたのだが、中々どうして悪くないな。


 痔を労る村民の視線に耐え切れず、家出同然に飛び出してきた少女と違って、俺は観光気分だしな。


 無論、魔王退治の為の情報収集も重要なのだが、よくよく考えると俺、ウンコだしな。やる気が起きるはずもない。


「さあさあ、寄ってらっしゃいな見てらっしゃいなっ! ウチの商品はこの街でも一級品だよっ!」


 大通りにある露店で恰幅のいいオバチャンが可愛らしい服を叩き売りにしているが、少女は下を向いてブツブツと呟くばかりで目もくれない。

 見ているこっちまで気が滅入りそうになるが、慰めの言葉が思い浮かばないので放置だ。


「うぅ、もうお宿で休みたいよぉ……」


「ブリっ(ギルドで用事を済ますまでの辛抱だ)」


 俺は大通りから外れると、昼間も薄暗い所謂『暗がり坂』を降りて、嫌がりまくる少女を宥めながら、笑顔溢れるチンピラ通りとやらを突き進む。

 場所は街の案内板で見たので問題はあるまい。複数ある冒険者ギルドの内、一番近いギルドがこの方向の筈だ。

 ある程度進むと、薄汚い大きな建物が見えてきた。


「ブリ(ここか)」


 俺達が目にしたギルドの看板は、斧が突き刺さり沢山の骸骨が紐でくくりつけられた、実に冒険者ギルドらしい看板であった。

 看板の横に供えられた謎の肉塊が、ちょっとしたアクセントとなっているのも評価したい。


「ひぃっ!? く、糞神様、戻りましょう!」

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